着任して半年程度の初心者提督ですがよろしくお願いします。
「砲撃、きます!」
「くそっ!回避ぃー!」
「ダメです。間に合いません!」
直後、艦に多数の砲弾が突き刺さり、爆炎に包まれゆっくりと沈んでいく。
突如現れた謎の生命体により、人類は広大な海を奪われ閉鎖的な内陸に閉じ込められた。
”深海棲艦”と呼称されたその生命体から海を取り戻そうと幾度となく人類は挑み、多くの者が水面にその命を散らした……
絶望のなかでとある博士により発見された小人の形を模した生物、”妖精”。
それら”妖精”たちにより造られた少女の姿を形取った艦船、”艦娘”。
体内に”妖精”を宿した彼女たちの活躍により深海棲艦に対して人類は初めて勝利を収めることに成功した。
人類は思った。これでヤツらに勝てる。ヤツらを殲滅し、平和を取り戻せる、と。
「人類はこれより深海棲艦に対して大規模反抗作戦を開始する!ヤツらを倒し平和な海を取り戻す!」
その報せは世界を駆け巡り、各所において戦いの兆しが見え始めた。
「ここに対深海棲艦を敵対性生物とすると共に、日本海軍をこれの迎撃にあたらせることを決定する」
日本では深海棲艦が敵対性生物と国会において認定され、日本海軍が迎撃にあてることがほぼ満場一致で可決した。
「我がヨーロッパは各国をより強固な繋がりで結ぶため、今より欧州連邦政府の樹立を宣言する」
ヨーロッパにおいては各国が集まり、連邦政府となった。
「中華人民共和国とロシア連邦は軍事同盟を締結した上で今後は相互補助関係を保ち、深海棲艦と戦うことを表明する」
中国とロシアは同盟を組みきたる反抗作戦に備えた。
「アメリカ国民たちよ。いや、世界に住む全ての人間たちよ、立ち上がれ!我らの祖国のために!我らの海のために!我らの平和な世界を取り戻すために!」
そして来るべき日。世界対戦とまで銘打たれた反抗作戦は満を持して世界各所で同時に決行された。
そして。
艦娘が登場して早くも10年以上が経過した。しかし、未だに深海棲艦により海は閉ざされ、硬直した戦線をかけた消耗戦の繰り返し。
それでもまた今日も戦場を駆ける少女たちは何を思うのか。
彼女たちを送り出す者たちは何を思うのか。
この世界が迎えるのは希望か、それとも絶望か。
「さぁ、いこうか」
一人の男は決意を胸に戦場に向かう。誰も死なせやしない、と。
「しょうがないわね。付き合ってあげるわ」
一人の少女はやれやれと言わんばかりに、それでもそれが自分の望んだことだとその男の傍らに立つ。
彼らの物語が死にゆく世界の契機となることはまだ誰も知りえないことだった。