お気に入りがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
※現在作者のSAN値が直葬されております。先に本編をお楽しみください。
それでは参りましょう。
イタリア州欧州海練イタリア校敷地内通路-現地時刻7月26日9:45〉
さてさて、演習開始な訳だがまずやっとくことがある。
演習の映像を大画面のモニターで流してもらうことだ。ここで自分たちの実力を見せつけることによって師事する価値アリの判定を下してもらわなければいけないのだ。
当然敗北すれば訓練生に舐められるという最悪の結末が待っているわけだがそれぐらいのリスクを負わずに信じろと向こうに言うほうが無理な相談だろう。
まあ勝てばいいんだ、勝てば。
それに戦力差があっても訓練生に負けるようなメンバーじゃない。
いくら兵装が一部封じられていてもな。
「帆波クン、勝機はあるの?」
「はっ。ないのにあんな条件つけるか」
「だよね」
海練校の敷地内に建てられた艤装を保管している格納庫にいくと正面で日本から来た警備がこちらに気づいた。
「身分証をお願いします」
「はいよ」
海軍のドッグタグを見せて登録されているコードを告げると警備の持つ生体認証装置に網膜と指紋、動脈、顔認証をされる。隣では常盤も同じことをされるがままにされている。後に続いている叢雲たちも同じことをされるのだろう。
「認証しました。帆波大佐、どうぞ」
「あいよ。お疲れ様。適度に交代して休めよ」
軽く警備を労うと格納庫へ入る。出撃前には必ず艤装のチェックをしておきたい。もしまた何かあってはいけないからだ。
「叢雲、パソコンとってくれ」
「これでいい?」
「サンキュー」
鈴谷、瑞鶴と見て異常がないかを確認する。2人には装着してもらい、作動を確認。そして叢雲の艤装はさらに時間をかけてチェックする。
叢雲のはさすが次世代型と言うべきか、恐ろしく細かいソフトが組んであるのですこし時間がかかるのだ。誰だよ、こんな七面倒なソフト組んだの。俺だよ。
「おし!これで大丈夫だ。全員、模擬弾に換装したな?」
「バッチリだよっ!」
「艦載機の爆弾を換装してるからすこし待って!」
「私は準備できたわ」
やはり艦載機がある分空母の換装はすこし時間がかかるな。開始時刻にはゆとりを持って伝えてあるから問題はないが。
「よし!提督さん、艦載機の模擬弾への換装終わったよ!」
「よし。行くぞ。出撃!」
3人が海に出るのを見届ける。
「帆波クン、アタシも指揮所に行った方がいい?」
「いや、お前は自由にしててくれて構わねえ。休憩所でコーヒーでも飲んでのんびりしといてくれ。俺一人で充分だ」
「了解しましたよ、大佐どの」
黙ってりゃこいつも有能なのにな。客観的に見ても割と容姿は整っている方だが性格と性癖がこれだからなぁ……
そう思いながら峻は仮設戦闘指揮所と名の付いた小さな空き教室に向かう。
上着を脱ぎ、カッターのボタンを外して首元を楽にしてやればスイッチオンだ。
適当な椅子に座り、脱いだ上着を椅子の背に掛けるとホロウィンドウを机上に次々と展開する。青白いパネルに気象データや艦娘のステータス、艦娘の視覚とリンクした映像などの様々なホロウィンドウが瞬時に開いていく。
今日は乾燥してるな。それなりに気温もあるが空気が乾いている分過ごしやすい。湿気だらけでベタついた日本の夏との違いはそこだろうか。
「面白いことになっているじゃないか、ホナミ大佐」
「…!オルター少将!」
がたりとドアを開けてオルター少将が部屋に入ってくるのを見て慌てて立ち上がって敬礼しようとする。
「いや、敬礼はしなくていい。お互い対等にいこうじゃないか。それにしても演習とは考えたな」
なんで組んだかは気づいてるってわけか。ま、欧州の獅子が鈍いわけがないか。キレ者じゃなきゃ少将なんて上にはいけないだろうしな。
「手っ取り早く実力を見せるにはこれがいいかと思いまして」
「そうだな。実に効率的でいいと思う。私としてもこのやり方は好みだ。せっかくだから見ていっても構わないか?」
「ええ。どうぞ」
「ビスマルク!ん?ビスマルク!……さっきまでついてきていたんだが……まあ直接見に行ったのだろう。すまないが椅子を借りる」
適当な椅子をオルター少将が手元に引き寄せると腰掛ける。
見張られてるみたいでやり辛いがなんとかなるだろ。
左手で前髪を掻き上げるとガリガリと髪を掻き毟る。演習開始時刻まであと3、2、1、0。
「状況開始だ」
〈イタリア州ティレニア海演習海域-現地時刻同日10:00〉
「索敵機から入電!戦艦4に巡洋艦2。あっ、索敵機からの連絡途絶。落とされちゃった。たぶん巡洋艦2隻は完全に対空装備だろうね。これじゃなかなか艦載機は近づけないよ」
向こうもそれなりには考えているのね。あいつに話を聞いた時には猪突猛進なバカかと思ったけど防空装備の巡洋艦を2隻も揃えてくるとは少し厄介だ。
これでは瑞鶴が封じられてしまっているのと同じね。密な対空射撃を敷かれては艦爆や艦攻が有効打を与えるのは難しい。
実質的な戦力を私と鈴谷だけに絞るのが向こうの魂胆かしらね。訓練生だと侮ってたけど思ったよりやるじゃない。
あいつには劣るけどね。
『へぇ、ラバートン君もなかなか考えるねえ。どう思う、叢雲?』
『普通にやってちゃ勝ち目はないわ。だからあんたのお得意をやってもらうんでしょ』
脳波通信を使って語りかける。作戦行動時には発声しなくてもよい脳波通信は便利だ。あいつの策略は奇策が多いからこそ聞かれては台無しなのだから。
実際、射程も威力も向こうが圧倒的に上なのだ。こう話している間にもいつ砲弾が飛来するかわかったものではない。それを覆すのだからそういう手に頼るのは致し方ないことではあると思うが。
『まだ最初は様子見だ。いきなり仕掛けたりはしねえ。まだ視界にも捉えてないんだろ?ま、のんびり待とうぜ』
まったく暢気ね。まあやる時はやってくれるからいいけどね。そうじゃなきゃこっちが困るわ。それにしても待つだけってのは性に合わないわ。早くして欲しいものね、ホントに。
そんなことを考えていると着弾を示す水柱と泡が辺りに沸き立つ。
『提督!1時の方角から敵艦隊の砲撃だよ!まだ視界に捉えてないから電探射撃だと思う!』
『回避行動始め!取り舵30、両舷後進第四船速!』
ぐるりと回転して航行の向きを変えると体を砲撃してきた方向に向ける。
今はちょうど体の向きだけは敵艦隊に向いている状態で逃げているような構図だ。
『瑞鶴、艦戦を上げろ!鈴谷、砲撃開始。ただし斉射はしなくていい。あくまで牽制レベルだ』
『了解!発艦始め!』
『うりゃー!』
水平線上に影が浮かびそれがゆっくりと姿を現わす。ひたすら砲撃を繰り返し、こちらと一定の距離を取り続ける戦艦群だ。
近づく気はないし近づかせる気もないってわけね。これじゃあ相手にダメージを与える方法がほとんどない。
魚雷はある程度接近してから撃たなければほとんど当たらないし、対空装備の巡洋艦のせいで艦攻艦爆は近づけない。鈴谷の砲撃にしたって戦艦の射程と比べれば短い分、こうも距離を取られては届きはしても有効射程は超えている。まともなダメージを与えることは難しいだろう。
『少しずれた!面舵15!30秒後に取り舵5だ!』
敵艦隊と距離を大きく取ろうと離れるがそれを許さないと言わんばかりに追随し砲撃を続ける。
ひたすら逃げる者たちとそれを追い、砲撃する者たち。これではいたちごっこだ。
『次、両舷後進第三船速!取り舵25。40秒後に面舵35だ』
また軌道を変える。先ほどからカクカクと小さく角度を変えてひたすら後ろに移動し逃げ続ける。
『おいおい!東方の狼さんよ!あんだけ大口叩いといて逃げるだけかよ!口程にもねえってのはこのことだな!』
『わざわざオープン回線で話しかけてくれるとは涙が出るね、ラバートン君。あと俺のことは東方の狼じゃなくて帆波先生とでも呼びたまえよ』
うわ、完全に煽ってるわ。それが狙いなのはわかってるけどあいつって口を開けば人を煽るわよね。こういう戦闘においては特にそう。
『誰が呼ぶか!お前みたいな腰抜けをよ!』
『あらま残念。あ、次は面舵20だ』
『また逃げるのか!』
『んー、まあ華麗な逃走ならばまたそれも闘争ってね。いや、厳密には逃走ではないんだけどさ』
『ふざけやがって!真剣にやれ!』
『いやいや、俺はいたって真剣だよ?次、取り舵45。これで最後だ』
これで最後ってことはようやくなのね。
長らく待たされたわ、本当に。
『なにをほざいてやがる!』
『ステイクールだよ、ラバートン君。ところで君は将棋というゲームを知っているかい?』
『ジャッポーネチェスのことかよ』
『概ね正解だ。あれはどういう勝負か教えてあげよう。将棋というのは相手の打つ手を何手先まで読めるかのゲームだ。そしてプロは今までした対局の経験と記憶した膨大な棋譜を元に相手の手番を予測する。つまりあれは記憶力と経験値の比べ合いをするゲームなんだよ』
『何が言いたいんだよ、お前は!』
『この演習は俺たちの勝ちってことさ。今だ叢雲!』
来た!浮力力場を最大出力で展開!
するとさっきまで海中に潜っていた叢雲の体が一気に浮上。敵艦隊のど真ん中に姿を現わす。
「なっ!どうしてここにっ!」
巡洋艦と思しき艦娘が英語で叫ぶ。あの翻訳装置をつけているおかげでラグ無しで日本語に変換してくれるおかげですぐに理解が出来るのは便利だ。
「海に潜って待ち伏せしてたのよ。あいつの指示通りにね」
ウェークの延長線のような作戦だ。まさか駆逐艦の私が潜水艦の真似をすることになるなんてね。
演習開始前にあの円筒形の水中呼吸器を渡されていた。あとは演習開始と同時に浮力力場を低下させて潜っておくだけ。
そうすれば瑞鶴と鈴谷が逃げ続けたように見せかけて私が隠れているポイントまで誘導してくれる。誘導さえしてくれればあいつの合図と共に飛び出せばいい。
1つ欠点を挙げるならこの作戦は主砲や機銃が使えなくなること。艤装自体は防水防塩加工はしてあるから浮上してからも動くことは出来るけど全身浸っていれば火薬は濡れて使い物にならなくなってしまう。
でも1つだけ使える武装がある。
発射後は水中を進み、敵の
そう、魚雷は使える。
だから最初っから魚雷以外の装備はすべて外して身軽にしてあるのだ。
先ほど声を上げた艦娘に正拳突きを入れ、よろめいたところに脚をかけて転倒させる。魚雷発射管から抜いた魚雷を置き土産に投げておけばあっという間に大破判定だ。
「まず1人ね」
濡れてへばり付く髪を手首に付けていたヘアゴムでまとめ上げる。これで視界は確保できた。
「さて、次は誰が相手になってくれるのかしら?」
自然体だがしっかりと気を張り詰めていつでも戦える姿勢で周りを見渡す。
そこには唖然とした表情で突っ立ったままの艦娘たちがいた。
どうやら陣形の中心部に浮上したらしい。綺麗に囲まれている。
手筈では近くに浮上して2、3人倒したら離脱するはずだったんだけど……
『あー、悪い。ちょいミスった』
よし。あとでボコボコにしよう。
『まー、なんとかしてくれ。出来るだろ?』
向こうで今、確実にあいつは笑ってる。右の口角をつり上げて挑発的にね。賭けてもいいわ。
「やってやろうじゃない。なんたって私はあんたの秘書艦よ」
『さっすが。好きに暴れてこい。フォローは任せな』
「ええ、任せたわよ」
機関を回して標的とした者に素早く接近し、左手のパンチ。当然防がれるがそんなのは想定内。
左手を引かずにそのままガードしてきた腕を掴むと手前に引っ張りながら右の蹴りを脇腹にめり込ませる。
「があっ!」
蹴られた艦娘は空気を吐き出すとそのまま崩折れる。気を失ったのだ。体内の妖精は砲撃などのダメージは逃せても直接的すぎるダメージは逃すのに適していない。
「そんな……この娘ホントに駆逐艦なの……?」
駆逐艦に決まってるじゃない。最初にあいつが言ってあるんでしょ。
「ねえ、
「「「「…………?」」」」
蹴り飛ばされたために、気絶して浮かんでいる対空装備の巡洋艦と既に大破判定で離脱した、これまた対空装備の巡洋艦以外が頭上に疑問符を浮かべる。
「ヨーロッパは大陸国で日本は島国なのよ。ヨーロッパは大陸国である分、海岸線は少ない。それに比べて島国である日本は四方八方が海。常にいつどこから攻められるかわからない。そして艦娘の保有数は連邦国家である欧州連邦が言うまでもなく日本よりも多い。結果、要所要所に配置出来る艦娘の数は日本の方が圧倒的に少ないのよ。それなのになんで国土を守りつつ海外に手を出すことができると思う?」
欧州連邦は数に物を言わせる力押しができるかもしれない。でも日本には数がいない。各所にばらけて配属されているからだ。ではなぜか。
「
ブゥゥゥン、と艦載機のプロペラとエンジン音が後ろの方から聞こえる。瑞鶴が攻撃隊を出したのだろう。ということは鈴谷の砲もすでに狙いをつけているはずだ。
叢雲がゆるりと構えて散開しようとする欧州の艦娘を追いかける。
狩る側と狩られる側が逆転した。
はっ!失礼、取り乱しました。
えー、艦隊これくしょん〜放縦者たちのカルメン〜のお気に入りが50件を超えました!いえーい!
そのため少々気が触れておりましたがもう戻ったのでご安心を。
これを機に調子に乗った
@regurus32701
感想、評価などお待ちしております。それでは。