ここはごみの埋め立て地。一方通行はゴミの山の影に息を潜めている。
(なァ、俺は絶対能力者を目指
ついに、先日の実験の改良?されたものが開始された。
「ミサカ1から5号はこちらを探索します。ミサカ6から10号はあちらを探索してください、とミサカは指示します。」
10人とも女の子なのだが、これから宇宙旅行ですか?、と聞きたくなるような装備をしているためけっこう恐い。狙われている一方通行は尚更だ。通常ならばこれが数億人だろうと負けるはずのない一方通行だが、今日はそんな余裕はない。
「能力なしで、どうしろってンだ......。」
天井が改良した実験では結局のところ妹達を殺すことには変わりなかった。しかし、第二人格がそれに反対しなかったのは到底妹達を殺すのが不可能だったからだ。なぜならこの実験中、一方通行は能力の使用は禁止。銃のような武器も防具もない。
(女子中学生を殺すのはちょっと、と思った俺だが大ケガとか死ぬのは嫌だぞ!どうすンの!?)
味わうことがほとんどなかった恐怖で刺激する。そして、それを乗り越える瞬間をトリガーにして自分だけの現実のレベルを上げるそうだ。妹達は一方通行を殺すことは天井に止められている。それでも骨くらいは折るかも知れない。
(黙ってろ!くそっ、軍用クローン相手に近接なンざしかけられねェ。)
そして、一方通行はそれを承知の上で実験に協力している。
(亀のじいさんだって体力トレーニングさせてたよなァ。能力なしじゃァ無理なンじゃねェの?)
妹達は異常な筋力とはいかないが一方通行よりは体力的に勝っている。学習装置により軍隊格闘の知識を持っていたり、ミサカネットワークにより連携が完璧に近かったりとかなり厄介だ。
(能力がなけりゃァ、俺はこンなもンかよ......。)
ゴミの影に隠れながら一方通行は自分の無力を噛み締めていた。その間にも妹達は近づいてくる。そんなとき、一方通行の脳裏には一つの不安が生じてしまった。このまま実験を続けていれば本当にいつか妹達に勝てるのか。
「ふざけンな!」
一方通行はゴミの影から飛び出し、近づいてくる五つの影に向かって走った。それがプライドを守るためだったのか、実験を成功させるためなのかはわからない。一方通行は叫びながら妹達の一人を殴ろうとするが簡単に避けられてしまった。それと同時に他に膝を蹴られ体勢を崩して倒されてしまう。
どちらにせよ、一方通行は妹達に手も足も出ず、気を失い、病院へ運ばれた。
天井はミサカ11号と実験の様子を見ている。
「想像以上に弱いですね、とミサカは実験の行く末を心配します。」
「いや、むしろその体力的弱さが今回の鍵だ。今までやってこなかったことをしなければ絶対能力者にはなれない、と思う。あくまで予想だが。しかし、時間はかかりそうだな。」
(それにしても、なぜ実験の変更が簡単に認められたのだろう。)
変更を上に申請したところすぐに通った。これだけ重要なはずの実験でそれは妙だ。
「なぜ、頭を撫でるのですか?とミサカは率直に疑問をぶつけてみます。」
「女は頭を撫でられると喜ぶのではないのか?」
「ミサカにはわかりません。芳川博士に試せばよいのでは?とミサカは提案します。」
「それは、は、恥ずかしい。」
天井は天井でどうにかモテようとマニュアル本を片手に妹達で練習していた。モテる男になるには時間がかかりそうだ。