【完】転生者と時間遡行者~Everlasting Bonds~IN SAO 作:MYON妖夢
俺たちは二カ月にわたるβテストで驚異の二十一層まで進んだ。が。恐らく製品版ではいろいろと編集され、βの知識が役に立たないことがあると思われる。だからこそ俺は持てる限りの原作知識を使って、原作より多くの人間を生かすことに集中したい。
ユウキやシノンは今のところVRゲームにはかかわりを持っていない――筈なので、おそらく中に入ってくることはない。と信じたい。あの二人を危険に巻き込む必要はない。だからこそ俺は今まで何も言わずに今日という日を迎えた。
そして今日――ソードアート・オンライン製品版発売日。そして正式サービスのスタートだ。今の時間は午後十二時半。あと三十分で正式サービスが始まる。
「ほむら。本当にいいのか? 行くのは俺だけでも――」
「いえ。私は仁のいくところにはどこでもついていく。たとえ地獄だとしても――」
ほむらの言葉には強い意志が込められていた。それを俺にこれ以上止める権利はない。だったら俺はほむらを信じていることしかできない。
「ああ。わかった。それじゃあ俺も誓う。俺は何があってもほむらを守り抜いてやる。絶対にだ」
「フフッ。お願いね」
「おう!」
そして――午後十二時五十九分。カチカチと時間を刻む時計の音が妙に大きく聞こえる。そして――
「行くぜ。ほむら」
「ええ」
「「リンクスタート!」」
そして俺の意識はソードアート・オンラインという牢獄に飛ばされていった。
――同時刻。別のどこかの部屋――
「まったく。あの二人は。特に仁はこういうことを隠すのが苦手なのかしら? 何をしようとしているかはニュースを見て一目瞭然なのよ。それじゃ行こうかな」
「リンクスタート!」
――同時刻。さらに別の部屋
「仁もほむらもわかりやすいなぁ。二人で面白いところに行くなら誘ってくれればいいのに。けど、何かがあるって顔。してた。だったらなおさら二人の力になりたいな」
「リンクスタート!」
――仁side――
「ほぉー。ベータとは比べ物にならねぇくらいの視界のクリアさじゃんか。さすが天才ってとこか」
「ええ。あの時とは全然違う。景色は同じだけどより鮮明になってる。っていうのかしらね?」
俺とほむらは思い思いのことを言う。そしてキリトとβの最後。最終日に別れる時。決めておいた黒鉄宮の前まで歩いた。
もうすでにキリトは来ていて、俺たちを待っていた。あいつらしいといえばあいつらしいな。
「よう、キリト。久しぶりだな」
「ああ、ジン。ほむらも」
「ええ」
そして俺たちはお手軽な武器屋――アニメでキリトがダッシュしててクラインに見つかったところに行く。クラインと会うというフラグは回収したいので早く狩りがしたいと言う嘘でせかしつけて走った。
「おーい、そこのあんたら!」
「ん」
たぶんクラインだろうと俺は予測をつけて振り返る
「おれらか?」
「おうよ! その迷いのない走り、あんたらβ経験者だろ? ちょいと序盤のコツとかをレクチャーしてくれよ!」
予想通りというか原作通りというか。キリトは横で固まってるし、ほむらはなんか呆れてるし。
「おう。ンジャ武器屋いくかい?」
「任せたぜ!」
そして俺はクラインという重要キャラクターを武器屋に連れて行くのであった。
「ぬおっ……とりゃっ……うひええっ!」
掛け声だか悲鳴だかわからない奇妙な声を上げながら振り回した剣が敵――レベル1モンスター『フレンジーボア』――に当たらずに空振りを連続する。そして回避したイノシシは攻撃者、クラインに突進を放つ。するとクラインの体は数瞬宙を舞い草原を転がった。
「ははは……、そうじゃないよ。重要なのは初動のモーションだ。クライン」
「ッてて……にゃろう」
そしてクラインは立ち上がりこちらに向けて情けない声を投げ返してきた。
「ンなこと言ったってよぉ。アイツ動きやがるしよぉ」
「そりゃ動くだろ。そいつらだって俺たちとは違うけど生きてるんだから」
俺がツッコむ。そしてほむらが
「しっかりモーションを起こしてソードスキルを発動させることができればシステムが半自動的にアバターを動かして攻撃を当ててくれるわ」
そしてキリトが足元の小石で投擲スキル『シングルシュート』を発動し、見本を見せる。
「モーション……モーション……」
その言葉を数回繰り返してからクラインが右手に握っているカトラスという曲刀を少し振る。
「単純に考えろよ。クライン。一気にブンッと振るんじゃなくて、一回モーションのまま止めて、スキルが立ち上がるのを感じたら開放するって感じだ」
そういった後、クラインの雰囲気が変わり、腰を落とし曲刀を肩に担ぐように構える。すると刃がオレンジ色に輝く――曲刀スキル《リーバー》。
「りゃあっ!」
クラインの体がさっきまでとは比べ物にならない緩やかな加速とともにフレンジーボアの弱点である首筋に曲刀が叩き込まれる。
ぷぎーという断末魔とともに消え去ったフレンジーボアを眺めていると、俺たち四人の前に加算経験値と取得アイテムのウィンドウが開かれた。
「うおっしゃあああ!」
そして満面の笑みでこちらに振り向くクライン。全員でハイタッチをしてからクラインが口を開く。
「初勝利おめでとう。でも今の猪。ほかのゲームだとスライム相当だけどな」
「えっ、マジかよ! おりゃてっきり中ボスかなんかだと」
「おいおい。周りに中ボスが大量にいるじゃないか」
「愚かね」
ほむらがとどめを刺す。
「そりゃねぇぜ! ほむら!」
「しっかしよ……こうして何度見まわしても信じらんねぇな。ここが《ゲームの中》なんてよう」
「なかっていうけど別に魂がゲーム世界に吸い込まれたわけじゃないぜ。クライン。俺たちの普段の目とかの機関の代わりにナーヴギアが情報を電磁波に乗せて直接送ってきてるんだ」
「そりゃ、おめぇらはもう慣れてるんだろうけどよぉ。おりゃこれが初の《フルダイブ》体験なんだぜ! すっげぇよなぁ、まったく……マジこのの時代に生きててよかったぜ!」
「……大げさ(ボソッ」
そうほむらも口では言いつつホントはクラインと同じことを思っている。この世界に来てから、この世界の平和さを感じて……だけどその平和はこの後無慈悲にも壊される。せめてそれまでは楽しんでくれ。……ほむら。
「じゃあ、あんたはナーヴギア用のゲーム自体も、このSAOが初めてなのか?」
「おうよ!」
クラインが威勢よく答えた後になんかジト目で見てくる。
「つーか、むしろSAOが買えたからハードもそろえたって感じだな。たった一万ロットなんてよぉ。……ま、それを言うならβテストに当選したお前らは十倍ラッキーなんだけどよ」
「ま、まあ、そうなるかな」
キリトがなぜかあわてる。
「さてと。皆。まだ続けるか?」
「ったりめえよ! ……といいてぇとこだけど……」
そういってからクラインの目が時間表示のある位置に動かされる。
「……そろそろ一回落ちて飯くわねぇとなんだよな。ピザの宅配、五時半に指定してっからよ」
「準備万端だな」
「あ、んで、オレそのあと、別のゲームで知り合いだった奴らとはじまりの街で落ち合う約束してんだよな。どうだ。紹介すっから、あいつらともフレンド登録しねぇか?」
「え……うーん」
迷ってるキリトをスルーして俺は。
「おう。メッセも飛ばせて便利だしな。後でしとこうか。俺はここでしばらく狩るつもりだしな」
「そうだなぁ……」
まだ迷ってやがる。
「いや、もちろん無理とはいわねぇよ、キリト。そのうち紹介するかもしんねぇしな」
「……ああ、悪い。ありがとう」
「おいおい、礼を言うのはこっちのほうだぜ! おめぇらのおかげですっげぇ助かったよ、この例はそのうちちゃんとするからな。精神的に」
そしてクラインがこう一度時間を確認してからいう。
「……ほんじゃ、おりゃここで一回落ちるわ。マジ、サンキューなキリト。ジン。ほむら。これからもよろしく頼むぜ」
「もちろんだ。クライン。こっちこそな」
「こっちこそ、宜しくな、また聞きたいことがあったら、いつでも呼んでくれよ」
「また会いましょう。クライン」
そしてクラインがメニューを開きログアウトしようとする。しかし俺はそれがかなわない願いだということを知っている。
「あれっ。なんだこりゃ。……ログアウトボタンがねぇよ」
「ボタンがないって……そんなわけないだろ。よく見てみろ」
そしてクラインはウィンドウに顔を近づけて丹念に調べ上げる。
「やっぱどこにもねぇよ。おめぇらも探してみろって」
「だからンなわけないって……」
と言ってからキリトも調べ始める。俺も一応調べておこうと思いメニューを開く。
まぁ。予想通りなかったけどな
「……ねぇだろ?」
「うんない」
「ねぇな」
「ないわね」
それからログアウトする方法をクラインが飛び跳ねたり叫んだりしている。しまいには「俺様のアンチョビピッツァとジンジャエールがぁあああ!」と超でかい声で叫ぶ始末だ。そして――
「ンなっ……」
「なんだ!?」
「転移だ!」
「いったいどうして……」
ほむらにはいつかは言ってなかったため困惑している……スマン
「プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ」
さっきの赤く染まった空から流れてきた液体が姿をなしたもの――フードの男は言った。
私の世界ねぇ……言ってくれるじゃん
「私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」
「なっ……」
横からキリトの声が聞こえた。
そして悪魔のチュートリアルが始まった。
茅場晶彦が言ったのは原作通りだった。
『現実世界でナーヴギアを外されたら脳が電子レンジ溶かしたナーヴギアにチンされる』
『ログアウトできないのは仕様』
『百層をクリアするまでログアウトはできない』
『すでに二百十三名のプレイヤーがリアルでも死んでいる』
『そして。HPが何らかの理由で0になった時、現実世界でも死ぬ』
そして今。
「それでは、最後に諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ」
あえて言おう。上から目線がむかつくんだよ! チクショー!
と、まぁそれは置いといて、手鏡を見ても見なくても俺の要旨は変わんないから見るだけ見てストレージに戻す。
そして辺りはリアル感あふれる顔になった――否。戻ったプレイヤーたちが大量にいる
「お前がクラインか!」 「おめぇがキリトか!」
横が正直騒がしい。
「ンジャそっちにいるのは……っておめぇら変わってねぇじゃねーか!」
「ン…ああ。リアルの顔と一緒にしたからな。細かいところは変わってるぞー」
そしてクラインはうなだれる。
「くそっ……リアルにそんなイケメンなのかよ。ジンは。しかもリアルでほむらは美人だし」
「黙れこのやろぉ!」
俺はまだ体術スキルがないから拳ではなく片手直剣スキル《バーチカル》でクラインに攻撃。もちろん犯罪防止コードに阻まれる。幸い周りに人がいなくてよかった。
「あぶなっ! 何すんだ!」
正直俺の嫁をナンパすんじゃねぇ! と叫びたいがほむらが顔を真っ赤にして切りかかってきそうで怖い。ま、その代りほむらがいまクラインを襲ってるんだけど。
「ちょっ。まっやめ!」
すごいノックバックでクラインが地面にたたきつけられる。
そして。
「以上でソードアート・オンライン。正式サービスのチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る」
ぜってぇ祈ってないだろ。
そして俺たちはキリトに連れてかれ、裏路地に入った。
われながら中途半端に切れたな
仁「なにしてんだ」
つかれたんだからいいじゃないか!紅き魔法少女と黒き転生者のほうも更新したいからしめるよ!
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仁「次も見てくれよな!」