【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
俺はこの転倒中に勝負をつけきれないことを知っている。だからこそディアベルたちをいったん下がらせた。そして――
「ボスが立ち上がるぞ! みんないったん離れろ! ディアベル頼んだ!」
「わかった! A隊! B隊! スイッチ! ここで決めるぞ!」
そしてディアベル率いるA隊とB隊が前衛に出てきた。そして一気に接近してからソードスキルを乱射する。しかしどうしたことかボスのHPがいまだに残っている。
「どういうことだよ! まだたおせねぇのか……。ディアベル下がれ! ツムジグルマが来るぞ!」
「ッ!!」
叫んだが間に合わない。だったら俺が行くしかない。俺はすぐに《ソニックリーブ》を発動させ、とんだボスをさっきのユウキと同じ要領で撃ち落とす。そのまま落下の勢いをつけて俺は剣を下に向け、落下速度をつけた突きをお見舞いする。
「決めろォォ!」
俺の叫びを聞いた俺たちH隊――キリト、アスナ、ユウキ、シノン、ほむら――が走り出す。そして自分の持てるソードスキルの最大火力を打ち込む。
ほむらが《リーバー》。ユウキが《ホリゾンタル》。シノンが《クロス・エッジ》。アスナが《リニアー》。そしてキリトが《バーチカル・アーク》。それらを受けたボスのHPがどんどん削れていく。そして――。
キリトの剣先がボスの腹に埋まる。そしてキリトが手首を返し、Ⅴを描くように県がボスの肩口から突き抜けた。同時のボスのHPバーが1ドットも残さず消え去り、次の瞬間ボスの体が跡形もなくガラスの破片となって四散した。
「……よっし」
初めてのボス戦が死者を出さずに終了した。
「―――ジン君」
横から青い騎士の声が聞こえた。
「なんだ? ディアベル」
俺は簡潔にディアベルの次の言葉を催促する。
「……ありがとう。助かったよ。君がいなかったら俺は死んでただろう」
「へっ。ンなことかよ、いいんだよ。あんたにはこれからも攻略組を引っ張って行ってもらう必要があるんでな」
ディアベルはそのまま少し黙った。そして口を開く。
「ああ。わかったよ、俺は君に助けてもらった命の借りをこれからの攻略による指揮でお返しすると誓おう」
「頼んだぜ。ナイト様よ」
そしてすべてが丸く収まったように見える第一層ボス攻略。しかし俺の予想をはるかに裏切る言葉がその場に爆弾投下された。
「―――――――なんでだよ!」
・・・・・・は? なにこれ、ディアベル生きてても絶対おこる物事だったわけか?
「なんでディアベルさんを見殺しにしようとしたんだ!」
はぁ……面倒くさい。
「見殺し……?」
キリトの声がその場に響く。次の瞬間。
「そうだろ! だって……だってアンタは、あんたらはボスの使う技を知っていたじゃないか! あんた等が最初からあの情報を伝えていればディアベルさんもあんな思いをしなくて済んだだろ!」
その言葉からどんどんみんなにざわめきが広がっていく。反応していないのは俺たちH隊とディアベルのみだ。
そして二つ目の爆弾が投下された。
「俺…俺知ってる! こいつら、元βテスターだ! だからボスの攻撃パターンを知ってたんだ!」
「黙れ雑魚どもが」
俺が低く殺意を込めた声が醜くわめいていた奴の声の残響を打ち消す。そしてその場にしばらくの静寂。
「……ククククク。カカカカカカカカカカカ!!」
俺が狂ったように笑い出すのを見て奴らはおびえたように後ずさる。
「元βテスター、だって? 俺はもう最初からそう言ってるじゃないか。それにあのボスの武器は俺も予想外だったね。なんあらほかのβテスターと連絡を取り合って聞いてみてもいいんだぜ? 俺は元βとのフレンド登録は大抵してあるんでね」
「そ…そんなわけないだろ! だったらなんであんな見たこともない武器に反応できたんだ!」
俺に口を挟んだのは俺じゃなかった。俺がしゃべりだそうとした瞬間だった。
「……あのボスの武器は刀。βテスト第十層から実装され始めた武器だ」
青きナイト。ディアベルだった。
「おい。ディアベル……」
「いいんだ。隠すこともないし、命の恩人だけに重荷を背負わせる気はないよ」
いい奴だなぁ。やっぱりディアベルはいい奴だ。
「ディ……ディアベルはん? なんであんたがそないなことしっとるんや?」
「……俺は元βテスターだ。だから今回の指揮もとれたんだ」
その言葉に場が一気にざわめきだす。そうだろう。βテスターに対する反感を持っていたものからしてディアベルがβテスターだという事実は重い。
「……なんでや! なんでディアベルはん……アンタがわいらをだまして……」
「なーに言ってんだ。ディアベルは一言も自分がβテスターではないとは言ってないだろ」
俺も助け舟を出す。
「せやけど……せやけど!」
「第一にディアベルが居なかったらどうなってたと思ってるんだアンタら」
俺がそう口にする。
「ディアベルはだれよりも早くボス戦に踏み出そうとした。そして自分がβテスターで皆に蔑まれようとも構わないと考えた。そして仲間を集めて、情報を集めて、今日この日の第一層ボス戦に臨んだんだ。お前らがβにとってどんな風に思っているのかしらねぇが。ディアベルが居なかったらもっと時間がかかっただろうよ」
「……」
もはやだんまり、何も言う気はないらしい。
俺は小声で。
「サンキュな。ディアベル」
「なんてことはないさ」
そういってディアベルは後ろにキラーンという効果音のつきそうな笑みをこちらに向けてくる。
「これからも期待してるぜ。ディアベル。それじゃ俺は二層のアクティベートに行ってくる」
「ああ。頼んだよ」
俺はそのまま一人で扉まで歩く。
「待って」
後ろから長年効きなれた声。
「一人でいかせるわけないでしょう。私はあなたのいくところにならどこにだって行くといったわよね?」
「そう…だな。一緒に行こうぜ」
再び歩き出そうとした矢先に。
「待ってよ! 仁! 何一人で行こうとしてるんだよぉ!」
「まったく……世話の焼ける」
二人の声だ。俺のこの世界での親友二人の声。
「ボクも行くに決まってるじゃないか! シノンもだよね?」
「ええ。もちろん」
この二人もやさしい。俺はその二人の優しさに少し浸ってみることにした。
「ありがとうな。二人とも……」
そして俺は四人――いや正確には後ろからさりげなくついてきてるキリトも含める五人で――歩き出した。新たなる戦場――第二層へ。
「完結するな! そして俺を置いてくな!」
後ろから何かやかましい声が聞こえるがガン無視でいこう。
――第二層主住区ウルバス――
俺はディアベルにアクティベートが無事すんだという旨のメッセージを飛ばしてからその場に座り込む。と、横についてきていた四人も座りこ――んでない一人がいる。
「どしたキリト」
「いや……あれ」
そういってキリトは全力ダッシュしてるフードの女とそれを全力で追いかけている二人の男を指さす。
「アルゴだな。行ってみようぜ」
「決断はやいな……ま、賛成だ」
「お前らは?」
俺は座り込んでいるほむらとユウキとシノンに聞いてみる。
「「「行く」」」
ですよねー
ほむらとキリトの索敵の中の追跡を使って追いかける。しかしアルゴの敏捷値が高いため正直めんどくさい。
「見えたわ。あれね」
「あれだな」
キリトとほむらの声に前を見てみると口論している三人がいる。
「ンども言ってるダロ! この情報だけは、幾ら積まれても売らないんダ!」
特徴的な声で叫ぶアルゴ。そして俺たちは岩陰に隠れて見張る。
「情報を独占するつもりはない。しかし公開する気もない。それでh、値段のつり上げを狙っているとしか思えないでゴザルぞ!」
ゴザル? ああ。いたなぁそんなの。
「値段の問題じゃないヨ! オイラは情報を撃った挙句に恨まれるのはゴメンだって言ってるンダ!」
「なぜ拙者たちが貴様を恨むのだ!? 金も言い値で払うし、感謝もすると言っているでゴザル! この層に隠された――≪エクストラスキル≫の情報を売ってくれればな!」
やっぱねー。体術スキルのことだねー。もうそのあとの会話は聞かずに俺は岩陰から姿を出してそっちに歩く。
「よー。ギルド《風魔忍軍》の諸君。の中のコタローとイスケ君。あんまごちゃごちゃ言わないほうがいいぜ?」
「なんでござるか! 貴様は! 何ようで我らの会話に割り込んできたでゴザル!」
あー! めんどくせえな! そのしゃべり方やめい!
「モンスターは声にも反応するって知ってるか? ほら後ろ」
「「その手は食わないでござるぞ!」」
「ちげーって。早くしないとお前らのHPが消し飛ぶぞー」
その俺の言葉で機械仕掛けのような動きで首を動かし後ろを見る二人。そこにいるのは巨大ウシ型モンスターこと《トレンブリング・オックス》が屹立している。
「ブモォォォォォォぉ――――!」
「「ゴザルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」」
これで良し。タゲる時間が長いあいつにタゲられちゃ圏内まで続きそうだなー。
その少し後に俺の背中に何か柔らかい感触と少し暖かい感触が同時に生まれる。
「……かっこつけすぎだヨ。ジン坊」
えっちょ? これってキリトポジションに俺着いちゃった感じか? やばい。後でほむらに殺される。だってあっちに視線を向けるととんでもなく冷たい視線と一緒に腰の曲刀に手をかけてるほむらがいるもん! っていうかなんでユウキとシノンまであんなに冷たい視線!? キリトは苦笑いかよ!
「そんなことされると、オネーサン、情報屋のオキテ第一条を破りそうになっちゃうじゃないカ」
何を言ってるのかわからないけどやばいやばいやばいって!
「……この分の借りってことで≪エクストラスキル≫とやらの情報を教えてはくれないか?」
「……いいヨ。教えてあげル。ウルバスの――」
そのからアルゴの第二層に隠された体術スキルの説明が始まった。――なぜか引っ付いたままで……。
「仁……? 解ってるわよね?」
現在圏内にて、アルゴを連れて体術スキルの習得に向かおうとして歩き出そうとしたところ。ほむらに曲刀を突きつけられてやばい状況下に陥っております。はい。
「ま……マテ!ほむら! 誤解だ! 少し落ち着いて話し合おうじゃ……」
「問答無用! ハァァアアアアア!」
その後誰とも知れない男の叫び声がウルバスに響き渡った。
「……不幸だ……」
某禁〇目〇の右手にありえない力を持った不幸な主人公のセリフを拝借して自分におこったことを一言で表現させていただきました……。
「ここね。≪エクストラスキル≫が入手できるところは」
「そうだヨ。ここダ」
「へぇ。大きな岩だねぇ」
「そうね。すごく硬い」
「そうだなー」
それぞれの感想を述べながら俺達は家の中に入って爺さんのクエストを発生させ墨と筆を出したところで俺は身構える。
ヒュヒュヒュヒュン!
俺たち全員の顔に墨が飛ばされた。
俺は不意にほむらのほうを向く。すると――
普段のクールな表情を崩しびっくりした目を見開いた状況で停止している、三本ひげを書かれたほむらがいた。
あ、やべぇ。三本ひげのほむらかわいい。マジで美少女だわ。改めて。
するとほむらがこちらを向いてくる。瞬時に顔を俯かせて体をヒクヒクとさせている。
「お…おい? どうした?大丈夫か?」
「だ…ダメ……笑いが……」
そんなにおかしいかよ!?
「アルゴぉ~」
「プッ! ニャハハハハハハハハハハハハハ!」
はええよ! 見た瞬間に笑いやがったぞこいつ!
「どんなふうに書かれてるんだ?」
「ハハハハハ……一言でプフッ!……言うなら……変なおじさん……だナ」
そしてアルゴはもう一度大爆笑し始める。
「不幸だ―――!」
「つまり? このほぼ破壊不能オブジェクト手前な岩を拳で壊せと」
「そういうことダ」
いや……無理だろ。ま、この面だけはさっさとやめたい!
「オリャァァアアアアア!」
俺は速攻で殴りつける。超全力で。この世界に痛みはないから全力で殴れる。
体重移動をうまくし、攻撃力に変える。俺の周りではほむらが女っぽくなく全力で岩をぶん殴っている。シノンはゆっくり岩を見回して弱点がないかを見ている。ユウキはつついている。キリトが殴っているという感じだ。
――次の日――
「割れたわ」
「ちょっ!? シノンはええ!」
「ちょっとヒビ入ってるところあったから。そこをちょっと強めに殴ってみたら割れたわね」
こっちのやつひびないんですけどぉ!?
――さらに次の日――
「われたぁ!」
「次はユウキか。なんでだろうな」
「割れたわ」
「ほむらもかよ!? もうなったら意地だ! キリトよりも最低でも早く砕いてやる!」
「上等だジン!」
――さらに次の日――
「わぁれたああ!」
「なん…だと。ジンに負けるなんて……」
勝ったぁ! よっし。
俺はキリトをほむらたちと傍観することにした。
――数時間後――
「ゼぇ…ゼぇ…わ…割れた」
「乙」
そして全員で体術スキルを入手できた。
終わりました。疲れたぜ。
仁「腕の耐久力上げやがれ」
無茶言うな。僕はもやしっ子なんだぞ!?
仁「ふーん」
もういいや……しめよう。
感想、指摘、☆評価お待ちしています。
仁「次もよろしく!」