早くもスランプ到来に加えて、DARK SOULSⅢ発売が重なり、原稿に手がつかない状態でした。
スランプはともかくDARK SOULSは一周目クリアしたので、今後は今回ほど更新が遅れることはないと思います。
「アドル……この後、少し話がしたい。休憩の後、庭園まで来てくれ」
だと思った。そりゃこうなるわ。
俺は溜息をついた。まあ、自業自得だ。普通の人からしたら「内臓攻撃」なんて、悍ましい行為そのものだろう。実際にヤーナムの人間からもそれで「気持ちが悪い」とか「人でなし」とか色々迫害されたことがある。
「とはいえ、なんて説明したものか……」
冷静になって考えてみれば、あの時は内臓攻撃だけでなく神機で串刺しにして内臓を抉っていた。いよいよ本当に化け物扱いされてもおかしくない。フランとかに知られたらまた、距離を置かれるのかねぇ。
そう思いながら、ロビーの椅子で頭を抱えていた時の事であった。
「また考え事ー?」
「ん?」
顔を上げると、ナナがいた。訓練帰りだろうか、少し汗の香りがする。一応注意しておくが俺は変態じゃない。あのガスコイン神父だって盲目を物ともせずに、自分の嗅覚のみで狩りを行っていた。それを見習って、匂いにも気を配っているだけだ。いや、本当に。
「あぁ、ちょっとな。ナナは訓練帰りか?」
「うん、そうだよー……ってなんか口調が重たいね。考え事っていうか悩み事って感じ?」
「あー……まあ、そうだな」
なんか、ナナに会うときはいつも考え込んでる気がするな。タイミングがいいのか悪いのか……どっちにしろあまり「内臓攻撃」の件については触れられたくない。話題を変えるか。
「悩みがあるなら聞くよー?聞いて何かできるかは分かんないけどさ、1人で抱え込むよりはずっと楽になるはずだから!」
話題を変えられる隙なんてなかった。せっかくの善意を無下にする訳にもいかんしな……良心が痛むが煙に巻かせてもらうか。
「まあ、その、訓練でちょっと……失敗したんだ」
「あー、なるほどねー」
うむ、間違ったことは言ってない。失敗というか過ちに近いが、意味は大体一緒だ。細かいことは気にしない気にしない。
「まあ、あたしたちまだ新人だし、そんなに気負うことないんじゃない?失敗してなんぼだよー」
「……そういうものか」
失敗から人々は学んできた、確かにそうかもしれない。現に俺だって「死」という失敗を何度も経験して、最後の戦いまで進んでこれたのだ。それに比べたら、今回の事なんて本当に小さな出来事に過ぎない……そう考えると何とかなる気がしてくる。
「……少し気が楽になった、ありがとうナナ」
「気にすることないない~。私たち同期なんだから、助け合わないとね!」
煙に巻くつもりが本当に元気付けられてしまった。感謝の気持ちと同時に下心ありありで話してしまったことにものすごい負い目を感じる。機会があったら正直にはなそう、そうしよう。
心の中で自己完結し、苦笑を浮かべたときだった。
「あれ?見ない顔だね、君ら」
「ん?」
顔をあげると、そこにはまだ幼さが残る少年が立っていた。歳は15、6といったところだろうか。特徴的な帽子をかぶり、碧色の瞳をした彼は不思議そうな顔でこちらを見ていた。そして、ふと腕に目をやると自分と同じ黒い腕輪をしていることに気づいた。
「君も、ブラッドの隊員なのか」
「君もって……あっ、もしかして噂の新人さん!?」
新人さんって事は前からブラッドにいる子なのか?なるほど、先輩ということであればフラットな態度も頷ける。
「えぇ、そう……なりますね。これからよろしくお願いします、先輩」
「よろしくお願いしますー!」
横で元気よくナナが続いた。一方「先輩」の方は目を輝かせながら「先輩……なんかいい響き……!」と感動していた。なんというか、初々しい。
「よし、俺はロミオってんだ。先輩が何でも教えてやるから、何でも聞いてくれ!あ、それとブラッドは甘くないぞ、覚悟しておけよ」
「おぉ~先輩っぽい」
先輩っぽいじゃなくて先輩だからな、ナナ。その言い方だと今まで先輩に見えてなかったみたいに聞こえるから止めなさい……まあ、俺も最初はそう見えなかったが。
「ふっふーん、そうだろー。あ、それと全然タメ語で構わないぜ。先輩は寛大だからな!」
……当の本人気付いてないのかよ。
色々ツッコミたいが今は流そう。ロミオ君も質問されることを期待してるようだし、ちょっと話を聞かせてもらおうか。
「じゃあ、ひとつ質問いいか?ロミオ君」
「おう、ええと名前は……」
「アドルファス・ジャノグリー。アドルでいい」
「アドルか!オッケーオッケー、それで何が聞きたいんだ?」
俺は前々から疑問に思っていたことを聞くことにした。
「『血の意志』とは何か……それについて教えて欲しい」
あのとき、ゴッドイーターの適合試験とやらのときの声が言っていた。俺自身の血の意志がそうなることを望んだのだと。ならば問いたい、この世界における血の意志とは何だ?狩人にとってそれは、己が身体を器として蓄積し、己の力とするもの。全ての獣や狩人、上位者からでさえ得られるそれは云わば魂の様なものである。それがゴッドイーターになることを望んだ……というのはつまり、俺の魂がそう望んだということになる。そうだったとしてその真意が俺にはわからない。そもそも、この解釈はヤーナムにおける血の意志とこの世界の血の意志の意味が同じである前提を踏まえた上での考察だ。確証に至るものが何もない。だからこそ、知りたいのだ。「血の意志」の本当の意味について……。
「お、おおぅ……いい質問だね……」
……うむ、ダメそうだな。完全に目が泳いでいる。
聞く人を間違えたことを確信し、俺は目を瞑った。質問の答えを半ば諦めて他の質問を考えてたときだった。
「血の意志っていうのは……えーっと、そうだ!ラケル博士が言ってたんだけど、血の力に目覚めるために必要な何からしいぜ!」
その「何か」を知りたいんだがそれは……まあ、いいか。どうやらラケルという人物が知っているらしいことは分かった。恐らく、あの声の主と同一人物だろう。
「あのー、ロミオ先輩。血の力っていうのはー?」
横からナナが質問した。確かに気になることではある。それに対するロミオの応答はというと――。
「あー、血の力っていうのは、俺たちブラッドが秘めてる力でな……そう!血の力に目覚めると必殺技が使えるんだ!」
「必殺技?」
「あぁ!ウチの隊長なんてすごいんだぜ?どんなアラガミもズバーン!ドカーン!って倒しちまうんだからな」
ほう……ジュリウス隊長はそんなに強かったのか。なるほど、初対面に感じた他の人間との雰囲気の違いは間違いじゃなかったようだ。あのときは動揺していたのもあって、思い違いかと思っていたのだが・・・。
「へぇ〜、すご~い!じゃあ、ロミオ先輩の必殺技はどんな感じなの?」
「ば、ばっかお前・・・必殺技ってのは簡単に手に入るもんじゃないんだよ……」
……使えないんだな。
彼の言う通り習得が容易ではないのか、それとも彼が未熟なのかは分からないが、とにかくブラッドには後々必要になってくるものなのだろう。
「そうだ!今みたいな質問はラケル博士にどんどん聞けばいいと思うな、それじゃ俺はちょっと用事があるから!」
すっと立ち上がってあっという間にエレベーターの中へと姿を消したロミオ君。うむ、見事な逃げ足。狩人に成り立ての頃、勝てないと思った戦いはよく尻尾巻いて逃げたもんだ。「(いろんな意味で)死にそうになったら逃げる」、彼のとった行動は何も間違いじゃない。
そう勝手に納得して、うんうんと首を縦に降る。一方ナナは「なんかまずいこと聞いちゃったかなぁ~」と頬を掻いていた。まあとにかく、今日は色々分かったことがある。今度、彼の言っていたラケル博士という人物に会うとしよう。この世界の「血」の意味を少しは理解できるはずだ――。
それはそうと、何か忘れてる気がするな。うーむ、なんだったかな。
「……アドル、遅いな」
この後めちゃくちゃ問い詰められた。
最後テキトーすぎ。
スランプ抜けるまでご勘弁ください。