狩人様は神喰いに。   作:zakuzaku

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今更ながら、お気に入りが50越していることに驚きを隠せません。
先週UAもそれなりにあるし……こんな作品でも皆さん読んでいただけて光栄です。



極東の騎士

「フフ、緊張するのも無理はない……だが、安心したまえ!この僕が来たからには、心配は完全に無用だッ!」

 

 

……なんだこいつは。

 

唐突に話しかけられて、第一印象がそれだった。いや、恐らくここに来たばかりの俺であれば歓迎したかもしれん。そう思えるほど目の前の『彼』はなんというか……ややこしい奴だった。

 

 

「おっと、失礼した。僕はエミール……栄えある、極東支部『第一部隊』所属!エミール・フォン・シュトラスブルクだッ!」

 

 

……そうか。うん、そうなのか。

いや、これ以外に何と言えばいいのかわからん。とりあえず、任務帰りで隣にいるギルを見た。案の定、彼も「なんだこいつ」といった顔をしている。

 

 

「……そうか、よろしくな」

 

 

沈黙を裂くように、ギルはそれだけ言った。それに便乗して俺も『狩人の一礼』をしてみせた。するとどうだろうか、エミールの目が光り、こちらを凝視してきた……なんだか嫌な予感がする。

 

 

「その趣きのある一礼……ハッ!?君はもしかして騎士なのか!?」

 

 

よく分からんが、面倒な狙いを付けられた気がするぞ。余計逃げづらくなっちまったな。でも待てよ……彼の言う『騎士』というのも気になる。確かに俺は昔、女王アンナリーゼと契約を交わし、カインハーストの一族となった。が、フライアに来て以来、彼らが身に着けるカインの装備や騎士装束は一度たりとも着たことはない。周りから変な注意を引きたくはないからな。

だが、彼はそれでも俺を騎士だと言った。その理由が気になる。

 

 

「俺は騎士ではないが……何故そう思う?」

 

「何故って……決まっているじゃないか!君がさっきした『一礼』は昔ながらの騎士の一礼だッ!」

 

 

何?あれが騎士の一礼だというのか。うーむ、彼の目を見る限り嘘はついているようには見えんしな……。この世界では「狩人の一礼」は「騎士の一礼」となるのか。今後、変な誤解を生まないためにも覚えておこう。

だがしかし、今はその誤解が現在進行形で起きている。早く解かないければ彼の事だ、余計ややこしくなるに違いない。

 

 

「あんな一礼を騎士がする訳ないだろう。本物の騎士ならきちんと『拝謁』するはずだ」

 

「何ッ?では、騎士のする『拝謁』とは一体どのような……?」

 

「いや、普通こうだろう?」

 

 

そう言って、俺は目の前で『簡易拝謁』してみせる。すると、さらに彼の目の輝きが増した。そして同時に険しい表情をする。

 

 

「なるほど……。やはり、僕は騎士としてはまだまだ未熟ッ!騎士が礼儀である挨拶の知識すらないとはッ……!!やはり、君は本物の騎士だったのかッ!!」

 

「いやだから俺は騎士じゃ―――」

 

「フライアに来てよかった……僕は騎士として……いや、本物の騎士となるためにより一層励まなければいけないことが分かった……」

 

「……おーい」

 

 

だめだ、完全に聞こえていない。人の話を聞かないタイプの人間だ。もうすでに半ば諦めてため息を吐いた。ギルも「なんだか大変そうだな」と憐みの目でこちらを見てくる。そう思うのなら助けてくれ。

 

 

「君ッ!どうか、名前を教えてはくれないか!!」

 

「え、ああ……アドルファス・ジャノグリー。アドルでいい」

 

 

名前を聞かれ、いつも通りの自己紹介をする。すると、鋭く「君はッ?」とギルにも間髪入れず聞く。話を聞かない割には変なところで律儀な奴だな。

 

 

「2人とも、今後少しの間ではあるがこのフライアで世話になることになる……僕のような未熟な奴が言うのもおこがましいが、遠慮せず任務に誘ってくれッ!」

 

「あ、あぁ……よろしく頼む」

 

「うむ、共に歩もうではないか、騎士の道をッ!!」

 

 

そう言って、彼は拳を高く突き上げ、こちらに振り返りながら歩いて行った。全く、嵐のようなやつだったな。

 

 

「ややこしい奴が来たな……」

 

 

ギルがそう呟くのを聞き、「だよなぁ……」と独り言にも近い返事を返した。ちなみにこの数秒後、階段の方で「「おわぁぁぁッッ!!?」」とエミールとロミオらしき悲鳴と、何かがもみくちゃになりながら転がるような音がロビーに響いたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんだこいつは?」

 

 

ギルはそう言いながら、神機を構える。うむ、ついさっきもそんなこと思ったのは気のせいではないはず。俺たちの目の前には巨大な口を開け、威嚇するアラガミの姿があった。

 

 

「あー……えっとだな、フラン?ドレッドパイクの掃討が任務のはずだよな?」

 

「はい。ですが、言ったはずですよ?任務に行く前に――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「極東支部のゴッドイーターとの連携を図るため、アドルさん、ギルバートさん、エミールさんで任務を行って欲しいとのことです」

 

「ダメだったか……」

 

 

受付のカウンターに肘をついたまま、首を落とした。出来る限りエミールをスルーしようと思っていたのだが、まさか、もう固定で人員が組まれているとはな……。

 

 

「……それで、今回の目標は?」

 

「ドレッドパイクの群れの掃討ですね。危険性は低いと思われます」

 

「なるほど、じゃあ、さっさと片づけてくるとするか」

 

 

思い立ったが吉日。面倒ごとはすぐに解決だ。早速二人に招集をかけるとしよう、そうしよう。

 

 

「ですが、付近で荷電性のものと思われるアラガミ反応があるらしいので、十分に警戒して……って、あら?」

 

 

資料に目を通し終え顔を上げると、目の前には誰もいなかった。ただ、目の前の書類には「Adolphus Djanogly」とかなり癖のある筆記体でサインがされていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なるほど、それは俺が悪かった。うむ、人間誰でもミスはするものだな」

 

「誤魔化すな……はぁ、今度から気を付けろよ」

 

「……面目ない」

 

 

同行したのがギルで良かった。ロミオやナナだったら罵詈雑言……とまでは行かずとも「ふざけるな」ぐらいは言われただろう。なぜってそりゃ――

 

 

「中型アラガミか……戦うのは初めてか?」

 

「……まあな」

 

 

目の前のアラガミは今までとは比べ物にならないほど巨大だからだ。しかも、辺りに何やら電撃をまき散らしている。黒獣を彷彿とさせるそれは今にも襲い掛かる勢いだ。

 

 

「お喋りは終わりだ。とっとと片づけるぞ」

 

「了解」

 

 

神機を構える2人。ところで、憶えているだろうか。この任務において、アラガミ乱入以外で少々特殊な事例。もう一人の神機使いがいるという事実を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闇の眷属め、この僕が相手だぁぁぁッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラガミの後方から雄たけびを上げ、突っ込んでくる影が一つ。

 

 

「喰らえッ!!エミールスペシャルウルトラ―――」

 

 

その影が何かを言い切るより少し早く、目の前のアラガミが動いた。一瞬、肌にビリッといった感触があったのを認識した瞬間、目の前でその影が吹っ飛ぶのが見えた。

 

 

「なにやってんだお前……」

 

 

アラガミの電撃を受け、躰を痙攣させながら影……もといエミールが俺たちの目の前まで吹っ飛んできた。まともに電撃を喰らった割には「き、騎士道が通じない……」などと呻いている。見かけによらずかなりタフなやつだな。これなら命に別状はないだろう。

 

 

「さて、こいつ(エミール)こいつ(アラガミ)……どうしたものか」

 

 

 

 

 

 

緊張感の欠片も無い中、俺にとって初の中型アラガミ戦は幕を開けるのだった。

 




凄くどうでもいいことなんですけど、この小説の世界観は完全にGE2の一番最初のCMですね。
顔とかリアルすぎてめちゃくちゃ笑った記憶があります。

ですが今思えば、語り手が英語なことや、無駄に壮大なところとかがフロムっぽくてすごくマッチしてる気がするんですよ。(なんのこっちゃ



あ、それだけです、はい。


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