願いはなにか?そんなの決まってるじゃないか。家族を... 伶奈と夢奈をどうか... 生きさせて欲しい。
『だーめだね。』
まだ言葉にもしていない、なのにソイツは否定の言葉を口にした。その事に俺は信じられないものを見た目で、ソイツを見た。
同時になぜだ?と、疑問が沸いてくる。コイツは何でも... と言った。なのに何で俺の願いが叶えられないのか。
『二人を生存させるのは... 二つの願いになってしまうんだよ』
「なんで?」
『二人はこのままだと確実に死んでしまう。それはどんな力を働かせてもその事実は消えない。だから、二人は死なせないではないく、死んだ後に蘇生させることになる。』
「つまり... 一つの願いにつき、蘇生できる人は一人ってこと... っ!!」
ナニかは無表情で説明するが、蘇生できるのが一人だということを理解すると、俺は絶望する。
ふざけんなよ!なんで、なんで... くそっ!
怒りがふつふつと沸いてくる。蘇生できるのが一人だということを決めた神に対して、何も出来ない自分に対して。
やはり俺にはどうにも出来ない。何でも願いを叶えてくれると言われたから本当に願いが叶う... と、思ってはいけなかったんだ。所詮運命なんてそんなもんなんだ。
誰も助けてくれないし、誰も手をさしのべない。神様はこれを見てどう思っているのだろうか... ?
怒り?悲しみ?哀れみ?嘆き?喜び?愉悦?絶望?どれが正解かはわからない。だって神なんて誰も見たこともないし、見れるものでもない。確認しようにも出来ない、所詮は妄想に過ぎないんだから。
しかし、確認できないからこそ、俺は神に対して怒りを感じてしまう。こんな状況に運命が進むのを黙って見過ごした神に対して、押さえきれないほどの怒りが沸く。
もし──もし、神がいたなら、この状況を打破して欲しい。俺はどうなってもいい。愛するものを救って欲しい。俺と人生を歩んだことを忘れられてもいい。だから、どうか二人を死なせないで欲しい。連れていかないで欲しい。
これが俺の──一生に一度の願いだ。
『その願い、聞き承けた』
俺の頭上から声がした。
バッと頭を上げると、やはりこの空間にいることが不思議なアイツがいた。しかし、さっきのような生命を脅かすような雰囲気はなく、かわりに神々しさを纏っいた。
理解が追い付かない。なぜ、俺の願いにコイツが反応するのか、なぜコイツが神様のように見えるのか──わからない。
『ふふ... 驚いたかい?僕が君が怒りを感じつつも願い続けた──神様だよ♪』
「は?え... なんで、お前が?」
『あれ?驚いてるっていうより理解が追い付いてないね。もっと別の反応を期待していたんだけど... ま、いっか』
ソイツは笑いながら、優しく微笑みながら俺を見る。まるで、さっきまでの言動が演技だったかのように。思わず、その綺麗な何処までも透き通っている笑顔に、見惚れてしまう。
やはり神はいた。この世の運命を正すために、人が出来るだけ死なないようにするために、懸命に働く... 神がいた。
今まで神とは不条理で理不尽なこの世界を作った悪魔だと思っていたか?答えはNOだ。だってこんなにも、神の心は綺麗なのだから。
だから、俺は心を込めてあの台詞を言おう...
「ありがとう」
俺の全力の感謝の気持ちを、神様に伝える。
『っ!?... ありがとう...か、なんか久し振りだなぁ... 』
俺の言葉に驚いたのか、神はその目を見開き、そう漏らした。
その言葉には深い意味があり、今まで感謝されなかったことを指している... 俺は直ぐにわかった。だって神様、大粒の涙をポロポロと流しているんだもの。
それは演技の時の涙とは程遠い、温かい涙だった。
泣くのは当然、みんなも神様の気持ちになって考えてみて欲しい。散々人間に悪評を吐かれ、それでもなお助けようとしたのに突き飛ばされた神の気持ちを、どうか理解して欲しい。
神だって、『ありがとう』の言葉が欲しいんだと。
「じゃあもう、安心して俺は異世界に行けるな」
『うん、そうだね... 。君に会えて嬉しかったよ!ありがとう』
「はは、なんで俺が感謝されるんだ?」
『ふふ、気にしたら負けだよ?だからほらそこの上にたって!』
そう神が指し示したのは、光輝く、ファンタジーな魔方陣だった。
少し寂しさはある。家族と二度と会うことは出来ないことに。だけど同時にワクワク感が募る。だってファンタジーは男のロマンだからね!
転生するってんだから、どうせなら楽しまなきゃ損だ!だからごめん... 伶奈、夢奈のこと... 頼んだぞ。
魔方陣の上にたつと、魔方陣はキラキラと眩しくない程度に光り、だんだんとその光を強めていった。
そこで俺の意識は無くなった。
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。