というかあるなんて一言も言ってない。
「んむっ... ふぇ?」
気が付いたら朝だった... 。俺はまだ覚醒しきれていない脳でただその事だけを認識していた。
ふと、なにか柔らかいものに身を置いている感覚がし、自分が今まで寝ていた場所を見る。どうやら俺はベッドに寝かされていたようで、現代日本よりは
「なんで... 寝てたの?」
寝起きの声は酷いものだ、やはり昨日と変わらず高い声が出ている。しかし俺は昨日の何時、何処で寝たのかを全く覚えていなかった。
取り敢えずわからないものはわからないので起き上がって部屋を出ることにする。ここが何処なのかを把握する必要があるのだ。
まぁ、この状況から察するに恐らくマダムの家なのだろうけど。
ドアを開けると目の前には階段があり、左右に廊下が延びていた。廊下の先には部屋が一つずつあり、どちらも同じ見た目をしていた。
同時にスープのようないい香りが俺の鼻を擽り、自然にそちらへと体を向けていく。
「あら、もう起きたのかい?」
果たして出迎えたのは異世界風キッチンに
食卓にはパンと白いスープがあり、俺の食欲を擽るようないい香りを立ち上らせていた。
昨日はご飯食べてなかっただろう?さぁさぁ、遠慮せずにいっぱい食べな!とマダムは俺を席へと誘導すると、自分も席へと着き朝食?を食べ出した。
俺はいただきますときちんと挨拶を言ってから食べ始める。マダムが不思議そうな顔で此方を見ていたので、食べる前の挨拶ですと教えると納得顔になった。この世界にはこの文化は無いのだろうか?いや、納得顔になるんだからあるのかな?
「んむっ!?」
こ、これは!?... あんまり!美味しく!ない!!!だと... !?
な、なぜだ... 香りはこんなにもいいのに、何故こんなにも味付けが薄いんだ!?あり得ない、味付けが濃ければ俺なりに100点満点の朝食なのに!おしい、惜しいぞ朝食よ!!
パクパクと味付けの薄いスープを飲みながらそんなことを考えるのは失礼極まりない。だが、俺は顔には出していないのだ、そこは見逃してくれ。
「ん、どうしたんだい?口に合わなかったのかい?」
そう、顔には出していないのだ。... だから今の言葉は聞き違いであり決してマダムがわかっているはずが無いのだ!うん、キットソウ... 。
ぱーどぅんとマダムに再度先程の言葉を聞いてみる。聞いたときの言葉はこうだ「ごめん、ご飯に夢中で聞き取れなかった」... なんだろうか、俺を見る目が一気に哀愁を漂わせているのだが。
まぁ、結果を言うとあれだね、同じ台詞が聞こえたんだ。幻聴?俺、覚醒剤とかツカッタオボエナインダケドナーすいませんでした!
まぁ、でもさっきの俺の言葉で合わないという考えは無くなったみたいだけど、明らかやりにくい雰囲気がながれている。話題を考えなければ... 。
「そういえばお母さんはいつも何してるの?」
「あぁ、言ってなかったかね。あたしは店を開いてるからほとんど店を開いてるだけだね」
母となったマダムに粗い口調は使えない、俺はなるべく柔らかい感じの言葉で話す。
どうやら、マダムは店を開いているようで、一日の殆どをそれに費やしているようだ。因みに店を休んだことは一度もないそうだ。病気になったことが無いのだろうか?俺は昔は病気にかかりやすかったなぁ~。
「どんな店なの?」
「んあ?雑貨屋だね。基本は何でも売っていくスタンスでやってるんだよ」
「へー、じゃあさポーションとか売れない?」
「ポーションだって?」
マダムの言葉に俺は思い付いたように提案をした。その内容は、そのお店で俺の作ったポーションを売ることは出来ないか?というものだった。
金銭に関しては無一文と情けない数値なので、ここはマダムのため俺のためポーションを売り込むことにした。
しかしどうやらマダムは理解が追い付いていないみたいだった。
「ポーションってなんだい?」
「... え?」
ぱーどぅん?もう一回おねげーしますマダム様。俺の耳がおかしくなければ確かに聞こえたんですが。ポーションを知らないって。
「ポーションってなんだい?」
いやいやわかってますともー流石にボケるのにはまだ早いってことくらい!どういうことかって?聞き違いなんてまだ早いということだよ諸君。だからさっき聞こえた言葉は真実、この世界にはポーションがないということだ。
あぁ、かなしきかな.... 俺のアイデンティティーがこんなところでつぶれることになるとは... 見知らぬ薬なんて、誰が買ってくれるんだろうか...?
というか神様よ、お前の言い方だとポーションがあるってことだろ?何処にあんだよチクショー!
誤字、脱字等があればよろしくお願いします。