扇矢萩子の捜査録~艦これRPGリプレイ~   作:長谷川光

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北洋水師 ~Do not disturb~

*********

海威の救出に成功した響、彼女は一路『海威』のあるべき場所へと連れ帰るべく船を使い、ハルビンを目指す。

その途上である大連には、海王が何時になく緊張した面持ちで二人のことを待っていた

響@:「海王! ……迎えに来てくれたのか」やや沈痛な面持ち

海王:『英語で、ですよ』(笑ってみせるが、どこか苦し気

響@:『……大騒動だった。どこまで聞いてる?』

海王:『アタシが聞いているのは、海威さんが関与しているところだけですかね。その…誘拐されてしまい、逃走しようとして失敗、そして捕まってしまったと』

響@:『あぁ。トクサの扇矢少佐と一緒に、他の人質を逃がすため踏み止まったんだ。上海の艦隊の力なんかも借りて、このとおり救出には一応成功した。……命に別条はない』

海王:『…それは、良かった…』(少しほっとするが、海威の雰囲気にそれだけではないことを悟る

響@:「…………」海威と海王を交互に見て様子をうかがってみる

海威:『…あの、えと……貴女は、確か…』

海王:「……」

海威:『…海上警備隊の、海王?』

海王:『…あ、あぁ。アタシは海王だ、海威さん』

響@:「…………」

海王:『だが…ちと、組織の名前、違うんじゃないか?』

海威:『違う、組織? ……』

海王:『…海威さんが創った組織 だけどさぁ…覚えてないか?』

海威:『私が、創った? 私は…私は……何をしたの?』

響@:『ふたりがいた海上警備隊は、残された江防艦隊を取り込んで再編成され……今は“北洋水師”と』

海威:『北洋、水師?』

海王:『何か…ないか?』

海威:『北洋水師… 海上警備隊が、ない? 江防艦隊を取り込む、 私が創った……』

響@:『……ゆっくりでいい。焦ることはないから、ね』

海威:『は…はい ごめんなさい、先生』

海王:『…………謝るこったぁない、なぁ響さん』

響@:『っ……。あぁ、海威が何かを気に病むことことはないよ。……とりあえず、海威号で機関を動かそう』

海威:『わ、分かりました…』

海王:『こちらへ… 』(案内する

もと帝国海軍駆逐艦『樫号』 そして、現在は満州国で最大の軍艦である『海威号』は旅順の埠頭に係留されていた

朝鮮・内地から満州へ来た北洋水師の兵たちがこの艦の管理をしている。海威にとっては半身のような存在であるこの艦を、嬉しそうに眺めている

響@:『……ここの人員に頼んで、艦のボイラーに火を入れてもらう。それで少しは身体の調子も上向くはずだ』

海威:『は、はい。ありがとうございます』

 

海威号機関兵:『ボイラーに火を入れる…ですか』

海威号機関科士官:『それが、海威さんの為になるのでしたら…始末書一枚どうってことないですよ』(闊達に笑う)

響@:『私の指示で、動力系統の確認を行ったことにしてくれ。後から書類が必要なら私がいくらでも書く』

海威号科士官:『…ありがとうございます(頭を下げ)タービンを回せ!』

機関科兵の協力により海威号の心臓である機関が動き始める

海威:『あぁ…あぁっ…』

響@:『……大丈夫か?』

海威:『あんっ…はぁ…はぁん だ、だいじょ…はんっ』(上気したような表情

海王:『……流石に、こんな海威さんは初めて見ますよ』

響@:『ほ、本当に大丈夫か? 様子がおかしいと感じたら一旦止めるから、言ってくれていいからな』

海威:『全ぜんっだ、だいじょう ぶっ はんっ 体の…痺れが ん、と、とれて…』

響@:『……ゆっくり、ゆっくりでいいからな』機関兵と海威にどちらともなく声をかけつつ

海威:『体が…熱で、熱が はしる』

海威号機関兵:「…回転上昇率下げぇー」

海威:『体が…動く…艦が、体が…あぁっ はぁっ…はぁ、響先生…艦を、制御…できました あんっ いつでも、動かせます…よ』

響@:『エネルギー回路の接続は大丈夫みたいだな。……頭に妙な負荷がかかってる感じがあったりは?』若干ほっとして見守りつつ

海威号機関兵:『……』(海威の様子をチラ見してしまう

海威:『頭… 分かんないです… 体が、熱くて… はぅ…はっあ…すみません、先生…動かないと…動かないと…私、馬鹿になるっ!』(機関部から飛び出す

響@:『そういうものなのか……! すまない、少しずつピッチを下げて置いてくれ』と機関兵に頼みつつ後を追おう

海威号機関兵:『了! ピッチ漸次サゲー』

海威:『あああ!?』(艦娘として艤装の機関ピッチを一杯にさせて、港内を独楽鼠のようにぐるぐると海面を動き回る)

 

海威:『はぁはぁ……』

響@:『ご、ごめん! 無理させたみたいで……。今は海威の身体が最優先だ。海威の言うとおりに調整するから』

海威:『い、いえ…大丈夫、です…気にしないで、先生。もとから、これは…私が動くことを念頭にしたものだったのですから』

響@:『……気を失ってる間、海威は、この艦じゃない他の艦に無理やり繋がれて……それで神経に大きな負荷がかかったんだ』

海威:『……えっ? そう、なのですか?』

響@:『あぁ。出雲たちが助けてくれたけど……。海威の記憶に混濁があるとしたら、多分、その負荷のせいだ』

海威:『記憶に違和感があるのは…その所為?』

響@:『……うん。だから、不安に思うことや、思い出せない部分があったら、私たちがサポートする』

海威:『何から何まで…ご迷惑をおかけしています…』

響@:『迷惑だなんて。私もね、海威にはこれまでさんざん助けられたんだよ』

海威:『……そう、なのでしょうか?』

海王:『…あぁ、海威さん。もっと、自信をもっていいんだぞ?』

響@:『……少しずつ整理していこう。“樫”という艦娘になったころのこと、出雲との遣欧艦隊時代のこと、そして“海威”になってからのことも』

海威:『……私は、ヨーロッパへこの艦と共に行きました。任務が終わった後、ヒルダ…出雲先生に、色んなもの見せてもらって… それで……えと、何かあって、満州にきて…海王さんと海上警備隊として働いて… 北洋水師? に、今は所属しているのでしょうか? 」

響@:『満州に来てからのことは、海王が詳しいかな……?』

海王:『あ、あぁ… まぁ、色々海威さんから聞いたからなぁ… 海威さん、アンタは海上警備隊に日系軍人として参加した。これを海軍業務を一番よく知るアンタが仕切り始めて、アタシも誘われてこれに合流したんだが…アンタは、満州国内の水上組織が二つあることに疑念を抱いた。そして、それを関東軍に打診した。結果、海威さんは関東軍の石原閣下と北洋水師の創設を企図した。それには、江防艦隊の…(海威の顔をうかがいながら)順天と、養民の二人が合流して、名前も改めた北洋水師に参加することになった』

響@:『…………』同じく顔色を窺いつつ

海威:『………それで、どうなったのでしょうか?』

海王:『…こほん、彼女ら二人を含めた四人が北洋水師に所属する艦娘の全部だ。それで、海威さんは彼女らに戦い方の教授をしたり、政務をとったり、満州内の他の勢力と交渉したりと八面六臂で頑張っていたんだが……アタシが、見かねて進言したんだよ。可能ならば、戦闘訓練のために誰か寄越してもらったほうがいいのじゃないかってな』(響を見る

響@:『そして、出雲のところから出向でやってきたのが私、響だ。……説明が遅くなってすまない。私は、本当は海威の部下だったんだ』

海威:『響先生が、私の…部下?』

響@:『……そう。私が訓練教官として海威たちのところに来たのは半年前。私が一番の新参だ』

海威:『…そう、だったのですか』

海王:『まっ… 新参といってもそれほど変わり映えしないと思いますがね』

響@:『私が来てからも、北洋水師では色々あったけど……。ここまでの話はどう? おおむね納得できそうか?』

海威:『は、はい…特に、疑問はないです』

響@:『……私のことはいいとして、順天や養民のこと、何となく思い出せそう?』

海威:『…順天、順天…… 養民…養民……ごめんなさい…あまり、覚えて…いません』

響@:『そうか……。まぁ、無理もない。……えっと、ここ半年でも色々あった』

海威:『……はい』

響@:『満州の建国祝典で北洋水師の観艦式を何とか無事に成功させたり、済北島へ攻め入ってきたアムール川軍団を食い止めたり。冀東で起きた民間人殺傷事件を機に関東軍と国民党軍の戦闘が始まったり、順天が海威を監禁して旗艦の座を乗っ取ったり……自力で脱出した海威が、水師営に戻って順天と誤解を解きあったり……いろいろ』

海威:『…順天……誰なんだろう』

響@:『……会ってみるか?』

海威:『その…順天さんに、ご迷惑でなければ…』

響@:『……分かった。私から順天に話をしておく』

海威:『お願いします』

海王:『………』

 響に頭を下げる海威を、やはり記憶を失っても海威は海威なのだと感じる海王であった…

 

***********

 海威号の機関を動かしたことによって体の痺れが取れた海威、彼女はハルビンの後方拠点にして首都、新京に逗留することになった。

海王は海威の不便がないように、その傍に残る傍ら関東軍との調整を始める。

一方で響はハルビン水師営で帰りを待つ、順天の元に向かうのだった。

順天:「…………」

養民:『お姉ちゃん…ちょっとは休んでよぉ…』

響@:『……』コンコン、とノックを

養民:『はっ、はい!誰ですか』

響@:『響、ただいま帰投した。……色々と報告を』

養民:『せ…響教官 どうぞ、入って』(とたたと、走ってきてドアを開ける

響@:『失礼する。……順天。早速だけど、一報は伝えたとおり海威の身柄は何とか救出した』

順天:『………』(ペンがぴたりと止まる

響@:『ただ……。っ……』順天の顔を見て、ほんの少しだけ涙ぐむ

順天:『……ただ?』

響@:『N号の影響下にあった海威は、脳神経に負荷を受けて……ここ数年の記憶に曖昧なところが、かなり……ある』

順天:『………』(がたん

響@:『私のことは覚えていなかった。順天や、養民のこと、も、覚えていない……っ、かも……』

養民:『…………ほ、ほんと…なんですか?』

響@:『……海王の顔と名前は一致した。けど、海上警備隊としての記憶だったみたいで……北洋水師のこと、順天と養民のこと、説明したんだ。説明したけど……っ……』

順天:『………っ(顔を伏せる)……嘘、ですよね……そんな、そんなの……』

響@:『倉庫に閉じ込めたときのことも話した。その後、水師営に戻ってきて順天と言い合ったときのことも話した……! でも、まだ……ピンときてないって感じだった……』(帽子……を被ってたときの癖で、前髪あたりに手をやって俯く……

順天:『……そ…んなっ……私は…まだ…(唇を噛む)……わたし、は……』

響@:『……今、海威は、海王についていてもらって……新京にいる』

養民:『教官… お姉ちゃん…』

順天:『そう、ですか………』

響@:『順天に会ってみるかって、海威に言ったら、会いたいって言ってた。迷惑じゃなければって……私は駄目でも、順天や養民なら……。顔を直接合わせたら、二人なら、もしかしたらって、でも……』

順天:『…………』

養民:『…全然、迷惑じゃないです………お姉ちゃん…も、ね?』

響@:『……どんな返事でも、私が伝える、から』やや涙目で順天を見つめつつ

順天:『……体を、治せって伝えてください…… 手を出して、しまいそう…だから』

響@:『……わかった』こっくり頷く

養民:『お姉ちゃん…いいの?本当に…いいの?』

順天:『……………すみません、気分が…悪くて…失礼、します……』(青ざめた表情)

響@:『……ごめん、順天。本当に……ごめんね』

養民:『……お姉ちゃん、海威さんに会いたいはずなのに…』

響@:『……会っても、会わなくても、凄くつらいと思う。思うけど……それがどのくらいつらいのか……私には……』

養民:『…ぐすん……やだよ…お姉ちゃん……苦しんでるのに…』

響@:『すまない、養民。私、順天を酷い目に遭わせてばかりで……』

養民:『ううん……謝らないで、教官……それより、海威さんに…お姉ちゃんの言葉、伝えるの?』(涙をため込んだ瞳で上目遣いがちに

響@:『そのつもりで、いる。けど……』若干たじろぐ

養民:『…お姉ちゃんは、海威さんに認められたかったって…云ってた…』

響@:『……そう、言ってたのか。順天が……自分の言葉で』

養民:『…やりたいことを、全部やってしまうから憎らしかったって、だから手伝いたいのに年も経験も足りないからって断った海威さんが嫌いだって』

響@:『…………』

養民:『なのに、満洲人になりきろうとしてくれる海威さんが… って』

響@:『……なら、今度こそ伝えないとな。それを』

養民:『…うん』

響@:『……分かった。順天は身体を治せって言ってたが……海威の身体はもう問題ないはずだ』

養民:『……』(期待する目)

響@:『順天の言葉は、ありのまま伝える。一緒に……私の言葉も伝えさせてもらう』

養民:『……うん!』

響@:『よし、それじゃ作戦開始だ。私は新京と連絡を取る。養民は順天の傍にいてあげてくれ』

養民:『………それだけ?』

響@:『それだけ……。いや、よければ私から順天への伝言も頼まれてほしい』

養民:『…うん、頼まれる』

響@:『……“いつも勝手なことばかりしてごめん。私のことぶん殴っていいから”って、そう伝えといて もっと思うことは色々あるけど……。あんまり大切な言葉は、他人に預けられないからね。養民といえど』

養民:『!?……………うん……分かった、先生』(信頼している目

響@:『……ん。いつもありがとう、養民。頼んだよ』

養民:『…はい!』

 

響@:というわけで、先ほどの順天の言葉をそのまま海王と海威に伝えつつ……続けて『体調は悪くないだろうし、順天は私たちが何とかするからハルビンに来てくれ』と打電だナ

 

 海王から了承の返電が響の元に戻ってくるまで、さほど時間は必要なかった。海王にエスコートされながらハルビンに帰ってきた彼女は、松花江に面して立てられた水師営の建物をぼんやりと眺める

海王:『着いたぞ、海威さん』

海威:『…ここが、哈爾浜水師営…ですか』

海王:『何か…思い出しませんかね?』

海威:『…何となく、帰って来たという感じがします』

海王:『海威さんが本拠に決めた場所なんだ…当然だろ?』(苦笑

海威:『………本拠……本拠』

海王:『まっ、入りましょうよ』

海威:『…はい』

 海王に連れられて、海威は部屋に通される

海威:『…ここは?』

海王:『海威さんの部屋だな』

海威:『私の…部屋……ここは、どことなく覚えている……かな』

海王:『……』

海威:『……海王と二人で、お茶をしたんだっけ…仕事が終わってから』

海王:『はは…確かに、アタシが呼ばれていたのは違いない』

海威:『………ねぇ』

海王:『どうかしたか?』

海威:『…私が順天さんと、養民さんを招いたことはないの?』

海王:『……アタシが関知している限りだと…ないと思う』

海威:『そ、そっか…』

海王:『…他の所にも行きますかね?』

海威:『うん、お願いするね』

海王:『…っ、次は当たり障りなく食堂でも行きましょっかね』(扉を開く

響@:『っと、戻ってたか。……おかえり、海威、海王』

海王:『おっと、響さん。海王、ただいま帰還しましたっと』

海威:『え…と、只今戻りました…』

響@:『うん……。順天に……と言いたいところだけど、今は少し休んでる。夕食の前にでも、執務室にきてくれ』

海威:『は…はい』

響@:『どうか堅くならないで……と言っても難しいか。……えと、書類上は、海威は休暇中だから水師営をぶらついてもいいし、……松花江で釣りをしていてもいいし』

海威:『…釣り は、はい…海王に案内してもらいます』

響@:『……ん。また、夕方にね』

海威:『はい、分かりました』

響@:海王にも、お願いね、と目配せをして響は執務室に戻る……

海王:(任せて下さい、と目配せして海威を連れて回る)

響@:海威も海王も響も出払ってて、順天の仕事量は半端なかっただろうから片付けられそうな書類は片付けて、付箋をつけたりして要点をまとめて、なるべく決済印だけで済ませられるよう格闘しつつ……頃合いになったら順天のところを訪ねよう

養民:(甲斐甲斐しく順天の手伝いをしている)『あ…教官』

響@:『おつかれ、養民。……順天は大丈夫か?』

順天:『……大丈夫、ですよ』(若干疲れた顔

響@:『あんまり無理はさせたくないけど……。執務室で、話をしよう』

順天:『……分かりました』

養民:『えと…私は、どうしたら』

響@:『養民も、一緒に』

養民:『うん』

響@:『順天、その……。察しはついていると思うけど……私のこと、ぶん殴ってくれてもいいから』

順天:『………』

響@:『行こう。……海威が待ってる』

順天:『…………』

 

********

 

響@:『……響だ。入るよ』執務室にコンコンがちゃり

海威:『えと…どうぞ』

響@:『さて……このとおり、順天と養民に来てもらった』と2人を示しつつ

響@:『直接顔を見て、話をすれば……少しは何か思い出せたりしないかな』順天と養民を見つつ

海威:『……順天さん、養民さん。ですよね』

順天:『…………』(カタカタと震えている)

養民:『……海威さん』

響@:『……順天』他人には聞こえないような小さな声で祈るように呟く

海威:『その…ごめんなさい。私…記憶が無くって……だから…二人に、どう云えばいいのか分からなくて…』

響@:『……海威と順天は……海威が休暇でここを離れたときは、ざっくり言えば、仲違いをしていたんだ どちらが悪者というわけじゃない。2人はつらい誤解を乗り越えようとしていて……』

順天:『記憶がない……ですって』(カタカタカタ)

響@:『私は海威から、順天への言葉を少しだけ預かっていて……。順天は……』と順天の様子を祈るように見守る

順天:『………うぅ…………くっ!』(ヨロメきながら海威に近づく

響@:『……!』さっと順天の……拳? 拳に割り込む!

順天:『邪魔するな!』

響@:『……順天ひとりを悪者にはしない。私も……順天の味方だ』

順天:(海威に掴みかかろうとして、響に止められる。

響@:『だから……私からも海威にお願いする。このまま順天に殴られてくれ』

海威:『……はい』

響@:響は引っ込む……もう順天を止めない

順天:(海威の胸倉を掴み)『何で、覚えてないって嘘だろ!? 何で、何で!』

海威:『…………』(されるがまま

順天:『何で……どうして…』

響@:『…………』

順天:『…返せ…戻ってこい……戻ってきてよ、帰ってこいよ! 何で…何で…』

 

 私は認められたかった、アンタに認められたかった!

私は…私も出来るってことを証明したかった。ずっとずっとずっと…独りで、アンタは勝手に決めつけて!!……漸く、私が力を手に入れたときにはアンタは勝手に腑抜けていて……悔しかった、悔しかったんだよ! だから、アンタを日本に送り返そうとした…その様がこれだ!アンタは独りで、今度は何処に行ったんだよ!私を認めてくれないまま、どこに行ったんだよ!!

 

順天:『…帰ってきて…帰って、きてくれ…』(床にへなりと崩れ落ちる

響@:『順天……』

海威:『………(しゃがみ込んで、順天に目を合わせる)…ごめんね、ごめんね…私…貴女に…何も云ってあげられない…何も、資格がないのだから。 そんな私が…云っても、貴女は納得してくれないだろう事は百も承知だけれど…それでも、云わせてください。順天さんは、頑張ってる。 私は順天さんを認めるし、尊敬するよ』

響@:『…………』

順天:『…ひく……ひっく』

海威:(順天の頭を慈しむ様に撫でる)

順天:『………』

響@:『順天。私も……私もね、順天の味方だから。ずっと前に、心に決めたんだよ。済北島で順天が、“ここは私たちの大地だ”って言おうとして、口をつぐんだときから。ここに暮らす人たちのため、順天がいずれ掲げる旗のために戦おうって……。海威も、きっと……』

海威:『……順天さん。私は、海威です [樫]って呼ばれたころもあったそうだけれど、私は…海威です。私は…貴女たちと最後まで一緒に居るよ…だから、身勝手で、独断だって怒られるかもしれないけれど… 私を、使ってください…順天さん。 記憶のない、私だけれど…貴女の傍に居させてください』

順天:『響教官… 海威…』

響@:『前に一度伝えた言葉だけど。……あのときも、決して嘘じゃなかったけど もう一度、ちゃんと言うね。今更だけど……本当の、本当に心から、旗艦就任、おめでとう……順天』(しゃがみ込んで向かい合う2人を、横からギュッと抱き締める!

順天:『……!?』

海王:『そうだな…確かに まっ、交渉面は任せてくださいよ…旗艦殿?』

海威:『順天さん、響さん……半端モノですが、よろしくお願いしますね』(順天を抱きしめる

養民:(わたわた…

海王:『あはは…教官、順天。養民が焼きもち焼いてますよ』

養民:『うぅ……』

響@:『なっ……!』ばっ、と顔を上げて……そそくさと順天と海威から離れる。うん、離れよう

養民:『……お姉ちゃん、羨ましい…』

順天:『よ…養民、ち…違うの』

養民:『………』(ジト目

響@:『いや、違うもなにも……ええと ……こ、こう?』と養民に向けて両手を広げてみせる

養民:『……うん!』(目がキラキラ) (とたたた…ぼす っと、響の腕の中に飛び込む。

響@:ぎゅっとして、ついでに頭も撫でてあげよう

養民:『えへへ…』

響@:『……養民も、よく頑張った。順天のこと、私たちのこと、いつも傍で支えてくれて……ありがとう』

養民:『うん…どういたしまして』

響@:「よしよし……」なでなで

養民:「せんせぇ……」(トロンとした目で

 

養民:「大好き」

 

響@:「……うん。私もオーリャのこと、大好き、だよ」

養民:「!!」(満面の笑み

養民:「せんせ、ありがとう 大好きです」

響@:こっくり頷いて、もう一度、養民をギュッ……として、離れる

響@:『さて……夕食にしようか。丁度、みんな揃っていることだし』

海王:『そーですねー これ以上胸焼けするシーンは見たくないですからねェー 海威さんも、いつまで順天を撫でているつもりですかー』

順天:(びくっとして海威から離れる)

海威:『ご、ごめんなさい…海王』

響@:『うぐ。……言っておくけど、私は海王のことも大好きだからな。もちろん、順天や海威のことも』

海王:『…そりゃどうも、アタシも教官の事を憎からず思ってますよ。まっ、何はともあれ飯の用意はアタシにお任せを。皆様方々は、もう暫くいちゃいちゃしておいでに成られませ』

響@:『いや待て、私も手伝う。手伝うってば……!』

 

海王:『……海威さんを助けた英雄殿を働かせるなど、それはそれは末恐ろしく。また…養民からの目線に命の危機を…とはまぁ、冗談として。アタシがやりたいからやるんですよ、なので響教官はお構いなく』

響@:『……わかった。任せよう』

海王:『あはは…これでも、料理は得意な方のつもりなんですよ』(手をひらひらしながら食堂の方に向かっていく

響@:『やれやれ……』と言いつつ他3人の顔を見回す

海威:『……いちゃいちゃと、云いましても…ね?』(困った感じで順天を見る

順天:『………』(他人に指摘されて赤面中

養民:(響の片腕に身を寄せる

響@:「ひぅ……」びくりとしつつ振り払わない

響@:『……ま、真に受けなくてもいいんだぞ。それにほら、やることは山程あるし』

海威:『やること、ですか?』

響@:『……北洋水師は課題が山積みだ。関東軍のこと、国民党のこと、ソ連のこと。そこの机に、さしあたっての書類も溜まってるし……ね』

海威:『私…戦う事しかできないのですが…可能な範囲で、手伝わせてもらいます』

順天:『そ…そう。頼みます。関東軍との連絡は海王にやらせていますが…ソ連…ですよね』

響@:『……あぁ。このまま日本と国民党の和平が成立したら、共産党やソ連とは本格的な敵対関係になる』

養民:『…戦争、なの?』

響@:『もしかしたら、そうなる。いや……戦争にならないように、あらゆる手を尽くしていかなきゃ』

順天:『油断できる状況では、全くないですね』

響@:『私も……できることなら何だって、力を貸すからね。順天』

順天:『勿論…こき使ってやりますよ、教官』

 

海威をちらりと見やりながら、彼女はそう不敵に響の言葉に呟き返す。

しかし少しばかり思案した順天はにやりと笑ってこう続けた。

 

順天:『……妹と結婚して、この国の人間になってくれたら…少しは手加減できるかもしれませんが、ね』(ぼそりと

響@:『……え゛っ』

 

 


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