遊戯王ARC-V 迷える子羊   作:ちまきまき

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(1日遅れだけど)遊戯さん、誕生日おめでとうございます!!

今回、フレンのゲスさが現れる。色々と注意!更新遅れてしゅみません!!


第20話 迷える子羊とバトルロイヤル その3

「んじゃ、先攻は俺ね」

 

ジャングルエリアにて。モコの向かい側に立つに青年フレンことフレデリック・デュリオは5枚の手札を見て、微かに目元がぴくりと動いた。

 

(ん~…やっぱし【本職(デュエリスト)】じゃないから、嫌われてらぁ)

 

フレンは顔は平常を保ちながら、内心そう思っていた。オベリスクフォース、というかアカデミアの人間は一部の人間を覗いて、殆どが『古代の機械』と名の付くカードで構成されたデッキを使用している。

だがフレデリック・デュリオという人間は、デュエリストではない。普段は別の事をしている人間である。

 

それ故かフレンはデュエルする時、必ずという程カードに嫌われやすかった。要は手札事故を起こしやすい人間だった。

 

(まぁ、今回の初手は良い方か)

 

酷い時は全て使えない魔法だったり、アドバンス召喚しか出来ない高レベルだけの手札だったりするので、今回はまぁ良いかとフレンはカードに触れた。

 

「俺は魔法カード『融合』を発動。手札の『古代の機械猟犬』2体で融合」

 

カチカチカチと機械独特の機械音を鳴らしながら、機械犬2体が渦の中に吸い込まれていく。

 

「機械仕掛けの猟犬共、今こそ交じりて抗う者達を捻じ伏せろ。融合召喚、レベル5『古代の(アンティーク・ギア・)双頭猟犬(ダブルバイト・ハウンド・ドッグ)』!」

 

古代の機械双頭猟犬 ☆5 攻撃力:1400

 

ギュルルル、ガチガチガチッ!先程よりも激しい機械音と共に現れたのは2つの首を持つ機械猟犬。キュルキュルとカメラアイをあちこち動かし、フレンを視界に入れると、右側の頭が大きく口を開け―――

 

 

ばくんっ!!

 

 

―――フレンの頭を思いっきり食べた。

 

 

「ひっ、きゃああああああああっ!?」

 

「おぉー、ちょー真っ暗だわぁー」

 

突然、相手の頭が食べられるなどというショッキングな光景にモコは悲鳴を上げるが、頭部が食べられている張本人は双頭猟犬の口内で暢気な事を言っていた。それに苛立ったのか、双頭猟犬は頭に怒りマークを浮かべ、がぶがぶと噛み始める。

 

「あー、痛い痛いちょーいたぁーい」

 

「ひ、ひぇぇぇっ…!」

 

痛いと言いながらへらへらと笑うフレンに色んな意味で怯えるモコ。だがフレンは至って暢気だった。

 

「俺、これでターンエンドねぇ」

 

フレン 手札5⇒2

 

「ささっ、どうぞどうぞ」

 

そう言って、手をモコに向けるフレン。ただでさえ嫌いな人物に呼び出された上に、そのままターンエンドされて、まともに攻撃が出来なかった双頭猟犬は低い唸り声を上げながらフレンを噛んでいた。

 

「わ、私のターン…ドロー…」

 

モコ 手札:5⇒6

 

「わ、私は魔法カード『手札抹殺』を発動。お互いのプレイヤーは今持っている手札を全て墓地へ送り、送った枚数分、新しくドローします。私は5枚捨て、5枚ドロー」

 

「俺は2枚捨てて、2枚ドローね」

 

「…私は更に魔法カード『生者の書―禁断の呪術―』を発動。自分の墓地に存在するアンデット族モンスターを1体特殊召喚し、相手墓地に存在するモンスター1体を除外します。私は墓地にいる『馬頭鬼』さんを特殊召喚」

 

「除外するのは当然?」

 

「『古代の機械猟犬』です」

 

モコ 手札5⇒4

 

ボコボコと地面から湧き上がる様に現れたのは大きな斧を武器とする2足歩行で立つ馬の鬼。早く戦わせろと言わんばかりにフーッフーッと鼻息を荒くしている。その姿にフレンは「うぇぇ…」と言った。

 

馬頭鬼 ☆4 攻撃力:1700

 

「そんなに可愛いのに、使うのはアンデット族かよぉ…。しかもブサイク」

 

げんなりとした顔でそう言ったフレンの言葉にカチンと来たのか、『何だとゴラァ?』と言わんばかりに馬頭鬼が睨み付ける。

 

「ぶ、ブサイクって酷いじゃないですかぁ!」

 

「あ、いやいやモコにゃんの事じゃないよ?」

 

「モ、モコにゃ…?馬頭鬼さん、逞しいお身体じゃないですか!カッコイイじゃないですかぁ!」

 

心外だと言わんばかりにそう反論したモコはぷぅーっと頬をハスムターの様にパンパンに膨らませて怒る。モコに褒められた馬頭鬼は不機嫌から一変し嬉しそうな表情になると、フレンを鼻で笑った。

 

「…え、モコるん筋肉フェチ?」

 

「モコるん…?い、いえそう言う訳ではぁ…」

 

因みにこの会話を指令室で聞いていた零児が今すぐにでも本格的なシックスパックを作ろうとトレーニングルームに行こうとするのを、中島が冷静に「今動いたら駄目ですって」と止めたとか。

 

「あっ、デュエルの途中でした…」

 

「そうだったね。この瞬間、双頭猟犬の効果発動!」

 

右側の頭に噛まれながらもフレンが指示を出すと、左側の頭が口を開け、馬頭鬼に向かって歯車を発射する。歯車は馬頭鬼にピタリとくっつき、くるくると回り始める。

 

「1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された時、そのモンスターにギア・アシッド・カウンターを乗せる」

 

「ギア・アシッド・カウンター?」

 

「効果は後でのお楽しみ!」

 

アハハハと笑うフレン。それに謎の薄気味悪さを感じながらも、モコはターンを続ける。

 

「わ、私は手札から『冥界騎士 トリスタン』を通常召喚!」

 

慌ててモコが召喚したのは青い鎧を纏い、茶色の馬に跨った騎士。

 

冥界騎士 トリスタン ☆4 攻撃力:1800

モコ 手札4⇒3

 

「トリスタンさんの効果!召喚に成功した時、墓地から守備力0のアンデット族モンスターを1体を手札に加えます。私は墓地の『ゴーストリック・シュタイン』さんを手札に」

 

モコ 手札3⇒4

 

トリスタンが剣を掲げると、墓地から1枚のカードがモコの手に戻ってくる。

 

「トリスタンさんがいる時、手札から『冥界の麗人 イゾルデ』ちゃんを特殊召喚出来ます!来て、イゾルデちゃん!」

 

冥界の麗人 イゾルデ ☆4 攻撃力:1000

モコ 手札4⇒3

 

再びトリスタンが剣を掲げると、彼の隣のモンスターゾーンに影の穴が現れ、そこから1体のモンスターが現れた。銀髪に麗しい顔立ちの女性型モンスター・イゾルデだ。クスクスと妖艶に笑いながら、目はフレンに対し殺気を送っている。見た目麗しいモンスターの登場にフレンは喜んだ。

 

「わぁーお!カワイ子ちゃーん!」

 

「…デュエル中で大変申し訳ないのですが、1つお伺いしてもよろしいですか?」

 

「ん?何?デートの予定?」

 

「いえ、そうではなく…」

 

モコは不安げな瞳でフレンを見つめた。

 

「…エクシーズ次元とかお城とかって何ですか?そもそも貴方は何者なんです…?」

 

「ん?そんな事?」

 

「そ、そんな事って…」

 

「良いよ、教えてあげる。どっちみち知る事になるだろうし」

 

フレンが双頭猟犬の頭を軽く叩くと、双頭猟犬は『しょうがねぇな』と言わんばかりに渋々フレンを解放した。コキコキと首を左右に動かして筋肉を解すと、切り出した。

 

「モコちゃんってさ、異次元とかって信じる?」

 

「…へ?」

 

思っていたのと違う答えにモコはポカンと拍子抜けしてしまった。しかしフレンは「当然だよね」と困った様に笑った。

 

「んま、その反応が普通だよね。信じてなくても、あるんだよ。異次元は。しかもここ含め4つも、ね」

 

「よ、4つの次元…!?」

 

「それぞれの次元の名前は、その次元のデュエリストが得意とする召喚法が存在してて、俺は『融合次元』の人間。アカデミアっつーデュエリスト軍兵(アーミー)育成組織の一員さ」

 

「融合次元…?デュエリスト…あーみぃー?育成組織…?」

 

「俺が言ったお城はアカデミア。つまりはデュエリストを立派な軍兵にして、別次元侵略して征服しようぜって言う組織のお仲間って訳」

 

「…嘘…」

 

あまりにも現実離れした話に嘘だと思いたい。だが、フレンの目を見る限り嘘をついている様には見えない。なら今フレンが着けているデュエルディスクが見た事がないのもある程度は納得できる。

 

「まぁ、ここに来る前別次元1個潰しちゃったけど」

 

「!!」

 

あっさりとフレンはそう言った。

 

「エクシーズ次元って言ってさ、この人達をカードにして、町ぶっ壊してきたんだ」

 

「人を…カードに…!?」

 

「うん、こうやって…」

 

と、フレンは近くにあった木からぶちりと1枚木の葉を取ると、地面に落とし、落ち葉に向かってデュエルディスクを構えて軽く操作すると、ディスクから紫色の光が出現し、その光を浴びた木の葉は一瞬でカードになった。目の前で起きた出来事にモコは呆然とする。フレンはカードを拾うと、それをモコに見せつけた。

 

「ほら、このとーり!」

 

「ひっ…!」

 

にっこりと笑ってカードを見せつけるフレンの笑顔にモコは怯え、一歩下がった。

 

「これさ、植物だろうが人間だろうが石ころだろうがこうやってカードに出来ちゃうのよ。いやぁ、プロフェッサーの技術すごいよねぇ」

 

ニコニコニコ。笑顔を絶やさないフレン。

 

「俺のお仲間さん達は逃げ惑う人達をこうやってカードにするのをさ、ハンティングゲーム感覚でやってんのさ。馬鹿馬鹿しいだろう?」

 

「…え?」

 

フレンは嘲笑うかの様に馬鹿馬鹿しいと言った。フレンに怯えていたモコは一瞬、怯えが引っ込んだがそれはすぐにまた出る事になる。

 

「――――― 逃げ惑う人間をカードにするより、俺は人間で実験するのが好きなのに」

 

その瞬間、ニタリと笑ったフレンから狂気が溢れ出した。

 

「ひぃっ…!」

 

「俺さ、デュエリストじゃなくて研究者、科学者なのさ。実験大好き。特に植物と生物学。アカデミアに入ったのも珍しい研究と植物があるって言うから。んで、入ったら研究し放題でウハウハだった訳よ。そしたらある日人をカード化するっていうどんな論理もひっくり返す奇跡の魔法が出来た。でもそこまで興味はなかった」

 

スッとフレンの目が細くなる。

 

「いつも通り研究が出来るからそれがあってもなくても良かった。んで、何日か経ったある日に俺は何でかわからないけど、エクシーズ次元の残党狩り隊に任命されて、行ったらさ1人の女の子が俺に言ってきた。『何でもするから、助けて!』ってさ。それでその子、命乞いで俺に差し出してきたんだよ」

 

「な、何を…?」

 

「カラダ」

 

そこで、モコはフレンから匂って来る匂いのもう1つの正体に気付いた。鉄の様な匂いは血液、そしてもう1つの鼻につく匂い。モコもそこまで馬鹿ではない。今の話を聞いて、大体の察しはついた。

 

「俺って顔良いから、そういう相手にもってこいって訳。その後も同じ様な子が何人も俺に命乞いして、結局カードにした。その時のさぁ、絶望した顔が最ッ高なのよ!!!」

 

紅潮した頬を両手で押さえ、とろんと蕩けた様な表情で熱っぽく言った。

 

「あの快感がだぁい好き…!」

 

モコは口元を押さえた。胃の中の物が逆流して、吐いてしまうそうだが、それだけは抑えた。一瞬でも怯えを引っ込めたのは間違いだった。

 

―――フレンは人を玩具みたいな物と考えている。

 

人とは思えない、人外だ。目の前にいるのはデュエリストでも、人間でもない。悪魔、という言葉が正しい。

 

「んじゃあデュエル続けようか!お城に帰ったら楽しい事いーっぱいしようね!」

 

「ッ馬頭鬼さんで双頭猟犬を攻撃!!」

 

主を怯えさせた罪を償えと言わんばかりに怒った顔で大斧を振りかぶる馬頭鬼。しかしフレンは笑った。

 

「双頭猟犬の効果!ギア・アシッド・カウンターが乗ったモンスターがバトルを行うダメージステップ開始時、そのモンスターは破壊される!消えろ馬!」

 

馬頭鬼の大斧が双頭猟犬に届く前に、馬頭鬼の体にくっ付いた歯車が回転し、馬頭鬼を墓地に送る。

 

「馬頭鬼さん!」

 

「次はどうする?」

 

笑うフレン。その笑顔は明るいが、本性は残酷な物。モコは冷や汗を流しながら手札を見た。

 

「(こ、怖い…!あの人、本当に人?それに今無暗にアルカードやデュラハンさんを出して、何かされるのも嫌。そもそも今双頭猟犬に対してちゃんと攻撃出来るのはトリスタンさんだけ。もしもトリスタンさんとイゾルデちゃんが破壊されて、フィールドががら空きになった状態になるのは絶対駄目だ!『ミイラの呼び声』と『ゴーストリック・ハウス』が手札にないのが痛い!)」

 

ミイラの呼び声は1ターンに1度自分フィールドにいない時、手札からアンデット族を1体特殊召喚出来る。トリスタンとイゾルデがいない状態での使用は可能で、先程破壊された馬頭鬼の効果で、墓地にアンデットモンスターを1体特殊召喚出来るが、状況とフレンのライフを削れない。ゴーストリック・ハウスの効果でダイレクトアタックは出来るが、それを使ってもどうなるか。

 

不安がモコの思考を支配していく。

 

「(どうしよう…!)」

 

「楽しみだな~!でろんでろんになったモコきゅん!たーっぷり遊ぼうねぇ!」

 

「ひっ…!」

 

楽しくて溜まらないとフレンは笑う。それが更にモコの不安と恐怖を煽る。

 

「(やっ…!やだやだやだ!こんな人がいる場所なんて行きたくない!誰か…ッ!師匠…!真澄ちゃん…!遊矢くんっ!!)」

 

ぎゅっと目をつぶる。もう目の前にいるフレンを視界に映したくなかった。怖い、嫌だ、怖い。感じた事もない恐怖が、モコを支配していく。

 

 

――― 一瞬フレンとあの男が重なった。

 

 

「やっ…!やだ…!怖い…!こわいよぉ…!」

 

頭を抱え、ズリズリと後ろへ逃げていくモコ。ポロポロと目から涙が落ち、地面を濡らしていく。それに気づいたフレンは、ぞくりと尾てい骨から甘い痺れが全身に回ったのを感じた。

 

「(泣き顔…ちょー可愛いぃぃ…!)」

 

今まで泣いて命乞いしてきた女達とは比べ物にならない程、フレンにとってモコの涙と泣き顔というのは自分の興奮を煽る最高の材料に見えた。可愛い声、可愛い泣き顔、可愛い体。可愛いが詰まった獲物。

 

フレンは、それが愛しく思えてきた。

 

「(早く連れて帰って遊びたい!あぁ何しようか!)」

 

しかし、フレンはこの考えをすぐに後悔する事となる。

 

 

 

 

【 ダレダ? ヌシサマ ヲ イジメルヤツハ? 】

 

 

 

 

――― 低いノイズ混じりの声が、フレンの耳に入ってきた。

 

 

 

 

「―――私は」

 

更に聞こえてきた少女の声にフレンはモコを見た。モコは俯いたまま、自分の手札に触れ、1枚のカードをフレンに見せた。

 

それは、フレンにとっては見慣れた―――――

 

 

 

「魔法カード『融合』を発動」

 

 

 

フレンは一生忘れない。この融合を

 

 

 

「トリスタンとイゾルデを融合」

 

 

 

フレンは一生忘れない。あの姿を

 

 

 

「2つの亡者の魂 今混じりあい 冥界の門を破り 我が元へ」

 

 

 

フレンは一生忘れない。あの瞳を

 

 

 

「 戻ってきて 私の(愛し子) 」

 

 

 

フレンは一生忘れない。

 

 

 

「 融合召喚 」

 

 

 

あの我が子を慈しむ様な母親の様な微笑みを

 

 

 

「 冥界龍 ドラゴネクロ 」

 

 

 

あの黒き龍の事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タダイマ ママ

 

 

 

 

 

 

低いノイズ混じりの声が、そう言った気がした。

 

 

 

 

 

その後、フレンの記憶はここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ワンダー・カルテット】、つまりバトルロワイヤルのフィールド内に巻き込まれてしまったカードショップの店長代理・白樺鈴蘭はジャングルエリアで、Dホイールに乗って爆走するユーゴと出会う。

ユーゴと共に行動する鈴蘭。すると、何かに導かれる様にある場所へ向かう。

そこで、黒い龍と共に穏やかな顔で眠るモコを見つける。しかし様子が何かおかしくて―――?


次回 まよつじ第21話『迷える子羊とバトルロイヤル その4』


次回 モコ、ママになる?


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