やはり俺が人外なのはまちがっている。   作:KN HR

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『本物』

~八幡サイド~

 

―――俺はもうボロボロだった。立っているのがやっとだった。

 

だがまだ言彦の攻撃は終わらない。

「げっげっげ、終わりだな。貴様との戦いが一番新しかったぞ」

 

言彦はそう言ってもうほとんど動けない俺に近づいてきた。

 

そして言彦のラッシュが始まる。

 

数秒たつと俺は人の原形すらとどめていなかった。

 

体中穴だらけだし手足もバラバラ、そこらへんに俺の肉片とか臓器の破片が散らばっている、なにより血のせいでほとんどが真っ赤に染まっている。

グロいったらありゃしない。

 

まあそんなわけで・・・俺は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――俺はまたあの何もない空間にいた。

 

 

”久しぶりだね”

 

「あぁ、久しぶりだな」

 

”3兆年も会いに来なかったのも悲しいけど、八幡君、君は何をやっているんだい”

 

「・・・悪かったな。お前がせっかく転生させてくれたのに、これで絶対に生き返ることができなくなった。」

「お前の思いを無駄にしちまった」

「俺なんかのために今までありがとな」

「これでホントにさよならだ」

 

俺は”天の声”に別れを告げる。

 

”待てよ”

”何勝手にさよならしようとしてるんだよ”

 

「・・・」

 

”僕は言ったよね、君の物語は終わらないし、終わらせないと”

 

「じゃあどうするってんだよ!」

「俺はもう生き返れないはずだろ!」

 

”・・・八幡君は生き返りたくないのかい”

 

「確かに結局安心院は守れなかった」

「でもさ、生き返れたとしてもまた殺されるだけだろ」

 

”なんでそう思う?”

 

「あいつは本物の英雄だ。あいつこそ主人公ってやつだろう」

「あいつは勝利を約束されている」

「何をしても最後に勝つのは主人公って決まってんだから」

 

”・・・”

 

「それにさ、俺はそれなりに満足してるんだ」

「俺なんかが他人のために命を犠牲にできたんだ」

「意味はなかったけど、安心院のために死ねたんだから俺は幸せだったよ」

 

『だからもう―――完全に死なせてくれ』

 

 

 

 

 

”・・・いやだね”

 

「おい」

 

今のはこのまま死なせてくれる流れじゃないのかよ。

 

”天の声”は今までで一番力強い声で言う。

 

”八幡君、君の物語がそんな終わり方でいいのかよ”

”あんな括弧つけといてこんな格好悪い結末でいいと本気で思ってるのかよ”

 

『それでいいと思ってるよ』

 

”だから括弧つけるなよ!”

”満足してる?”

”安心院なじみのために死ねたから幸せ?”

 

 

 

 

 

 

 

”そんなわけないだろ!”

 

”これくらいで満足するなよ!”

 

”死んで幸せになんてなるなよ!”

 

「・・・」

 

”君だって本物の主人公になりたいんだろ”

”安心院なじみを助けたいんだろ”

 

「・・・」

 

”比企谷八幡!君はどうしたい!”

 

 

「わかってる」

「わかってるよ!」

 

俺は・・・

 

「なれるなら主人公になりたい」

「誰よりも強く、誰よりも正しく、誰よりも優しく、誰よりもかっこよく、誰よりも慕われる、そんな主人公になりたい」

 

少しずつ声が大きくなっていく。

 

「できるなら安心院を助けたい!」

「できるならもっと生きていたい!!」

「できるなら本物が欲しい!!!」

 

 

”・・・そうか”

”八幡君が本気で願うなら、君は主人公になれる”

”安心院なじみを助けることだって、生き続けることだってできる”

 

 

”それに『本物』については君自身気づいてるんじゃないかな、君の言う『本物』はもう見つかっているってことを”

 

「・・・」

 

”まあいいさ、八幡君の本音が聞けたしね”

”さて、じゃあこれからについて話そうか”

 

「・・・そうだな」

 

”時間もないから八幡君が何をすればいいのか簡単に言うよ”

 

”想像しろ”

”腕がないなら新しい腕を、足がないなら新しい足を、臓器が機能しないなら新しい臓器を、血が足りないなら新しい血を”

 

”治らないなら新しく想像しなおせ”

 

”勝てないなら勝てる自分を想像しろ”

 

”想像し続ける限り、八幡君は負けない”

 

”相手が世界を救った英雄なら八幡君は世界を創造した神みたいなものだ”

”神が英雄程度に負けるわけがないだろう?”

 

”八幡君は『本物』を探していたんだろ”

”これはそのための力だ”

”『本物』の一つぐらい守って見せろよ”

 

「・・・ああ、わかったよ」

 

”・・・もう本当に時間がないから強制的に現実世界に戻させてもらうよ”

 

「ああ」

 

 

”八幡君”

 

「なんだよ、まだなんかあんのかよ」

 

”いってらっしゃい、頑張ってね”

 

「っ!!・・・あぁ、いってきます」

 

 

 

俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

~なじみサイド~

 

比企谷君が死んだ。

どこからどう見ても死んだ。

僕の目の前で死んだ。

僕のために死んだ。

僕のせいで死んだ。

 

 

 

僕は初めて涙を流した。

悲しいってこんな気持ちなんだね。

 

 

 

 

「げっげっげ、これで本当に終わりだな平等主義者」

 

「ん?泣いているな、そんなに大切な奴だったのか?あいつは貴様の仲間ではないのだろう?」

「もしかして貴様の好きな相手かなにかだったか?」

 

この気持ちは彼が好きだったってことなのだろうか。

「・・・」

 

「何も言わないということは図星だな」

 

「平等主義者の貴様が人を好きになるとは新しい」

「だがその恋も貴様の人生もこれで終わりだな」

 

 

「なんでだよ!、僕はともかく彼は僕の目的には関係なかった。なんで殺したんだ!」

 

「げっげっげ、恥ずかしながらこの言彦、手加減の余裕がなくてな」

「本気を出さねば負けていた。それほどに強かった」

 

言彦はゆっくりとこっちに歩いてくる。

 

「まあ、それでもやはり儂には勝てなかったようだがな」

 

言彦は僕の頭を持ち上げる。

 

「まあなかなかに新しかったぞ、貴様たちとの戦いは」

 

「こっちは最悪だ」

 

「げっげっげ、だろうな」

 

言彦が拳に力を入れている。

もうすぐ殴られて僕は死ぬのだろう。

 

でもそれもいいかもしれない。

比企谷君にまた会えるかもしれないのなら。

それが地獄だろうとかまわない。

 

 

こんな時になってようやく気づく、僕は比企谷八幡が好きだったんだと。

 

比企谷君、今から君の所へ行くよ。

 

 

 

―――そう思った時だった。

 

 

 

「安心院を放せよ、クソ野郎!」

彼の声が聞こえた。

 

ありえないと思うけど確かに聞こえた。

僕が彼の声を間違えるはずがない。

「比企谷君!」

 

「なに?貴様は確かに死んだはずだが生き返るとは新しい!」

 

言彦は僕を放して後ろを向く。

 

 

僕も言彦の向いているのほうを見ると、そこには無傷の比企谷君が立っていた。

 

 

 

 

 

 

~八幡サイド~

 

「安心院を放せよ、クソ野郎!」

 

 

「比企谷君!」

安心院の声が聞こえる。

無事だったようでよかった。

 

「なに?貴様は確かに死んだはずだが・・・生き返るとは新しい!」

 

言彦が安心院を放しこっちを向く。

 

 

「俺の”本物”をこれ以上傷付けさせはしない」

そう、俺は安心院こそが俺の”本物”だったのだ。

 

 

「本物?この平等主義者のことか?」

「げっげっげ、まあなんでもいい」

「今度こそ終わりにしてやろう」

 

 

また戦闘が始まる。

だが俺はさっきとは違い攻撃をガードしないし避けもしない。

 

捨て身で攻撃し続ける。

 

「おお、儂に捨て身で攻撃してくるとは新しい」

「だがそれでは儂に勝てんぞ!」

 

「そうとは限らない」

俺は傷ついたところから新しく想像しなおしていった。

 

 

「む?傷が治っただと?」

「新しいぞ!貴様何をした?」

 

 

「敵にそんなの教えるかよ」

 

最初の戦闘のときとまったく逆の展開になった。

 

 

 

 

 

 

 

―――俺は無傷で言彦は膝をついている。

 

 

「げっげっげっげっげっげっげっげっげっげっげ!」

「負けるとは新しいな」

 

 

どうやら負けを認めたようだ。

思ったより潔かったな。

 

 

「じゃあ安心院、帰るぞ」

 

「え?あ、うん」

安心院が唖然としている、なんかかわいいな。

 

そんなことを思っていると言彦が俺たちを呼び止めた。

「待て、儂を殺さないのか」

 

「お前はこの世界の英雄なんだろ、生きてる方が世界のためになるだろう」

 

「だが儂は貴様を殺そうとしたのだ、殺されても文句は言えん」

 

「もうそんなことは気にしてない、俺は安心院が無事ならそれでいい」

 

「・・・そうか」

 

「だから気にすんな、じゃあな」

 

 

 

俺はそう言って安心院を抱えて帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ比企谷君、言いたいことはたくさんあるけどさ」

「さっき僕のこと”本物”って言ったよね」

 

「ああ、言った」

「お前こそが俺の探していた”本物”だって気づいたんだ」

「俺はお前のことを本気で信頼している、この世で俺にとってのただ一つの”本物”の関係だって思ってる。」

 

「安心院は俺のことどう思ってるんだ?」

 

俺が聞くと、なぜか安心院は顔を赤くしだした。

そして安心院は恥ずかしそうに話しだした。

 

「僕もさ、比企谷君には特別な感情を持っているよ。」

 

特別な感情ってどういう意味だろうか。

 

「僕も比企谷君との関係は”本物”だって思うよ」

「そして僕もさっき気づいたことなんだけどね」

 

「僕は比企谷君のことが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――好きだ」

 

え!?

俺のことが好き?

 

・・・いやありえないでしょ。

 

きっとこれはあれだ、likeのほうだ。

うんそうに違いない。

 

だがそう思っているところで安心院は言う。

 

「もちろんlikeじゃなくてloveのほうだからね」

 

「・・・」

 

「せっかく僕が勇気を出して告白したのに返事をくれないのかい」

 

「・・・それは本気で?」

 

「本気に決まっているだろう」

「比企谷君は僕のことを信頼しているんだろ、信じなよ」

 

「・・・俺なんか好きになってもいいことなんてないぞ」

 

「比企谷君は自分の評価が低すぎるよ」

「比企谷君は命がけで僕を守ってくれた王子様なんだから」

「格好良かったよ、あのときの比企谷君は」

 

 

「・・・そうかよ」

「俺も安心院のことは・・・好きだ」

「もちろんloveのほうで」

 

チュ

俺は安心院にキスをした。

 

「これで僕たちは恋人同士だね」

安心院は今までに見たことのないほどの笑顔だった。

 

安心院ってこんなにかわいかっただろうか。

こんなにかわいい美少女が恋人だなんて、俺はなんて幸せ者なんだろうか。

 

 

 

 

 

俺はこの日、絶対に安心院を守り抜くと誓ったのだった。

 

 




どうだったでしょうか。
やっと八幡がチートしてましたね。

そして八幡が本物を見つけることができました。
そしてリア充の仲間入りです。


あと次の話からは番外編である小町の話の続きになります。

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