天井は同僚のもとへ向かった。彼の同僚であるから当然研究者のはずなのだが、向かった部屋にいるのは見たところ女子高校生。
「やあ、布束。女子高校生にモテる服を教えてほしい。」
布束のぎょろっとした目が天井を見つめる。
「Oh.Exhibitionist!Hold everything!」
布束は拳銃で天井を狙う。今の天井の服装は短パンを脱ぎ、下はパンツ、なら少し引かれるだけで済んだかもしれない。しかし、研究員用の白衣を来ているためまるで白衣の下には何も着ていないように見える。
「No!No!No!No!出るから!」
「Move slowly!」
天井は布束を見ながらゆっくりと後ろ向きに部屋を出る。嫌な汗が噴き出す。
布束は洗脳装置を用いて妹達の脳に一般常識や知識、倫理観を書き込む際の監修を務めている。
着替えてからもう一度布束の部屋へと向かった。
「Well,何の用ですか?Stop! それ以上近づかないで。Because I don't believe your good sense.」
布束は再び拳銃を構えようと、ポケットに手を入れる。
「You got it!銃はやめてくれ!」
天井は慌てて手を上げる。
「いつもより英語多くないか?」
「英語なら敬語を使わなくても良いからですよ。それで用は?」
布束は年上には敬語を使うべきという常識を持っているが、積極的に使いたいというわけではない。
「女子高校生にモテる服装を知らないか?」
「知りません。Because 私は一般的な女子高校生の感覚から遠いですよ。芳川さんに尋ねたらどうです?」
呆れたように布束は首をふる。
「芳川は何か違う。若い子が良い。」
「Impossible.頑張っているようですが。」
「いいや、不可能などない。実験に取り組む一方通行を見てわかった。あれだけ殴られ、電撃で気絶させられそれでも彼は実験をやめようとはしない。私も彼には負けていられない。恥など捨てる。宣言しよう。モテるためなら何でもすると!」
「......。」
実際に、天井の評判は少し前から変わり始めている。以前は陰湿な暗いイメージを持たれていたが、今では明るい変人のイメージになっている。モテてはいないが。
「天井さん!大変です!来てください!」
部屋のドアを勢いよく開け、研究者の一人が入ってきた。
「どうした?」
「木原数多が打ち止めを渡すように要求しています!」
「木原数多!?」
木原数多とは一方通行の能力開発の中心人物だった研究者だ。そして、木原は学園都市の研究者の中でも異常なマッドサイエンティストとして有名な一族だ。何をするかわからない怖さがある。
天井は緊張した様子で研究者に連れられ部屋を出ていった。
入れ替わるようにミサカ1から10号が入ってくる。
「どうしたのですか?と、ミサカは尋ねます。」
「わからないわ。」
「髪が伸びたので切って欲しいです。と、ミサカはお願いします。」
「I see.そこに座って。」
(クローンを人として見てしまう研究者だっていて良いはずよ。Because 露出狂の研究者がいるのだし。)
洗脳装置の監修をしているからこそ妹達が入力されていないはずの感覚や行動に敏感だ。彼女はすでに妹達がただ指令通り動くだけの人形には見えなくなっていた。
(出来る限りの願いは叶えてあげたい。However,私の眠気が極限だわ。)
一昨日、天井に妹達にファッション誌の情報を入力しろと指示され徹夜をしていた。そして昨日はなんとか流柔術の情報を入力させられて徹夜していた。
妹達は二万人。分担はしているが実験に参加する1号から10号の体調管理は布束や主要な研究者がすることになっている。
「天井さんや芳川さんに」
「天井博士に髪を切らせるなど不可能ですし、芳川博士はバリカンを探し始めました。と、ミサカは暗にあなた以外まともな人がいないことを伝えます。」
「......。」