哿の暗殺教室   作:翠色の風

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すっごい悩んだ割にはあまり良くないできに……
もしかしたら書き直すかもしれません。




59弾 『強さ』の時間

凛香達からの理不尽な暴力を振るわれた後、皆が玄関に集まり昨日説教した奴らが次々と謝って来た。

1人1人対応するのもアレだった為2週間後に答えと一緒に聞くという形にし、皆に遅れて俺もここでの任務――賠償金に見合う労働を始めた。

 

 

「それで磯貝、俺は何をしたらいいんだ?」

「キンジは…………」

 

俺が帰ってくるまでにあらかた役割は決まっていたようで、茅野やカルマなどの子供ウケが良かった者は劇などで子供の相手を、頭が良いヤツは勉強を、それ以外には家のリフォームなどの力仕事や家事などに別れた。

当然俺は子供ウケが良くなく頭も良くないため、力仕事をすると思っていたんだが……

 

 

「なあ凛香、なんで料理が出来ない俺が料理班になっているんだ?」

 

何故か凛香、間宮と共に料理班になっていた。

 

「そんなのできるようになるためでしょ。私や神崎がいなかったらコンビニ弁当で済まそうとするじゃない。そろそろアンタも覚えなさいよ」

 

大鍋をかき回しながら凛香が即答してくるが、料理ができなくても今まで困った覚えはない。

今更必要には感じられないんだが……

 

「先月から食費がかなり増えてるわよ。このままじゃキンジの生活費だけじゃ足りないわ」

「凛香、なんで俺の家の食費を把握してんだよ!」

「作ってるのは私や神崎なんだし把握してないとまずいじゃない。夏休みに入る頃から律に家計簿を頼んでたの知らないの?」

 

おい!家計簿とか初耳だぞ!

知らぬ間に俺の財布事情は彼女らに監視されていたらしい。

それにしても律よ、家計簿つけているのならもう少し食べる量を減らしてくれ。

食費が倍以上に増えた原因は、味覚を知った律による暴食以外考えられないのだから……

 

「あの先輩、速水先輩達に作ってもらっているって……もしかして、そういう関係だったんですか?」

 

この場にいない律に対して懇願に近いものを願っていると、凛香と同様に大鍋で野菜や肉を煮込んでいた間宮が顔を真っ赤にさせつつそんな事を聞いてきた。

 

「そういう関係? よく分からんが俺と凛香はただの幼馴染だぞ」

「え?」

 

なんで間宮はそんな驚いた顔をするんだ?

 

「…………へぇ」

「り、凛香?」

 

説明はあってるはずなのに、何故か凛香がジト目こちらを睨みながら包丁の切っ先をこちらにむけてくる。

もしかしてパートナーって説明した方が良かったのか?

 

 

「渚はーやーく‼ あたしの事、東大に連れてってくれるんじゃなかったの?」

 

1人が惚け、もう1人に睨まれてる中、1つ隣の部屋、勉強組がいる場所から難癖をつける声が響いてきた。

 

「なあ凛香、あの聞く限り生意気そうな子は誰なんだ?」

「キンジが買い物に行った後、私達に暴力をふるおうとして床を抜いた子ね」

 

年上にケンカを売ってきたのか、なかなか尖ってるな……

イキが良さそうで俺は好ましいが、その後に腐った床を踏み抜いて自滅って……

 

「さくらちゃんですね、本当はとても優しい子なんですけど……」

 

どうやら勉強関連で渚に少しいちゃもんをつけているようだ。

作業が終わったのと2人が少し気になったため、3人で扉を少し開けて隙間から成り行きを見守ってみる。

 

「ね、ねぇ。さくらちゃんは、どうして学校に行かなくなったの?」

「あ?……イジメだよイジメ! 典型的で程度の低いヤツ!」

「イジメ……」

「なんで人間ってさ。ちょっと成長して力をつけたら、他人を傷つけんのに使うんだろーね」

 

今のE組にとっては耳に痛い話だな。

俺の下から覗く凛香も少ししかめっ面をしていた。

なんせ、ここで働く理由が力をつけて驕ったせいだからな。

隙間から見える渚も、案の定冷や汗を垂らしながらさくらだったか?小学生の女の子の話を聞いていた。

 

「どうせアンタも思ってんでしょ「逃げるな」って、「悔しかったら、自分も力をつけろ」って」

 

 

 

「『力』か……間宮の力がなかったら今頃は……」

「間宮?」

「先輩……『強い』って『力』ってなんなんですかね?」

 

さっきまでニコニコとしていた間宮の顔はどこか悲痛な顔になっていた。

それにしても強さの意味か……

 

「忍者のお姉ちゃん、猫ちゃんが~」

「猫ちゃんがどうしたのちーちゃん?」

 

間宮の問にどう答えるべきか考えていると一人の女の子が泣きながら台所へとやってきた。

間宮があやしながら詳しいことを聞くと、どうやら子猫が木に登って降りられなくなったらしい。

幸い昼飯のカレーはほぼ完成だった為、俺たちは現場の庭へと向かった。

 

「「「…………」」」

 

現場へついてすぐ俺とわかばパークの連中は空いた口が塞がらなかった。

なぜならそこでは棒倒しの時のように岡島を台にして木村が大ジャンプをやっていたのだから。

 

(こ……国家機密が⁉)

 

体育祭の時は烏間先生がいたため多少の無茶は大丈夫だろうと同じことをやったが、今回はいない。

しかも現状から見て、武偵で年上な俺が最高責任者になるのはバカな俺でも明白だ。

『何やってんだ!お前ら!』と他にバレないようにウインキングで言うと

『これがキンジが言っていた力の使い方だろ』と爽やかな顔で返してきた。

確かにそうだが、時と場合を考えてくれ!それの後始末や説教、全部俺にくるんだよ!

 

「あの先輩……体育祭の時も思ったんですけど先輩たちって……」

 

案の定、間宮がさっきの常人離れの行動に対して聞いてきた。

どうする……どうすればごまかせる……

ヒスってない為、頭の回転は劣るがきっと今までで一番頭を使ったと思う。

なんせ国家機密がバレるかま知れないこの状況、今後の俺の人生がかかってるのだ。

考えれば考えるほど胃の辺りが痛くなってくるが、それすらも耐えてこの場をごまかす理由を考える。

 

「俺たちは……」

「「「…………」」」

 

他の奴もこの現状が分ったのだろう、その場にいた全員が俺を見る。

――ゴクッっと誰かが生唾を飲む音が聞えた。

俺が用意した答え……それは

 

「実は武偵を目指して、裏山で色々練習してたんだ」

 

俺の一言に何人かはズザーーとコケてきた。

 

「おい!もう少しマシな言い訳があるだろ!」

「仕方ねえだろ!それしか思いつかなかったんだから‼」

「他にあったでしょ!例えば文化祭でやるサーカスのための練習とか」

「岡野‼ その理由は俺より酷くないか!?」

 

俺の言い訳にコケなかった寺坂や岡野など一部は俺に詰め寄って小声で抗議してくる。

わかばパークの連中を含めそれ以外はまだ口をあけてポカーンとしていた。

流石に高学歴な中学生が偏差値が低すぎると言っても過言でない高校を目指してるって言い訳は無理があったか。

 

「すげーー。俺そうじゃないかと思ってたんだ!」

「俺も俺も。武偵ってカッコイイよね」

「さっきのだって、まるで忍者のお姉ちゃんみたいだった!」

 

再び何人かコケた気がする。

まさか俺の苦しい言い訳が子供達には通じたらしく、岡島や木村など先ほど猫を助けたメンバーに駆け寄って、もう一度見せろとせがんでいた。

それを縁側で見ていると、同じく縁側で見ていた渚とさくらの会話を聞こえてくる。

どうやら渚も気づいているみたいだな。

 

「間宮さっきの強さの意味だが、他のヤツにも聞いてみろよ」

「え? は、はい。分かりました」

 

これが間宮の問の答えになるか分からないが、責任と使い方を知った今のアイツらに聞けば答えのヒントにはなるはずだ。

クラスの皆に説いた時もそうだが、教える立場ってのは相当に難しい。

言った後にこれで良かったのだろうかと、教える側なのについつい考えてしまう。

武偵高にいたら戦妹か戦弟ができる時がくるかもしれない。

俺が教えれる事なんてないと思うが、せめて教える側としての先輩の面子は保てるようにしとかないとな。

 

(今度、殺せんせーにでも聞いてみるか)

 

俺の言葉に律儀に従って聞きに行った間宮を見ながら俺はそんな事を考えた。

 

 

 

 

~ののかside~

 

さくらちゃんと渚先輩のやりとりを見て1年前の事を思い出してしまい、半場無意識的に遠山先輩に聞いてしまった。

間宮の力がなければ……死ぬ気で立ち向かったら、こんな辛い事を味わうこともなかったのに。

そんな思いで聞いた質問の答えは『他の先輩にも聞いてみる』事だった。

何か決意したお姉ちゃんと一緒で武偵を目指している先輩たちに聞いたら、私の答えも見つかるかな?

私は遠山先輩に言われた通り、先輩たち1人1人に聞いてみた。

 

「先輩が思う力ってなんですか?」

 

私が急に聞いても先輩たちは嫌な顔ひとつせずに答えてもらえた。

けどその答えは私が思っていた以上に様々なもので、それこそ『諦めない心』などの私が納得できるものから、『ねじふせれる力』などの嫌悪するものまでホントにいろいろだった。

けどその後に聞いた「じゃあ強さってなんですか?」だと、何人かの先輩には質問がほぼ一緒だと笑われたが答えは力の時とは違うものだった。

 

「僕は力を最初は自分の為だと思ってたんだけど、他人の為にも使えるって思い出したんだ。キンジ君が伝えたかった『強さ』ってそんな力を誰かのために使える人なんじゃないかな」

 

遠回しに言ったりする人もいたけど、聞いた人全員の答えの意味は同じだった。

それを聞いて私は昔お母さんに言われた言葉を思い出す。

 

『間宮の技は全てが必殺の秘術。今はただ親から子に伝えてるだけだけど、いつ戦時がくるかはわからないわ。そういう時代が来たら人々を守るために戦ってね』

 

先輩たちの話を聞いた今ならあの時のお母さんたちの選択が分かる。

あの時立ち向かわずに皆が逃げた理由、それは1人でも多くの人を守れるためになんだろう。

お姉ちゃんも武偵になったのはきっとお母さんの言葉を覚えていたからなはず。

思い出せた今、私も……

そこまで答えが出たところで今まで縁側で座っていた遠山先輩が声をかけてきいた。

 

「答えはでたか?」

「先輩……はい!」

「じゃあ、昼飯にしよーぜ。子供達が腹減ったってうるさいしな」

 

気づけば時刻は昼過ぎになっており、私は先に平屋に入った先輩を追いかけるように中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初日がかなり濃い日になったせいなのか、先輩たちがいる2週間はあっという間にすぎてしまった。

今日は先輩たちがいる最終日で私の保護者でもある松方のおじいちゃんの退院日でもある。

それにしてもおじいちゃん、午前中に帰るって電話してたのに遅いな……

 

「なんということでしょう‼」

 

そんな大声が外から聞こえた。どう聞いてもおじいちゃんの声である。

玄関から外に出ると、おじいちゃんはあんぐりと口を開けて立っていた。

 

「おかえりなさい、おじいちゃん」

「あ、ああ。ののか、わしは夢でも見てるのか? 2週間でわしのわかばパークが……」

 

わかる、わかるよおじいちゃん。だって今のワカバパーク2週間前と全然違うもん……

元は木造平屋だったのに今では二階建てのログハウス、まるでTVの某リフォーム番組を体験してるみたいです。

建ててるところを梅野さんと一緒に見てたけど、まるで先輩たちは鳶職人のような動きで作り上げていた。

武偵って皆あんな動けないとなれないのかな?

だとしたら、ちょっとお姉ちゃんが心配かも……大丈夫だよね?

 

動かなくなったおじいちゃんを連れて、中に入っていく。

実は私もログハウスの中に入るのは初めてでどんな風になっているのか全く知らない。

 

「2階の部屋は2部屋に分かれ、1つは図書館。子供達が勉強や読書に集中できます」

 

律先輩の番組のナレーター風な紹介を聞きながら、広い図書館を見て回る。

 

「こんな大量の本どうしたんですか?」

「ご近所さんから読まなくなった本をもらったの」

 

矢田先輩の話を聞きながら、本のラインナップを見てみると『グ〇と〇ラ』などの絵本から『〇ルト〇クエスト』などの小学生向けの本、それに私が使えそうな参考書の類まであった。

何をどう交渉すればこんなにもらえるのだろう?

 

「次は隣の部屋だ」

 

そう言われ隣の部屋に入るとそこは遊戯室だった。

 

「入念に敷いたネットやマットで安全性を確保。雨に濡れない室内なので、腐食や錆で脆くなりません」

 

最近、平屋の方が静かだなって思ってたけど、皆ここで遊んでたんだ。

回転遊具やアスレチックで遊ぶ子供達、きっとしばらくはここ以外では遊ばないんじゃないかな?

 

「あの回転遊具を覚えときな」

 

吉田先輩がそう言うと最後に1階の職員室兼ガレージに案内された。

そこにはおじいちゃんの自転車が電動アシスト3輪自転車に変わっていて、そこからコードが延びて充電されていた。

さっき回転遊具を覚えとけって言われたけど、まさか……

 

「上の回転遊具が充電器と繋がっています。計算では走行分の大半は遊具でまかなえます」

「「上手く出来すぎです(とる)!」」

「先輩たち、ホントに中学生ですか⁉」

「手際がよすぎて、逆にちょっと気持ち悪いわい!」

 

思わずツッコんだ私とおじいちゃんはおかしくないと思う。

大人の人でもここまで出来る人なんて少ないんじゃないかな。

 

「……貴様らの建築がすごいのは認めてやるが、ここでの最も重要なのは子供たちと心を通わせる事だ。いくら物を充実させても、子供達と心を通わせられなければ、この2週間を認めんぞ」

 

一回大きく息を吐いてそうおじいちゃんは言うけど、そこだけは私は一切心配してない。

 

「それなら大丈夫だよ。おじいちゃん」

 

私がそう言うとちょうど良くさくらちゃんが学校から帰ってきた。

 

「おーい!渚ーー! 見て、なんとクラスで2番!」

「おーすごい頑張ったね」

「おまえの言う通りやったよ」

 

さくらちゃんは渚先輩に言われた通りテストの時間だけ不意打ちで行ってきて、その作戦が上手くいったみたいだね。

 

「今回は算数しか教えられなかったけど、一番得意な一撃で相手の体制が整う前に叩き込む。コレがE組の戦い方だよ」

「だ、だったら渚。これからもたまには教えろよな」

「もちろん‼」

 

さくらちゃんの顔は真っ赤になっており、どう見てもおじいちゃんの心配は杞憂なものだった。

 

「ね。だから大丈夫っていったでしょ、おじいちゃん。それに私も先輩たちからいろいろ学べたよ」

「…………文句の1つも言えんわ。お前らもさっさと戻らんか。大事な仕事があるんだろう?」

「「「はい!」」」

 

こうして先輩たちのワカバパークでの仕事は終った。

 

皆さんが帰る準備をしているのを見ていると、もう準備が終わってるのか縁側ですわる遠山先輩を見つけた。

 

「先輩、2週間ありがとうございました」

「間宮か、俺達がケガさせたのが理由だし礼なんていらねーぞ」

「それでもこんな立派な家を建ててもらいましたし……それに私がずっと悩んでたことも先輩が解決してくれました」

「それこそ俺は何もしてない。間宮が自分で見つけたんだろ?」

「でもきっかけは先輩の言葉なんです。ですから……」

「……間宮に過去なにかあったか分からないし、聞こうとも思わない。お礼なら間宮が手伝ってほしい時や助けてほしい時は俺達を呼べ、依頼として手伝ってやるから」

 

この2週間で分かってたけど、この人はとんだお人よしらしい。

速水先輩などの一部の女の人以外とはできるだけ避けてるのが見て分かってたけど、それでも困ってたら手を差し伸べてくれる。

そんな不器用で優しい先輩が可愛らしく見え、私は思わず笑ってしまった。

 

「依頼って、まるで武偵ですね」

「ッ⁉ ま、まあ武偵を目指してるし、形からでもそれっぽくな」

「そうですか、なら困ったときはE組の皆さんに依頼させてもらいますね」

「ああ」

 

そんなやり取りをやっているうちに別れの時間はやってきて、先輩たちはわかばパークを去っていった。

一気に29人もいなくなって、今まで以上に広くなったわかばパークに寂しさを感じていると「何これ⁉」と外から慣れ親しんだ声が聞こえてきた。

仕方ないとはいえ、今日はよく外から大声が聞こえてくるなと思いながら外に出るとそこには私のお姉ちゃん、間宮あかりがログハウスを見て立ち止まっていた。

 

「お姉ちゃんおかえりなさい。帰ってくるなら連絡してよ、どうしたの今日は?」

「おじいちゃんが骨折したって聞いたから、様子を見に戻ってきたんだよ。それよりもわかばパークが……」

「そんな事よりお姉ちゃん『鳶穿』の改変、まだ未完成って言ってたよね?私も手伝うから週一でここに来れないかな?」

「え?それは大丈夫だけど、どうしたの急に?」

「お母さんの言葉を思い出して、ちょっとね」

 

お母さんと言いながら、私は先ほど帰った先輩を思い浮かべる。

そういえば、昔本家のおばあちゃんに聞いたことがあったっけ?

私達間宮一族の先祖はある人物に使えていて、その人物の名前は『遠山景晋』あの遠山の金さんの父親らしい。

そして先輩の苗字も『遠山』、先輩と私はかつての主従と同じ名なのだ。

たまたまだと思うけど、少し運命的なモノも感じる。

そんなかつての主と同じ名の先輩にいつか私の答えの結果を見せたいな。




次話からとうとう死神編です。

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