異世界でポーション屋を開こう!   作:緒兎

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 やっはろー皆さん。お元気ですか?元気ですねわかりました。

 俺も女の子に生まれ変わったりしてみないなぁ...なんて思ってますけど、別に男が好きという訳でもないので、男との関係を持つことはあんまり無さそうです。

 しかし今日も今日とて暇な一日が始まりました。皆さん頑張って仕事や学校に行ってくださいね。あっ、休みの人は気にしなくていいよ?


迷子の子猫ちゃん...?

 「どおしたんだぁ嬢ちゃん...こんな暗いところでお散歩かぁ?」

 

 そんな声が聞こえたのは俺の後方からだった。この路地裏は一本道でそこまで広くもない道なので、俺が通ってきた道をこいつも通ってきたのだろう。

 

 それにしても...いやな顔だ。まだ悪い人とは限らないかもだけど、愉悦に歪んだ顔はそれだけで恐怖を抱かせていた。しかもここは薄暗く、はっきりとした表情などもわからなく、何を持っているのかもわからない状態だ。

 

 「ま、迷ってしまって...」

 

 相手を刺激しないように言葉を選んで返す。飽くまでここへは迷い混んだということを伝え、道を聞き出そうとしているんだ。

 

 「っは!迷い混んでこんなところに入ってくる奴がいるかよ?」

 

 「そ、それは...」

 

 的確な指摘だ。迷い混んだからといってこんな薄暗い路地裏を通る奴などいないだろう。もっとも、俺は通ってしまったのだが。

 

 そもそも全く地理を把握していないのに図書館なんかを探すのが間違いだったんだ。浅はかだった、今では後悔の念しか浮かんでこない。この男に絡まれたのだってきっとそういうことが重なりあって起こったことなんだろう。路地裏には悪い男がいる。これは常識だったはずなのに。

 

 「おい嬢ちゃん、一人でなに考えてんだ?俺を無視するたぁいい度胸だなぁ!?」

 

 「ひっ...!」

 

 「だははははは!!いいねぇ、その恐怖に歪む顔!!俺好みだぜぇ」

 

 怖い。顔が怖い、声が怖い、話し方が怖い、笑い方が怖い、何よりもこの男に何をされるのか想像するのが怖い。今までの人生で一番怖い。

 

 俺の体は瞬く間に恐怖に支配され、ガクガクと膝は震え、もう体を支えるのが精一杯な状態だった。

 

 「もうガクガクじゃねぇか!いいねぇ気に入った。お前、俺の奴隷にしてやるよ!!」

 

 「っ!?いやっ...!!」

 

 「抵抗なんて無駄だぜぇ?」

 

 「ひぃっ」

 

 男は俺の腕を掴み、路地裏の奥へと引き込んでいく。必死に抵抗を試みるもびくともせず、寧ろさっきよりも歩くペースが上がった。しかし抵抗を止めない俺に男はナイフを突きつけ脅してきた。

 

 悪い男が常に常備しているのはナイフ。これも常識じゃないか!!これで俺の逃げ場は無くなった。

 

 俺は無抵抗になる他なくなり、男に腕を引っ張られるのと自分で歩くのとで更にペースが上がってしまった。このままでは俺は奴隷にされてしまう。

 

 「おら、しっかり歩け!!」

 

 「はぁ...はぁ...」

 

 元々体力が限界まで来ていた俺は、この長い路地裏を歩ききるには無理があったのか、息が切れて歩く速度も下がってしまった。男に注意されるものの、俺の足はもはや棒同然。歩くことで精一杯だった。

 

 「くそっ、これだから女のガキは...」

 

 「おん....な?ガキ...?」

 

 「あ?」

 

 男が僕に威圧してくるが関係ない。今、何と言った?俺の頭はこれに支配されていた。確かに女みたいな容姿をしているが俺は男。よもやガキなどとは思えないくらいには身長もある。

 

 しかし、俺は今怒っている。こんなくそ野郎に女と間違われるとか屈辱のまた屈辱。もはや劣等感すら滲み出てくる。

 

 「お前、許さないからな...」

 

 「は?なんだいきなり?今更帰りたいとか言うんじゃねぇよな?」

 

 違う、そんなことじゃない。女と間違われるのは俺が一番嫌いで嫌なこと。今まで数々の野郎共を成敗し、男だと理解させてきた。女性に間違われるのは仕方がないが男は無理だ。虫酸が走る。

 

 俺は右手に握りこぶしを作って構える。

 

 「っは!喧嘩でもしようってのか?こっちはナイフ持ってんですけどぉ!!」

 

 余裕の表情で男は言う。確かに武器やリーチの差では負けるかもしれない。だが、そんなもの当たらなければいいじゃないか。

 

 ダッと地面を強く蹴り、男の顔面に届くまでジャンプする。男は流石に奴隷にする予定の俺を傷付けたくないのか、ナイフを捨て俺の振りかぶった右腕を掴もうとする。だがしかし。

 

 「ぅおりゃぁあ!!!」

 

 ゴスッと鈍い音と共に俺の右腕が男の頬を直撃する。いったい何が起きたのか...それは俺が掴もうとしてきた腕よりも早く動いただけだ。男は飽くまで面白半分に俺の腕を止めようとしていた。だからゆっくりとしか腕を伸ばしてこず、俺にいくつものチャンスを与えてくれた。だから俺は今まで放ったパンチの中で一番強力なものを放ったんだ。

 

 しかし、男はまだ耐えるようだ。少しくらくらとしているが、このくらいのゴツさがあればパンチの威力は俺を吹き飛ばすぐらいはあるだろう。

 

 「さぁ、もう一発食らわせてやるよ」




 誤字、脱字等があればよろしくお願いします。

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