――犠牲者の死亡推定時刻からキラは学生の可能性が高いと発表。その翌日から二日連続で一時間ごとに23目の犯罪者を葬っている。これはキラが死の時間を操ることができることを示している。大事なことはキラは捜査本部の情報を得る手段を持っている……そっちだ。ここまで情報を落としたキラの狙いは何だ……キラは何をしようとしている。警察の情報がキラに漏れている。この事実を素通りにはできない……仕方ない内部告発という形で匿名希望でこの事を伝えるとしよう。僕が狙っているのはその先。確かめたいことがある。
凶悪犯連続殺人特別捜査班と書かれた部屋に3人の長身の男が伏し目がちになりながら夜神局長の前に立っていた。
そして3人が同時に封筒くらいの大きさの紙を机に置いた。そこには二文字「辞表」と書かれている。辞表というのは仕事を辞めるときに出すものである。
夜神局長は疲れていた。連日のキラ操作で精神的にも肉体的にも休まらない。人手不足であり、人事部に今年の警察官の採用枠を増やして欲しいとつい先日相談しにいってきたくらいである。そんな折のでき事だった。この忙しく人手の足りない時にありえない行動をしていて何が起こっているか理解できなかった。いや、理解はしていたがこの状況でそれができるかという心理を理解できなかった。思わず
「なんだこれは!?」
辞表!叫ばずにはいられない。
「見ての通り辞表です」
――そんなことは分かっている。コントでもしているつもりなのか。そういうことを聞いているのではない
そして真ん中の男が口を開いた。
「命が欲しいからですよ。私がキラなら自分を捕まえようとする人間は殺します。前にLはテレビで「私を殺してみろ」とスタンドプレーをしました。しかし、Lは自分の名前どころか顔も出していない。そしてLが命じたのは「犠牲になった者が日本でどう報じられていたか」「犠牲になった犯罪者の顔が映像ででていたかどうか」です」
男は息を飲み勢いよく机を叩き付けた。
「その通りでした。犠牲者は全員日本の報道で顔と名前が確認できた者でした。つまり、私たちはLと違って警察手帳という写真の入った身分証明書を持って捜査しているんです。つまり、いつキラに殺されてもおかしくない。これが辞表の理由です」
そして三人は部屋を出て行った。
「お、おい……君たち。ま、待ちたまえ……」
局長の声はすでに三人には届かなかった。
■Lの家■
「割と簡単にできました」
Lは机を見ながら言った。
「ん、ノートを隠せたということか?」
「この引き出しの中です」
Lは指で机を指し示した。
「……そこって隠したことになるのか?」
引き出しには鍵はついている。その机を開けた。
そこには『駄菓子日記』と書かれた日記帳が一冊入っていた。
「デスノートじゃなく、ただの日記帳じゃないか」
「ほとんどの人間はこの私が一生懸命食べ比べしたお菓子の評価を読むことでこの秘密に満足するでしょう。でも本当の鍵はこっちです」
するとペン立の中から一本のボールペンを取り出した。
「机の周辺にどこに転がっていても不思議ではないボールペンの芯です」
引出の裏を覗き込み始めた。
「ここです。引き出しの裏によく見ないとわからない小さな穴があります。その穴にこれを入れます」
すると薄い板が持ち上がりその中から黒いデスノートがでてきた。
「なるほど二重底か……どうりでホームセンターって所で板を念入りに選んでいたはずだ。まぁ日記のフェイクもあるし、見つからないだろう」
「それだけじゃありません。ここに電気を通さないプラスチック製の芯を挟まなければ電流が流れその瞬間薄いビニールに入ったガソリンに火がつきます」
Lは薄い板を外して板の裏にあるゴムを指差した・
「中底を閉めるときはこのゴムが金具の間に挟まって絶縁体となり電流は流れません。つまり、プラスチックのボールペンを選択し小さい穴から差し込まない限り、点火します。引き出しを強引に引き上げたりすればその瞬間ノートは燃え完全に証拠は隠滅されます……」
「火事になった原因聞かれるだろ」
「燃やした理由は本当の日記を隠していて見られたくなかったでまぁ通ります。そもそもノートですし」
リュークは笑った。初めての体験だからである。
「デスノートを人間が持った時その隠し場所に一番困るという話は聞いていたがここまでやったのもL、たぶんお前がはじめてだ」
「それにしても危険な細工だな」
「手順を間違えただけで自分が大やけどするぞ」
「私は最初から危険を冒していますよ。そしてその危険は逆に私を安全にしてくれます。家から小火が出るのと死刑になるのどっちがいいかは考えなくても分かります」
ギャグが滑ってるのは分かってますよ