あ、プロローグなので今話も短めです。
~渚side~
キーンコーンカーンコーン
「以上が銃の構造だ。む、チャイムがなったか。では今日はここまで、次回は実際に銃の分解・組み立てをおこなう。後、標的から連絡だ。『明日、進路相談を行うから漠然とでも良いから各自考えておくように』とのことだ」
地球を滅ぼす人に来年の相談って……
あの事件がウソのように次の日からいつも通りの授業が始まったのだが変化は少しある。
1つは
それによって、銃を扱うための授業と改めて射撃の訓練が増えた。
「それにしても遠山君大丈夫かな?」
「意識は昨日戻ったみたいだけどね。近いうちにお見舞いに行こうよ茅野」
もう一つはキンジ君が入院したのだ。
あの時上着を着ていて分からなかったけど、カッターシャツが真っ赤に染まるほど血が流れていて殺せんせーが
それでも数日は入院の為茅野とお見舞いに何を持っていくか話していると、こっちに律が近づいてきた。
「渚さん、今日は予定ありますか?」
「僕は何もないけど、どうしたの律?」
「武偵高のチャン・ウー先生が渚さんに用事があるとキンジさんに聞いたので。私も平賀さんに会うので一緒に行きませんか?」
ウー先生が?
いったいなんの用なんだろ?
「うん、わかった。僕も行くよ」
ウー先生には改めてお礼が言いたかったから、丁度よかったな。
茅野に別れを告げた後、律と一緒に校舎を出ると誰かを待つように神崎さんが入り口に立っていた。
「お待たせしました、有希子さん」
「ううん、そんなに待ってないよ律」
そういえばあの日から変わった事と言えば、律と神崎さんと速水さんが名前呼びになっていたんだよね。
詳しい事は知らないけど、律曰く女子会をやってもっと仲良くなったらしい。
「神崎さんも武偵高の人に呼ばれたの?」
「私は違うよ。どっちかというと自己アピールしに行く感じかな。何かある度にケガをする誰かさんが来年も心配だし」
そう言いながら苦笑する神崎さんの頬は少し赤みを帯びていた。
……うん、この姿は杉野には見せちゃいけないな。
主に本人の精神的ダメージとキンジ君の身が危ないから。
そんな軽い談笑を交えつつ、山を下りていると本校舎の方から見知った人物、田中君と高田君が真っすぐこちらへと歩いてきた。
「なあ高田、最近俺達の出番なくね?」
「そういえば、原作でも気づけばフェードアウトしてたよな」
メタい。
何か眼球な人が『序盤の悪役だから仕方ない』って言ってるような気がするぐらいにはメタい。
(まだこっちに気づいてないけど、絡まれたらちょっと大変そうだな)
そう思い僕は……
――気配を虫のように潜め
――2人の隙間を縫うようにすれ違う
「って、やべえ!塾の時間もうすぐだぞ」
「マジかよ高田⁉」
……うん、素人とプロの差もあるけど、あの時よりやりやすい。
2人が遠くへ行ったのを確認して気配を変えるのをやめる。
「あれ?渚君さっきどこにいたの?」
「有希子さん、渚さんならずっと隣にいましたよ」
「え?」
ああ、そうか。律は機械だから気配や波長なんて関係ないのか。
「会いたくない人がいたからちょっとね。それよりも早く武偵高に行こう」
ウー先生が教えてくれた技とコレはスゴイ便利だ。
だけど使うたびに痛感させられる。
僕の才能が活かせる路についてを。
僕は頭の中に浮かんだ職種を思考の隅に追いやり、改めて武偵校へと足を進めた。
武偵高について手続きを終えた僕たちはそうそうに別行動になった。
神崎さんは救護科の矢常呂 イリン先生の元へ。
律は装備科の平賀 文さんの所へ
そして僕は……
僕が真っすぐ向かったのは夏休みにも行った諜報科の訓練室。
ウー先生がここにいるなんて確証はなかったけど、なんとなく初めて会ったこの場所にいるんじゃないかと思ったのだ。
訓練室は放課後なのにも関わらず無人。
キンジ君曰く放課後にそれぞれ科の訓練室に人がいないのはまずありえない。
わざわざ人払いをさせてるのなら、僕のカンはどうやら当たってるみたいだ。
「ウー先生、お久しぶりです」
『フフッ、久シブリネ渚チャン。ヨク私ガココニ居ルノガ分カッタワネ?』
「ほとんど勘ですよ」
『勘ハ大事ヨ。時ニハ勘ニ命ヲ救ワレル事ダッテアルモノ。早速ダケド、ドレクライ成長シタカタメサシテ貰ウワヨ』
それから数時間は夏休みにも行った訓練をした。
どこの科の所属かは夏休み同様判らなかったけど、潜入・捕縛・拘引が主だ。
だけどもそれらは夏休みに比べ全て簡単に終わる。
――アンノウン
――猫だまし
そして『
それらを使えばなんてことなかった。
むしろ捕縛された子すらいつの間に捕まってたのかもわかってなかった。
「見違エタワネ。アレカラマダ数ヶ月シカタッテナイノニ成長トイウヨリ進化ネ、コレハ」
「ありがとうございます、ウー先生。ところで僕に用事って訓練の事だったんですか?」
「渚チャンノ実力ノ把握モダケド、本命ハコッチヨ」
そういうと僕の前にヒラヒラと一枚の紙が落ちてきた。
それを掴み、でかでかと書かれた文字を読んでみると
「推薦書?」
「ソウ、東京武偵高ノネ。ネエ渚チャン、来年カラ私ノ元デソノ技術ヲ鍛エテミナイ?アナタナラ、『Sランク』ヲ取レルワ」
僕が武偵高で……
僕の進すむ路……数少ない才能を生かせる路……
『渚、あなたは蛍大に入るべきなのよ』。
………………
「すいません、僕は……」
「アア、ゴメンナサイ。少シ焦ッテイタワ。今スグ返事ヲ頂戴ッテコトジャナイノ。タダ、コンナ選択肢モアルンダッテ思ッテモラエタラ嬉シイワ」
「……ありがとうございます。すいませんウー先生、もう遅いのでこれで失礼します」
「エエ、マタ遊ビニ来テチョウダイ」
ごめんなさい、ウー先生。
先生は選択肢としてと言ってくれても、僕にはそんな権利がないんです。
だって僕は
殺「え、先生の出番は⁉」
チ「ウフフ、今マデノ話ヲ思イ返シテミナサイ。ホボナイデショ?」
殺「またですか⁉またないんですか⁉そろそろあってもいいでしょ!原作みたいに!原作みたいに‼」