もう一人の一方通行   作:yamada1600

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雷神サマ

「ハッ。誰がそんな得体の知れない実験に参加するか。」

 

「そうか。それは残念だ。まあ興味が湧いたら訪ねてくると良い。さらばだ!」

 

『じゃァ、急いでるンで!』

 

《あァ、疲れた。交代なァ。》

 

(早くしろ。)

 

天井と一方通行は走って車に向かおうとした。しかし垣根がそれを止める。

 

「待て。」

 

「あァ?ッ!」

 

振り向いた一方通行に白い物質が襲いかかる。

 

「一方通行!?」

 

「慌てンな。かわしただろォが。」

 

一方通行はギリギリ下に尻餅をつくようにしゃがんでかわした。以前なら能力による反射を当てにして動きもしなかっただろうが、妹達という脅威が一方通行に人間の反射神経を取り戻させた。

 

《危ねェ!いきなりなにしやがンだあの野郎!白い塊とか、アイツの能力は精○操作かァ!?》

 

(ハッ、実験はしたくねェが俺に絶対能力者に成られンのは困るってンだろ。)

 

《なンつー迷惑な...。》

 

「良く避けたな。反射しようとすると思ったよ。」

 

「なンだァ、そのメルヘンな翼は似合わねェぞ。」

 

「安心しろ、自覚はある。」

 

垣根の背には白い翼が生えていた。

 

「一方通行!垣根帝督の能力は未元物質。この世界に存在しない物質を生み出し操る能力だ。まだ見つかっていないとか、希少なんてちゃっちい物じゃない。理論上存在しない、物理法則にすら従わない物質だ。お前の反射も効くかわからないぞ!」

 

「よく知ってるな。テメェ。そうだ、簡単に言えば、俺の未元物質には常識が通用しねえ。」

 

「能力開発の研究をしている身だぞ?現存している能力、まして超能力者くらい把握している。それじゃ、わたしは10032号探しを続けるからな。しばらくしたら戻る。頑張れよ!」

 

親指立てて天井は車に乗って行ってしまった。

 

《天井ィィィッ!》

 

(居ても邪魔なだけだ。)

 

《そンなことよりベクトル変換できないアイツの未元物質、どォ戦う?》

 

(石ころみてェに思い付かねェのか?こンな道草に時間使ってる余裕はねェぞ。)

 

《石投げたってあの白いので防がれンだろォ。やっぱあれを反射できるようにする方法を考えよォぜェ?あ、思い付いたかも。》

 

(俺もだが、言ってみろ。)

 

《つまりだな....なァ?》

 

(それしかねェ。)

 

一方通行と第二人格が話し込んでいると、垣根が再び攻撃してきた。

 

「何ぼさっとしてやがる?」

 

かわすことができたが皮膚を少し擦ったらしく、足が出血している。出血といっても極めて少量だが、能力を使用中の一方通行が出血

するといるのは今まで無かった。

 

《おい、大丈夫かァ?》

 

(オマエが馬場に受けた傷に比べりゃ大したことねェ。)

 

病院で傷の手当てと痛み止めを注射してもらったことで動いても痛くなくなったが、この戦いでも傷が増えるのは間違いない。

 

《気絶とかやめろよォ?俺じゃァ、アイツを倒すのは無理だ。》

 

(....あれは寝不足が原因だァ。)

 

《え?なンだって?》

 

(うるせェ!とにかく病院を離れンぞ。)

 

《あァ、あの娘らを怪我させるわけにはいかねェもンなァ。わかってンじゃン。》

 

(チッ、面倒くせェ。)

 

一方通行は垣根と距離を取りつつ病院を離れた。

 

「おい、どこに行くつもりだ第一位?」

 

「さァな。」

 

《やっぱあの公園かァ?》

 

(他にイイ場所がねェ。)

 

一方通行は空を飛んで逃げるが垣根も翼を使って追いかけてくる。その間も攻撃は続き、少しずつ一方通行の傷が増える。もちろん一方通行も風を使って攻撃を加えているが未元物質に阻まれ、垣根には届かない。

 

「ガッ、パァッ!?」

 

白い塊が一方通行の腹部に衝突した。

 

《なンか一発のダメージが増えてねェ!?》

 

最初の傷は蚊に刺されて痒くなったところかきむしった程度の出血だったが、ついに人に殴られる程の衝撃まで強くなった。

 

しかし一方通行はふらつきながらも、なんとか周囲に人のいない広い場所に着地した。

 

「一方通行、テメェの反射は確かに優秀な盾だよ。だけどな、もしその盾が完璧ならばテメェは日常生活ができねえ。反射したら物に触れられない、飲食、呼吸はできないし、感覚器官も働かなくなるからな。つまり、テメェの反射には有害と無害を区別するフィルターの作用もある。」

 

勝ち誇った垣根はそのまま話す。一方通行はふらつきながら着地した。

 

「なら、俺の未元物質をそのフィルターに無害だと誤認させるような性質を付与しちまえば良いと思ったわけだが、正解だったらしいな。それだけでテメェの盾は機能しなくなる。もうその性質は掴んだよ。これで終わりだ。」

 

垣根は攻撃を繰り返すことで一方通行の反射のフィルターの法則を解析していたのだ。そして解析は終了ししている。垣根はとどめに未元物質でランスを作って一方通行へ発射する。

 

「あ?」

 

しかし、一方通行は垣根の視界から消えていたッ!

 

「うぐ....ッ!」

 

次の瞬間には垣根の頬に一方通行の右拳がめり込んだ。加えて、間をおかずに腹を殴る。

 

「テメェ、どうして俺の未元物質のベクトルをいじれる?」

 

殴られる瞬間、垣根は確実に未元物質で一方通行の拳を押さえたはずだった。

 

一方通行は倒れた垣根に近づきながら笑う。

 

「...ったくよォ、学園都市第二位なンだからしっかりしてくれよ?オマエが俺の反射を解析した様に、俺もオマエの未元物質を解析した。次にその解析結果を反射の設定に組み込み、修正した。そンだけのことだ。」

 

「俺の未元物質はこの世界の法則とは全く異なる物質だぞ!?この短時間で解析できるわけねえ!」

 

「なら、それが第一位と第二位の差だ。」

 

「クソッ!」

 

垣根はやけくそに未元物質を一方通行に向けて乱射すした。しかし全て反射される。

 

「クソッ!」

 

「もう一度聴いてやる。絶対能力進化計画に参加しねェか?」

 

「ハッ、断る。そんなもん、テメェの前の実験体にされて脳をいじくりまわされるに決まってるじゃねえか。」

 

「そォか。なら死ね。」

 

(止めねェのか?)

 

《いや、俺は別にイケメンは消えろォッ!とかァ、モテそうな奴は爆発しろォッ!とかそォいうのではなくてだなァ、仕返しとか怖いし。それとも止めて欲しいかァ?》

 

(ハッ、何言ってやがる。)

 

一方通行がとどめを刺そうとし、垣根は未元物質をタコの墨のようにして逃げ去ろうとした。

 

しかし、その二人の行動は一本の閃光によって阻害された。

 

《へ?》

 

その閃光は一方通行と垣根の間を通り、数百メートルは離れた地点で地面に突き刺さった。そして、隕石でも落ちたのかというように地面がめくれ上がり、空中に舞い上がった石や土が雨のように降り注ぐ。

 

一方通行は閃光が飛んできた方を向く。

 

(あァ?あれは上条か。)

 

《そォだな。》

 

(それと隣の奴は...、まァイイ。二人の奥にいる羽衣着けた御坂みてェのはなンだ?)

 

《あれじゃねェ?雷神サマ。御坂ではねェな。くらばら、くわばら!》

 

第二人格はうまく状況を掴めていないようだ。

 

「おい、あれは何だ!?」

 

「知らねェ。」

 

垣根も異常な状況に気がついた。あまりの驚きに二人の戦いは自然に終わった。

 

「面倒くさそうなやつだな。あれを先に始末するぞ。」

 

「オマエが指示してンじゃねェ。」

 

垣根は未元物質で無数の弾丸を空中に作り、それら全てを雷神さまに向かって撃ち込む。

 

しかし、いや、やはり、未元物質は雷神さまの雷に破壊され無力化されてしまった。

 

「チッ、これならどうだよ!」

 

垣根は次に巨大な右手を出現させ、ぶん殴ろうとした。それも消し飛ばされてしまった。

 

「はあ!?本当にあれは何だ!」

 

「学園都市、超能力者第1.5位じゃねェのか。」

 

一方通行がバカにするが垣根は動じずに返した。

 

「いや、0.5位だろ?テメェあの電撃反射できんのかよ?」

 

《やめろよォ。試さないでね。絶ェっ対無理だからなァ?》

 

(だろォな。)

 

一方通行はなんとなく、あの電撃が高電圧なだけではない、何かほかと異なる電撃であることを察した。

 

「じゃあな。」

 

垣根は一方通行に背を向けてこの場を去ろうとする。

 

「逃げンのか?」

 

「このままここに居てもあれは倒せねえ。今すべきことはもっと他にあるんだよ。」

 

垣根の表情は逃げる者には見えない。何かを決意した様子だ。

 

「そォか、好きにしろ。」

 

「テメェはあれとやり合うつもりか?ハッ。勝手に死んでくれよ。」

 

「黙って消えろ。」

 

垣根は飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェ、俺を絶対能力者にできんのか?」

 

「うおっ!垣根か、驚かすな。」

 

天井は御坂と連絡がとれないことを怪しみながら地道な聞き込みをしていた。そこへ垣根が飛んでくる。

 

「いや、むしろ俺だからこそ驚くところだろ。」

 

「何を言っている。結局、一方通行に負けたのだろう?」

 

天井は一方通行の勝利を確信していたらしい。

 

「まあな。」

 

(良かったあー!一方通行が負けていればわたしの命は確実にないから、一方通行が勝ったの前提で話していたわけだが、上手く格好つけられたな。フフ。) 

 

そうでもなかったらしい。

 

「それで先程の質問の答えだが、できる。だが心変わりの理由を聞こうか?」

 

「俺よりも、一方通行よりも上のやつがいる。一方通行を倒しても俺の欲しいものが手に入るか怪しくなったんだよ。俺はもっと強くなりてえ。だからテメェの実験に賭けたい。」

 

垣根は意外と柔軟な脳を持っているようだ。

 

「フッ、もちろん厳しい実験になる。心体共にな。付いてこれるなら実験への参加を認めよう。どうする?」

 

天井は右手を前に出した。

 

「ハッ。決まってる。やってやるよ。」

 

垣根は躊躇わずにその右手を握った。天井は続ける。

 

「よし!まずミサカ10032号を助けてくれ!話はそれからだ!」


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