艦隊これくしょん〜放縦者たちのカルメン〜   作:プレリュード

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アーケードでホロが全然でない(泣)
球磨しかいないよ!他の娘もっと来てよ!

お金ないからしばらくできないけど……。


バトンは繋いだよ

泊地棲姫は完全に基地の崩落で埋めたと思ってたんだがしぶとく生きていやがったらしい。

その周りに集った深海棲艦はいずれもエリートクラス以上となるとあれが最終主力艦隊といったところか。

 

”さらしな”の艦橋(ブリッジ)で出現した泊地棲姫の映像を見ても、その顔はポーカーフェイスと言って差し支えないくらいに無表情だ。だがその内心は。

 

やばいやばいやばいやばいやばい!

あれと正面切って当たりたくないから生き埋めにしようとしたのにこれはガチでやばい!

ただでさえ本隊とのやり合いで消耗してるのにあれと当たりあうなんてたまったもんじゃねえぞ!

 

と、焦りまくっていた。

”モルガナ”のバッテリーはあと3分もしないうちに切れる。本隊はあと40%程度までは削り切っているがこちらも中破者がいるし、夕張は戦闘に出すわけにはいかないレベルの損傷だ。

そろそろゴーヤの精神も限界に差し掛かるころだからイムヤと共に下がらせなくてはいけないことも考えると戦力はかなり減ってくる。

 

『うわぁっ!』

 

「っ!瑞鶴、大丈夫か!」

 

『大丈夫だけどごめん……飛行甲板に被弾したから艦載機の発着艦はもうできなさそう……』

 

「仕方ない。天津風、瑞鶴のフォローに自律駆動砲を回せるか?」

 

『4号機から6号機まで落とされているの!申し訳ないけど余裕がないわ!』

 

想像以上に敵さんもやるな。天津風の自律駆動砲を3機も落とすとはな。こうなると瑞鶴にフォローをつけるのは難しいだろう。他のは全員が手一杯だからそんな余裕はなさそうだからだ。仕方ないがこうするしかないか。

 

「瑞鶴、悪いが自力で戻ってこい!」

 

『ごめん、まだ残らせて。まだやれることはあるから』

 

「なんだと!」

 

『艦載機への弾薬の補給とかは加賀がやってくれるって。艦載機の動きの統制だけなら飛行甲板がやられてもなんとかできる!』

 

確かにその通りだ。発着艦は飛行甲板がやられれば出来ないが、艦載機への指示出しなら艦娘の意識があれば可能だ。だが艦載機の補給を全て加賀に任せるのは加賀への負担が増えてしまう。

 

「おい、加賀。本当に大丈夫なのか?」

 

『この程度、大したことはありません。一航戦を甘く見ないで。それに今、戦力が低下するのは避けたいでしょう?』

 

「……すまん、無茶を承知で頼む」

 

『大丈夫だって!私自身はまだ軽傷よ!』

 

状況はあまりよろしくない。

あと40分くらいで事前に打っておいた布石が発動する。その布石が動いてくれればあとはのんびり見てるだけで勝てる。だがそれまで泊地棲姫が大人しくしておいてくれるわけがない。

もう1つ手はあるがこればっかりは俺の一存で決められないし、できることなら打ちたくはない。

 

「艦長、砲撃きます!」

 

「取り舵15!最大船速で切り抜けろ!野川、照準を接近中の深海棲艦に!何としても近づかせるな!」

 

「了解!目標接近中の深海棲艦、重巡リ級!てぇー!」

 

「沖山!艦の被害状況は?」

 

”さらしな”に沈まれたら一貫の終わりだ。

 

「第3ブロックに浸水、副砲を数門と主砲が一門持ってかれてますがまだ大丈夫です」

 

まだ、ということはこのままいけば時間の問題ってことか。

 

「ねぇ、あんたなんか隠してない?」

 

隣にいた叢雲の言葉にピクリと肩が反応した。

 

「なにか打てる手があるなら打ちなさいよ」

 

「だがな………」

 

「本当は私も出たいけど艤装がないんじゃ出られない。私は指を咥えて戦況を見てるしかないのよ。それに比べてあんたはまだやれることがある。ならやりなさい!なんで躊躇ってるかは知らないけど今はそんなこと言ってられないでしょ!もし私が協力できることなら喜んで力を貸す!だからくだらない拘泥なんてしてないでさっさと動きなさい!」

 

「…………わかった、ならついてこい」

 

ガタリと席を立つ。峻の顔は眉が寄り、難しげな表情だ。

 

「明石、”モルガナ”の回収を」

 

『了解です!』

 

「沖山、しばらく頼む」

 

「はい、お任せを」

 

「大丈夫っすよ」

 

「いってらっしゃーい」

 

堅い沖山と軽い野川と陽気な三間坂の声に送られて艦橋(ブリッジ)を叢雲を連れて出た。

 

あまりやりたくはない。だがこれ以外に40分を稼げる手段はもう残ってない。

 

「榛名、聞こえるか?」

 

『はい、なんでしょう?』

 

心なしかいつもより榛名の息が荒い。かなり消耗させてしまっている。

だがそれを承知で頼むしかない。

 

「新しく出現した泊地棲姫以下の艦隊を最終主力艦隊と呼称する。編成は泊地棲姫、戦艦ル級エリート、空母ヲ級エリート、雷巡チ級エリート、駆逐ロ級後期型エリート2だ。15分だけもたせてくれ」

 

『……加賀さんと北上ちゃんを借りてきます。それでもよければ』

 

「わかった。キツい役目だがお前にしか頼めないんだ。それだけもたせてくれれば最強の支援がそっちに向かうから」

 

『最強……ですか?』

 

「ああ、最強だ。陸奥には本隊の足止めを頼んでくれ」

 

『了解しました。榛名、戦います!』

 

通信を切り、早足でエレベーターに叢雲と乗り、早くしろと言わんばかりに階数の書かれたボタンを連打する。

 

「ねぇ、私に何をさせる気?」

 

「ん?まあ見てろって」

 

早く、早く、早く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ、提督も無茶を言ってくれるよねぇー。

この状態で最終主力艦隊を15分も抑え込めなんてさあ。

しかもたった3人で。

たぶん榛名がアタシと加賀を選んだのはかなりの古参組だったからだと思うんだよね。初期のころ、まだ一艦隊分しかいなかったころの仲間たちだからね。

とっさの意思疎通が図りやすいからさ、付き合いが長いと。

天津風は向こうのサポートに回しておきたかったんでしょ。夕張は潜水艦を掃討してくれたから充分やってくれたし。

もう1人は……叢雲は沈んじゃったからね。

 

「北上ちゃん、雷巡と駆逐2隻の相手をお願いします。加賀さんは空母の相手を。姫と戦艦は榛名がやります!」

 

世界広しと言えどアタシのことを”北上ちゃん”って呼ぶのは榛名くらいしかいないと思うんだ。

 

「うん、りょーかい。こっちは任せてー」

 

「了解しました。一航戦加賀、行きます」

 

さぁて、暴れてやりますかねぇっと!

 

雷巡チ級を睨みつける。その横には駆逐ロ級の後期型が付き従う。そのいずれも気味の悪い赤いオーラのようなものを纏っている。

くるっと手の中で単装砲を回しておもむろに一発。

間を空けずに二発目三発目とつなげていく。

だが当然だと言わんばかりにスイスイと避けていく。

ま、そうなるよねー。でもさー、そこらへんにはアタシの蒔いた甲標的が潜伏してるんだよね。

 

パチンと指を鳴らすと魚雷がチ級に向かって放たれる。

周りの駆逐は後回し。今はともかく一番雷撃力があって厄介な雷巡を叩く!

魚雷が命中した証拠に巨大な水柱が複数あがる。

そして砲弾が水柱の中に撃ち込まれていく。あれは榛名の砲撃だね。うん、さすが。よくわかってるねぇー。

たぶんあれはいったかなー。あとは駆逐艦だけか。あんまり駆逐艦を(なぶ)るのって好きじゃないんだけどね。

 

ぶんぶんと周りをうるさく飛び回る深海棲艦の艦載機を機銃と単装砲の砲撃で追い払いながら水柱が晴れるのを待つ。

 

「がっ!」

 

「北上ちゃん⁉︎」

 

水柱が晴れると同時に砲弾が北上に向かって撃ち出され北上の体が後ろに飛ばされた。

榛名の心配そうな声が響くが榛名自身も余裕がないので助けにいけないようだ。

 

なんで?

魚雷は完全に当たったはずだし、その後の榛名の砲撃は確実に直撃してた。沈んでなかったとしても大破ぐらいはいったはずなのになんで……

 

ぐぐっと海面にうつ伏せになった体を起こし、雷巡を見るとほとんど傷が付いていない。

なぜならその両手には魚雷と砲撃に晒されてボロボロの駆逐ロ級がいたからだ。

チ級はロ級たちを盾にして北上たちの攻撃を防いだのだった。

 

瞬時に北上の頭が沸騰した。

 

アタシの前で駆逐艦を盾にする……?

ふざけないで!

 

 

北上はなぜこの部隊に配属になったか。

彼女は命令違反を繰り返し、各所に飛ばされまくっていたのを峻が引き取ったからだ。

ではなぜ命令違反を繰り返したか。

他の部隊だった頃に北上が出撃したときに、そこの司令官が随伴の駆逐艦に命令したのだ。

”盾になれ”と。そしてその駆逐艦は本当に北上の盾になって沈んでしまった。

最後に一言、”無事でよかった……”とだけ言い残して。

今でこそちゃんと命令には従うようになったがそんな彼女の目の前で、同じ艦種が駆逐艦を盾にしたらどうなるかは目に見えていた。

 

ただ真っ直ぐに突っ込む。

装甲の薄い雷巡という艦種ではやるべきではない行動だ。でもそんなことは知ったことではない、と言わんばかりにチ級に向かってひた走る。

チ級は動揺したのか撃ってもまともに北上を捉えられない。

 

うざったいよね、駆逐艦ってさ。頼んでないのに勝手に守って勝手に傷ついて。

でもわざと盾にするなんて許せないかな。

 

機関を限界まで動かしてスピードを上げる。

回避なんて知ったことか。

しかしあちらはエリートクラスである。さすが立ち直りも早く着実に当てるコースに修正してきている。

 

まずいわ。これ直撃コースだ。

 

放たれた砲弾は真っ直ぐに北上に向かって飛んでくる。

そして、それは北上に命中し、爆発して辺りに黒煙が出た。

だが、その黒煙の中から北上は飛び出した。

 

咄嗟に左手に持ち替えた単装砲で砲弾を受けて直撃を防いだのだ。

 

なんで左手にしたかって?だって今の受けたから左手は傷だらけだよ?たぶん骨が数本イってるよ?

右手は守らないとさ。

 

ゼロ距離までチ級に接近した北上は思いっきり。

チ級をぶん殴った。

 

右手は守らないと殴れないじゃん。

仲間を盾にするような奴は全力でぶん殴れって球磨ねぇが前言ってた、ような気がする。

 

「アタシさ、今ちょーっと怒ってるからね。どうなっても知らないよ?」

 

ガシャコンッと魚雷発射管が全てチ級を向く。

 

「40門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと!」

 

ドカドカと魚雷が撃ち込まれ、チ級の原型がなくなっていく。そして最後の一発が撃ち込まれ、爆発が北上とチ級を覆い隠した。

 

「ハァ…ハァ……。こっちはなんとかしたよ、榛名。あとはよろしくー……」

 

爆炎の中からヨロヨロと北上が出てきた。ゼロ距離で魚雷40発は爆発の余波で結構なダメージを負ったがそれでもなんとか大丈夫だ。

 

アタシはここらで退いときますか。まぁ、頑張ったよねー。

バトンは繋いだよ、提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすが不落の泊地と称されたウェーク島の本隊ね。今までやりあってきたのとは練度も連携も桁違い。加えて数の上では向こうが上回っている。

 

「徐々に……押されてきたわね………」

 

息も荒く陸奥が呟く。瑞鶴は頑張って艦載機を操ってるけど発着艦できないのがやはり痛い。天津風も残っている自律駆動砲はあと3機だけ。鈴谷も主砲をもぎ取られ、矢矧は魚雷発射管がなくなっている。

加えて自分自信もかなり艤装が抉れている。

でも提督が勝てるって言った。なら大丈夫よね?

 

「っ!陸奥!来たわ!」

 

天津風が叫ぶ。陸奥の右側から重巡リ級が突撃してきた。

 

まずい!右側の砲門は全滅してる!これじゃタッチの差でやられる!

 

左の砲門で対応しようと振り向くがその間にリ級は狙いをつけている。

万事休す。今のボロボロの装甲で耐え切れるといいんだけど。

 

だが狙いをつけたままで、その砲弾が放たれることはなかった。

リ級は爆発して吹き飛んだからだ。

 

「ふふん!海のスナイパー、イムヤにかかればこんなもんよ!」

 

「イムヤ⁉︎あなたゴーヤについてなくていいの?」

 

「ゴーヤはもう”さらしな”に戻ったわ。本当はまだついてようと思ったんだけどあの子が言ったのよ、自分の分までよろしくってね」

 

へぇ、あの子が……なら。

 

「こんなとこで……私がヘタってるわけにはいかないわね!」

 

残った左側の砲門を全て開き、敵艦隊に砲弾の雨を降らせる。

 

「全員、総攻撃を掛けるわ!夕張が潜水艦を掃討してくれたから海中に気を配る必要はない。全力で叩き潰すわよ!」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

瑞鶴が残り少ない艦載機を操り、ギリギリで制空権を取らせないように踏ん張り、それを守るように矢矧が近づこうとする深海棲艦を主砲で撃ち、下がらせる。

 

もう弾薬を温存する理由はない。これを潰せばこっちの勝ち。最終主力艦隊は榛名たちに任せる。きっと榛名たちなら勝つ。だから私の仕事はこいつらをここから先に行かせないこと!

 

「さあ、いらっしゃい!ビック7の名は伊達じゃないわ!」

 

撃って、討て。

ただひたすらに撃ち尽くせ。

押されてきた?だからなに?

前の時もそうだったでしょう?

一貫の終わり、絶体絶命、風前の灯火。

そんな言葉が並んでる中であの人は覆してみせた。ならきっと今回もできる。

提督。あなたは私にどんな素敵な逆転劇を見せてくれるのかしら?

 

 

 

逆転劇なら既に始まっていた。

目の前の敵に集中していた陸奥たちは知らない。

少し離れたところで敵艦隊が2つ全滅していたことに。

そこはまるで嵐が通ったかのようにハチャメチャになっており、すべての深海棲艦は穴が穿たれ、爆散してバラバラになったりとひどい惨状だ。

その中で真っ二つになって絶命した軽巡ハ級がプカプカと哀れに浮かんでいた。




さりげなく北上さまの昔話を公開。
まだ終わらないウェーク攻略戦ですがさすがに佳境です。

活動報告の方でちょっとしたアンケート的なものを取ろうと思ってます。軽い気持ちで参加していただければありがたいです。

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