グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:famgri

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第141話 ロンドンへの襲撃

イギリス ロンドン

 

貴族のような服に身を包み、

金色の髪の女性が立っていた。

 

「学園長と生徒会長に次ぐ賓客が

 男性だと聞いていたが・・・。」

 

その女性がロウと対面する。

 

「本当に貴殿がその学園生だというのか。」

 

「まあ、そうなるな。相田ロウだ。よろしく。」

 

「レティシア・ハミルトンだ。」

 

互いに握手を交わす。

 

「体質については聞き及んでいる。・・・確かに

 類まれな力だが、なるほど、グリモアが目覚ましい

 戦果を挙げているのは貴殿の功績か。」

 

「そうだよ、すごいでしょう。」

 

エミリアが会話に入ってくる。

 

「! ブルームフィールド。」

 

「卿には何も言っていない。」

 

「こんにちは! 学園長のネネだよ!」

 

「・・・・?」

 

突然話しかけられ、レティシアは首をかしげる。

 

「お姉ちゃん、ネテスハイムのレティシアちゃんでしょ?」

 

「いかにも。ごっこ遊びなら、あっちでやるのだな。

 こちらは挨拶中だ。」

 

「レ、レティ、紹介するね。現学園長の

 犬川寧々ちゃん。」

 

「・・・・・・・・・なんだと?」

 

そりゃそんな反応するわな。

 

「ほら、話したでしょう? 前学園長が・・・」

 

寧々に聞こえないように、耳に当てて話す。

 

「だから、娘さんに引き継いだって・・・。」

 

「・・・冗談ではなかったのか。何を考えて

 いるのやら・・・仕方ないな。ネテスハイム魔法学園

 首席代表レティシア・ハミルトンだ。学園長の

 代理として、グリモワール魔法学園生を歓迎する。」

 

「おじちゃんは来てないの?」

 

「おじ・・・学園長は現在、内閣へ招喚されている。

 私では不満か。」

 

少し不機嫌な顔を見せる。

 

「そうじゃないけどー、久しぶりに会えると

 思ったのにー。」

 

「一度、宿泊先まで案内させる。それから

 ネテスハイムまでお越しいただく。式典後、

 懇親もかねて各生徒が街を案内する予定だ。」

 

「レティ、ロウさんの案内なんですよ。」

 

「人が話している最中だ。ブルームフィールド。」

 

「こんな感じで大変だと思いますけど・・・。」

 

「・・・・。」

 

ロウは静かに数度頷く。

 

「ブルームフィールド。」

 

「はいはい。それじゃあ、最後にこの人が、

 グリモアの生徒会長です。」

 

そう紹介され、虎千代がやってくる。

 

「いやすまん、荷物を降ろすのに手間取って

 しまってな。」

 

「・・・貴嬢が私立グリモワール魔法学園の代表、

 ミス・タケダか。」

 

「きじょう・・・? ああ、アタシが武田虎千代だ。

 驚いた、日本語がうまいんだな。」

 

「貴嬢は英語が苦手そうだな。」

 

「よくわかるな。一応、副会長も会計も書記も

 話せる。」

 

会長以外じゃねえか・・・。

 

「いざというときは通訳してもらうから、

 心配はいらないぞ。」

 

「・・・結構。では、後ほど。」

 

「ああ。」

 

虎千代は戻っていった。

 

「・・・ふぅ・・・なんだ、あの学園生たちは。

 学園長があのような子供の上に、代表の

 あの軽さ・・・まるで無秩序な集団ではないか。」

 

「まあ、問題ない。何かあれば、

 スイッチ入るんで。・・・多分、だけど・・・。」

 

自分で言いながら不安になっていく。

 

「・・・・。」

 

ピピピピピ!

 

「なんだ、エイプリル。これから私は学園に

 戻り、式典に備え・・・・・・・・なに?」

 

「・・・・ったく。」

 

きな臭くなってきたな・・・。

 

「・・・薫子、精鋭部隊に連絡を取れ。あと

 服部に連絡しろ。」

 

「はい、承知しました。」

 

「ミス・タケダ。しばらく待っていてくれ。

 問題が起きた。先に片づけてくる。」

 

「・・・もちろん、手伝うぞ。」

 

「貴嬢らは客だ。我らに任せていろ。」

 

「確かに客だが、同じ魔法使いだ。魔法使いの

 使命は、人々を守ることだろ? アタシたちは

 役に立つ。約束しよう。」

 

ったく、ここでも魔物か・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

レティシア、エミリアは静かに

目を閉じていた。

 

「・・・・・。」

 

確か、これは・・・。

 

「先輩、急ぎましょう! マーケットが

 襲われて・・・・」

 

「静かに! 戦いを愚弄するつもりか!」

 

慌てた様子で駆け寄ってきたももに

レティシアは叱責する。

 

「え? ぐ、ぐろう?」

 

「・・・これだから、ネテスハイムだけで

 十分だと言ったのに・・・。」

 

大きくため息をつく。

 

「エミリア! 客人に我が国の作法を

 教えておけ!」

 

そう言って、レティシアは顔を

そむける。

 

「もう、私に押し付けて・・・・・。

 すみません。レティって有名な貴族の出で・・・

 貴族の礼儀作法や責務にとってもうるさいんです。」

 

「で、でも魔物がすぐそこまで・・・。」

 

「確か、イギリスじゃあ、魔物は人間が変化した

 ものだっていう考えがあったんだ。それは俗に

 人類根源説。だからここの奴らは戦う前に

 追悼をする。そうだな? ブルームフィールド。」

 

「う、うん・・・よく知ってるね、ロウ君。」

 

「前に一度、イギリスには来たことがあるしな。

 それに風紀委員のパンフレットに書いてあった。」

 

懐からそのパンフレットを取り出し、

そのページを見せる。

 

「・・・あ、本当ですね! イギリスの魔法使いや

 軍隊でされてる作法、なんですよね。」

 

「魔物になった人を救う、という点で、私たちには

 プライドがあります。だから、追悼をとても大事に

 しています。ネテスハイムの学園生を見たときは・・・

 邪魔をしないであげてください。」

 

「は、はい! わかりました! ・・・あたしたちも

 したほうがいいでしょうか?」

 

「郷に入っては郷に従えってとこだな。」

 

「すみません、頑固者ばかりで。」

 

申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「いえ! あたし、いろんなところでバイト

 してますけど・・・それぞれの職場で、全然違う

 文化があるんです! 慣れてます!」

 

ももはにこりと笑う。

 

「ブルームフィールド。魔物の名前は

 『ジャック・ザ・リッパー』。例の魔物だ。」

 

レティシアの表情は険しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エレン、戦い始めちゃっていいの!?」

 

「もうクエストは発令される。我々と

 ネテスハイムの共同戦線だ。といっても、

 グリモアとネテスハイムでは戦いの思想が異なる。

 それぞれで連携したほうがいいだろう。」

 

慌てる月詠をよそに、エレンは

戦いの準備をする。

 

「戦いの思想って、どういうこと・・・?」

 

「グリモアは生徒間の協調に重点をおいている。

 個性を組み合わせてシナジー形成を目標にしている。」

 

「しなじー?」

 

意味が分からず、首をかしげる。

 

「反対にネテスハイムはオールマイティーを基本思想と

 している。1人で戦う教育を受けている。」

 

「ど、どうして? みんなで戦った方がいいじゃない!」

 

「イギリスにおいて魔法使いは貴族だ。貴族は自立を

 求められるからな。自立するには単独で戦えるように

 なる必要がある。チームプレイはあるが、実力が

 あるのが前提だ。」

 

「えっと、じゃあ・・・」

 

「将来、国連軍で指揮を執りたいなら、他国の

 魔法使いへの理解が必要だ。」

 

「貴嬢らは・・・。」

 

ロウ、レティシアたちが合流する。

 

「『貴嬢らは、グリモアの学園生か?』」

 

「え、英語? ちょっとエレン・・・。」

 

「『私立グリモワール魔法学園精鋭部隊隊長の

 エレン・アメディックだ。貴嬢はサー・ハミルトンの

 嫡子レティシア・ハミルトンだな?』」

 

「『いかにも。以前、お会いしたことが?』」

 

2人は英語で話し始める。

 

「ちょっと! 何言ってるかわからないわよ!」

 

「俺はわかるけどな。」

 

「『国連軍にいたころ、ネテスハイム魔法学園を

 訪れたことがある。』」

 

「『では、その時にお見かけしたのだな・・・失礼。』」

 

「『私も貴嬢については知己の者から聞いている。

 ネテスハイムの動きがないが、指揮は誰が?』」

 

「『愚問だ。ネテスハイムの指揮は首席たる

 私が執る。』」

 

「『・・・ならば、今は何をしている。』」

 

エレンはレティシアをにらむ。

 

「『貴校の重要人物を保護する。ロウ・アイダという

 男子だ。』」

 

「『・・・・ふむ・・・。』」


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