もう一人の一方通行   作:yamada1600

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第4話

目の前に自分とまったく同じ顔の人間が現れる。初めて見たときは誰しも驚くだろう。人によっては恐怖を感じるかもしれない。

 

御坂美琴は自分が見ている光景を信じられなかった。超能力者のクローンが作られているという噂。それが第三位である自分のクローンだという都市伝説も耳にしている。しかしくだらない話だと、信じてはいなかった。信じたくはなかった。

 

「固まってしまいましたが、どうしたのでしょう。とミサカは首をかしげます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸い骨は折れていなかった。第二人格は缶コーヒーを飲みながらプロテインも飲む。

 

「おえっ。なンだこれ。」

 

(オマエは健康的なンだろ。痛みは俺が受けたンだからそのくらい耐えやがれ。)

 

感覚器官は片方の人格にしか働いていない。よって一方通行はプロテインを味あわずに済む。

 

しかし、知識は共有されるため味は分かる。美味だと騙して飲ませることができない。

 

(ちくしょォ。そンで、あの妹達から生き延びる方法は見つかったのかァ?)

 

(体を鍛えンのは当然だが、そンだけじゃ足りねェ。......なァ、オマエはあの防護服を素手でどォにかできると思うか?)

 

拳で瓦を割る人間が世の中にはいる。しかし、あの防護服は剣道の胴よりは頑丈になっている。

 

(あの服のファスナーを開けるしかねェよな。)

 

(1人のを脱がせる間に他のやつにボコられンな。)

 

(そこが問題だ。奪って着て戦うのが現実的だが、それって武器や防具の使用だよなァ。)

 

能力とおなじく武器も使えない。せいぜい石を投げたり、木の枝で突くくらいだそうだ。

 

二人は沈黙し、思考し始める。次の実験は一週間後。それまでに何か策を考えなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、試してみようと思った二人はミサカ1号に練習を手伝ってもらうことにした。場所は昨日の埋め立て地だ。

 

「では、練習を始めます。と、ミサカは教官の気分を味わい、優越感に浸ります。」

 

「チッ、さっさと始めンぞ!オマエのファスナーを開けたら終わりだ。」

 

防護服は重く、関節の動きも制限される。そのぶん動きが読みやすくなり、1人だけが相手ならば一方通行でもなんとか攻撃を避けられる。避けるというより走って逃げているのだが。問題はバチバチという音だ。

 

(なンだあれ、恐っ!)

 

(能力か、服の機能なのかは知らねェが、昨日はあれでやられた。)

 

「はい。ビクッとなって動かなくなりました。と、ミサカは昨日の一方通行の醜態を思い出します。ふふふ。」

 

「チッ。」

 

一方通行は舌打ちして睨み付けるが、近づくことはできない。

 

「あっ。」

 

ずぼっ

 

 

ミサカ1号は転倒し、粗大ゴミの隙間に上半身を突っ込んでしまった。

 

「ぬ、抜けません。と、ミサカは内心慌てます。」

 

「俺はこンなやつに負けたのか......。」

 

(チャンスだろ!行け!脱がしてしまえェ!)

 

「うるせェな。」

 

一方通行はミサカ1号の防護服を脱がせ始める。

 

「は?」

 

(は?)

 

 

 

 

 

 

ミサカ1号の生足が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい!オマエ服はどォした!」

 

「この防護服は温度調整の機能があるので裸でも大丈夫なのです。と、ミサカは説明します。」

 

「裸なのか!?」

 

(おい、なに勝手に入れ代わってやがる!)

 

第二人格ががっつく。

 

「いえ、下着は着ています。と、ミサカは防護服を脱いで見せます。」

 

「おおー。」

 

(前にも言ったが、オマエもう喋ンな!)

 

 

すると、ミサカ1号はポーズをとり始める。

 

「そンなのいつ覚えたンだァ?」

 

「天井博士の持っていた本を学習装置で学びました。と、ミサカは表紙のポーズをします。」

 

「イイねェ、イイねェ最っ高だねェ!」

 

(天井ィィィィィィ!)

 

「アンタ、何してんのよ!」

 

オリジナルの御坂美琴がクローンと共にやってきた。

 

「あ、お姉さま。と、ミサカは悩殺セクシーポーズで止めをさします。」

 

「ぐはっ!」

 

第二人格はその場で倒れた。その表情はとても安らかだ。

 

「そのまま、永眠してろォ。」

 

満ち足りた第二人格が一方通行と交代する。

 

「チッ。おい、オマエ。これはどォいうことだ?」

 

「お姉さまが一方通行に会いたいと言ったので連れてきてあげました。と、ミサカは報告します。ちなみにミサカはミサカ11号です」

 

御坂はそう言ってポケットからコインを取り出す。

 

「離れなさい!」

 

人差し指と親指でコインを挟み、一方通行に狙いを定める。

 

「わたしの妹から離れろって言ってるのよ!」

 

 


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