もう一人の一方通行   作:yamada1600

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哀れなり、一方通行

「クローン?いやいや、さっきからビリビリが妹って、」

 

「それがどうも本当らしいのよね......。わたしは一人っ子だし。」

 

「え!?だってクローンって法律的にも禁止されてるはずなんじゃ......。もしかして、俺はとんでもない事件に首を突っ込んだのか!」

 

人間のクローンを作ることには倫理的に問題視されている。そのため日本を含む複数の国で人間のクローンを作ることは禁止されている。ちなみにすべての国ではない。

 

(チッ、もう誤魔化せねェ。口止めしとけ。)

 

(仕方ねェなァ。任せろ。)

 

「こいつらのことは秘密にしとけ。」

 

「どうしてよ!」

 

妹達の生活は誰かに依存しているはずだということは容易に想像できる。しかし、法律で禁止されているクローンを作った組織が妹達のことを大切に扱っているとは、御坂には思えない。

 

「全部で二万人いるンだ。」

 

これには御坂も上条も目が点になった。そして、御坂は気がついた。

 

「まさか、一部の科学者の独断じゃなくて、学園都市そのものが作ったの!?」

 

「!」

 

「当初は軍用、つまりは兵士として超能力者を使おうとし作ったらしい。だけど、まァ。」

 

「ほとんどが異能力者、良くて強能力者程度でお姉さまには到底及ばない欠陥品だったために計画は失敗に終わりました。と、ミサかは説明します。」

 

「欠陥品なんかじゃねえ!確かに能力は超能力者の御坂に劣ってるのかもしれない。お前を作った連中は求めた成果が得られなかったのかもしれない。だけどそれがお前が欠陥品だって根拠にはならない!そんなの一つの面からの評価じゃねえか!少なくとも俺や御坂はそんなこと思ってない。あんたはどうなんだ?」

 

上条は第二人格の方を見る。

 

(オマエはどう思う?絶対能力者になるための実験に協力してもらっている一方通行サン。)

 

(......。ハッ、格下がさらに劣化した人形にしては役に立ってンだろ。)

 

(つまり?)

 

(チッ、)

 

「三下だが欠陥品ではねェよ。」

 

(オマエ!)

 

(フハハハハハ!)

 

一方通行が言葉を発する瞬間に人格を交代した。

 

「妹達は欠陥品ではないのですか?と、ミサかは質問します。」

 

「ええ、わたしの大切な妹よ。」

 

御坂は少し照れながら微笑む。

 

「本題に戻ンぞ。学園都市を正規の手段で訴えようとすればその前にオマエらは消される。妹達もなァ。だから今日のことは忘れろ。」

 

「そんな....。」

 

「俺達にできることはないのか?」

 

「黙ってることだけだ。」

 

上条の申し出を一方通行は即座に断る。

 

「たまに会いに来るのは?」

 

「ハッ、オマエとこいつらの命を懸けてかァ?」

 

「.....そうね。やめておくわ。ところで、アンタはどうして妹達のことを知っているの?」

 

「俺もそれが気になってたんだけど。」

 

一番聞かれたくない質問だった。

 

「俺の実」

 

(へい、交代!)

 

一方通行が絶対能力者実験のことを説明しようとするのを第二人格が慌てて阻止する。

 

「「じ?」」

 

「痔を治す研究をしてたンだけどォ、あれだ、そこで偶然会った。」

 

(ふざけンな!)

 

上条と御坂は気の抜けた顔になる。極めて最悪な嘘だが、第二人格は続ける。

 

(こっから先は一方通行だァ!Uターン禁止ってなァ。もう突き進むしかねェ。)

 

「ああ、俺が第一位だってのは知ってンだろ?第一位ともなると健康管理は一流の学者がしてくれンだぜェ。俺の痔を治してこそ一人前ってのがあるしな。」

 

「そ、そうなの?」

 

御坂は超能力者だから研究者と接する機会も多い。

 

「そうだ。オマエ担当の研究者も一流なら俺の痔を治してンだ。だけど、これ秘密な。ほら、学園都市の第一位が痔ってなンか学園都市のほとんどの学生が痔みたいに思うやつがいるかもじゃン?」

 

「え、えと、そ、そう、なの?」

 

「......御坂、こっちに来てくれ。」

 

上条と御坂は第二人格から離れる。

 

「お前が痔だったとして他人にそれを言うか?」

 

「言うわけないでしょ!あ。」

 

「そうだ。なんとなく恥ずかしい。その気持ちを抑えてまであいつは俺達に妹達との馴れ初めを説明してくれたんだ。」

 

御坂は第二人格の方を見る。第二人格は片手で顔をおおっている。

 

「ここはそっとしておいてやらないか?」

 

「そうね.....。」

 

上条と御坂が戻ってきた。

 

「わかったわ。今日のことは誰にも話さない。」

 

「俺も約束する。だけど何か困ったら言えよ。」

 

「ありがとよ。そのときは頼む。」

 

(聞け!俺の嘘は完璧だったようだなァ!)

 

(あいつらの顔を見やがれ。哀れンでンだろォがッ!)

 

こうして二人の乱入者は去り、その後も実験は続いた。

 

 

 

 

 

それから三週間後の8月30日となった。実験中、一方通行は何度も大ケガをしたが、学園都市の医療技術は素晴らしい。その度に復活し、体を鍛え上げた。しかし、実験は一向に進まない。

 

「一方通行、焦る必要はない。絶対能力者になるための実験がそう簡単に成功するわけがないからな。」

 

「わかってる.....。」

 

一方通行は天井の方を向かずに答える。

 

「ところで、この服をどう思う?」

 

「知るか。」

 

やはり、天井を見ようとしない。そこへミサカ3号が来た。

 

「アンケート調査を終わらせました。と、ミサカは報告します。」

 

最近妹達は天井の指示でこの研究所で働く女性が好む男性のファッションを分析している。

 

「その服装は、似合う人には似合う、という意見もありましたが、天井さんには無理、との意見が多かったです。と、ミサカは残酷な真実を伝えます。」

 

天井は無言で膝上短パンを脱ぎ捨てた。

 

 


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