哿の暗殺教室   作:翠色の風

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2学期が始まったと言うことで今回はプロローグ的な感じで短めの文章です。


42弾 始業の時間

とうとう夏休みが終わってしまった。

 

「はぁ、わざわざ始業式出るなんてめんどくさいな」

「何言ってんのキンジ、普通出るもんでしょ?」

 

今まで通り一緒に登校している凛香が呆れたような目で見てくる。

 

「武偵高は始業式は出欠取らねーからサボれんだよ」

「ホント武偵高って適当ね……」

 

凛香当たり前だろ、武偵高なんて学業は二の次な学校なんだぞ。

 

「そう言えば凛香、親に武偵高に進学する事言ったのか?」

「あー、うん。言ったけど、『わざわざ物騒なとこ行くな』ってケンカした」

 

その時の状況を思い出したのだろう凛香の顔が青くなっていく。

俺も幼い時に何回か会っているが、あの人が怒ったら父さん並に怖かったのを今でも覚えている。

 

「なんで速水さんは真っ青な顔をしているのですか?」

「凛香の母さん、めちゃくちゃ強いからな。たぶん俺でも、ああなる」

「烏間先生の訓練を受けてるのにですか? そこらの素人には負ける要素がないと思いますが」

「そこらの素人じゃないんだよ、凛香の母さんは」

 

昔父さんから聞いたが凛香の母さんと俺の母さんは元公安4課に所属していたらしく、そこで『鬼百合』と他の課からも恐れられるほどの人物だったらしい。

その事を律に説明すると

 

「速水さんの家系も逸般人だったんですね」

「ちょっと律! キンジと一緒にはするな!」

「俺は普通だ! それに遠山家の奥義ホイホイ使っているお前にだけは言われたくねーぞ」

「うるさい!」

 

――――ゴスッッ‼

 

もはや奥義と言えないほど使われている秋水によって、いつも通り俺は吹っ飛ぶ。

良かった、今日は塀に向かって飛ばなかった……

吹っ飛んだ先には学校近くで合流する予定だった有希子がおり、心配そうな顔で俺を覗き込んでいた。

 

「えーと、キンジ君大丈夫?」

「有希子か……大丈夫だ。今日は塀に突っ込まなかったから、謝りに行かなくて済んだし」

「そこなんだ心配するとこ……」

 

有希子はアハハと苦笑いを浮かべる。

悲しきかな、椚ヶ丘に来てから秋水を食らいすぎたせいで耐久力が増してアレぐらいだと平気になってきたんだよ……

有希子とも合流できた俺達は始業式のため、いつもの旧校舎ではなく本校舎にある体育館に向かう。

 

「おはよう、キンジ君服が汚れているけどどうしたの?」

「おはよう、渚……いつものアレだ」

「……キンジ君も大変だね」

 

いつものアレで通じる事がさらに悲しくなってくる。

 

渚達に挨拶をして俺たちも並ぼうとすると一度見たら忘れそうにないような顔の奴らがこちらに来た。

 

「久しぶりだなE組ども、お前ら2学期も大変だと思うがよ」

「メゲズにやってくれ。ギシシシ」

 

ニヤニヤ嫌味を言ってくるが誰だコイツら?

本校舎組なのは確かなんだが……

 

「なぁ、前原。コイツら誰なんだ?」

 

その俺の一言でニヤニヤしていたヤツも含めて全員が固まった。

 

「ちょ、キンジ⁉ 5英傑知らなかったのか? 期末で点数争っただろ!」

 

あ、こいつらが5英傑なのか。

 

「5英傑って言葉は知ってたが、コイツらが5英傑なのは今初めて知った」

 

その言葉がマズかったのだろう、5英傑の内3人は怒りで震えているのが分かった。

こんなことで怒ってたら世話ないぞ、ツーブロックのヤツを見習えよ。

そう思い、ツーブロックのヤツを見るとソイツは何故か有希子に絡んでいた。

 

「君、あの時は答えを聞けなかったけど改めて小間使いとしてうちに来ないかい?」

「ごめんなさい」

 

そう言うなり有希子は俺の横に来てこう言った。

 

「もう決めている人がいるんです」

 

有希子、俺を盾にして言うな。

せめて何を決めたか知らんがその決めた人のとこ行って言ってくれ。

ほら、俺の所に来たせいでツーブロックのヤツまで俺を睨んでくるし。

 

「……お前、名前は?」

「遠山金次だが何か用か?」

「遠山キンジ、覚えてろよ。この恥倍にして返すからな!」

 

そう捨て台詞を吐いて5英傑はA組の列に行ってしまった。

『覚えてろよ』って親愛の言葉だろ。使う場所間違えてねーか?

あと杉野なんで俺を睨む、お前には何もしてないだろ。

 

皆が言うに縁起の良くない『出5』から始まった俺達だったが、始業式は滞りなく終わろうとしていた。

 

『式の終わりに皆さんにお知らせがあります。今日から3-Aに仲間が1人加わります』

 

もう式が終わり帰れると思った矢先に放送部がそんな事を言い始めた。

A組に増えても俺たちに関係ないだろ、さっさと帰らせろよ。

俺はここまで聞いて早々に興味を無くしてしまう、そう次の言葉を聞くまでは……

 

『昨日まで彼はE組にいました』

 

後ろのほうにいた俺は素早く誰がいないか確認する。確かに1人いなかった。

 

『しかしたゆまぬ努力の末に好成績を取り、本校舎復帰が許可されました』

 

なんでだ、今まで一緒に学んだ仲間だったろう。

 

『では彼に喜びの言葉を聞いてみましょう』

 

いったいどうゆうことなんだ、

 

『竹林幸太郎君です』

 

竹林!




今回ちょっとだけ速水さんについて設定を少し公開というか追加されました。

強かった母親側は誰かの子孫なのですが嫁いだことで『速水』になっています。
旧姓は竹林編が終わった後にやるオリジナル回で出ます。
ある意味でキンジの先祖の遠山金四郎と似てるかな?


補足ですが公安4課は異能のシークレットエージェントです。

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