グリモアーたとえ面倒でも世界は動く-   作:famgri

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第112話 友達とは

学園

 

噴水前

 

授業をサボッたロウは

ベンチで寝転がっていた。

 

「こんにちは、ロウ君。」

 

「なんだ、立華か。念のため言っておくが

 ちゃんと出席日数は計算してるぞ。」

 

ビシッと卯衣に向かって

指を指す。

 

「・・・何の話かわからないわ。」

 

「違ったのかよ。で、何の話だ?」

 

「私を、クエストに連れて行って

 くれないかしら。」

 

「クエスト?」

 

「あなたにはこれ以上お願いをできるような

 立場ではないのだけど・・・それでも、

 お願い。私はあなたが同行しないと許可が下りない。」

 

「まあ、別にいいけど。授業を

 公にサボれるし。」

 

むくっと起き上がる。

 

「本当? いいの?」

 

「ああ。」

 

頭を数回掻く。

 

「よかった。きっと普段より魔力消費が

 多くなるから嫌がると思った。」

 

安心からか少し顔が綻ぶ。

 

「請けるクエストには注意して。場所は

 旧科研。」

 

「!」

 

ロウの眉がぴくっと動く。

 

旧科研・・・ちょうどいいな。

 

「前に1度行ったあそこか。」

 

「ええ。そしてドクター・・・いえ、

 マスターが、途中まで私を作ったところ。」

 

 

 

 

 

<ロウ、卯衣、移動中>

 

 

 

 

 

旧科研

 

「『ROOM』!」

 

まったく、到着早々とはな・・・。

 

「『ラジオナイフ』!」

 

襲ってきた犬の魔物を切り裂き、

霧散させる。

 

「いきなりやってくれたな。」

 

刀を鞘にしまい、腰に

掛けようとする。

 

「・・・ん?」

 

腰からカチャカチャと

音が鳴る。

 

「・・・!」

 

「どうかしたの?」

 

「いや、なんでもねえ。」

 

ロウは手に取ったそれをもとの

位置に戻した。

 

「・・・使うときあんのかよ。」

 

小さくつぶやいた。

 

「ここは以前、霧を払ってから大分

 時間が経っている。けれど、大型のものが

 複数出現しているわ。」

 

「そうなのか?」

 

デバイスを見て、確認しようとする。

 

「デバイスを見なくても、私に直接

 データをコピーしてるから大丈夫。」

 

「ああ、そうだったか。」

 

ポケットにデバイスをしまう。

 

「ソナーの原理を応用して、施設内の

 魔物の場所もある程度把握している。

 私が何か言うまでは、そのままついてきていいから。」

 

「わかった。」

 

2人は話を終えると

歩き始める。

 

「・・・・! 来たわ。」

 

「・・・だろうな。」

 

再び鞘から刀を抜く。

 

2人の前に巨大な犬型の

魔物が3体現れる。

 

「・・・!」

 

卯衣は緑色の光弾で

魔物を攻撃する。

 

「『切断(アンビュテート)』!」

 

近づいてきた魔物1体を

真っ二つに切る。

 

「『タクト』!」

 

切った魔物をほかの

2体にぶつける。

 

「はぁ・・・!」

 

それと同時に卯衣が

光弾を浴びせ、3体とも霧散させる。

 

 

 

 

 

<ロウ、卯衣、移動中>

 

 

 

 

「・・・マスターにあったことで

 私のデータは復元され、いくつか

 非論理的な要素が発生したの。」

 

「非論理的要素?」

 

「ええ。あなたにはそれを伝えたくて・・・

 ほかの人がいない2人きりで。」

 

「なるほど、それも理由の1つってわけか。」

 

首をコキッと鳴らす。

 

「それで、その非論理的要素ってなんだ?」

 

「私が排除してきたものよ。きっと・・・・

 感情と呼ぶべきもののはず。」

 

「・・・感情・・・。」

 

「これまでの私は、生きることが何よりも

 優先されていたから・・・生命を維持するのに

 不必要なものはすべてシャットアウトしていたの。」

 

「だが、宍戸にあったことで復元された。」

 

「ええ。そこで、生きるための理由を思い出した。

 ・・・私は、可能な限り人間に近づきたいの。」

 

「・・・ずいぶんな理由だな。」

 

軽くため息をつく。

 

「完全な人間になるのが不可能だということは

 わかっている。けれど・・・それがマスターの、

 最大の願いでもあったし・・・私の願いでもあった。」

 

「・・・そうか、まあ、

 不可能であれ、やるしかねえんだろ?」

 

大きく伸びをする。

 

「・・・ロウ君、これまで不快な思いを

 させていたかもしれない。いいえ、きっとそう。」

 

「どうした、急に。」

 

「・・・ごめんなさい、謝るわ。」

 

ゆっくり、頭を下げ、謝る。

 

「生きること自体が目的だった私は、

 あなたに無茶な要求をした。」

 

「生きるのには魔力が必要なんだろ?」

 

「ええ、合理的だったと思っているけれど・・・

 それでは到底人間とはいえないもの。

 ・・・この言葉が正しいかわからないけれど、

 1つ依頼したい。」

 

「なんだ?」

 

「私と、友達になってほしい。私は

 友達がどういうものか、知りたい。」

 

「友達? ・・・・そんなの、

 おま・・・・・・ !」

 

ロウは何かの気配に気づいた。

 

「! 魔物の接近を確認。」

 

「だろうな・・・しかも・・・。」

 

巨大な足音をたてながら

2人の前に魔物が現れる。

 

「ボス、だな。」

 

刀を構える。

 

「『ROOM』!」

 

青いサークルを張る。

 

「・・・!!」

 

卯衣は魔物の周りを飛びながら

光弾を当てようとする。

 

「・・・これは・・・。」

 

魔物は卯衣の攻撃を次々と

躱していく。

 

「ちっ・・・『タクト』!」

 

地面の隆起させ、魔物の

身動きをとれなくさせようとするが・・・

 

魔物はそれすらも躱す。

 

「早いな・・・・ !」

 

・・・これを使うか・・・?

 

腰にあったあるものを手に取り、

構えた。

 

「! ロウ君、それは・・・。」

 

ロウが持っていたのは

黒い銃だった。

 

なんで急にこんなのが・・・。

 

「・・・・・。」

 

静かに狙いを定める。

 

「・・・くらえ。」

 

素早く引き金を引いた。

 

バァン!!

 

銃から黄色い光弾が

放たれる。

 

しかし、それをあっさりと魔物はよける。

 

「くそ・・・!」

 

だが、光弾が地面に当たった瞬間、

激しい音を出して、スパークした。

 

「な・・・!?」

 

スパークは魔物に当たり、

動きを止める。

 

「! これなら・・・!」

 

卯衣は手の上に巨大な

光の球を作る。

 

「今だ! 立華!」

 

「ええ・・・。」

 

作ったそれを思いきり

魔物にぶつける。

 

大きなうめき声をあげ、

魔物は霧散した。

 

「ふぅ・・・。」

 

「・・・ケガはない? 一応、

 スキャンするわ。」

 

目から光を出し、ロウの

体を調べる。

 

「外部、内部ともに損傷なし。毒、なし。

 その他問題と思われる成分の混入なし。

 大丈夫そうね。」

 

「そうか。」

 

「・・・ところで、さっき何を

 言おうとしたの?」

 

「ん? ・・・ああ、あれか。お前には

 すでにいるって言おうとしたんだよ。」

 

「・・・・それは・・・どういう意味なのか、

 聞いてもいいかしら。」

 

「・・・え?」

 

俺、おかしなこと言ったか?

 

「友達がほしいという欲求は最近

 発生したものよ。なのに、もう私に

 友達がいるというのは、論理的におかしい。」

 

「天文部の奴らもか?」

 

「・・・とても、難しいわ。私と天文部の

 みんなの関係性がそうだというの?」

 

「ああ。」

 

うんうんと頷く。

 

「・・・じゃあ、私とあなたの関係性は?」

 

「・・・また妙なとこ、聞くな。

 ・・・・まあ、友達・・・なんじゃないか?」

 

戸惑いながらも答える。

 

「私とあなたは・・・友達・・・。

 ・・・言語化できないけれど、

 不思議な響きがしたわ。」

 

卯衣はにこりと笑った。


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