狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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有言実行……やはり一週間となってしまいましたか。

できれば明日にもう一話分ぐらい投稿したいですね。
そんな元気が残っていればの話ですが(白目


安全第一

「今回はコンゴウの撃破が目標となります。ウコンバサラと同様、中型種(・ ・ ・)ですので決して侮ることのないよう。なお、今回は二匹(・ ・)確認されていますので決して(・ ・ ・)警戒を怠らないでください」

 

「あ、ああ。肝に銘じよう」

 

 

日頃から丁寧な口調で物事を説明してくれるフランだが、今回は一段と抑揚をつけて説明してくれる。うむ、やはりあの時の事を根に持っているのだろうか……。

 

 

「では、1人も欠けることの無いよう……後、くれぐれも(・ ・ ・ ・ ・)戦闘中は無線を切ることの無いように。それではご武運を」

 

 

うむ、持っているなこれは。俺、アドルファス・ジャノグリーは受付前で遠目から見ても分かるほどに肩を落とした。とは言え、身から出た錆だ。俺自身が彼女を怒らせてしまったのだから仕様がない。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

狩人の夢から目覚めた後、俺はギルの助けを借りヘリへと運ばれたことを知った。そして、そのままフライアへと帰還し、ミッション終了の報告のため受付へと向かった。

 

 

 

問題はここで発覚した。

 

ミッション終了報告時、受付でフランからあることを問われた。それは「最初に行った通信以降、無線が途絶えたがなにかあったのか」というものである。確かに思い返してみれば、戦闘中フランの声を聞いた憶えがない。疑問に思い、すぐさま付けている無線をフランに手渡してみると……無線がミュートスイッチというものがオンになっていたらしい。

 

 

「何考えてるんですかッ!!もしこれが単独でのミッションだったら大惨事だったかもしれないんですよ!?」

 

「……め、面目ない」

 

「いいですか、今後このようなことは絶対に起こさないで下さい!!分かりましたか!?」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

普段クールでどんなことにも冷静に対応してくれたフランだが、今回の件については物凄い剣幕で叱られた。当然と言えば当然か……オペレーターとしての業務を全う出来なくしたようなものだからな。すべて俺が悪いのだ。彼女の怒りは全て受け止めるのが俺に与えられた義務というもの。彼女の気の済むまでどんな塩対応でも受けようではないか!

 

 

「絶対また勘違いしてるだろ、お前」

 

「む?何か言ったかギル」

 

「いや、もういいわ……」

 

 

小声で何か言った気がしたが、気にする必要はないらしい。とにかくだ、彼女の怒りを一身に受けるのもそうだが、それに加え俺自身が彼女に誠意を見せることも必要だろう。うむ、次の任務は彼女が満足の行くような働きをするとしよう。

 

 

「なになに~?アドル、フランちゃん怒らせたの~?」

 

「ああ、少しな」

 

 

ナナの言うことは間違っていない。間違っていないが、皆まで言われると結構心に来るものがある。彼女にも他意は無く、ただの事実確認のつもりなのだろうが……もっと、こう、少しでいいからオブラートに包んでほしかったりもする。せっかく意を決した心が僅かに揺らいだぞ。

 

 

「準備は整ったか?そろそろ出発の時間だ」

 

 

出撃ゲートの方からジュリウス声が響く。とにかく、今日は極力彼女の迷惑にならない様動くとしよう。となればまず第一に1人での行動は厳禁だろう。それに加え危険とみられる行動全般を控えるとなれば、遠距離からの攻撃が主流となるはず……つまり、Oアンプルは必須ということだな、うむ。

 

 

「ねえ、ギル。今日のアドルなんか変じゃない?」

 

「まあ、ある意味任務に支障はないから気にするな。むしろ今回は戦いやすくなるはずだ」

 

「え、どういうこと?」

 

 

事情を知っているギルは言葉がを濁しながら、そそくさとゲートに向かう。首を傾げながらも、ナナもそれに続いた。2人がいなくなったことにようやく俺も気づき、後を追いかける。ロビーには再び静寂が訪れ、フランが端末を扱う音だけが木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんごめん~、いやーゆうべユノの音楽聞いてたら遅くなっちゃってさぁ……ってあれ?みんなどこ行った?」

 

 

 

 

――遅刻者に、情け無し。後々分かったことだが、この事態を見越してフランがもう一台輸送車両を用意していたらしい。それを聞いた俺は彼女の手際の良さに、改めて感服するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どりゃあ!!」

 

「うらぁ!!」

 

 

翡翠を思わせるような美しい大地に重低音が響く。土煙が舞い、二つの影がそれを切り裂くように現れた。

 

 

「やったぁ!」

 

「もたもたすんな!アドルの射線に入ってるぞ!」

 

「わっとと、ごめんなさーい!」

 

 

攻撃が決まったことに嬉々とするナナにロミオが叱咤を飛ばす。周りを気遣いながら戦えることは悪くないことだ。だが、それは自分の身を守れる人間がすることが前提で――

 

 

「って、ロミオ先輩!前、前!!」

 

「な、うわぁぁッッ!!?」

 

 

退路として選択した先に立ちふさがる巨影。それの隆々と発達した上半身が空を覆った。突然のことに固まるロミオ。当然だ、唐突に不測の事態が起きた時に、最適な行動を出来る者などそうそういない。だからこそ、足りなくなった場所を補い合う『仲間』がいる。

 

 

 

 

 

――ッッシュン

 

 

 

 

「……へ?」

 

 

固まったままのロミオが素っ頓狂な声を上げる。立ちふさがったはずの巨影がなぜか後ろに倒れこんだのだ。そして、そのままもがく様に脚をばたつかせ始めた。

 

 

「ギル、ロミオを頼む」

 

「ったく、張りきって突っ込んでこのザマか」

 

 

悪態をつきながらも走り出す姿は決して嫌そうではない。何方かと言えば世話を焼く兄……といったところだろうか。そんな彼の背中を眺めながら俺は少し笑った。ついこの前までは仲違いしていた二人だったが、気が付けばまるで年の離れた兄弟の様だ。

 

 

「おら、早く立て。一匹目が態勢立て直しちまうだろ」

 

「う、うるせーな!ちょっとコケただけだっつーの!」

 

「ほらほら、二人とも早くー!」

 

 

そんな会話をしながら後退してくる3人を確認して、俺は撃ち切った狙撃銃(スナイパーライフル)再装填(リロード)した。先ほどロミオの前に立ちはだかった巨影……討伐目標である「コンゴウ」の目にくれてやった銃弾でどうやら最後の弾倉となったらしい。というか、使い始めた当初から驚いていたのだが、こんな長距離でも射程内という銃が存在するとは……しかも一撃一撃が通常の銃とは比べ物にならないほど重い。やはり人間の技術力は侮れんな。

 

 

「あっ、一匹逃げた!」

 

 

ほんの少しの間感傷に浸っていると、撤退してきたナナが声を上げた。見ればナナたちが攻撃していたコンゴウが逃走を図っていた。

 

 

「む、捕食で回復されると厄介だな。アドル、お前は奴をエミールと共に追撃してくれ」

 

「任されたッ!前の任務の借りもある……共に行こう、アドル殿ッ!!」

 

 

ジュリウスの指示に応答し、エミールが先行した。確かに弱っている今なら二人で仕留めきれる。もう一匹はあの3人でもジュリウスがいれば的確な指示の下で戦えるだろう。俺は頷き、すぐさまエミールの後を追う。また勝手に突っ込まれて被弾されても困るからな。

 

 

「行くぞぉぉぉぉッッ!!騎士道の名の下にぃぃぃぃぃッッッ!!!!!」

 

 

相も変わらず騒がしい奴だが、悪い奴でもないのも確かだ。さて、仕事を終わらせるために、俺もひとつ気張って行くとしよう―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……フランに怒られない範囲で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

グゥルルル……。

 

 

戦いを傍観するようにその獣は、ただ鎮座していた。獲物の一部が群れから離れ、孤立する瞬間を待ちながら――。

 

 

 

 

――覚醒の刻が、迫る。

 

 


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