哿の暗殺教室   作:翠色の風

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30弾 始動の時間

東京から船で6時間、俺達は目的地である普久間島に着いた。

 

「ようこそ、普久間島リゾートホテルへ。サービスのトロピカルジュースです」

 

ホテルのサービスマンと思わしき人物からジュースを貰う。

ちょうどノドが乾いていたところだったため、飲もうとしたら

 

「お、キンジ良いもんあんじゃねーか。もらうぞ」

 

と寺坂に取られてしまった。

 

「寺坂、サービスだから自分で貰いにいけよ、俺だって飲みたかったんだぞ!」

「サービスなんだし良いじゃねーか、カタイこと言うなよ」

 

寺坂に全部飲まれてしまった為、もう一度もらおうとサービスマンを探すがすでにホテル内に戻ったようでいなかった。

仕方なくトロピカルジュースを諦め、作戦通りに修学旅行の班に別れて行動する。

日が出ている時間の作戦は1つの班が殺せんせーを陽動、残りの班で暗殺の準備をするという内容だ。

俺達の班はトドメの射撃をする2人のスポット選びと小屋の支柱を短くする作業になっている。

 

「不破、殺せんせーは?」

「今は3班と海底洞窟巡りをしているところね。こっちの動きは絶対に見えないはずよキンジ君」

「なら探すなら今だな」

「私とキンジで本命の場所を探すから、千葉はダミーの場所をお願い」

「了解、中村たちも支柱頼んだぞ」

 

俺と凛香、千葉の2手に別れ射撃スポットを探し始める。

 

「あの3人、シブかったな……」

「遠山は武偵だからまだ納得できる部分あるけど、はやみんと千葉君はもはや仕事人の風格だったわ」

 

そんな会話が遠くから聞こえてくる。

暗殺まで時間がないのだから中村たちもさっさと準備をしてほしいものだ。

 

 

 

他のメンバーと別れ、凛香と共に本命のスポットを探すため移動していると

 

「それにしてもキンジ、アンタどこに行ってもその服ね」

 

暇つぶしのためか、凛香が俺の服について指摘してくる。

今俺が来ているのは、私服になりかけている武偵高の防弾制服だ。

 

「着慣れているし防弾しようだからコレが一番なんだよ。それにコレ以外に持ってきているのは部屋着ぐらいだしな」

「……少しはオシャレぐらいしなさいよ」

「恰好を気にするぐらいなら、その金で弾を買うな」

「はぁ……」

 

なんでため息をつく、見た目を気にするなんて武偵高だったら女子ぐらいだぞ。

それに俺も私服ぐらいは持ってる、ユ〇クロとかの服ぐらいだが。

そんな雑談をしていると目的地である浜辺に着いた、ここから海に潜り射撃場所を探すのだ。

 

「取りあえずその話はいったん置いといて、さっさと場所を決めるぞ」

「そうね」

 

そういうと凛香は何を考えているのかその場で服を脱ぎ始めた。

凛香の胸辺りで白いものが一瞬見えてしまったため、俺は慌てて後ろを向く。

 

(血流は⁉)

 

どうやらハッキリとは見えてなかったためなのか、血流は問題なかった。

 

「お前バカか? なんでここで脱ぐんだよ!」

「中に水着を着てるから見られても大丈夫だからよ、当たり前じゃない」

 

水着?

恐る恐る振り返ると、凛香が身に纏ってたのは白いビキニだった。

 

「紛らわしいな……驚かすなよ、凛香」

「勝手にキンジが騒いだだけでしょ」

「……」

 

確かに俺が勘違いして騒いだだけだった。

だが弁解させてほしい、水着が下着と同じ形をしているのが悪いんだ。

世の中からビキニみたいに危ないものが無くならないだろうか……

 

「バカな事考えてないでさっさと行くわよ」

 

そう言うなり凛香は先に海に入った、後を追うため慌てて俺も中に着ていた水着だけになり海に入る。

凛香と話し合って射撃場所を暗殺場所である小屋の入り口とは反対方向で距離を目標から15mに決め、その後他のメンバーの作業を手伝い夕方ごろにはほぼ全ての準備が終わった。

準備を終えホテルに戻った俺達がまず目にしたのは日焼けした殺せんせーだ。

いや日焼けと言うには黒すぎる、姿形も相まってもはやただのシルエットだった。

 

「いやー満喫しました。おかげで黒く日焼けしちゃいましたね」

『黒すぎだろ!』

「もう真っ黒すぎてどっちが前なのかすら分からんぞ」

「ややこしいからどうにかしてよ!」

 

クラスの皆は口々に黒いのをどうにかしろと言っている。

 

「皆さんお忘れですか? 先生には脱皮があるんですよ」

 

そういうなり殺せんせーが黒い皮を脱ぎ捨てた。

ん? 確か脱皮の特徴は……

 

「なぁ殺せんせー、脱皮って月1回じゃないのか?」

「その通りですキンジ君。本来はヤバイときの奥の手なんですが……アッ‼」

 

この後に暗殺があるのに何やってんだ……

 

「どうしてこんなドジ踏むのにまだ殺せないんだろ?」

「渚、考えない方がいいぜ、取りあえず夕食を食べに船に行くぞ」

 

渚や杉野たちが船上レストランに向かった為、俺達も殺せんせーを連れ夕食に向かった。

 

 

 

 

 

俺達は船上レストランで夕食を食べた後、船で酔わせた先生を連れて宿泊ホテルの離れに位置する水上パーティールームに来た。

ここで殺せんせーの暗殺を仕掛けるのだ。

パーティールームには精神攻撃担当の岡島と三村がすでに()()()()を用意してる。

 

「殺せんせー、まず三村が編集した動画を見てもらった後に触手を破壊する権利を持っている人たちで破壊。 それを合図に一斉に暗殺開始。 それでいいですね殺せんせー?」

 

磯貝が簡単に大筋を説明し、殺せんせーもそれを了承。口では嘗めているような言い草だったが顔は縞模様にならず目線を小屋のあちこちに移動させていた。

 

「殺せんせー、まずはボディチェックを」

 

渚が殺せんせーの体を触り、何か持ってないかチェックをする。

俺は見たことがないが殺せんせーはマッハのスピードにも耐えれる水着を持っているらしい。

どうやら殺せんせーは何も持って無いようだ。

 

「じゃあ、まずは映画鑑賞からだな」

 

岡島の一言で皆は所定の位置に着き、暗殺計画が始まった。

この映像には殺せんせーが死にたくなるような映像が詰め込まれている。

これでまずは精神的に殺せんせーを殺すのだ。

映画の上映が始まると、触手を破壊する権利を持つ7人以外が入り口付近で出入りを繰り返しつつ次の手の準備を進める。

俺も同様に小屋から出て、携帯を取り出す。

 

「タコが罠にかかるまで後1時間作戦を始めてくれ」

『了解、これよりウツボ(私と千葉)は獲物を待ち伏せるわ』

 

2人に作戦が始まった事を伝え、次の行動に移る。

 

「片岡、水鳥(フライボード)の準備は?」

「大丈夫、全員位置に着いたわ」

「渚、消防(特大ホース)は?」

「ここにあるよ茅野」

「イルカさん達、私の合図で飛び跳ねてね」

「「キューキュー」」

 

イルカと会話できる倉橋にツッコみたいところもあるが隠語で確認しつつ準備を着々と進めていく。

 

「キンジさん動画終了まであと10分を切りました」

「分かった、律。お前も位置についてくれ」

「了解です」

 

律も海に沈み、これで外の布陣は完成した。

 

「作戦通りに罠が作動後水鳥(フライボード班)がオリを、消防士(ホース班)がその周りを固めてくれ」

『了解』

 

作戦の最終確認を終え、俺は小屋の中に戻る。

小屋に戻るとちょうど映像は終わったようで

 

「死んだ……あんなもの知られたなんて先生もう無理です……」

 

と殺せんせーはすでに精神的に死にかけている。

 

『秘蔵映像にお付き合い頂いたが、殺せんせー何かに気づかないでしょうか?』

「⁉」

 

小屋の支柱を短くした為、床まできた満潮によって触手は海水を吸って膨らんでいた。

 

「さあ約束だ、避けんなよ」

 

寺坂の言葉と共に7人の触手の破壊が始まった。

それと同時に俺と弾幕班で張りぼての壁を押して小屋を倒壊。

さあ、覚悟しろよ殺せんせーここからが本番だからな。

 

「ッ‼ フライボードでオリを⁉」

 

小屋の倒壊と同時に殺せんせーが逃げれないようにフライボードで水の檻を形成。

これで殺せんせーには、触手の破壊以外に船酔い・精神攻撃・海水・急激な環境変化を与えたことになり反応速度はかなり落ちているはず。

 

「射撃を開始します。 照準は殺せんせーの周囲1m」

「全員弾幕形成だ!」

 

律の浮上を合図に一斉射撃の弾幕で殺せんせーの逃げ道をさらに塞ぐ。

後は俺の仕事()とトドメのみだ。

できるならやりたくないがこれも成功率を上げるため……覚悟を決めよう。

俺は皆より1歩前に出て殺せんせーに銃口を向ける。

 

「さ、さぁ殺せんせー、覚悟はいいかい?」

 

殺せんせーが俺の事を最も警戒しているのは皆が知っていることだ。

決闘の時と同様にヒステリアモードになったら囮は完璧だったのだが、それは自発的にやりたくない。

その為苦肉の策として、より暗殺の成功率を上げるためノーマルモードの俺が出来たのは()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()

 

「キンジ君もやはりトドメに参加ですか……」

「ああそうさ、俺の撃った弾がアンタに避けられるかな?」

 

し、死にたい。

キザな言い回しをクラスの奴らにガッツリ見られているのだ。

銃口を思わず自分に向けたくなってくるぜ……

俺と殺せんせーは、どちらも相手の行動を見逃さないよう瞬きすらせずに対峙する。

 

(凛香と千葉はまだなのか?)

 

まだ対峙して1分もたっていないと思うが、俺にはそれ以上に感じてしまい手にはじっとりと汗が出始める。

 

(これ以上動きを止めるのは無理だぞ)

 

パパァン

 

「‼」

 

エアガンの発砲音が聞こえるも逃げ道を塞がれた上、俺に集中していた殺せんせー反応が遅れたようで焦った顔で振り向く。

 

「殺ったか⁉」

 

その瞬間、俺は閃光と爆風に巻き込まれ海に叩きつけられた。


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