哿の暗殺教室   作:翠色の風

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3/30少し文章の書き換え、追加致しました


15弾 決闘の時間

イトナは兄弟宣言と一騎打ち宣言後、昼休みに甘いものを大量に持って教室に戻ってきた。

 

「すごい勢いで甘いもの食ってんな…」

「殺せんせーと似てるかもね」

 

俺は凛香と共に弁当を食いながら、後ろにいるイトナを観察している。

凛香と話していると机に置いていた携帯の画面に律が映り

 

「イトナさん、表情が読みずらいところも似ていますね」

「律……本体があるんだから携帯に来るなよ」

「こちらから見る方が分かりやすいので」

 

ご丁寧に本体の画面は消えてるし……

 

「それでも俺のじゃなくてもいいだろ」

「……なんでキンジさんの携帯を選んだのでしょう?」

 

俺に聞くなよ、分かるわけねーだろ……

凛香もなんでか睨んでくるし、俺は何もしてねーだろ。

 

 

 

俺達以外にもイトナを観察し殺せんせーと比較していると、突然殺せんせーが

 

「兄弟疑惑で比較されるとなんだかムズムズしますねぇ。気分直しに買ったグラビアでも見ますか」

 

こんなところで見るんじゃねーよ。

教師がそんな本持ってくんな。

 

俺が殺せんせーを睨んでいると、周りは何とも言えない顔でイトナの方を見ている。

俺もイトナの方を向くと

 

「なんでお前までグラビア持ってきてんだよ……」

 

イトナは殺せんせーと全く同じ本を読んでいた。

 

「私が調べた情報ですと今週号は巨乳特集でした」

 

ああ、そういうことか……

律による分析で性癖も同じというどうでもいい情報が分かった。

 

「これは俄然信憑性が増してきたな……」

「岡島君……?」

「巨乳好きは皆兄弟だ!」

 

そう言い岡島も同じグラビア雑誌を出した。

聞いた渚は苦笑しているが、聞こえた女子からは冷ややかな目線が岡島に送られている。

凛香など、絶対零度を思わせる視線だったため見られていない俺ですら冷汗が出た。

 

(岡島……いい加減成長しろよ)

 

途中から脱線してイトナから目を離していたため、気づけばまたいなくなっていた。

 

 

 

放課後になり、とうとうイトナの一騎打ちが始まる。

前回の俺のように外ではなく、机でリングを作っている。

 

(まるで試合だな)

 

「ただの暗殺だと面白くないので1つルールを作りましょう。ルールの内容はただ1つリングの外に足がつけばその場で死刑だ」

 

どうやら、シロがこの作戦を考えたようだ……

 

「それ負けてもルール守るヤツなんているのか?」

「いや……皆の前で決めたルールを破ると先生として信用が落ちるから意外と効くよ。これ……」

 

杉野の問にカルマが答える。

確かに殺せんせーには有効な手だ……

殺せんせーもこのルールに承諾し、シロの掛け声で暗殺が始まる。

 

「それでは、暗殺……開始!」

 

シロの掛け声がした瞬間、殺せんせーの触手が切り落とされた。

だが俺達の視線はイトナの方に向いている。

なぜなら……イトナの頭に触手があったからだ。

 

(そりゃ濡れないわけだ、文字通り雨粒一つ一つはじいてたんだからな)

 

「どこでそれを手に入れた‼その触手を‼」

 

殺せんせーは顔が黒くなり、俺が今まで見たことがないほど怒っている。

聞かれたシロは飄々としながら

 

「言う義理はないね。けど確かに君と彼は兄弟だろ」

「……どうやら詳しく聞かないといけないようですねぇ」

「君はここで死ぬから無理だね」

 

シロが何かライトを照らした。照らされた殺せんせーの様子がおかしい。

 

「至近距離でこの光線を浴びると君は一瞬硬直する。触手同士の戦闘でこれがどれほどの隙か君には分かるだろう?」

 

イトナが触手でラッシュをかける。

教室は触手がマッハを超えた速さで動くため、暴風とも言える衝撃波が吹き荒れた。

 

「⁉」

 

暴風により見えてしまったのだ。

()()()()()()()()……

多種多様な色、模様、さらにスカートがめくれたことによって女子たちの顔が赤くなる。

 

―――ドクン。

 

(すまない、不可抗力なんだ)

 

声に出すとバレるため心の中で女子達に謝罪を入れて、殺せんせーの成り行きを見守る。

すぐに助けてもいいんだが、皆の顔つきが徐々に変わってきているためもう少し見守ろう。

殺せんせーのことだ、そうそうやられはしないだろう。

イトナのラッシュに殺せんせーは、脱皮によるダミーを作り電灯に掴まって避難していた。

 

「脱皮か……それにも弱点があるのは知っているかい?」

 

シロがそういうとまたイトナは攻撃を仕掛けた。

 

(さっきよりスピードが遅いな)

 

ヒステリアモードになった視界で容易に捉えれるほどに遅くなった殺せんせーは、イトナの攻撃を辛うじてさばいていた。

 

「再生や脱皮には結構なエネルギーを消費するんだ。私の計算では君は今イトナとほぼ互角だね」

 

徐々に殺せんせーが追い詰められている。

 

「加えて触手は精神に左右される。動揺から立て直っていない君を見て、今どちらが優勢化は一目瞭然だろうねー」

 

その後シロはまた先生を硬化させる光線を浴びせ、イトナの攻撃で先生の触手がさらに2本切り落とされた。

 

(そろそろか……)

 

皆を見ると、最初はイトナの攻撃などに呆然としていたが今はほぼ全員が悔しい顔をしている。

 

「みんな……」

 

俺の声にクラスのみんなが俺を見る。

 

「このまま、イトナに殺らせたままでいいのか?」

『……』

「もし、嫌ならどうしたい?」

『……したい』

 

数人がつぶやいている。もう一声か。

 

「もう一度言ってくれ。俺はここのクラスメイトであると同時に武偵だ、みんなの願いを依頼として叶えてみせるよ」

『俺(わたし)(僕)たちで殺せんせーを殺したい!』

 

この時、皆の意識が変わった。

 

「わかった、その依頼俺が叶えてあげよう」

 

パァン

 

「……これは何のマネかね?」

 

俺が銃で破壊した硬化させるライトを見つつシロが訪ねてくる。

 

「E組からの依頼さ。それに()()()()()()なんてルールにはないしね」

 

シロに説明しつつ俺はリングに入る。

 

「……邪魔だ」

 

イトナの触手が1本襲ってきた。

普通ならなすすべもなく食らう。

だが今の俺はヒステリアモードだ。

触手の動きがゆっくりとまではいかないものの捉えきれないほどの速さではない。

 

ザシュッ

 

迫ってきた触手にカウンター気味にナイフで切り落とすと表情が読めなかったイトナが初めて驚いた顔を見せる。

 

「ただの人間にすら攻撃が当たらないようなら、殺せんせーに勝つなんて無理だな」

 

俺が挑発気味にイトナに言うと

 

「勝てない……俺が弱いだと……」

 

イトナの様子がおかしい……

そう思って見ていると、触手が黒くなって暴れはじめた。

 

「まずいな……」

 

シロの言ったようにこのままではクラスのみんながケガをする。

とりあえず、暴れている子にはご退場願おう。

 

(桜花、秋水!)

 

俺は殺せんせーの個人での暗殺後にもらったアドバイスどおり、桜花をケガをしない速さである亜音速に留まらせてそれを足で放つ。

その速さのままイトナに迫り、凛香の見様見真似だが秋水を放った。

亜音速でほぼ全体重を乗せた攻撃をくらったイトナは教室から一瞬で消えた。

この技に名前をつけるなら『朧桜』、桜が見えたと思うと目の前には何もない、まさに幻だったかのように全てが一瞬で終わるからだ。

 

(だが、これは今後一切使えないな……)

 

俺は教室の壁に空いた人1人分の穴を見ながら、この技の封印を決意する。

朧桜が決まる直前にイトナが触手で防いだため威力の大部分を触手で逃がしていたが、それでも教室を突き抜け森まで吹っ飛んだイトナは気絶している。

人間に撃てば確実に殺してしまい武偵法9条を違反、それに今回はヒビ程度ですんだがあまりにも威力がでかいため俺自身も無事じゃないだろう……

 

俺が放った威力の大きさに皆声を失ったが、それでもシロだけは冷静に

 

「これでは勝負にならないな。それにあの子もまだ登校できる精神状態じゃなかったみたいだ。しばらく休学させてもらいますね」

「待ちなさい、あの生徒は放っておけません。それにあなたにも山ほど聞きたいことがある」

 

シロは俺が空けた穴から出ていこうとして殺せんせーに止められる。

 

「いやだね。止めるなら力ずくで止めてみなよ」

 

そう言われ殺せんせーが止めようとしたところで、触手が溶けた。

どうやら、あの服にも対殺せんせー物質が編み込まれているみたいだ。

外に出る前にシロは俺の方を見て聞いてくる。

 

「それで君はいったい何者なんだい?」

「ただのE組の生徒だよ。偏差値が低めですこし荒っぽい学校から転校して来たけどね」

「……そういうことにしておくよ」

 

そういってシロは教室から出て行った。

 

(結局、触手とかについて何も分からなかったな……)

 

 

 

机を元の位置に戻し、殺せんせーにクラスの皆が先生の正体やの2人の関係について聞いている。

結果だけを言えば答えはうやむやにされ。

知りたければ殺してみろということらしい。

今までならここで皆下校していたが、今日はほぼ全員残って烏間先生の所に会いに行った。

 

「あの……もっと教えてくれませんか、暗殺技術を」

「……?今以上にか?」

 

磯貝の言葉に烏間先生が理由を聞いてくる。

 

「今までは、結局遠山君とか誰かが殺るんだろうって他人事みたいに思ってたけど」

 

桃花、俺を買いかぶりすぎだよ。

 

「今日、イトナを見て……キンジに聞かれて思ったんだ」

 

前原が言ったあと、まるで合わせようと決めてたように声が重なり

 

『誰でもない俺達E組で殺りたいって』

「だから限られた時間で殺れる限りしたいんです」

「僕たちの担任を殺して自分達の手で答えを見つけたいんです。烏間先生」

 

メグ、渚が言うと烏間先生は承諾し今日から希望者のみ放課後も追加の訓練を行うことになった。

皆がロープ昇降をしているのを見て、いつもの補習に向かおうとすると烏間先生に止められた。

 

「遠山君ちょっと言いか?」

「どうしたんです、烏間先生?」

「脚、少なくともヒビは入っているだろ。部下に車で向かわせるから病院に行きなさい」

「これくらい大丈夫ですよ」

「君はもうここのクラスになくてはならない存在だ。みんなも心配する、だから行ってくれ」

「……そういうことなら」

「あとこれを渡さないといけない……」

 

烏間先生から紙を渡された。

そこに書かれているものは、校舎の壁の修理代の請求書だった……

 

「すまない……国に掛け合ったんだが暗殺と関係がないの一点張りだったんだ……」

 

マジかよ……

 

「どうにかして大半は払ってやれそうなんだが、全額は無理だったんだ……」

 

貯金なんてほとんどないぞ。

 

「いえ、ありがとうございます。……分割払いってできますか?」

 

みんなが良い雰囲気で終わる中、俺だけがしまらなかった。

 




明日の更新は難しそうです。

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