遊戯王ARC-V 迷える子羊   作:ちまきまき

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メリイィィィィィィクリスマアァァァァス!!

何とかクリスマスには間に合いました!短いけど一度やってみたかった漫画版遊戯王!

あ、それよりも見ました?新しい主人公の彼!…前髪はブーメランとして使えるかな?

ただ最近のアクファについて一言……


遊矢君が不憫過ぎでしょう!?


ではでは…皆さん、メリメリクリスマス!


クリスマス記念 幻影の君と少女

はらはらと真っ暗な夜空から降ってくる純白の雪。先程まですれ違っていた人々は寒さに耐えつつ、もうすぐやってくるクリスマスを楽しみに待っていると言う事を話し合っていた。

モコも、クリスマスは彼らの為に何を作ろうかと考えながら、山奥にある家に戻ろうと山道を進む。さくさくとブーツが地面を踏む音が響く中、モコはある変化に気づいた。

 

「……あらまぁ」

 

ぴたり、と家の玄関に入る前で足を止めた。モコは暫くそれを見つめた後、しゃがんだ。

 

「大丈夫ですかぁ?こんな所で寝ていたら凍死しまちゃいますよぉ?」

 

ツンツンと指先でそれをつつく。モコの家の前には、人らしきものが倒れていた。真っ白なローブの様な物を被った人は、うつ伏せで倒れており、体には既に少し雪が積もっている。まさかこの山奥まで徒歩でやってきたと言うのだろうか?モコは「ん~」と考えると、ある事を思いついた。

 

「あ、そうだ」

 

 

 

*** ***

 

「ん…んん~……?」

 

ふわりと鼻を擽る優しい甘い香りに遊矢は目を覚ました。まず、遊矢の視界に入ってきたのは大きなシャンデリアだった。電気が付いてキラキラと輝くシャンデリアを見て、遊矢は混乱した。

 

「…ここ、どこ?」

 

恐る恐る両手を使って起き上がると、ふわっと両手に柔らかい感触。驚いて見てみると、ベットに敷かれた敷布団に遊矢の両手は触れていた。ふわふわとした柔らかい感触、そして自分に掛けられた暖かい毛布と掛け布団。久しぶりに感じる布団の暖かさに感動していると、彼らの聞こえてきた。

 

――― 遊矢!よかった!起きたのか!

 

――― 怪我ねぇか!?

 

――― まったく…心配をかけないでください

 

「あ、ユート、ユーゴ、ユーリ。うん、平気。ていうか、俺何でここに?」

 

――― 覚えてないのか?お前は空腹のあまり山奥を彷徨い、そのまま倒れ、凍死しかけた

 

「え?マジ?何そのバカみたいな倒れ方」

 

遊矢の中に眠る3人の少年人格、ユート・ユーゴ・ユーリの説明を聞いて、思わず遊矢は自分に呆れた。まさか、そんな理由で倒れ、凍死しかけるとは…。だが、こうして自分は助かっている。それはどう言う事かと思った時、ユートの呆れた様なため息が聞こえてきた。

 

――― 幸い彼女の家の前に倒れたおかげで助かったがな

 

「彼女?」

 

誰それ、と遊矢が聞こうとしたその瞬間だった。扉がガチャリと音を立てて、開いたのは。

 

「あら?起きたんですね!」

 

入ってきたのは真っ白な長い髪を持つ少女だった。ふんわりとした優しい顔立ちの少女の瞳は右目は水色、左目が黄色というオッドアイで、遊矢は自分のエースと同じだと親近感を抱いた。ワンピースにカーディガンを羽織った少女は頬を赤く染めると、笑顔でベットにいる遊矢に近づいてきた。

 

「まぁまぁ!顔色も良くなってますね!良かったぁ、顔も唇も真っ青でもう手遅れかと思ってましたけど無事で何より!」

 

「あ、えっと…君が助けてくれたの?」

 

「あ、そうです!せっかく起きたのだからお茶の準備をしなくちゃっ!」

 

ずいずいと詰め寄ってくる少女に遊矢は思わず身を引いてしまったが、彼女は遊矢の言葉を遮るとパタパタとテーブルへと向かって行った。頬を紅潮させたまま、カチャカチャとティーカップやポットの準備を始める。

 

「もっと早く準備すれば良かったです!あぁ!どうしましょう!人が来るなんて2週間ぶり!あの方以外滅多に来ないから新しいお客さんなんて久しぶりで、何を用意すればいいのかしら!?」

 

「あ、あの~…」

 

「あらやだ!私ったら何してるのでしょう!(しお)君!潮君はいる!?」

 

サッ!!

 

「うわっ!?」

 

少女が「潮君」と呼んだ途端、シュッと忍者の如く音も立てずに、遊矢のいるベット横に現れたのは1人の青年だった。ボサボサの黒髪のショートカットで、頭の左右で大きく跳ねたくせ毛がまるで猫の耳の様に見える。目は金の猫目。ユートが「コイツ…只者じゃないな…!」と警戒し、遊矢は一瞬黒猫が擬人化したと思ってしまったが、潮と呼ばれた青年はチラリと横目で遊矢を見ると、スタスタと少女の元へ歩いていってしまった。

 

「潮君!下の階からさっき焼いたビスケット持って来てくれますか?あ、後スープも!」

 

「…ん」

 

少女に言われて潮は小さく頷くと、部屋から出て行った。彼が去った後、少女は再びお茶の準備をする。

 

「嗚呼!今日のお茶は久しぶりのお客様の為に夏茶葉にしましょうか?あ、でも夏茶葉は『(ゼロ)(きみ)』のお気に入りだから無くなっちゃったら私が怒られちゃいます!あ、でしたら丁度秋茶葉が大量にありますし、それにしましょう!そちらの方!」

 

「は、はい!?」

 

ぐるんっ!とマシンガントークをしていた少女が振り返る。

 

「ビスケットはお好き?」

 

「あ、えっと…ビスケット…は好き」

 

「まぁ!それは良かった!さっき出かける前に焼いておいたんです!蜂蜜入りの特製ビスケット!そうだわ!沢山あるから全部持って来てもらいましょ!」

 

「潮くーん!」と少女は慌ただしく部屋から出て行く。少女の後ろ姿を呆然と眺めていた遊矢は一言。

 

 

「……何かすごい子だな…」

 

 

 

 

*** ***

 

 

 

「本当に騒がしくてごめんなさい…。人がやってくるなんて久しぶりで、すごく気分が高まってしまって…」

 

「全然気にしてないよ!あ、それよりスープとパンのおかわりってある?」

 

――― 遊矢、俺にも食べさせろ。交代しろ。

 

――― ずりぃぞ!!

 

――― このスープなんて美容に良さそうなのでボクにもください。

 

むしゃむしゃ、ずるずる。礼儀作法など気にせず、遊矢は焼き立てのパンを食い千切る勢いで食べ、野菜がたっぷり入ったコンソメスープを啜る。保存食以外の、久々に食べる暖かい食事に舌鼓を打ち、ユート達も食べさせろと迫ってくるが、遊矢は絶対交代する気はない。差し出されたおかわりのスープを飲む。うん、美味い。

 

「まぁまぁすごい食欲!そんなに美味しそうに食べてくれるお方は久々です!」

 

「だってこれすごい美味しいし!ていうか妖精ちゃんが作ったの!?」

 

「はい!料理が趣味なので!」

 

「いやぁこれは良いお嫁さんになるねぇ!」

 

「あらやだ!『幻影の君』はお世辞がお上手!」

 

『幻影の君』とは彼女が遊矢に付けたあだ名の様な物で、決して彼女は遊矢の名前を呼ばなかった。しかし幻影の君とは随分と当たっている名前だ。この少女は遊矢達が巷で話題となっているデュエリスト『ファントム』だと知っているのか、知らないで付けたのか。

また、遊矢も少女を『妖精ちゃん』とあだ名を付けた。由来は彼女の髪の毛がふわふわしていて、妖精みたいだからそうだ。

こぽこぽと少女がカップにお茶を注いでいく。ふんわりと香ばしい香りが遊矢の鼻を擽る。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう!」

 

「それにしてもあんな雪の中、私の自宅前で人が倒れているなんて思いませんでした」

 

「あぁ、アレね!いやぁ…本当に迷惑かけちゃってごめんね」

 

「いえいえ!迷惑なんてとんでもない!ただ驚いただけですよ。はい、潮君」

 

「…ありがとうございます」

 

少女が潮にお茶を差し出す。

 

「それよりも私、先程も言った様に人が来るのが久しぶりで…。つい喜びのあまり気分が高揚してしまったんです。しかも新しいお客様となんて本当に久しぶり!」

 

「へぇ…。そう言えば妖精ちゃんは何でこんな山奥の住んでるの?MAIAMI市の方が明るいのに」

 

「街の方はその…お恥ずかしいのですが、明るすぎるのと騒がし過ぎるので…寝れなくて…」

 

「成程」

 

その山奥の下にあるMAIAMI市はネオンの光が絶えず、しかも元から騒がしいが、最近ではL・Cの緊急出動も多い所為で眠れないと言うのは間違ってはいない。ただし後者は遊矢達の所為だが。

 

「もし、その…宜しければまた来てくださいませんか?」

 

「え?良いけど?」

 

「本当ですか!?」

 

――― おい!何を言っているんだ遊矢!この子に迷惑をかけるつもりか!?

 

――― そうだぜ遊矢ー。メシはすっげぇ美味いけど。

 

――― 他人に迷惑をかけるなどファントムの名が廃りますよ。食事は非常に美味しいですけど

 

「結局ユーゴもユーリもご飯美味しいんじゃん!」

 

「あら、もしかして貴方しか見えないお友達がいるのですか?」

 

「…へんじん」

 

「変人じゃないよ!!」

 

「それはステキ!でしたら皆さんの分まで作らなくては…!」

 

「…なんで、ふつうにうけいれているの…ですか?」

 

 

 

 

 

 

「…と、言う事が先日ありまして!あら?零の君、どうしたんです?」

 

「…いや、何でもない。モコ、新しい友人が出来て良かったな」

 

「はい!それもこれも零の君が『この家をくれた』おかげです!」

 

うふふと微笑む少女・モコに零の君こと零児は紅茶に口をつける。相変わらず美味しい紅茶だ。庭も手入れされているし、住み心地は良い方でよかったと思う。

 

――――― 先程の話で心の中は不安でいっぱいだが。

 

「おい、黒咲!それ俺のだって言ってんだろ!」

 

「早い者勝ちだ」

 

「お姉さーん!マフィンまだあるー!?」

 

「あ、はいはーい!今お持ちしますねー!零の君、すぐ戻りますので…」

 

「あぁ」

 

連れて来た3人はモコの作った料理や菓子をバクバク食べている。おい、お前達もうちょっと静かにしろ。零児は心底そう思うが、3人は遠慮無く食べる。その様子を潮は汚い物でも見るかの様な目で眺めている。モコは奥から持ってきたマフィンの乗ったトレイを持ってけらけらと笑っている。

 

 

――――― 嗚呼、本当に騒がしい

 

 

「(まぁ…良いか…)」

 

 

 

 

 

 

彼女も、あの事件の被害者なのだから―――――

 

 

 

 

 

 

 

 





・日辻モコ
MAIAMI市の山奥にある豪華な屋敷に住んでいる少女。潮以外の知り合いは決して名前を呼ばず、「~の君」と変わった愛称を付ける。本編よりもおっとりとした性格で、また遊矢が何もない宙(ユート達)に話しかけている事にも動じず、むしろ「貴方だけの素敵なお友達がいる」程度にしか思っていない。

・猫田潮
モコと共に住んでいる無口な青年。一見黒猫が人間になった様な容姿をしている。喋る言葉は全てひらがな表記になっている。


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