異世界でポーション屋を開こう!   作:緒兎

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 ひっさしぶりの投稿でーすっ!さーせん。これからも遅くなりますがどうぞ良しなに。

 では、どうぞ。


こんな状況だからこそ笑え

 「魔王............?」

 

 「そう、魔王。世界を破滅へと導くもの」

 

 俺はこいつの言っている意味がわからない。この世界は平和なんじゃないのか?そもそも魔王って...お伽噺じゃないんだから。でも...俺のいる世界ってファンタジーだよな。この世界...充分にお伽噺してないか...?な、ないないない。考えすぎだな、俺。こいつが嘘を言っている場合だってあるんだ。ふ、ふん!乗ってやろうじゃんか!

 

 「ま、魔王つったって、魔王は滅びたんじゃないのかよ...?復活って、そんな易々と復活出来るもんなのかよ!?」

 

 どうだみたかこの渾身の演技!少し焦った顔をしながら半信半疑に言葉を並べる。これはいくら神であろうと見抜くことは出来まい!俺は産まれてからずっと演技の練習をしまくってたんだ!まぁ、嘘だけど。あっ、いや本当ですよ!?

 

 「そうだね。確かに魔王は復活するのにとてつもない条件が課せられる。一つ、この世界の地獄から這い上がること。二つ、あの世からこの世へと戻ってくること。三つ、魔力を極限まで高めること。四つ、自分の体にその高めた魔力を込めた魔石を埋めること。五つ、大量に人を殺すこと」

 

 演技が通じたっ!...って喜んでる場合じゃないよね...。この少年が嘘をついているにしてはあまりにも細かい...しかも顔を見れば嘘をついてないってこんな俺にでもわかる。声も顔も言葉も何もかもが嘘を言っている雰囲気じゃない。

 

 なんだよ...なんなんだよその条件。魔王って復活するためには何でもやるのかよ!?おかしいじゃねぇかっ!!四つまではいい。いいんだ。自分を犠牲にして復活するなら勝手にしろって言えるけど、五つ目はなんだ!?なんで魔王のために大量の人が死ななきゃならないんだよ!!魔王はそれをやるのかよ!?関係ない人を巻き込んで、関係ない人を殺して、そんな汚れた復活でもいいのかよ!?もっと華やかな復活ってもんがあるんじゃないのかよ!!?──っと、とある場所のツンツン頭が言いそうな条件だけど....。どうにもまだ実感が湧かない。平和な日本で暮らしてきた俺には、大量殺人なんて言葉聞きなれないからか、やはりピンと来ないというかなんというか。

 

 「知っているかい?この世界では魔物やらなんやら以外の全ての種族は纏めて人と言われているんだ。この意味が...わかるかい?」

 

 「は....?嘘だろ?...ってことは獣人やらエルフやらもそのカウントに入るのか...?」

 

 知ってる。他種族も人と表記されることは知っている。だけどまさか人間だけじゃないなんて思わなかった。獣人も、エルフも、皆殺されちゃうんだ。それはもちろん、魔物に近いと言われる魔族でさえも。

 

 「そうさ。それにね、要求される人数は君が思っているほど少ない人数でもないんだよ」

 

 俺の質問に少年は沈痛な面持ちで答える。

 

 「へ?十人二十人とかじゃないのか...?」

 

 「そんな少ないわけない!」

 

 「うわっ!?どうしたんだよ」

 

 俺の予想に神である少年は悲しい顔で叫ぶ。そんな少ない人数なわけないだろ...と。

 

 でも、怒鳴られたって馬鹿だと思われたって、平和な日本ではそれが大量殺人の人数だから、俺にはどうすることも出来ないよ。いや、地球全体がもう同じ答えしか出てこないだろう。戦争を知るものだって...きっと同じだ。平和に馴染んでるからこそ、この人数なんだよ。

 

 「ご、ごめん。こんな事に巻き込んじゃって...こんな姿にしてしまっているのに、君に怒鳴るのはお門違いだよね...ははっ」

 

 尚も悲しそうな少年は俺に謝ってくる。その姿は何処か加護欲がそそられるというか、母性があふれでてしまうというか、とにかく俺はこいつを元気にしてやりたいと思った。だから、必死にアホなことを言う。

 

 「こんな姿?俺って醜い豚か何かにでもなっちまったのか...!?」

 

 「──いや、君はとっても可愛くて...綺麗で...」

 

 「なにそれ!?かっこよくはしてくれなかったの!!?それじゃあ前とおんなじじゃん!!」

 

 「...だけど今の方が可愛いよ?」

 

 「ちょっ!?それって嘘だろ?なぁ!!これ以上可愛くなったら女の子になっちまうじゃねーか!!」

 

 「────ぷっ。あははっ、はははは、はははははは...ふぅぅーーー~~ふ...はははは!!」

 

 少年は笑う。何処までも可笑しく、何処までも楽しそうに。恐らくこんなに笑うことなんて無かったんだろう。今まで溜め込んできた笑いを全てここで出しきっているかのように少年は笑う続けた。

 

 ...しかし少し笑いすぎな気がする。俺のことで笑ったんだがこれはちと馬鹿にされている感が(いな)めないぞ?...チョップかまそう。

 

 「笑いすぎだっ!!」

 

 「あぷぅっ!!?...あっ。あ、あぁ、ごめんなさい!!ちょっとあまりにも可笑しかったもんだから、ぷふっ...ごほんっ、決して馬鹿にしている訳じゃないんだよ?」

 

 「お前話してる途中に笑っただろう?」

 

 「気のせいさ♪」

 

 「可愛く言ってもバレバレだっ!!!」

 

 グリグリグリぃと少年の頭を握りこぶしで挟む。とっても痛いはずなのだが、少年は何処か上の空で受け入れる。...笑いが足りなかったのかな...?止めなければよかったのかな...?少しだが不安が出てきて少年の頭を挟んでいた両手の力を抜いてしまう。

 

 少年は力の抜けた俺の腕をどけて俺に向かい合うように座る。その顔は悲しみが若干残るものの何かに託したかのようなそんなスッキリとした顔だった。

 

 「バレバレって言ったら、君の作戦もバレバレだったけどね」

 

 「んなっ!!?」

 

 「ははっ。.........その......ありがとうね」

 

 どうやら作戦はバレていたらしいが、この少年は俺に感謝した。こんな状況なのに笑わせるなんてじゃなく、こんな状況だからこそ笑わせてくれたんだと、俺に感謝してくれた。うんうん、やっぱり笑顔が一番だよね。

 

 まぁ最も...

 

 「じゃあ君に魔王を止めるために一肌脱いでもらうことにするよ」

 

 俺はちっとも笑えそうには無いんだけど。




 誤字、脱字等があればよろしくお願いします。

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