元レプリカがダンジョンにいるのは間違っているのだろうか   作:V1テイマー

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ベル君て一月半でランクアップしてるから1巻から4巻の間は一月あるか無いかくらいなんですよね…
それぞれどのくらいの日数各巻にかけてるんでしょう(白目)
何か時系列でおかしそうな事があったら報告お願いします。


下準備

「お待たせしましたヘスティア様。データを調べてきましたがルーク・フォン・ファブレという名前の冒険者の記録は無いようです…お力になれずすみません」

 

申し訳なさそうに頭を下げるギルドの受付嬢に軽く手を振り構わないと告げるヘスティア。

刻印を終えた翌日、彼女はギルドに赴きルークの冒険者としての記録が残っていないかを尋ねに来たのだが、少なくともオラリオの街に公式として彼の記録は残っていなかった。

 

(可能性としてはルーク君を秘蔵っ子として育ててたファミリアがある、ていうのも無くは無いけど…彼のLevelが3なのを考えると無理があるかな?だいたいそんなアウトかセーフか分かんない事する意味も無いだろうし)

 

たしかに他のファミリアやギルドにLevelを誤魔化すファミリアがいるという話は聞いた事がある。

しかし、いくらなんでも人1人をこっそり育てるというのはリスクの方が高いし、それに見合うリターンがあるとも思えない。

 

(やっぱりオラリオ以外の街からやって来た冒険者、と考えるのが一番妥当だね。幸い…と言っていいのかは微妙だけどボクの恩恵を受けれた、という事はルーク君は既に前の主神との関係が切れている)

 

オラリオには所属するファミリアから別のファミリアに移る改宗というものが存在する。

それには元のファミリアの主神から許可が降りなければならない。

つまり、ヘスティアのファミリアに入ることの出来たルークは少なくとも脱退あるいは所属ファミリアが解散していたのだろう。

もっともあくまでオラリオのファミリアでの話であり、都市外のファミリアがどうなのかは分からないが。

 

(まぁ、考えてても仕方ないし今更ルーク君を手放す気もないし何かあったらその時に考えればいいか)

 

ヘスティアはこれ以上の思考は無意味だと思いギルドを後にした。

 

 

 

 

 

「はぁ!?ダンジョンに潜れねぇてどういう事だよ!」

 

ホームに帰ってきたヘスティアに対しルークは辺り一帯に響くほどの大声を出して詰め寄る。

 

「うぉう…耳がきーんてなった…お、落ち着いて聞いてくれルーク君、君は既にLv3だ。本来なら1人でも10階層くらい何てことは無いだろうさ、でも今は記憶がない」

 

不満顔で彼女を軽く睨みつけるようにしていたルークだったが真正面から真剣な顔で見つめ返されうっ、と顔をそらす。

彼にも意地悪で言っているのではなく、本気で心配しているからこその言葉だと伝わったからだ。

 

「記憶を取り戻すまで、とは言わない。でも最低限ダンジョンに必要な知識を身につけるまでは我慢してほしいんだ」

 

ルークを見つめるその目は、新しく出来た家族を失う事を恐れた不安の色を覗かせていた。

隣にいるベルも口には出さないが、同じようにしてルークを見つめている。

 

「だっー!!分かったからそんな目でみるんじゃねぇよ、うっぜぇての!」

 

照れ隠しに毒を吐きながら2人に背を向けたルーク。

その顔はほんのり赤く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

こうしてルークのダンジョン勉強会は始まったわけだが意外にも勉強会はスムーズに進んだ。

冒険者やダンジョンの事と並行して世間の一般常識、この世界の通貨であるヴァリスの事なども教えていたのだが1週間程でルークは覚えてしまった。

 

「こう言ったら失礼だけど、ルーク君はもっと勉強に対して消極的な方かと思ったよ」

 

「いつまでもダンジョンに入れないのは嫌だからな、好きじゃねーけど我慢してんだよ」

 

頬杖をつきながらすらすらと左手でノートに文字を書いていく。

 

「そう言えばルーク君、最初は文字を右手で書いたり左手で書いたり安定してなかったね」

 

「なんかどっちで書いても違和感があったんだよな。今は左手で書くのがしっくりくるけど」

 

一度手を止めルークは自分の両手を見つめた。

勉強会が始まった頃、というよりもオラリオで意識を取り戻した時からずっと自分の体に違和感は感じていたのだ。

最近になってようやく日常の動作や稽古として剣を振るう分には問題無い程度まで治ってきているが。

 

「記憶が無い事と関係しているのかもね。元々両利きだったりするのかな?」

 

「知らねーよ、それよか課題終わったぞ」

 

そう言ってノートを差し出した相手はヘスティア…ではなく耳の長いハーフエルフの女性、ギルドの受付嬢であるエイナだった。

彼女はベルを担当するアドバイザーであり、同時にルークを担当する予定でもある。

そのため昼間などヘスティアがバイトでルークに教える事の出来ない時間帯は彼女が勉強を見てくれていた。

元々、昼はルーク1人で勉強する予定だったのだが本屋の勝手がわからず右往左往していた彼を、たまたまエイナが見かけたのがきっかけである。

 

「本当に?…ふむふむ、問題ないねよく出来てるよ。これがダンジョンに潜りたいていう一念だとすると凄いね」

 

ただそれだけでは無いと思うけど、と彼女は心の中で呟いた。

ルークが早くダンジョンに潜りたいというのは本当だろう、しかしその理由は自分がモンスターと戦いたいからだけではなく、先に1人でダンジョンに潜っているベルの事が心配だからだとも感じている。

口に出せば彼は否定するだろうがベルがボロボロになって帰ってきた日の翌日は、驚くほど集中して勉学に取り組んでいたのをエイナは覚えている。

 

(態度や口は悪くて子供ぽいところもあるけど、根は優しいんだろうなぁこの子)

 

ルークを慈愛のこもった瞳で見つめるエイナ。

常からあまりダンジョンで危険な相手と戦って欲しく無いと考える彼女だったが、今回だけは早く2人揃ってダンジョンに潜れる日が来る事を願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ギルドからの帰り道、頭を使った影響かかなりの空腹に襲われていた。

しかし、彼に渡されるお小遣いは決して多く無い。

ヘスティアファミリアは構成員がルークとベルの2人であり、現状の収入がベルのダンジョンで得た魔石などを換金したものとヘスティアのバイトで稼いだ分しか無いのだから仕方ないのだが。

 

(晩飯まではまだ少し時間あるし、どっかで何か買うにしても金がねーんだよな…)

 

はぁ、とため息をつきながら歩くルーク。

しばらくふらふらとしていた彼に肉を焼いた香ばしい、いい匂いが流れてきた。

思わず足を止めてしまい匂いの元をたどる。

キョロキョロと辺りを見回し歩いて行くと、そこには『豊饒の女主人』と書かれた看板のたった大きな酒場があった。

オラリオでも1、2を争うであろう規模の酒場に暫し圧巻に取られていたルークへキャットピープルの少女が近づく。

 

「ミャー達のお店に興味があるのニャ?なら食べていくといいニャ!後悔はさせ無いニャよ!」

 

どうやらその少女はこの店の店員のようで、ルークを店に誘おうと彼の腕を掴み店へ引き摺り込もうとする。

以前のリンゴの件により無銭飲食に対して軽いトラウマを覚えた彼は力の限りそれに抵抗した。

 

「だぁっー!?離せ!俺はただ腹減ってたから見てただけだっつーの!別にこの店に興味があったわけじゃねぇ!」

 

「お腹が空いてるなら尚更ウチで食べていくといいニャ!」

 

見た目以上に店員の力が強く中々腕を引き離すことができ無い。

そうして、暫くの間店の前で続いた攻防が続く。

その周りには何事かと人が集まり始めていた。

 

「このっ、いい加減話しやがれ!俺は金がねーんだよ!」

 

「ここに来て往生際の悪いこというんじゃニャい!いいから大人しくミャー達のために貢ぐニャ!」

 

「話聞いてんのか!その金が無いって言ってんだろ!」

 

だんだんと注目を浴びることに焦りを感じたルークだったが、キャットピープルの少女が手を離す様子は一向にない。

このまま延々とこれを続けるのかとウンザリしてきた矢先、彼女の頭を何者かがスパンと叩いた。

それによりニャッ!?という叫び声と共に手が離れた事でルークは解放される。

 

「アーニャ、前にも店の前で騒ぎを起こさ無いようにと注意したはずですが?」

 

そう言ってアーニャと呼ばれた少女の頭の上から給仕用のお盆を脇に抱えなおし、ルークへと正対したのはエルフの女性だった。

 

「すみませんお客様。どうやらウチの店員がご迷惑をおかけしたようで」

 

彼女の声はあまり抑揚の無いものではあったが申し訳なさが滲み出ている。

もっとも、今のルークは長い事続いた攻防の結果増した空腹と街行く人々から注目される羞恥によりかなりの疲労に襲われていたので話を聞く余裕が無かった。

 

「あぁ…もう、何でもいいから俺は帰るぞ」

 

ちょっとした好奇心から酷い目にあったと思いながらホームへと向かって歩き始める。

流石にこの騒ぎの後でどこかに寄ろうとは思えない。

背後でエルフの女性が何か言っているようだが一刻も早く家に帰りたかったルークは適当に手を振り帰路へと着くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「死にかけたって割には嬉しそうじゃねーのベル、そんなにアイズとかいう奴の事が気に入ったのか?」

 

その夜、ホームへといつもより早く帰ってきた少年が、死にかけたと言っていた割にウキウキとしていたので思わず声をかけたルーク。

ヘスティアと共にだいたいの経緯は聞いていたが、ベルの様子があまりにもおかしかったため尋ねずにはいられなかった。

するとベルは、顔をほんのり赤く染めながらダンジョンでミノタウロスに殺されかけたところを救ってくれた美少女に心を奪われたのだ、と照れながら詳しく話してくれた、2時間程。

 

「という事でやっぱり僕がダンジョンに出会い求めたのは間違ってなかったんですよ!」

 

力説してくれたベルには悪いが猫娘との出来事で体力を使い、疲れていたルークの頭にはほとんど話の内容が入っていなかった。

ルークはまさかここまで長話になるとは、と呆れながらもベルの幸せそうな顔を見るのは嫌いじゃ無いと思いながら微睡む。

やがて喋り疲れて寝てしまったベルの寝息を聞くと彼もまた夢の世界へと旅立っていった。




ルークがダンジョンに潜るまで後1、2話かかりそうです(白目)
次回は個人的に書きたかった話なので早目に上げれるといいなぁ

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