狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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遅くなってすみません。今週は忙しかったので手が付けられませんでした。
来週も場合によってはきついかもしれませんので、そのときはすみません。




※日を置きながら書いていたので内容がちぐはぐかもしれません。


食い違い

――『フライア』

 

我々ブラッドの拠点であり、フェンリル極致化技術開発局そのものでもある移動支部。そこではアラガミに関する多種多様な研究が行われており、その設備たるやフェンリル本部に勝るとも劣らないという。また、研究設備のみが充実しているわけはなく、我々ブラッドが快適に生活、訓練を行えるような施設も整えられている。現に今、俺たちはその設備を使用している。

 

 

「20分経過しました。このまま続けましょう」

 

 

良く言えば『流暢』、悪く言えば『機械的』な声が響いた。それを聞いて、俺はなんの考えもなくそれに従った。

 

 

「あ、アドル……ちょい、スピード緩めて……」

 

「脇腹痛ってぇ……もう限界……」

 

 

振り向かなくとも消衰が解るほどの、荒い息遣いが聞こえる。そうは言うが、そうしてしまったら訓練の意味がないだろう。そう思いながらも後ろを振り向けば、ナナとロミオ、そして新しいブラッドメンバーであるシエルが一列に並んで走っている。

 

 

「まだ後10分残っています。指定したノルマはきちんとこなしてください」

 

「け、けどさ……もう足が動かないよ……」

 

「3人の身体能力を考慮したうえでのトレーニングメニューですので理論上は可能です。後は精神力の問題ですから、『やりきれる』という強い意志をもって走ってください」

 

「最後は根性論かよ……ハァッ、ハァッ」

 

 

無慈悲な言葉が2人に投げかけられる。現在、俺たちは「持久走」を行っているのだが、俺とシエル以外の2人はもう疲労困憊しているようだ。

 

 

「……まあ、とにかくだ。後10分走り終えたら休憩とするか」

 

 

現在、訓練開始から数時間経つが一度も休憩をはさんでいない。長時間訓練で体を酷使して任務に支障を起こされても面倒だ。ゴッドイーターと言えど人の身、限界点は存在するのだから休息も必要だろう。

 

 

「そうですね、適度な休憩も大事です。後で一分間ほど取りましょう」

 

「いッ!?」

 

 

ロミオが絶句する。一分間で出来ることなど息を整える程度だろう。俺の言った『休憩』は、一度体を休ませる意味だったのだが彼女にはそれが分からなかったようだ。まだ訓練を続けるつもりらしい。

 

 

「さあ、残り5分です。気を緩めず行きましょう」

 

「」

 

 

結局、この後訓練は延々と続いた。俺としては『体』が『体』のため疲れはしないが、ひどく退屈な時間が続いたことに違いは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度引きましょう。その方が現実的です」

 

「いいや、こっちが優勢なんだ。今畳み掛けなきゃチャンスを逃すぞ」

 

 

何故こうなった。内心頭を抱えつつも、目の前の現実を受け入れようとする。訓練が終わり、現在鉄塔の森にてギルとシエルを引き連れ任務中なのだが……ギルの時も面倒なことになったが、今回は規模が違う。この前の訓練の時といい、ブラッドメンバー全員がシエルと何かしらの『食い違い』を起こしている。喧嘩沙汰……というほどではないが、場の空気が重くなっていることは間違いない。

 

 

『――ザザッ、ここは副隊長の判断に任せる。どちらの意見をとっても構わない、自分の考えた案でもいい』

 

 

埒が明かないと思ったのかジュリウスが助け舟を出した。それに従うように、二人も判断を乞うような目でこちらに向き直った。

 

 

「……まあ、なんだ。とりあえず焦って仕留める必要はない。ただ戦闘中は相手を圧倒し続ける状況を作り出すことを考えろ。手段は問わない。だが1対多数の状況だけは絶対に避けろ、いいな?」

 

 

色々喋ったが、要は集団で行動しろという意味だ。チームの連携が取れない以上、数の優位で押し切るしかない。実戦で培ってきた『勘』を判断材料に戦うギルと訓練で学んだことを実戦でそのまま生かそうとするシエル……スタイルが全く持って正反対な二人がお互いの意見を譲らないのだ。なら、その他の判断は各自に任せ、俺が2人をカバーできる範囲で遊撃するしかないだろう。

 

 

「つまり追撃でいいってことか?」

 

「ギル、お前は追撃で奴らを圧倒できる確信があるか?」

 

「いや、確信って程のものはないが……」

 

 

さっきも言ったが、彼の判断材料は経験に元付いた……云わば『勘』だ。全てに確証があるわけではない。故に皆を納得させるほどの説得力はない。

 

 

「では、一度後退ということでよろしいでしょうか?」

 

「退いても構わん。だがそれで次の戦闘は現在ほどの優位性を作れると断言できるか?」

 

「……断言はできませんが、恐らくは可能です」

 

 

彼女の最期の言葉に普段の力強さは無く、少しだけ言葉に揺れがあった。どれだけ良い仮説を立ててもそれを実証したことが無ければ、自信を持って判断することはできない。実戦経験の少なさが彼女の言葉に迷いを生んだのだろう。

 

 

「まあ、死なければ何をしても構わない。結局のところ、終わった後でなきゃ何が良くて何が悪いなんてのは分からないからな……」

 

 

それだけ言って、俺は神機を担いで歩き始めた。

 

 

「せっかく人数がいるんだ、集団行動は厳守。それ以外は個人の好きにしろ」

 

 

残念ながらこれ以上は何を言ったらいいかわからん。集団での戦いはゴッドイーターになって初めて経験した身、この場で的確な指示を出せるほどの余裕は俺にはない。

 

 

「おい、結局追撃かよ」

 

「話し合いで時間は取った……言ってしまえば、どっちつかずだな。だがまあ――」

 

 

頭を掻きながら歩みを続けた。後ろの方でギルの溜息をするのが聞こえたことから、いつもの様に肩をすくめているのだろう。

 

 

「ガァァァァァ!!!」

 

「……追撃の必要もないみたいだがな」

 

 

その咆哮と共にオウガテイルの群れが俺たちを包囲する。お仲間も引き連れてきたようで、数が増えている。とは云えだ、やることいつもと変わらんがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Todays, I also joins the hunt(今日も今日とて狩り日和だ)...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

派手にやりすぎた。反省?そんなものは通り越して猛省している。

 

いや、十中八九あいつ(ヤクシャ)の血の所為だな。なんというか、人間の血に酷く似ていたのだ。それで思った以上に気分が高揚してしまい、気付かず内にアラガミの解体ショーを披露してしまったわけだが……まあ、見ていて楽しいものではなかったのは確実だ。

 

 

「そもそも、どうして上位者になっても血を求めるのだろうか……」

 

 

それが月の支配者の行動原理だったのだろうか。いや違うな。支配し相手を『蹂躙』し続けることが快感なのだろう。血への執着は単なる癖のようなもので、血=甘美であると体が勝手に感じるらしい。とりあえず、俺に必要なのは走り込みなどではなく、人前では理性を保つ訓練だな――。

 

 

 

 

 

――ピンポーン

 

 

「む?」

 

 

ふと部屋の呼び鈴が鳴った。俺の部屋に尋ねてくるのはロミオかナナぐらいだが、どちらだろうか。いやどちらだとしても……話の内容は目に見えて明白だ。おそらくシエルの事だろう。

 

 

「何方様だろうか――」

 

 

扉をスイッチで開いた瞬間、言葉が詰まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アドル副隊長……少し、お時間を頂けますか?」

 

 

 

 

 

人間よりアラガミの方が好きになりそうな気がしてきた。

 

 

 






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