もう一人の一方通行   作:yamada1600

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上条が来た

「ここまで来て放っておけるわけないてしょ!電撃が通じなくてもわたしには他の手段もあるわ!」  

 

自分の電撃が通用しないという経験はほとんどないがそれでも一度も無かったわけではない。少し前にツンツン頭の高校生にも電撃を消されている。

 

(第一位の能力はベクトルを操るもののはず。そんな化け物じみたやつに勝たなくてもいい。この場にいる二人の妹達を逃がせれば。)

 

すぐに気持ちを切り替える。そのためには一方通行を自分に引き付けるの必要があると思った御坂は一方通行に話しかける。

 

「他にも妹達はいるの?」

 

「ああ?なンにも知らねェらしィなァ。確か20000人だってよォ。こンな欠陥品をよくそンなに作ったンだから研究者ってのはよほどのバカらしいなァ。」

 

一方通行は御坂の方へ近づく。それに合わせて御坂は後ろへ下がる。

 

「おい、他の手段ってのはどうした。まさか、このまま警備員を見つけるまで逃げ続けるつもりかァ?」

 

一方通行は御坂を馬鹿にするように笑う。本気で戦えば数秒で終わる戦いだろうが、一方通行からすれば実験の間のミニゲームのようなものだ。すぐに終わらせるつもりはない。

 

一方通行が足下にある金属のパイプや土管を蹴り飛ばす。当然蹴り自体の威力は大したことはない。しかし、重力の向きを変えることでそれらは軽く数メートルほどまで飛び、御坂の頭上に迫る。

 

御坂はそれを磁場を操ることで砂鉄を操り、高速で振動させて切断したり反らしたりすることで身を守る。

 

「はぁ、はぁ。」

 

(明らかに遊ばれてる。本気になられたら、数秒で、殺される......。)

 

超能力者の御坂と言えども、無限に発電できるわけではない。恐怖と緊張のせいで疲労がたまりやすくなっている。

 

(殺すなって言ってンだろォが!)

 

(何もしなくても当たらなかった。)

 

(下手に動いてたらどォすンだ!?とっとと逃げりゃイイだろォ!)  

 

(チッ。)

 

「帰ンぞ!」

 

「わかりました。と、ミサカは後に続きます。」

 

下着の1号と11号が一方通行の後ろを付いていく。

 

「早く着ろ。」

 

「待って!どうしてそんなに簡単に一方通行の言うことを聞くの?」

 

ミサカ1号は立ち止まり御坂はの方を振り向く。一方通行は1号を待たずに、そのまま闇の中に消えていく。

 

「ミサカが作られた目的は別ですが、今のミサカは一方通行のために存在しているからです。と、ミサカは説明します。」

 

死の恐怖から解放された安心感で戦意を失ってしまった御坂美琴だが、ミサカ1号が助けを求めればもう一度立ち上がることができたかもしれない。しかし、ミサカ1号は助けを求めるどころか、御坂が戦う理由を否定した。

 

「そんな......。」

 

心が折られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「御坂妹から離れろッ!」

 

その時、どこかから叫び声が聞こえる。一方通行も御坂も声がしたほうを向く。

 

「聞こえねえのかっ!御坂妹から離れろって言ってんだ三下がぁっ!」

 

少年が走りながら一方通行を目掛けて拳を握る。対する一方通行はなにもしない。どれだけ殴られようが自分は反射で無傷。いつも相手が自分の拳を痛めるだけだ。

 

しかし、今日は違った。体が後ろに倒れる。殴られた頬が痛い。

 

「は?」

 

(あ?どォした?反射を切ってたのか?)

 

反射は常に使用している。今も使えている感覚がある。目の前のツンツン頭の少年に殴られた一瞬だけ反射を使えなかった。

 

(反射を、いや、俺の能力そのものを打ち消しやがった!)

 

(は?)

 

「アンタ、どうして.....?」

 

街灯に照らされた上条当麻の顔を見て安心した御坂は泣きそうになる。

 

「御坂!えっ四ツ子!?大丈夫か!?」

 

上条は御坂に駆け寄る。

 

「一方通行に会いたいというので連れてきました。と、ミサカは説明します。」

 

「チッ、おいおい頼むぜェ。一般人なンざ実験場に連れ込んでンじゃねェよ。」

 

(オマエ、人気者だなァ。)

 

「詳しいことはわからねえよ。だけどな、超能力者だからって好き勝手やって言い訳ねえだろ!お前は御坂妹達の気持ちを少しでも考えたのか!?御坂と御坂妹になにをしやがった!」

 

「無理よ。逃げて。あいつはベクトルを操れるの。いくらその右手が有っても死んじゃうわ!」

 

「お前たちを置いていけるわけないだろ!俺はお前もあいつらも助ける!」

 

一方通行は能力で上条と距離とる。

 

「ヒーローでも気取ってンのかァ?最高にムカつくぜェ。さっきも同じようなことを言ってやがったヤツがいたが、こいつらはなァ、実験のために作られた、ただの人形だ。」

 

重力や摩擦のベクトルを操り、上条当麻との距離を一気に詰める。

 

「がはっ!」

 

上条当麻に触れさえすれば血液の流れを逆流させてしまうはずの一方通行の手がはじかれ、逆にもう一度殴られる。

 

「イイねェ。なかなか楽しめるじゃねェかァ。」

 

(最近肉体の弱さを実感して、さらに能力まで通用しねェってンじゃ、こいつは明日からなにを支えに生きるってンだ!)

 

(黙ってろ!)

 

「なにが楽しむだ!御坂妹達にもそうやって自分の楽しみのために無理矢理襲ったのか!?この三下が!」

 

実験ではさんざん攻撃をされた。楽しんではいない。むしろ精神的にも身体的にもきつかった。

 

「は?」

 

(は?)

 

どこかでずれている?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分前。

 

「なにやってんだビリビリ?」

 

風で少女のスカートが少しめくれる。

 

「じゃなくて、妹のほうか。」

 

上条は御坂と妹達と前に話したことがある。見分けかたは短パンかパンツかだ。ミサカ12号は街路樹を見上げている。視線の先の枝には子猫がいた。

 

「上ったまま降りられないようです。と、ミサカは暗に助けることを要求します。」

 

「わかったよ。」

 

上条はその木を登る。子猫も簡単に捕まえられた。

 

「よし、うおっ!」

 

足をかけていた枝が折れてしまった。一メートルくらいの高さとはいえ、背中から落ちると結構痛い。

 

「痛っ!不幸だ......。子猫は無事だな。」

 

「もう少し丁寧に降りたほうがよいのでは?、とミサカは提案します。」

 

「降りたというか落ちたんだ!」

 

上条は背中をさすりながら立ち上がる。

 

「へっくし!鼻のむずむずまで感覚共有するのはやめてほしいです。と、ミサカは文句を言います。」

 

「感覚共有?」

 

「はい。詳しくは言えませんが、妹達の一人が裸になっているので寒いのでしょう。とミサカは説明します。」

 

8月とはいえ夜に汗をかくと寒いときは寒い。

 

「妹達?他にも姉妹がいるのか?」

 

「はい、たくさんいますよ。ちなみに今一方通行に脱がされているのはミサカ1号です。」

 

「脱がされて!?妹だから中学生より下だろ!最近の子は進んでるのか!?いや、同意の上ならなにも言わないけど!」

 

「?何を言っているのかわかりませんが、同意の上ではなく一方通行が抵抗するミサカ1号を無理矢理引っ張り出していますよ。と、ミサカはこれくらいは良いだろうと説明します。」

 

「いや、ダメだろ!場所はどこだ!?」

 

なぜか慌てている上条を見て、よほど重要な用事でもあるのかと思ったミサカ12号は

 

「よくわかりませんが、わかりました。ついてきてください。と、ミサカは先導します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうことがあったようです。と、ミサカは説明します。」

 

11号が感覚共有で知った12号の行動を説明する。

 

(なンか勘違いされてンな。)

 

「チッ、面倒くせェ。」

 

(説明して帰ってもらおう。代われ。)

 

「あのですねェ。上条さんあなたは誤解しています。俺がミサカ1号の服を脱がせたのは、えェと、ゴミの中に上半身が埋まったので、そこから抜くためなンです。なァ1号。」

 

「そうでしたか?あなたはミサカの悩殺ポーズに興奮していたと記憶していますが。と、ミサカは疑問を持ちます。」

 

「なに!」

 

「それは自主的にやったじゃン!」

 

「それはそうですね。と、ミサカは肯定します。」

 

「あれ、もしかして俺ってお邪魔だったりするのでせうか?」

 

第二人格が自分の軽率な行いを後悔していると御坂も近づいてくる。

 

「ね、ねえ、わたしもアンタが妹を襲ってるように見えたから攻撃したんだけど。それに殺すとか人形とか言ってなかった?」

 

(もう、オマエ喋ンな!挑発禁止な!)

 

(面倒くせェなら代われ。ぶちのめしたほうが早い。)

 

(嘘つけ。さっき殴られてたじゃねェか。代わると俺も痛ェから嫌だ。)

 

暗くてよくは見えないが触ると頬が腫れている。

 

「いえ、殴られて目が覚めました。本当にすンませン。これからは心を入れ換えて人をからかうのはやめます。」

 

「そんなの信用できるわけ!」

 

「お姉さま。別にミサカは気にしていませんし、下着を見られても構いません。と、ミサカは説明します。」

 

これを聞いて上条は御坂の肩を叩いて一方通行たちから少し離れる。

 

(もしかしてそういうプレイなんじゃねーのか?)

 

(へ?)

 

(言葉責めって言うのか。それと外で、みたいな?)

 

(はぁあああああ!?そんなわけないでしょ!)

 

御坂は顔を真っ赤にして、あたふたする。

 

(でもまったく御坂妹も嫌がってないぞ。)

 

(もしかして本当に、その、つ、付き合ってる、とか?)

 

(だろうな。姉妹のそういう成長は見たくないのかもしれないけど、いずれは通る道なんだろうな。)

 

上条と御坂が戻ってきた。

 

「殴ってごめんなさい!」

 

見事な土下座だ。

 

「わたしもまさか妹の彼氏だとは思わなくて。」

 

「へ?あ、いえいえ、俺も口が悪くてすンませン。ちょっと気がたかぶってて。」

 

(うまく誤魔化せたぞ!)

 

(俺がクローンを殺すつもりだってのは知らねェらしいな。)

 

(どォせ、一生殺せねェしな。)

 

(あンッ!?)

 

一件落着となった。

 

「それにしても四ツ子って珍しいな。」

 

「いえ、ミサカたちは御坂美琴お姉さまのクローンですよ。と、ミサカは訂正します。」

 

ならなかった。

 

(げェっ!)

 

(......。)


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