「ということで俺はこいつを家へと連れてってやるからお前らはさっさと帰れ」
「えぇ!?」
ぐわっと俺目線から話しかけてた男が立ち上がり、部下達に話している。なにやら送ってってくれるということだが、家の場所教えないといけないのだろうか?...だって信用した訳でもないし。
「ひゃわっ!?」
そんなことを考えていると不意に浮遊感を感じた。どうやら男が俺を担ぎ上げたようだ。ビックリしたなぁ...。
男の腕が俺の足を支え、お尻を肩に乗せて座らせる感じだ。
ただ、持ち上げているだけなので支えがなくフラフラと落ちそうになる俺は、男の頭へとしがみついてぎゅっと落ちそうになる不安を消すように強くしがみつく。
「う~」
「んあ?高いところが苦手なのか?」
俺が目を積むって唸っていると男が質問してきた。
べ、別に高いところが苦手なわけじゃないし!ちょっとふらふらするから怖いだけだし!というかそもそも浮いてる島にいたときの方が高かったし!へ?混乱なんてしてなかったよ!?だから別に目を開けなくてもいいよね?
そんな言い訳も心のなかで、この男に言い返すほどの勇気などない俺はただ黙っているしか出来なかった。
「そうか...じゃあだっこしてやるよ」
「へ?」
「だからだっこ」
俺が高所恐怖症と間違って察してしまった男はどうやら頭がイカれてしまったらしい、変なことを言い出した。だっこ...だっこ?だっこ?なんでだっこ?この年でだっことかあり得ないんですけど?マジで...?俺に死ねと申されるか。いやもう一回死んだけどな!
いやそんなことはどうでもいいんだよ!まずい、このままあの男にだっこでもされて街中を歩かれてみろ、絶対に女の子だと思われる!そうなったら俺、ずっと街の人に女の子と思われながら過ごすしか無いじゃねーか!すでに出会った人の殆どが女の子と勘違いしてるけど!
「だ、だっこはちょっと...」
勇気をもってこれだけは伝える。うん、完璧。これでよし...ってなに部下どもと楽しげに話してんじゃぁぁぁあ!!?俺の話聞いてなかったの!?
ふ、フフ...少し怒るだけの勇気が出てきた気がするよ。
「人の話を...聞けやゴラァァァァアッ!!!」
ふっ、どうだこの俺の怒りを表した言葉は!俺は怒ってますプンプンってな!
「あ?」
...あれ?なんか予想してた反応と違うんだけど...?あれ、俺選択肢間違った?なんか...すっげー怒ってるんですけどぉぉお!!!?
「おい」
「ひぃっ」
ガシッと両腕を固定されながら声をかけられる。思ったよりも迫力があり、声にドスがかかっていたので小さく悲鳴をあげてしまった。
こ、ここ、こえぇよ!!そ、そんなに顔近づけるな!顔が怖いんだから...!というかその手離してくれませんかね!?スッゴい痛いんですけど!ギリギリいってるからマジで!
俺は涙目上目遣いで男を見るしか出来なかった。そうだよ、なんも言ってねえよ!
「女の子がそんな汚ぇ言葉使うんじゃねぇぇえええ!!!!」
「ひぇっ!?」
「誰に教えられたんだ!!?ソイツぶっ飛ばしてやる!!」
もう、なんも言えねぇ。この男は手遅れだ。俺の目が涙目からジト目へと変化していたのには男の部下以外気づかなかった。
「あ、あの...送ってくれるんじゃ」
「ん?あっ、あぁ、すまんすまん」
なかなか話が終わりそうにないので、あまり話したくはないが強引に話を進める。
「じゃあ家がどんなのか教えてくれ」
「え?お店...?」
「もっと具体的に」
「雑貨屋...?」
いや、いやいや、別にこの人をからかっている訳じゃないよ?ただ、家がどんなのかとか言われてもわかんないし、そもそも雑貨屋で合ってるじゃん!というか教えちゃってもいいの?マダムに許可もらってないよ?まぁいっか。
「...流石に難しかったか?じゃあ家の近くには何がある?」
むっ、なんだか物凄い馬鹿にされた気がする。気のせいだと思いたいがなんか男の目が哀れな人を見る目なんですけど。それにしても近くにあるもの...確か向かいが宿屋さんだったような...?確か名前が...魚の宿。なんか魚を主に扱った料理が出てきそうな宿だ。
「魚の宿」
「はぁ!?」
「っ!?」
はぁぁ...ビックリさせるなよぉ!?なんだよいきなり驚いたりして、俺の心臓から口が飛び出るだろ!?いやそんなことはどうでもいい、この男は一体何に驚いたんだろうか?
「お前、わからないのか?」
俺が頭にはてなマークを大量に浮かべていると男がそういってきた。いやわからないからはてなマーク浮かべてるんだけど?って実際に見えてるわけでもないしわかるわけないか。
「お前、ここから3kmは距離があるぞ?」
「はぁっ!!?」
今度驚くのは俺の番だった。
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。