哿の暗殺教室   作:翠色の風

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今回は少しハイペースに物語は進みます


26弾 期末の時間

俺の部屋での騒動の次の日、学校でまず聞いたのはA組とテストの点数での勝負だった。

 

「5教科でのトップ争いか……どう考えても裏がありそうに思えるんだが」

「いやいやキンジ、俺達にこれ以上失うものなんてないぞ?」

「そうだよ。それに勝ったら何でも1つ良いんでしょ?何がいいかなぁ」

 

岡島、倉橋が楽観的な事を言っており、他の皆も勝った時の報酬を何にするかで盛り上がっている。

この教室でやっていることが国家機密ということを覚えてるのか?

今言えばせっかくテストに向けて上がっている士気を下げてしまう。

さらに余計なプレッシャーなどで勝負の勝率が下がりそうなため、その事を口に出すのを俺は控えた。

 

「カルマ君!総合トップを狙えるのですから真面目に勉強をやりなさい!」

 

後ろから殺せんせーが叱る声が聞こえた為、怒られているカルマの席を見てみる。

カルマは誰がどう見てもやる気がないように見える。

 

「言われなくてもちゃんと取れるよ。殺せんせー最近フツーの教師みたいに「トップを取れ」ばっか言って、正直安っぽくてつまらないよ」

 

そう言うとカルマはそのまま教室を出て行った。

明らかにカルマは油断しているな。

ある程度勉強していなくても俺よりは点数が取れるとは思うが、トップを取れそうには見えない。

今回の賭けに関しては戦力外だと考えていいだろう。

 

「……はぁ。 そうだ皆さん、賭けの戦利品ですがこれなんてどうですか?」

 

殺せんせーはこの学校のパンフを見せながら、戦利品の提案をしてきた。

こんなのがあったのか、確かにコレは戦利品として良いかもな。

 

「君たちにはバチバチのトップ争いを経験してほしいのです。 報酬も十分そろいました。なら後は暗殺者らしく狙ってトップを()るだけです」

 

この言葉で俺を含め教室にいた皆のテストへのやる気がさらに上がり、期末当日ギリギリまで勉強に明け暮れる日々が続いた。

 

 

 

 

試験当日

いつもより少し早く家を出た俺と凛香は、最終確認として道中も律に問題を出してもらいながら登校する。

 

「そういえば律、最近家で見ないけど何やってたんだ?」

「最近ですか? 烏間先生が理事長と交渉した結果、私の期末テストの参加が認められないかわりに代役の人がテストすることになったんです。 なので最近は夜にその人とネット授業をしていました」

 

……烏間先生が理事長に哀れみの目で見られているのが想像できるな。

 

「烏間先生、相変わらず大変そうね……」

「凛香、また烏間先生にハンバーガーとか買ってあげようぜ……」

「うん」

 

心の中で烏間先生に頭を下げつつ、テスト会場となる教室に着く。

誰か分からないが先に来ているようだ。

そこには律に似せようと頑張った結果、全く似ていない誰かがいた。

いや、マジで誰だよ!

 

「律、あの人がお前の代役なのか?」

「はい! 仁瀬さん頑張ってくださいね」

「律さん、私がんばるダス!」

 

律が言うには再現度120%らしい。

100%を超えたら、それは再現じゃないだろ。

俺はいろいろとツッコミたいところをギリギリ抑え、自分の席で始まるまで暗記などの時間に費やした。

 

「そろそろ始まりますので私は本体のほうに戻りますね。キンジさん、答えの見直しを忘れないよう注意ですよ」

「ああ、わかったよ」

 

間も無くテストが始まるため、律が携帯から消えた。

 

(それにしてもこの緊張ぐあい……立てこもりの制圧とかをしている時の方がよっぽどリラックスしているな)

 

先ほどから心臓の音がドクンドクンとうるさく感じるほど鳴っている。

答案用紙がとうとう回ってきた。

 

キーンコーンカーンコーン

 

俺にとっての最難関の戦いのゴングが鳴った。

 

 

 

 

英語

 

(ホントにこれ中学生の問題なのか? 見直しする時間とか全くないぞ、最後の問題まで間に合うか?)

 

理科

 

(やっぱりところどころ覚えてないところがあるな。記憶定着術の猾経(カッコウ)を使えば楽なんだが、アレはご先祖が言うには日本では永久に禁止らしいしな。自分の実力でやれる限りやろう)

 

社会

 

(これは他の教科よりできそうだ。ん? 『アフリカの首相の会談数を答えよ』……分かるか!)

 

国語

(お、結構手ごたえを感じる……漢文以外)

 

数学

(……)

 

家庭科なども含めた全教科が2日間に渡り行われ、俺は全教科のテストが終わった頃には死体のように机に突っ伏していた。

 

 

 

 

 

テストから3日後、全教科の採点が終わり答案が返却される。

この学校では答案用紙と共に学年順位が書かれた紙も渡されるらしい。

 

「では、英語から……E組1位そして学年も1位中村莉桜!」

『おおおおお!』

 

よし、まずは1勝と触手1本だな。

 

「次に国語です。 E組1位は神崎有希子! しかし学年1位は浅野学秀!」

 

浅野? もしかして理事長の息子なのか?

 

「5英傑って言われているけど、結局は浅野を倒せなきゃ学年トップは取れねーんだな」

 

前原の言葉で、5英傑と呼ばれている奴らの顔も名前も知らない事に気づく。

別に知らなくても問題がないし、さっさと発表してくれ。

 

「では続けて社会1位、磯貝悠馬! 学年1位は……」

 

溜めないでくれ殺せんせー、さっきから発表の仕方が心臓に悪いんだよ。

 

「おめでとう!浅野君を抑えて学年も1位です」

 

これで2勝1敗あと1つで取りあえずA組には勝てるな。

 

「理科のE組1位は奥田愛美、素晴らしい! 学年1位も奥田愛美‼」

『うおおおおおお!』

 

今日1番の歓声が教室に響きわたる。

 

「3勝1敗!数学を待たずしてE組が勝った!」

「よし!仕事したな奥田!」

「触手1本お前のモンだぜ!」

 

皆は口々に奥田を褒め称えている。

その後数学を返されるがカルマだけ浮かないか顔をして教室を出て行った。

やはりダメだったのだろう、フォローするべきかと思ったが殺せんせーがいないことに気づく。

 

(まあ、殺せんせーがなんとかするだろう)

 

そう思った俺は改めて返却された5教科の点数を確認する。

 

(英語68点、国語70点、数学65点、理科68点、社会70点で総合学年順位は93位か……)

「思ったより悪くないな」

「何言ってるのよ、どの教科も70点以下しか取ってないくせに」

 

俺の点数と順位を後ろから見た凛香にダメ出しされる。

 

「凛香、これでもここに来た直後と比べたらかなり上がったんだぞ」

「それでもアンタ高校生でしょ?」

「ウグッ、そ、そういう凛香はどうなんだよ」

「はいこれ」

 

少しでも反撃しようと、凛香の点数と順位を聞くと答案を渡された。

 

「英語79点、国語84点、数学77点、理科75点、社会85点……」

「あと総合での順位は44位よ」

 

全てにおいて完敗だった。

勝てるところが1つも無かったため落ち込んでいると、カルマと殺せんせーが教室に戻ってきた。

 

「皆さん、期末テストは素晴らしい成績でした。触手ですが5教科総合を合わせてトップは3つ、ですので触手の破壊は3本ですね」

「おいおい、5教科トップは3人じゃねーぞ」

 

殺せんせーの前に寺坂、吉田、村松、狭間が出てくる。

 

(寺坂は何言ってんだ? 5教科と言えば国・英・社・理・数じゃ……)

「5教科と言ったら、国・英・社・理・()だろ?」

 

そう言って4人は満点の家庭科の答案を見せる。

おいおい、そんなのありかよ⁉

殺せんせーもこれは予想外だったらしく慌てだした。

 

「タコ、誰も()()5()()()で1位なんて言ってねーだろ」

「ククッこの作戦全員でやりゃよかったわ」

 

寺坂や狭間の黒い笑いに少し顔が引きつるがこのチャンスを使わないとな。

 

「カルマ、お前もなんか言ってやれよ」

「……その慌て方、5教科最強の家庭科さんに失礼じゃね殺せんせー」

 

俺がカルマの一言言うように促せ、その後全員で殺せんせーを責めた結果触手7本の破壊を約束させる。

 

「あ、殺せんせー皆で相談したんですがこの暗殺に今回の()()()であるコレも使わせてもらいます」

 

そう言って磯貝は学校のパンフのある部分を指す。

俺達がA組との勝負で賭けた『戦利品』、それは夏休みにA組のみ行われる夏期講習だ。

言葉だけ聞くとただの罰ゲームのように聞こえるが行われる場所がスゴイ。

なんと沖縄の離島リゾートで行ういわば夏期講習という名の沖縄旅行だ。

磯貝が代表で言った提案に殺せんせーも呑んで暗殺場所も決まった。

 

 

 

 

程なくして終業式を迎え、俺達E組も夏休みに入る。

もちろんその際に、修学旅行以上に分厚い過剰しおりを殺せんせーから渡されたのは言うまでもない。

 




夏休み編 頑張って書くぞー!

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