もう一人の一方通行   作:yamada1600

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一方通行絶体絶命

婚后は10032号が倒れた場所に戻って、手がかりを探していた。

 

「さてと、御坂さんが捕らえられてしまったからには、このわたくしが妹さんを取り戻しますわ!あら、今助けてあげますわ子猫ちゃん!」

 

婚后は扇子を握りしめる。

 

そして御坂は、

 

「御坂さんはここにいらしてくださいね。」

 

「あまり先生方に迷惑をかけてはいけませんよ?」

 

(食蜂の派閥...。やっぱりあいつが関わってるわね。)

 

食蜂の派閥の生徒たちに囲まれていた。超能力者の御坂でもこの人数の能力者を相手に戦うのは難しい。そのうえ、この生徒たちは御坂に敵意があるわけではない。御坂が救護班の班員の胸ぐらを掴んだことで常磐台中学の教師に叱られ、この生徒たちはその教師に御坂を見張るように言われているのだ。怪我をさせるわけにもいかない。

 

(食蜂のこと、婚后さんが天井さんに伝えてくれているはずだわ。私も早くここを抜け出さないと。) 

 

その最大の障壁は

 

(御坂さん、私の念話の回線が繋がっている間はどこへも逃げられませんわよ。)

 

この念話能力者だ。この生徒も御坂に敵意はなく、教師の指示に従っているだけだ。

 

(....どうしようかしら。)

 

 

天井は一番患者が多く運ばれている病院に着いた。大覇星祭の会場の近くに大病院があったことで会場からの救急車は全てその病院に向かっているようだ。

 

(ここの院長なら話せば理解してくれるだろうな。ここに運ばれていると良いのだが。)

 

メールが来たよってミサカはミサカは

 

天井の、携帯電話が着信を知らせる。

 

「ん、メールか」

 

婚后からだ。

 

「女の子からのメール!イヤッホオオオオ!」

 

狂喜していた。

 

「ん、なんだと!心理掌握が絡んでいるのか!?と、なると妹さんを気絶させた理由がわかりませんわ、か。確かにその通りだ。御坂は動きを封じられたか...。一方通行にも送らねば。」

 

天井は当然心理掌握を知っている。超能力者、食蜂。能力名、心理掌握。彼女は人間の心を読む、操る、記憶の操作など、人間の脳を操作できる。気絶させることもできるかもしれない。

 

しかし、10032号を連れ去りたければ10032号を操って自分のところに来させればよい。救急車で運ばせる理由がわからない。

 

「まあ、妹達のことを世間に公表して御坂を嫌がらせようとしているのかもしれないが。いやいや、暗部でもない中学生が妹達の存在を知っているはずが....。」

 

 学園都市では非人道的な実験や違法な実験も行われれている。そういった実験は公表されることはない。それでも運悪くそうした実験を知ってしまう人もいる。

 

 彼らは消される。

 

 暗部というのはそれらの公表できない実験に関係する研究者やその実験を隠匿する仕事を持つ連中である。

 

 御坂と上条は妹達のことを知っているが、もしも、天井がこの二人を消すように上層部に要請すれば超能力者として有益な御坂は人質を取られ、無用な無能力者は消される。

 

 さらに、その暗部のなかには学生もいる。死体処理や命じられるままに戦う使い捨ての下っ端から、技術や能力の高さから重宝される者まで様々だが、ほとんどは使い捨てだ。口封じに、仕事が終わってすぐお亡くなりになることもある。

 

 もちろん使い捨ては自分が何の実験を手伝っているのかすら知らされない。暗部の学生のなかで自分が何をしているのか正確に把握しているのはほんの一部だ。

 

 つまりクローンの存在はは暗部でも知っている人間が少ない。食蜂がそれを知っているとすれば暗部に関係していることは間違いない。それも奥深くを知っている。

 

 天井はそんなことを考えていたが、また疑問が増えた。

 

「しかし食蜂が暗部だとしても、嫌がらせするために自分を犠牲にするわけないよな。」

 

attention please....why?どうしてこんな録音

 

天井の携帯が鳴る。

 

「もしもし、一方通行か。」

 

「わかってるとは思うが、その食蜂ってやつが関係してンのは間違いねェが、10032号を拐ったのは目的じゃねェ。手段だ。」

 

「だろうな。何が目的かはわかるか?」

 

「さァな、学園都市の不正を告発しようってバカな正義感は無さそうだ。後ろに誰か付いてンのかもな。とりあえず10032号が病院以外の場所に連れ去られた可能性もあンな。」

 

「そうだな。食蜂によって連れ去られたと決めるのもまだ早そうだ。今一番多くの救急車が運ばれた病院にいる。ここの院長に事情を説明してくる。まあ10032号はいないだろうがな。また何かあったら連絡する。」

 

天井は通話を終わらせようとするが一方通行が続ける。

 

「あァ。いや、待て。」

 

「なんだ?」

 

「常磐台中学の生徒と他の学校の学生が喧嘩してやがる。」

 

天井が焦って叫ぶ。

 

「おいおい、髪の色は!?」

 

「黒の長髪だ。それと扇子を持ってンな。なンだ?急に倒れやがったぞ。」

 

「倒れた!?その子が婚后だ!助けろ、一方通行!」

 

「あァ、相手は捕まえて吐かせる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、誰だ?もしかしてこの娘の彼氏かな。なら早くこいつを連れて病院に行った方がいいんじゃないかい?」

 

婚后は男の足下に倒れている。男と婚后を囲うように犬型ロボットが3体待機している。

 

「妹達っ言葉は知ってるかァ?」

 

「ああ、御坂美琴のお友だちか。ならきみにも聴きたいんだ。妹達はどこだい?」

 

すると婚后は倒れたまま男の足を掴んだ。

 

「早くお逃げなさい!この男のロボットは危険です!」

 

「うるさいなあ。」

 

男は婚后を蹴り飛ばす。

 

「うぐっ!」

 

「よォ。イイ趣味してンじゃねェか。」

 

《あの野郎....ッ!》

 

そう言って一方通行が男に近づこうとしたが、ロボットが婚后の背中を押さえつける。

 

「動くなよ。動いたら、バカでもわかるよな?」

 

「はァ?そいつが人質として機能するわけねェだろォが。」

 

《おいこら!》

 

一方通行は構わず近づこうとする。

 

「!?本気だぞ!まずはこいつの腕を折ってやる!」

 

『すンませンしたァァァ!』

 

第二人格がおもいっきり土下座をする。

 

『ははーっ。あなた様に従いまする。』

 

(何しやがンだ!)

 

《うるせェ。あいつは追い詰められたらネチネチしそうな顔してる。あの娘をこれ以上怪我させられねェだろォが!それに、あいつを見ろ。たぶん精神的に幼稚なタイプだ。うまくやれば10032号の誘拐についても全部べらべら話してくれるかもしれねェ。そンな感じがする!》

 

犬型ロボットが口から出した鋼鉄のムチで第二人格を叩く。肉の弾かれる音が公園に響き渡る。

 

『ぐあッ!痛ァッ!』

 

第二人格は背中を押さえてうずくまる。

 

「ハハッそうだ。それでいい。妹達はどこにいる?」

 

男は第二人格の頭を踏みつけながら勝ち誇っている。

 

『はっはい、えとトイレであります。これから案内いたしましょう!こちらです。』

 

 

「そうか。」

 

犬型ロボットは婚后を引きずりながら連れてきている。

 

《あの娘から離さねェと攻撃できねェな。後で潰してやるからなァ、一方通行が!》

 

『ところで、わたくしめにあなた様のお名前をお教えいただけないでしょうか?』

 

第二人格は少しずつ情報を抜き取ろうとする。

 

「馬場だ。」

 

『良きお名前にございますなァ。ところで妹達をどうしたいので?』

 

「連れてくるように依頼されてね。優秀だと頼られてしまって困るよ。」

 

『さすがでございます!』

 

《こいつかァッ!》

 

(待て、こいつが誘拐しやがったとするとどォしてまだ妹達を探してンだ。)

 

『では、何人必要なのでございましょう?』

 

「一人で十分だ。」

 

《あれ?》

 

(どォなってやがンだ?)

 

馬場は10032号の誘拐犯ではないようだ。

 

『そういえば妹達を拐ったとなれば超電磁砲、御坂美琴が怒ると思われますが...?』

 

「ふんっ、御坂美琴はすでに眠ってもらっているよ。競技中に、あるナノロボットを使ってね。競技が終わってしばらくしたら倒れて、今頃病院で寝ているだろう。超能力者なんてこんなものだ。これ以上は聞かない方が良い。怪我したくなければね。」

 

馬場は得意気に話す。

 

『すごいですね!』

 

《こ、こいつ。》

 

(オリジナルと間違えて10032号を気絶させたのか。)

 

「それで、お前は何者だ?」

 

『へ?』

 

「妹達のことを知っているやつが一般人なわけない。」

 

馬場もそう易々と第二人格の口車に乗りはしない。第二人格は焦った。馬場が一方通行の存在に気がつけば、婚后を人質にしながら逃げてしまうだろう。そうなれば第二人格も一方通行も手が出せない上に婚后がより危険になってしまう。

 

どうにかしてごまかすしかない。

 

『いえいえ、たまたま知っただ』

 

ビシッ

 

『がァァァァァ!』

 

第二人格の背中を先程の鞭が叩く。

 

『うが、ぎ。ぐがっ、あ。』

 

「ほら、早く喋りなよ。」

 

『ほ、本当に、何も、ぐがァァァァッ!』

 

白い体操服に赤い血が滲む。それでも鞭は止まらない。

 

(早く変わりやがれ!)

 

《ダメだ!あの娘を助けられる状況になるまでは代わらねェ!》

 

鋼鉄の鞭は止まらない。気を失いたくなるような激痛が何度も走る。このまま叩かれていれば本当に気を失ってしまうかもしれない。

 

しかし、その時

 

「婚后さん!」

 

女の子の叫び声と共に、水の塊がロボットをはね飛ばした。

 

《よし....,。今、だァ。ぶっ飛ば、せェ。》

 

(ハッ、やっとか。)

 

この好機を逃さぬように、第二人格はすぐに一方通行と交代した。

 

「くそっ何だ!?」

 

馬場は水が飛んできた方向、後ろを振り返り、一方通行に背を向けた。しかし、この瞬間を待ち望んでいたはずの一方通行はなぜか動かない。

 

「」

 

《おい?》

 

「」

 

《ねェ!気絶してンの?嘘だろ!?》

 


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