元レプリカがダンジョンにいるのは間違っているのだろうか 作:V1テイマー
『僅かでも我が予言が覆されるとはな…驚嘆に値する』
耳から聞こえてくるのではなく、直接頭の中に送られてきたように響くローレライの声。
ルークはそれをどこか遠くから聞いているように感じた。
崩れ落ちるホドの中で交わした約束が頭から離れないのは、それがもう果たされる事はないと本能で感じ取ってしまっているからだろうか。
(何と無くだけど…分かる、俺とアッシュは)
一つになるのだ、と。
その結果ルークという人格がどうなるかまでは分からない。
ただ冷たくなったアッシュの体に熱が戻ると同時に自分の体から何かが抜けていくように感じる。
「なぁ、ティア…俺臆病だから言えなかったけどお前の事すげー好きだった…今までありがとう」
最早聞こえる事は無いと分かっているからか、最後に思い残す事を無くしたかったからか、ルークは自分を最後まで見ていると言ってくれた少女に対する思いを呟いた。
その声は涙まじりながらもとても穏やかだった。
その言葉を最後に意識を手放していく。
段々と2つの焔(ふたりのルーク)が溶け合い1つの焔となる中でその欠片が零れ落ちていった。
それらは本来消えるはずだった残り火、陽だまりに入りきらなかったはずだったもの。
しかし、ここに来てその欠片はまた新たな光を浴びる事になる。
それはローレライの意思か偶然か…
場所は変わってオラリオの街。
そこには肩を落としてトボトボ歩く1人の少年の姿があった。
「うぅ、また門前払いまさかギルドに入るのがこんなに大変だなんて…」
少年の名はベル・クラネル。
何れは英雄への道を歩き始める彼も、まだオラリオに来て日が浅く彼の女神にまだ出会う前である。
朝からいくつものギルドを訪ねたがどこにもいい返事を貰えず、日も暮れてきたしまい今日はもう諦めようかと歩いていた帰り道。
気落ちし下げていた頭をあげた彼の目に、紅々とした髪が特徴的な青年の姿が映る。
(綺麗な髪だなぁ、どこと無く気品も感じるし何処か有名なギルドの冒険者かな?)
僅かに羨望の眼差しで青年を見ていたベルだったが、視線を感じて振り返った青年と目が合うと慌てて頭を下げた。
「す、すいません!綺麗な髪だったからつい見惚れちゃって…」
(うわぁ!?僕男の人相手に何言っちゃってるんだ!)
心の中で咄嗟の自分の発言に自分でドン引きしたベルだったが青年は特に気にした様子もなく笑いかけた。
「そうか?ありがとな。良かったらお前も食うか?美味いぞ」
そう言ってベルに抱えたリンゴの1つを手渡す。
見知らぬ人から物をもらっていいものかと悩みながらも、目の前で果実特有の甘いにを放つリンゴの誘惑には勝てずおずおずと受け取る。
歳は恐らく自分より上なのだろうがその笑顔はまるで幼さの残る少年のようだとベルは思った。
青年が一口リンゴを齧ると自分も同じように一口齧る。
「中々いけるたろ?」
「はい!」
甘酸っぱく程良い硬さのリンゴをしゃりしゃりと咀嚼しながら2人して笑いあう。
この街に来て久々に人の優しさに触れた気がしたベルはこの空間に心地よさを感じていた。
しかし、それは突如としてかけられた怒声により崩れる事となる。
「見つけたぞ!赤毛のあんちゃん!」
突然の大声に驚いたベルがリンゴを喉に詰まらせかけながら声のした方を向くと、そこには顔を真っ赤にした男が立っていた。
「店の前から堂々とリンゴを掻っ払っていくたぁいい度胸じゃねぇか!」
状況が飲み込めず青年と男を交互に見るベルをよそに青年は男へと怒鳴り返す。
「置いてあった物を拾っただけだろ!人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ!」
「あれは店の売りもんなんだよ!」
(うぇぇぇえぇぇぇぇ!?)
2人の会話から青年が会計を料金を、支払わずにリンゴを持っていった事を知り心の中で絶叫をあげる。
これが兎と焔の最初の出会いであった。
とりあえず出会いの部分をあげさせてもらいました。
手元に原作が無いのでアレですが今週中には全巻揃えてなるべくダンまち側のキャラの違和感を無くせるよう少しでも努力します!
ルークは…うん、たぶん大丈夫じゃないかなぁ…もうプレイしたのが10年くらい前だけど
誤字脱字の指摘から様々な評価まで大歓迎です!
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