「豪華すぎねェか?」
見ただけでわかる高級な酒、思わずよだれが溢れる匂いの料理。それが妹達の分まで用意されている。一方通行はこれらの料理の値段を考えるが、個人でさらっと出せる額ではない。
「実験を隠蔽する費用として数億円貰っていたんだがなんとなく、使わない気がしないか?」
「完全に横領じゃねェか......。」
(そォ固いこと言うなァ。木原数多暗殺計画に比べれば余裕だろォ。)
「研究員とその家族、友人の宴会ってことにして出前も頼んだわ。」
そう言う芳川の顔はすでに赤い。
「出前に来たお兄さんが、きみ足速いね!って目を丸くしていたけど。」
「オマエ、まさか妹達に運ばせたのか!?」
ミサカ、人数が多すぎて番号はわからないが、が一方通行の肩を叩く。
「料理を運ぶくらい妹達にもできますよ。と、ミサカは胸を張ります。」
「.....ハッ、いやなンでもねェ。」
「その何もない胸を?ってミサカはミサカは尋ねてみる!」
(ちっちゃ!)
小さいのが出てきた。妹達は普通中学生程度の身体だがこの子は小学生程度だ。
「なンだこいつは?」
「打ち止めよ。どうせだから呼ぶことにしたわ。」
「そォじゃねェ。見た目も性格も他の奴と違う理由だ。」
他の妹達とは違い打ち止めはテンションが高い。妹達も少しは喜ぶことよ怒ることもあるがこれほど表情が変化しない。感情は実験の妨げになるからだ。
「Because 小さい方が扱いやすいからよ。その子の命令に妹達は絶対に服従するの。namely 妹達が反乱や暴走を起こさないようにするためのリモコンね。」
「あなたが一方通行?ってミサカはミサカは分かりきった質問をしてみる。」
「わかってンなら聞くな。」
「必ず実験成功させようねってミサカはミサカは意気込みを口に出してみる。」
布束が辛そうな表情をするが誰もそれに気がつかない。
「ハッ、実験が成功するってのはオマエらが死ぬってことだぞ?そこンとこわかってンのかァ?」
一方通行は一瞬驚いたが、すぐに呆れ、打ち止めを挑発するように言った。
「だってそれが妹達の存在理由だもん。ってミサカはミサカは当然の答えを返してみる。」
打ち止めは純粋に今言ったことを信じている。打ち止めの洗脳装置の調整は布束も関わっているからこそ、布束はそのことを誰よりも理解している。打ち止めも他の妹達も自分から実験の中止は絶対に求めない。
ほぼ不可能ではあるが、殺す者と殺される者が談笑しているのだ。そう考えると布束は気持ち悪くなった。しかし、そうではないことにも気がついた。
(Surely,始めは誰もが妹達を実験動物としか見ていなかった。however,今は違う?)
天井は妹達相手に恋愛の練習をしていた。この実験より前にも会ったことはあるが、今より楽しそうな顔は見たことがない。そして、今日は宴会に妹達を呼んだ。
芳川はあまり変化を感じさせないが、妹達のことを人として見ているような様子は以前からあった。妹達に制服を着せたのは彼女だ。
一方通行にしても今のセリフは気になる。挑発と言ってしまえば終わりだが、よく考えると驚き呆れるということは打ち止めの言葉が予想外だったということだ。はっきりとは言わないが妹達を人間として見始めているとも考えられる。
(Possibly,みんなこの実験を終わらせること、妹達を殺すことを迷っている?)
何かきっかけさえあればこの実験は終わるかもしれない。問題はその後だ。
不要になった妹達はどうなるのか。二万人もの人間だ。生活費はどうする?表に出せないのに幸せになれるのか?今のうちにおとなしく学園都市の上層部の要求に従えば生活費は大丈夫だろう。しかし、命の保証はない。それに樹形図の設立者が予想した絶対能力者実験より優先して行うこととは何か?
確かなのは木原数多という人間は信用ならないということだ。妹達を全員解剖なんてこともやりかねない研究者だ。
「私には何もできないのかしらね。」
「何ですか?と、ミサカは聞き返します。」
「独り言よ。」
宴会は夜遅くまで続いた。