というわけで、やって参りました一階のお店へ!という壮大に言うほど遠くも何も無いんだけどな。いやしかし一度はやってみたいものだろう?
しかし初めてこの世界の果物を見たが、どれもこれも地球には無い見た目をしていた。
例えば、このリンゴのような形をしたものは、
まぁ、そういうわけでみんながみんな気色の悪い見た目をしているわけではないが、食欲をそそらない見た目をしているものが多く、誰が買うんだよと思ってしまったわけである。
「さぁさぁ、まだ開店までは時間があるから掃除でも手伝ってくれ」
ボーッと果物を見ていた俺をマダムが呼び起こしてくれた。パッと箒と塵取りを渡され、外へと出される。どうやら掃除とは中のではなく外の方のようだ。たまにいるよね、お店の外を掃除している人が。
チラッと箒を見ると、なんとこっちは地球と同じデザインで吃驚した。地球のと比べれば、やっぱり箒の穂先は荒く、触ると痛そうだ。
塵取りだって同じだ。材料こそプラスチックではなく木だが、形はまるまる同じでホコリやゴミなどを溜めやすいようになっている。
「......はぁ」
一つ溜め息を吐いて店前の掃除を開始する。男が一人、溜め息をつきながら掃除.........シュールに写るよなぁ。
もくもくと作業を続ける俺、気がつけばもう日は登り太陽がいい朝だねと挨拶をしていた。俺は眩しくて目を覆うように手を広げる。
あらまぁ、なんとも小さなてかしら。いつもよりも手が小さく見えるのは朝早いからだろう。うん。
「よしっと、そろそろいいかな?」
声に出さなくてもいいのにいちいち声を出していうのは自分に確認をとっているのか、はたまた眠たい気持ちを少しでも和らげるためか。
俺は箒とゴミの溜まった塵取りを持って店内にいるマダムへと声をかける。
「あぁ、ゴミはそこのゴミ箱に捨てておいてくれ」
店から出てきたマダムは俺を見ると、直ぐ様お店の外にあるゴミ箱を指差す。
流石はマダム、俺の思っていることを瞬時に理解するとは...。まぁ、塵取りを持って困っている様子を見せていれば誰でも気づくのだが。
「それと箒と塵取りは店の中にある木のロッカーに入れといてくれ」
ばっと店内を指差すマダム。どうやらこの世界でもロッカーはロッカーというらしい、一つ知識が増えたかも?あっ、でももしかしたら異世界語を通訳しているだけで、ただ俺のわかりやすいように聞こえているだけかもしれない。
なんとも夢の無い発言である。
パラッとゴミをゴミ箱に捨てると、店内兼家へと入っていく。
サーっと周囲を見渡すと、直ぐ左に木のロッカーがあった。本当はマダムが箒を出したときにわかるはずなのだが、ボーッとしていた俺は何処にあるのかわからなかったのだ。
箒と塵取りをしまうと、俺は木製の箱に入っている果物を選別しているマダムの元へと向かう。
「まだなにかすること無い?」
俺が問いかけるとマダムはこっちを見た。
「んんー...今のところはないかな」
「そっかー.....」
少し考えた様子だったマダムだけど、結局はなにもすることが無いようだ。出来れば早くお小遣いを稼ぎたいので、もっと手伝いをしたいのだけれど何もないんじゃ仕方がない、俺は落胆の溜め息を吐きながらとぼとぼと外へと足を向けた。
時間はもう朝の7時だろうか、太陽が程よい位置へと登ってきていた。
人々は活気付き始め、店の準備をしていた人しかいなかった街に、ほとほととその人数を増やしていった。
俺はそんな異世界の住人を観察することにした。
「やっぱりみんな顔はいいよなー...」
見ていて最初に思ったことはそれだった。よく、アニメなどで過剰なほど可愛い子やカッコいい人が出てくるが、それは普通なようで、異世界には美男美女が溢れかえっていた。
あれ?と今通りすぎた人を見ると、なんと獣耳まで居るようで、お父さんとお母さんだろうか?が、子供の手を引いて歩いていた。こんな朝早くから散歩だろうか?
っと、そろそろ家の店も開けるようだ。
マダムが店の柱にかけられていた看板をひっくり返し、オープンと書いた方にする。因みにこのお店は安い品物を扱っているため、よくお客が来るそうだ。
早速第一買い人発見!
「いらっしゃいませ~」
俺は外にいるため、入るかどうかもわからないお客には声をかけなかったが、どうやら常連なのかな?店に入って早々マダムと話始めた。
これがガールズトークというやつなのか?なんにせよ話が長いのは確実だ。それまでに俺なりに客引きの仕方を考えておくことにしよう。
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。