【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
俺たちが第一層ボスを撃破してから数週間。俺たちは第十層にまで来ていた。
「へぇ。ディアベルがギルドを作ったか。≪アインクラッド解放軍≫……ねぇ。このネーミングセンスいったい誰だよ」
「どうせ、キバオウでしょう」
「だろうな。あの関西弁め。ディアベルの顔を汚す気か?」
というわけで原作ではシンカーだけがリーダーとして作られた≪軍≫は、ディアベルが中心となって作られた。
リーダーは当然ディアベル。そしてもう一人、シンカーだ。
副リーダーこと二大幹部。シンカー側近のユリエール。そしてキバオウだ。
メンバーはすでに千人近くに上っているらしい。総員四名のうちのただのパーティーに比べると凄い差だが、実際攻略に踏み切る人数は少ないはずだ。またキバオウ派が原作みたいにやらかしたら俺もディアベルに加勢するつもり。
「ディアベルさん。踏み切ったねぇ。でもあの人ならしっかりやってくれそうだから大丈夫かな」
「そうね。MMOトゥディのシンカーさんもいるわけだし」
おいおい、いつの間にそんなに詳しくなった? シノン。現実のほうでそんなにMMO興味ないとか言ってたくせによ。
「今日のボス攻略会議はディアベルが仕切るのよね?」
「ああ」
「第一層の時よりいい説明を期待するわ」
そう。今日俺たちは第十層ボス攻略会議をする。といってもまだ名前しか明らかになっていない。《ザ・ダークブレイド》。そして取り巻きの《ブレイダーナイト》。これからの攻略会議は偵察隊を決めるのが第一だ。
そして今第十層の会議が開かれる場所で2レイド分――98人――がそろっている。
「はーい。それじゃあはじめさせてもらうよ!」
始まった。
「今回の攻略会議は俺。≪アインクラッド解放軍≫のディアベルが仕切らせてもらいまーす!」
そして話が始まる。
「今日は、これから始まるボスの偵察隊を決めたいと思う。志願者はいるかい?」
その言葉に反応したのはチラホラと数名。その中には俺とほむら。ユウキにシノンも入っている。
「1…2…3……35人か。その中でタンクができる人は?」
俺たちは手を下げる。
「……20人か。よし!そこに俺とシンカーさんが加わる! このメンバーで偵察隊に行かせてもらうよ!」
早いな! 決まるの早いな!
そしてディアベルがこちらに歩いてくる。
「今回も君たちが言ってくれるのか。ありがたいよ」
「いや。どうってことはねぇさ。βの時とどこまで変わってるかを見てくらぁ」
もうすでに名前は違うけどな。
「ああ。一緒に頑張ろう」
βテストでは48人中32人が死んだ。それほどに強かった。それがさらに強化されてるとなるとな……。
――ボス部屋前――
「さぁ。偵察隊……行くぞ!」
と大きく言い放ち、ディアベルが扉を開ける。
その奥にいる人型のモンスター。ベータ版では紅かったその姿を真っ黒に染め上げ、あのころよりも太く、分厚い刀をその手に持っている。
「初っ端から変わってやがる」
「そうね。けど今は偵察よ。無茶はしないで」
「解ってる!」
そういって俺はディアベルの指示で走り出す。
「でぇりゃぁ!」
まずは挨拶代りの通常攻撃、HPが減るのが視界の端で確認できる。それほど固い敵ではないようだ。
「こいつはそんなに固くない! その分攻撃力が高い可能性が高いから気をつけろ!」
そういって俺はいったん後退。ボスのソードスキル《緋扇》が始まった。最初の二発は下がったので回避できたが、最後の一撃の突きは武器でふせぐ。が。
「くぅっ!」
「ジン君! B隊スイッチだ! ジン君! ボスの武器をはじいてくれ!」
「ぐっ……了解!」
俺はその状態から横にローリングで回避、そのまま下からの《スラント》でボスの刀をぶっ叩く。
「よし! 行けB隊!」
俺は武器をはじいた衝撃でよろよろと後退。
「ぐっ……ディアベル。あいつの攻撃力はβの時とはけた違いだぜ……。パリィしたのにHPが10%くれぇもってかれた」
「……そうみたいだね。ボスのHPを最後の段まで削るのはこの人数じゃきついね。そうなると……、シンカーさん! ボスのHPが三段目に入ったところで退きましょう!」
そうディアベルはシンカーに声を飛ばしてから自らも突っ込んでいった。
「大丈夫? 仁」
「……やべぇな。直撃もらったら紙剣士だったら一発で持ってかれるかもしれねぇぞ……これは」
「そうみたいね」
ボスのHPは今までより削れる速度が速い。防御力を捨て、攻撃力に裂いているからだろう。だがその分。注意も散漫になる。だからこそスイッチを繰り返さなければならない。
「D隊さがれ! A隊! スイッチだ!」
俺たちに命令が飛んでくる。
「了解! A隊行くぜ!」
俺たちが一気に突進。同時にD隊が下がり、道ができる。
「はぁぁ!」
まずは俺だ。全力の《バーチカル・スクエア》で相手の《緋扇》とぶつけ合う。さすがに相手のほうが威力が上のようだ。俺の剣が一発ごとにすごいノックバックで後ろに持ってかれる。
「あ。やべ」
最後の突きの前の切り上げのところで剣が思いきり上に跳ね上げられた。これだと突きを直で食らうコースだ。
一発もらうくらいは大丈夫だろうと俺は剣をすぐに引き戻しガード体制に移る。そのまま待っているが衝撃が来ない。その代りにガギィィィィイイン!というすごい音が鳴り響いた。
「油断しないで……っ!」
ほむらだ。つい最近スキルスロットに現れた刀で受け止めている。しかしほむらの筋力値は敏捷値と3:7くらいの割合なため、持つかわからない。俺もすぐに加勢する。
「サンキュ! ほむら!」
俺はほむらの横から出て《バーチカル》でボスの刀をたたき落とす。その際にほむらの体が一瞬力が抜けたため、ほむらを支える。すでにボスにはブレイクポイントを作ってあるから少しはもつ。
「大丈夫か?」
「ええ。力のバランスが崩れただけよ」
そりゃそうだろうな。
「A隊フルアタック! 完全には囲むなよ! 《ツムジグルマ》が来るからな!」
A隊の全員が自分の持てる最大のソードスキルをぶち当てる。俺も《スラント・スクエア》で応戦する。ボスのHPが一気に削れ二段目に入る。するとボスの様子が一気に変わった。
「ディアベル。いったん下げろ! 何かおかしい!」
「解った! 全隊下がれ! 様子を見る!」
その言葉で全員が下がっていく。ボスが刀を鞘にしまい、そのままで構える。そしてかすかに光出す。
その状態にしびれを切らした一人が――
「へっ! ただの見せ掛けじゃねえか! 行くぜお前ら!」
と自分の仲間たちを連れて突っ込んでいく。
「あ! まだ危ない! 戻れ!」
ディアベルの声も届いていない。なんで気づかないんだ!
あの構えが《居合切り》のプレモーションに似すぎていることに!
「ディアベル。あれってまさか……」
「ああ。《居合切り》だね……まずい!」
「駄目だディアベル! 間に合わない! 最悪お前もやられる!」
あいつらはもうボスの目の前まで行って一人がソードスキルを発動させ始めている。そしてボスの刀と鞘全体に広がっている。そしてひときわ強く閃く。
次の瞬間。ボスは再び刀を鞘に戻している。しかしさっきと違うのは突っ込んで言っていた奴らがこちらに吹き飛んできていることだ。
そのHPは4分の3ほど持ってかれている。
「……そういうことかよ」
「……ああ。HPが二段まで落ちたらあの《居合切り》で近くによらせないつもりだ。しかも発動が早い。さらにボスのHPバーを見てみてよ」
「ん。んなっ!?」
徐々に回復していっている。それはつまり――。
「……バトルヒーリング……か」
「ああ。あの状態で時間を稼いでHPを万全まで持っていくつもりだ。短期決着か、《居合切り》を防ぐ必要がある」
「そんなん。タンクを前衛において突っ込むしかねぇじゃねぇか。……けどあの威力だ。タンク隊がどこまで持つかが問題だな……」
「ああ。けどやってみるしかない」
ディアベルの言うとおりだ。やってみないことには本番のボス戦も万全では望めない。
「タンク隊! 前に出てボスの《居合切り》を止めろ! ダメージディーラーは《居合切り》が終わったと同時に突っ込んでくれ!」
その声に反応したタンクたちが前に出て盾を構える。同時にボスの鞘と刀が発光。そして速攻で抜かれる。
「いまだ行け!」
「おう!」
俺を筆頭としたダメージディーラーが攻撃を開始する。ボスは大技を止められた反動で数秒は動けない。そのディレイも確かめる必要があるため俺はカウントダウンだ。
俺たちは全力でソードスキルをたたきこむ。ボスのHPは二段の半分まで回復している。が防御力は変わらないらしい。そしてバトルヒーリングは《居合切り》のプレモーションの時しか発動しないらしい。その情報を俺は頭に叩き込んでいく。
「そろそろだな……一回下がるぞ!」
約五秒がたった。俺は全員を下がらせる。
そして次の瞬間に《居合切り》が飛んでくる。
「あぶなっ! ディアベル。居合のディレイは約五秒。ヒーリングは居合のモーション以外では発動しない。それと防御力は変わりなしだ」
「ああ。ありがとう。記憶しておくよ」
その後俺たちは同じ戦法を繰り返して、どうにか三本目まで削った。
「ディアベル」
「ああ。ここで終わりにしよう。みんな退却だ! この情報を伝えてまた来よう!」
そうしておれたちはそれぞれ第十層主住区へと戻っていった。
なんだかなー。ボスも次でチート化しちゃいそうなんだよね。
仁「ふざけんな」
君も十分チートだよ。なんてったってこれから……あ。ゲフンゲフンこの先はネタバレだ。約五十層を超えたあたりで明かそうかな。
仁「そうだなー。あの情報はだめだなーさすがに」
うん。同感。閉めちゃえ。
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仁「次もよろしくな!」