ここは神の間。真っ白な景色が何処までも続き、終わりなどなく、始まりもない、神のみが存在を許される人には一生かかっても認識すら出来ない空間。
そこに一人、ある神がいた。その神は少年の姿をしており、綺麗な水色の髪をして神々しさを放つ黄金の瞳をしている、年でいうと凡そ14歳。
そんな神は現在、ある一人の少女のような少年を送り出していた。
「魂以外の肉体を全て分解、そして再構成... 脳に言語、魔術回廊の組み込み... 成功」
少年は複雑な術式を空中へと浮かべ、魔方陣へと意味を与えていく。
これは転生の儀式。前の世界での肉体を捨て、新たな肉体を与え、その世界へと適応させる重大な儀式。一つのミスも許されない。
息の詰まる作業がこの場の神聖な雰囲気を重く変えている。
少年の額に一筋の汗が流れる。
「転生特典を魂へと定着... オールグリーン。魂を肉体へと接続... 魂の定着を確認」
作業は一段落、ここまで来ればどんなことがあろうと失敗して消滅することはない。少年は安心した顔をしてため息をはいた。
(これで魂の肉体への定着は終わったけど──体... どうしようか?)
魂の定着を確認した少年はふと、そんなことを思った。
体といっても内蔵や筋肉等ではないもっと単純な部分。人、否全ての生物が始めに目に入るある意味重要な部位... それは──外見だ。
人は外見で人を判断するという。これはある一種の重要な任務だ。手順を一つでも間違えてしまえば即... 先程送り出した夢美の人生は終わってしまうだろう。
いや、世間的、精神的にだが... 。
どうしようか... と少年は悩む。イケメンにするか、今のまま送るか。さまざまな案が浮かんでくるが、どうにもしっくり来ない。
刺激の少ないこの空間に住んでいる少年には、そのまま送ったりイケメンにしたりするのでは面白くないと、無意識のうちにその案を否定していた。
そんな少年に一つ、名案が浮かんだ。
「そうだ、どうせなら女の子にするのはどうだろうか!」
それは少年を女の子にすることだった。
そこからは少年は悩むこともなく次々とアイデアが浮かんできて、次々とそれを採用した。そして言い訳も思い付いた。
まず一つ目に女の子にすることだが、それは人と関わることになるので、待遇がよくなるようにとでもしておけば理由になる。
次にどうせなら幼女にしてしまおうという案が浮かんだ。これは普通の少女でも待遇はいいのに、幼女にすれば更に待遇はよくなり夢美も過ごしやすくなるだろうという深い訳があって考えられた。決してそっちのが面白そうなどとは考えていない。
最後に平均より身長を下げ、より儚く見せるという案が浮かんだ。これにはぶっちゃけ少年の意志が絡んでいるとしか言いようがなく、意味など特にない。
取り敢えずこれ全部を肉体へと組み込む。
「肉体の変更とそれに伴う魂への認識を変更... 設定の成功を確認。これより肉体を固定する」
組み込みに成功した肉体は、どこか不安定ながらも幼女の形をしていた。それを少年は自分ごのmゲフンゲフン、世間体のために可愛く弄ると、その肉体が崩れる前に固定した。
その様子は何とも綺麗なもので、周りに散らばっていた肉体の欠片の光が、設定され固まった肉体に次々と収束し、その肉体を完成形まで持ち込んでいっていた。
「固定... 完了」
そして肉体の固定は完了し、その体は光の塊から人間の女の子へと変わった。キラリと光を反射し光る白に近い銀髪を腰まで伸ばし、白い肌をよりいっそう引き立たせている。
腰は幼いながらも
身長は122.6cm、10歳の年齢に設定された女の子にしては、少々小さめの身長だ。勿論のこと胸は他の部位と同じく成長が乏しい。
え?何でこんなにも詳しく容姿が説明できるかだって?それは──この少女が裸だからだよ!
そうこの少女は裸、そしてここにいるのは少年である。からしてこの少年、実に思考がいけない方面へと向かっている... かと思えば、別段そんなことはなく面白いものを見たような目をしていた。
そもそも考えてもみて欲しい。人間を作ったとされる神が人間一人の裸なんかに興奮するわけがないのだ。
しかし、これで肉体は完成し全ての行程が終了した。
「後は送り出すだけだね... 。───世界への肉体の定着を開始」
少年は少女となった夢美を愛おしそうに見て、世界への固定化を開始した。
世界への固定化とは、居場所のない肉体へ存在する場所を与え、その場へといつかせることを指し、この行程を抜いてしまうと肉体が固定されず、存在している世界から離れていってしまう事になってしまい、次元の間をさ迷うことになる。
「固定完了。これより肉体を世界へと転生させる」
いよいよ転生の開始だ。夢美の体は光を放ち、その体は何かに飲み込まれるかのように少しずつ消えていく。普通に見れば恐ろしい光景だろうが、これは転生。新たなる生の始まりだ。
やがて夢美は光と共に消え、黒一色の空間からその姿を消した。
その事に少年は少しの寂しさを覚えつつも、夢美への期待を高めていた。それは人生の厳しさに直面した夢美がどう生き延びるかへの期待か、わかるものは少年以外いない。
さて、夢美はどんな物語を見せてくれるのか。少年は笑みを浮かべながらいきなり路頭に迷っている少女を見た。
「あっ、送る場所ミスっちゃった... 」
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。