哿の暗殺教室   作:翠色の風

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気づけばいつもの倍近く書いていた……


19弾 才能の時間

鷹岡がE組に来て翌日。

朝に鷹岡について情報収集を頼んだが律に情報を聞く前に体育の時間がやってきた。

 

「ちょっと厳しくなると思うが、あとでウマいもん食わしてやるからな」

「そう言って自分が食いたいだけなんでしょ?」

「まーな、中村が言う通りそれもある」

『あははは』

 

今は鷹岡におかしな行動は見当たらず、生徒と仲良くやっている。

俺が警戒しすぎたのか?

 

「さて、今日から俺が訓練を見ることになったからE組の時間割も変更になった。この時間割を回してくれ」

 

そういって鷹岡は時間割が書かれたプリントを配っている。

多少訓練が増えるのであろう。

そう思い時間割を確認した俺は目を疑った。

 

(通常授業が午前中のみで後は訓練だと⁉)

 

いつからここは武偵高になったのだ。

いや武偵高よりひどい。

武偵校では午前に一般科目、午後から専門科目の実習が行われるがそれでもここまで長時間やらない。

訓練が4時間目から10時間目まであり、園川さんに聞いた噂通りなら少し前まで訓練など何も受けていない生徒がやれば確実に数名が潰れてしまうだろう。

 

「こんなの無理だ。成績も落ちるし、何よりこんなこと出来るわけねーよ!」

 

余りにもひどいため思わず前原が鷹岡に苦情を言う。

次の瞬間、鷹岡は前原にためらいも無く膝蹴りを腹に入れこう言った。

 

「できないじゃない、やるんだ」

「「前原!」」

 

俺と磯貝は前原の様子を見に急いで駆け寄る。

俺が見る限りでは、内臓などは無事なようだった。

 

「てめー、中学生相手に何してんだ!」

「ただの教育だよ遠山。俺達は家族だ、なら父親の言うことを聞くってもんが筋だろ?」

 

俺の問に至極当然のように鷹岡が言ってきた。

ふざけんな、ただ暴力で言うことを聞かせてるだけじゃねーか。

武偵高の教師も大概独裁的だが、こいつに比べたらマシだ。

 

「お前みたいな父親、誰も言うことなんて聞かねーよ」

「文句があるなら拳で来いよ。そっちの方が父ちゃんは得意だぞ」

「やってやろうじゃねーか」

 

正直、今の俺だと勝てる気がしない。

だが今俺が出なければこいつの暴力が他の奴に向かってしまう。

クラスのヤツらには、俺がどうにかするからアイツに従ったふりをしとけと言っておく。

その後俺は腹をくくり、ファイティングポーズを構えた鷹岡の前に立った。

そこからは一方的だった。

最悪な性格だが鷹岡はかつて公安0課に推薦された人間、まず俺が持っていた武器を弾き飛ばすと後はサンドバックのように殴られ、反撃しようにも出来ない。

 

「あのタコを1人で正面から触手3本を切ったと聞いたが期待外れだな」

「う…るせ……」

 

片目が腫れて見えづらかったが鷹岡はわざとらしいため息をつきつつ俺を再評価している。

 

「お前みたいなヤツは大人しく元の学校に戻ってろ」

 

そう言われた後、俺は前蹴りで吹き飛ばされ起き上がろうにも攻撃をモロにくらってしまい思うように起き上がれない。

 

『キンジ!』

 

皆がこちらに来ようとしたのが見えたが、その前に鷹岡が立ちはだかり

 

「あいつのようになりたくなかったら、まずはスクワット100回を3セットだ」

 

それを言われクラスのヤツらの大半が恐怖で震えていた。

クソ、俺のせいで余計に悪い方向にいってしまったか。

 

「さっきも言ったがお前たちは大事な家族だ。家族みんなで地球を救おうぜ」

 

そう言いながら鷹岡は皆に近づき、そして凛香の前で止まった。

 

「お前は父ちゃんについてくるだろう?」

 

凛香ここはウソでもいいから鷹岡に従ったふりをしてくれ。

そう思い凛香を見ると、何か決意したのかキッと鷹岡を睨みつけた。

 

「あんたなんか父親でもなんでもないわ。まだキンジに教わった方がマシね」

 

それを聞いた鷹岡は凛香を平手で張り倒した。

 

「凛香!」

 

思わず俺が叫ぶと、鷹岡がこちらを振り向きニヤッと歪な笑みを浮かべ

 

「遠山、まだいたのか……期待外れは早くここを立ち去れよ。

そうそう、E組(家族)の中でもお前の幼馴染はなかなかセンスがあるそうじゃないか。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それを聞いて俺の中で()()()()()()()

 

ドクン!

 

「だから何寝ぼけたこと言ってんだ……このクラスはお前のクラスじゃねーよ」

 

何故今ヒステリアモードになったのか分からねーが好都合だ。

こんな奴に凛香やクラスのヤツらを奪われてたまるか!

 

「まだ罰が足りないのか?」

「はっ、DVの間違いじゃないのか」

 

そう言いあって殴ろうとしたところで烏間先生に止められてしまった。

 

「そこまでだ!遠山君、鷹岡! 鷹岡、暴れたいなら俺が務めてやる。 遠山君も後は俺に任せてくれ」

 

烏間先生が来たが、俺は奪うと言ったコイツをぶっ飛ばさないと気が済まなかった。

 

「烏間先生止めないでくれ、コイツは俺が「遠山君!すまないが速水君達を見てやってくれ」……わかったよ」

 

烏間先生に言われ、俺は渋々だが従った。

 

「凛香、大丈夫か?」

「ちょっと口の中切ったけど大丈夫」

「そうか、良かった」

 

そういうと何故か凛香は俺を見て不安そうな顔をしている。

 

「キンジ?」

「どうした」

「なってるのは何となくわかるけど、雰囲気がいつもと違うから……」

「……」

 

俺自身なぜなったのかが検討もつかないため黙っていると、烏間先生と鷹岡の話し合いが終わったようで生徒を集めていた。

 

 

「烏間、お前が選んだ生徒と一騎打ちをしてナイフを俺に一度でも当てたら素直に出てやる」

「なら俺が」

「だが遠山お前はダメだ。お前はあくまで依頼としてここに来ているからここの生徒としてカウントしない」

 

クソ、鷹岡のヤローそこをついてきたか。

 

「わかった。その条件を飲もう」

「そうそう言い忘れていたが、ナイフはこれ(対先生用)じゃない」

 

そう言いながら、鷹岡はカバンからあるものを取りだした。

 

「使うのはこれだ。俺が相手なんだから使うナイフも()()じゃないとな」

「よせ!彼らは本物を持っても体がすくんでさせやしないぞ」

「寸止めで許してやるよ。それに俺は素手だ、これ以上のハンデなんてないだろう烏間?」

 

どこまでクズなんだコイツは、ビビったヤツを一方的に殴る気だ。

俺を指名できないようにしたのも、ナイフを使い慣れているからだろう。

 

「さあ、選べ烏間!見捨てるか生贄を差し出すかな!

どのみちお前は酷い教師だろうけどな、はっははー!」

 

高笑いする鷹岡を殴ろうと1歩出た所で烏間先生に止められる。

ナイフを持った烏間先生は迷うそぶりもなくある生徒の前に立った。

 

「渚君、やる気はあるか?」

 

なぜ渚なんだ⁉

そこでふと昨日の体育の出来事を思い出す。

 

(もしかして渚は……)

 

ヒステリアモードの頭である事に気づいてしまった俺だが今は手を出せないため見守る。

正直に言えば、これ以上ないくらい自分の不甲斐無さを感じてしまう。

 

「俺は依頼した側として君たちとはプロ同士だと思っている。

プロとして君たちには中学生として当たり前の生活を最低限の報酬として保証することだと思っている。

だからこのナイフを受け取らなくてもいい。その時は鷹岡に頼んで報酬を維持してもらうよう努力する」

 

烏間先生の本音を聞いて渚の目が変わる。

 

「やります」

 

烏間先生からナイフを受け取った。

 

 

 

「いいか、この勝負君とヤツとの最大の違いは()()()()()()()()()()

 

烏間先生が渚にアドバイスをしている。

俺からも一言送ってやろう。

 

「渚」

「キンジ君?」

「俺達がここでやってきた事を見せてやれ」

「……!うん」

「あと、この先この言葉を覚えとけ

『強くあれ。ただし、その前に正しくあれ』」

「え?」

「……がんばれよ」

 

それだけを言って俺は1歩離れた位置に行く。

そこに凛香がやってきた。

 

「渚、本当に大丈夫なの?」

「まあ、見てろ。アイツは俺達にとって必要な(必用じゃない)才能がある」

 

言ってる意味が分からず不思議そうな顔をする凛香に構わず、勝負の行く末を見守る。

 

(まあ、勝負は一瞬だろうがな)

 

その言葉通り、一瞬で勝負はついた。

渚が殺気を隠し()()に鷹岡に近づいてき、ナイフで一撃を狙う。

慌てて避けた鷹岡を転ばすと背後から寸止めでナイフ当てた。

 

「捕まえた」

 

やはり、渚には暗殺の才能がある。

このご時世確かにいろいろ物騒だが、開花させるべき才能だったのだろうか……

渚を見ると、俺と横にいた凛香以外が集まって口々に渚をほめて喜んでいる。

 

(まあ、生徒の進路については殺せんせーにでも任せよう)

 

唖然としてた凛香を連れ、俺も渚の近くに歩み寄る。

 

「渚、やったな」

「うん!」

 

渚とハイタッチを交わす。

すると渚の後ろにキレそうな鷹岡がいた。

 

「このガキ……まぐれで勝ったのがそんなに嬉しいか!

もう一度だ。次は心も体もへし折ってやる」

「次やれば絶対に僕が負けます。でもはっきりしたのは僕らの担任は殺せんせーで教官は烏間先生です。

それにあなたみたいに父親顔するより、プロとして徹する烏間先生のほうがあったかく感じます。

なので鷹岡先生先生ごめんなさい。出て行ってください」

 

渚がそうハッキリ答えた。

なら俺もプロとして武偵として任務を遂行しよう。

 

「次やるなら俺が相手だ鷹岡。武偵としてここには要人警護、E組のヤツラを守る義務がある」

「どいつもこいつも……さっきから嘗めた口を聞きやがって‼」

 

そう言って襲い掛かってきた鷹岡の顔面に桜花をぶち込む。

モロにくらった鷹岡は鼻血を出しながら吹き飛んだ。

それを横目に見ながら烏間先生がこちらに来る。

 

「俺の身内が迷惑をかけた。後の事は心配するな。

とりあえず、遠山君は腫れた顔を冷やしに行くといい」

 

そういえば、片目が腫れて見えないのだった。

烏間先生に後を任せ、俺は職員室に氷を取りに行く。

その際心配だからと凛香もついてきた。

 

 

 

 

氷で腫れた箇所を冷やしていると凛香はどこか辛そうな顔をしている。

今はヒステリアモードが解けてしまい、凛香に何を言えばいいか分からない。

とりあえず、思っていることをそのまま言うか……

 

「……凛香」

「……」

 

凛香は返事を返してこないが構わず続ける。

 

「今回は一人で無茶をしすぎた、すまん」

「なら、次から……」

「凛香、声が小さくて何言ってるか聞こえないぞ」

「だから、次から私も少しは頼ってって言ってるの!

それともキンジにとって私って守られてないといけないほど弱いの?」

 

凛香は泣いていた。

強いか弱いかと聞かれたら、凛香は弱くない。

ヒスっていない俺が模擬戦をやれば勝てないだろう。

 

「1人でなんでもやろうとして、それでキンジがボロボロになってるの見てどんな気持ちで見ていたか分かる?」

「……すまん」

「許さない、罰として私にキンジの背中くらい守らせて」

 

渚に暗殺のセンスがあるならば、凛香には戦闘のセンスがある。

だが、凛香にはこちら側に来てほしくなかった。

 

「だが凛香「私も強くなるから!もうキンジが傷つくところを見てるだけはイヤ……」……わかった。一緒に強くなろう凛香」

 

頑固な幼馴染にため息をつきつつ了承をする。

この幼馴染の背中を守るにはヒステリアモード頼みではなく、いつもの俺も強くならないとな……

 

「じゃあ、私は情報などのサポートですね」

 

突然俺の携帯から律が出てきた。

 

「なんで律が⁉」

 

泣き顔を見られ顔を赤くする凛香が律に聞く。

 

「キンジさんに頼まれたものを集め終わったんで出てきたら、2人が話している内容が聞こえまして便乗しちゃいました」

「いつから聞いてたんだ?」

「キンジさんが職員室に入った辺りからいましたよ」

「最初からじゃねーか!」

「テヘ」

 

律は竹林が言うにはテヘペロだったか?それをしている。

 

「ともかく速水さんが背中なら、私はサポートです。まさか速水さんは良くて私はダメってことはないですよね?」

 

律はニコッと笑いながら聞いてくる。

俺はため息をつきつつ「わかった、これからも頼む」と了承した。

まさか、この2人来年が存在すれば武偵高までついて来るんじゃないだろーか……

 

 

俺が一抹の不安を感じている時に、鷹岡は理事長により解雇されたらしい。

その為、これからの体育の訓練は烏間先生が務めてくれることになった。

余談だがその後クラスの奴らは街にお茶をしにいったらしい。

俺達を放っといて……




律はこれからヒロイン化するはず(たぶん)

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