―五年前―
「この機体を、お前に与えよう」
青年はそう言うと少年に一体のガンプラを渡した。
「いつかもう一度、俺とお前でガンプラバトルをしよう」
青年がそう言うと少年は元気よく返事をし、固い握手を交わした。
―現在―
「あの約束からもう五年、かー」
少年は片手にアタッシュケースを持って、街を歩いていた。
「ここだよな・・・。五年ぶり、だよな」
少年の目の前にはゲームセンターがあった。自動ドアを開けて、中に入る。
「あ、あった」
ガンプラバトルシミュレータを見つけ、その一つに入る。
『ガンプラバトルシミュレータへようこそ。名前を入力してください』
シュミレータの指示に従い、名前を入力する。
『進藤 アラタ さんですね。それでは、ガンプラバトルをお楽しみ下さい』
「じゃ、まずは腕を戻すとしますか。進藤アラタ グラディエーター、出る!」
照りつける眩しい太陽。雲一つない空。その下で一つの動画を見る。宇宙軌道エレベーター。 人間は遂に、宇宙への進出を成せたのだ。まだ宇宙旅行は無理だけど、その準備も着々と進んでる。そんな中、私はと言うと・・・、
「今日も地元のゲーセン通い、かぁ」
ドアを開けて中に入ると、ここの唯一の(唯一、で良いんだよね?・・・)のインフォちゃんがお出迎えしてくれる。
「ミサさん、本日もご来店ありがとうございます」
「いつもお出迎えありがとうね、インフォちゃん」
「なんだい今日も来たのかい。悲しい青春送ってんねぇ」
ここの店長であるイラト婆さんにそう言われ、言い返す。
「一応お客なんだから歓迎してほしいな」
「だったらもっと金落としな。毎日ただいるだけじゃないか」
うっ・・・と返す言葉がなく、黙ってしまう。慌てて話を変えた。
「私はシュミレータ見に行くよ」
「先ほど、五年ぶりにプレイされるらしいお客さまがシュミレータに入りました。そろそろ始まる筈ですよ」
「本当!?」
グラディエーター。五年前にエキシビション後に貰ったガンプラ。グラディエーターとは、西洋の剣闘士を意味するのだが、メイン装備は刀だ。
「―ふっ!」
襲い掛かるガンダムとジムを刀で切り裂く。そして援護をしているガンキャノンをサブウェポンで撃ち抜いた。
「ここにはもう、居なさそうだな。次行くか」
月の基地の様な場所にたどり着くと、画面が赤く輝き出した。
『attention.敵プレイヤーによる襲撃です。注意してください』
「へえ。誰かが俺に喧嘩売りに来たのか」
刀を構えると、空から赤いガンプラが降ってきた。1つ目の眼光が自身を捕らえる。
『おいテメエ!この辺じゃ見ない顔だな』
(そら最後にやったの五年前だしな)
顔なんて忘れられてて当たり前だ。
『ここらでガンプラバトルするならよぉ。俺に許可取ってくれねえとなあ!!』
「うわあ。すがすがしい程に暴君だなー」
相手は大剣を構え、自身は刀を構える。するとコクピット内に女の声が響いた。
『ごめん、聞こえてる?』
「誰か分からないが手短に頼む。今取り込み中だから」
『そいつタイガーって言ってね。初心者狩りをしてるんだ』
「倒して?」
『いいよそんなやつ』
「分かった」
タイガーのガンプラ・・・(名前何だろう)が高スピードで近づく。・・・撤回だ。“これ以上無いくらい遅いスピードで近づいてきた”。
『ハッ・・・終われやああああ!!』
「終わるのは・・・」
刀を腰の辺りに構え、腰を少し落とす。所謂抜刀術だ。
『ハッ・・・馬鹿だコイツ!この距離で抜刀術を選ぶなんて!』
元々抜刀術自体高等技術だ。これ勝機とでも言うように、大剣を胸部に向かって突く。・・・これが、タイガーの敗因だった。
「手前だコンニャロオオオオ!!」
その大剣を持つ腕の間接・・・その微かに脆い部分を狙って刀を抜刀する。一瞬の間に、タイガーは両腕を失った。
「残念ながら俺は初心者じゃないよ」
『なっ・・・』
「選ぶ相手を間違えたな、タイガー」
刀を胸部に突き刺す。ガンプラのエネルギーが0を指し、ガンプラバトルは終わりを告げた。