期待できる話になるかどうかは分かりませんが、頑張っていきます!
狩人を終えて
―――ものは言い様、という言葉がある。まさしくそれが俺に当てはまってしまったわけだ。狩りを続けることがいつかは俺の目的に重なる。その意味をやっと理解できた。
「□□□□□□ーーーーーーーッッッッ!!!」
不服か?そうだろうな、欲しい力が目の前にあるのにそれを得られないなんて、上位者のお前からしたら歯痒いに決まってるだろうな。
「#%コ*&ロ:*:/ス#&:*<#!!!!」
……ああ、今じゃ何となくお前らの言葉も分かるよ。白痴の蜘蛛と乳母の血を啜ったんだから当然か……まあ、既にどうでもいいことだが。
「……どの道、狩るのは変わらん」
その日を境に、獣狩りの夜は幕を閉じる。
そして、物語は幼年期へ――。
◇ ◇ ◇
「……?」
どこだここ。それが最初の印象だ。
上位者である月の化け物を狩り、俺は確かにあいつの力をも奪った。そして、俺自身が上位者になる道を歩んだはずだ。なのにどうだろう。目の前に広がるのは、見たこともない景色。そして上位者へと進化すると思っていた体は人間の姿のまま。
「えーと……どういった状況だこれは」
目の前の景色というのは……端的に言えば「荒野」だった。何も存在しない大地がただ広がるだけ。俺の知っているヤーナムにこんな場所はなかった。
――全て、長い夜の夢だった。
ゲールマンの言った通りすべて夢だったのか?この荒れ果てた世界こそが、俺の戻るべき現実だったのか?いや、そんなはずはない。それを証拠づけるように、俺は武器を握りしめたままだ。レイテルパラッシュと銃槍、そしてシモンの弓剣までもが俺の倒れていた場所にあった。俺は確かに、あの悪夢の中で獣たちを屠ってきたのだ。本当に夢のはずが――
「グゥルルル……」
「!?」
聞き覚えのあるような唸り声が聞こえた。振り返ると、予想していた事実を半分ほど裏切ることとなった。
「獣……か?いや、それにしては――」
異形。いや、今までに見てきた獣でも異形なものは多かった。とすれば、目の前にいるのは上位者の類か。
「グゥアッ!!」
「……チィッ!」
考える時間を与えてはくれないようだ。
パァンッ!!
まずは遠距離から攻める。レイテルパラッシュを変形させ、銃を撃つ。弾丸は胴体に着弾したようだが、効果は薄いように見える。
「血の効果は薄いか……なら接撃の方で攻撃を……ッ!?」
俺は少し油断していたのかもしれない。とはいえ、自分の判断が間違いである事実に変わりはない。獣狩りを始めた当初から嫌というほど経験してきたはずなのに、今となって同じ過ちを繰り返すとは……。
―――どうして、敵が一体しかいないと思ったのか。
銃撃の発砲音を聴きつけたのか、同じ容姿をした獣どもが集まってきたのだ。しかも、俺の周囲を取り囲むかのようにしてだ。
「これはちょっとマズいな」
とにかく突破口を開かなければ確実に死が待っている。恐らく夢から解放されている今の状況では、狩人の夢に帰れるかどうかも分からない。そもそも、殺した月の化け物が夢を作り出している主だったと考えると、既に夢自体が消滅している可能性だってある。
「どの道、また夢を見ることはないと考えていい……ガスコイン神父やアイリーンのように、死んだらそこで終わりだ」
今まで出会った狩人たちを脳裏に浮かべる。各々の最期の瞬間は違えど、無念だったに違いない。だが、彼らは自分の生と全力で向き合い、決して投げ出さなかった。異端と言えど、俺だって狩人の端くれだ。ここで自分の命を投げ捨てるような真似をするつもりはない。
とにかく極力接近は避ける。攻撃を交わしつつ、何とか距離をとったら全速力で逃げる。そうしよう、いやそうすべきなのだろう。
「グゥルアァッ!!!」
そう思っているうちに近づいてきた一匹を斬りつけながら回避する。ダメージが入っているようには見えないが、傷を負わせることは可能なようだ。我ながら集団戦闘は苦手なものだが、とにかく逃げ腰だけはあの悪夢で培ってきた。まあ、それでも数え切れないほどの死を体験したが。なんて思いながらも斬りつけたときに顔に付いた返り血を舌で舐め取る。
「……!」
やはり俺は狩人なのだろう。
「ハハッ……最高に匂い立つじゃあないか」
こんな絶望的な状況でも、少量の血で不安など吹き飛んでしまうのだから本当に救い様が無い。正真正銘、血に酔った狩人のままだ。
「そうだよなぁ……例え死んだとしても――」
逃げるのは止めよう。獣を狩るのが俺の仕事のはずだろう。
再度敵が突っ込んでくるのが見える。だが避けはしない。
「ガァッ!!?ガ、ゲッ……」
「俺を喰いたいんだろう?どうした、腕の一本ぐらい噛み千切って見せろ」
他者からしたら気が狂ったようにしか見えないだろう。得物を
「――さあ、そろそろ俺にもお前の血の味を教えてくれ」
刹那、化け物の体躯が宙を舞った。引き剥す要領で蹴り飛ばしたのだ。それを見届けることなく、自らの腕に鼻を押し付ける。
――堪らない。こんな衝動を駆り立てるほどの血の香りは初めてだ……。
眩暈を感じる。目の焦点がずれ、よろめく体を覚束ない脚が弱々しく支えた。
「もっとだ……もっと欲しい。俺に血を―――」
その瞬間、俺の意識は完全に途切れた。いや、意識というより躰から自我と理性という存在が完全に失われたと言ったほうがいいのか。どの道、この先俺が語れることは何も無い――。
◇ ◇ ◇
「――『荒ぶる神々』の『新たな神話』、そして……『血の意志』……」
黒装束を身に纏ったような女性が、話しかけてくる。その何かを祈るような姿にはどことなく既視感を覚える。そう、その姿はまるで――。
「その序章は、貴方から始めることにしましょう……」
あの夢の「人形」の様だった――。
頑張って続けます!