「……L、人を陥れて楽しいか?……おそらくプロに頼んで僕の筆跡に真似て貰って偽装したのだろう……僕はキラではないからキラでないということは自分自身が分かっている……そして……このノートの内容を読んでみて確信したが、L、君の負けだ……」
月はビデオデッキにテープを差し込んだ。さくらTVの一見で再生の仕方は分かっている。
そのテープには黒いノートを持った金色の女性が夜神月の家に入るところを映していた。
「僕のことを盗撮……いや、前から撮影している人がいた……その人のお蔭でFBIの12名が殺害された後に監視カメラや盗聴器がしかけられたことにもいち早く気付けたし、今回何かを細工していることにも気が付けた……そしてこの画面を拡大すれば分かるが今発見された{DEATHNOTE}であることは間違いない……すでにウエディは不法侵入を幾度にも渡り繰り返していた罪で逮捕されている……そしてそれを誰が指示していたかはここにいる捜査本部の人間も分かるはずだ……今回のこのノートの偽装もLの命令と見て間違いない……外国人犯罪者に犯罪行為を命令している時点で捜査本部も犯罪組織であると言っていい。人殺しは罪が重いとか盗聴は罪が軽いとかそういうのは無しにしてどちらも犯罪だ……筆跡の偽造は指紋の偽造や人の家に誰にも気づかれずに監視カメラや盗聴器を複数つけるよりもはるかに簡単だ……プロに頼めばなんとでもなる……罪を認めたらどうだ?」
Lはオレンジジュースをストローで吸っていた。ほとんどが氷で埋め尽くされていたのでオレンジジュースの量はそこまで多くない……オレンジジュースを飲み干すと余った氷を口の中に入れてかみ砕いた。
「確かにFBIの件で監視カメラと盗聴器を仕掛けるように命令したのは私です……それは殺人と監視カメラを天秤にかけた結果です……そして今回のノートに関しては私は知りません……単独の行動、あるいは月君がそのノートに書いて操ったとも考えられます」
(月君も分かっているはず……決定的な証拠がない限り私は何とでも言い逃れができます……そして月君、君はこんな返ししか用意していなかったのですか?)
(……ここまでは茶番……決定的な証拠がない限りLは何度でも言い逃れするだろう……しかし、Lの逃げ道をいくつか防いだ上で決定的な証拠をぶつけたらどうだ……それは完全に敗北を意味する)
「L終わりにしよう……もう君の逃げ場はないんだ……そして頭のいい君なら分かる……完全にチェックメイトということに……」
月の目から涙が零れ落ちた。顔がくしゃってなっている。
「L……君とはもっと違う形で出会いたかった……」
(……この表情……演技にしてはくさ過ぎる……本当に……)
「これを見て欲しい……」
月は本物のDEATHNOTEに書かれたあるページを指差した。
ナオミ・ペンバー
自殺
手にした証拠を誰にも発見されないように処分を行う。
その上で人に迷惑がかからぬ様自分の考えられる最大限の遺体の発見されない自殺だけを考え行動し48時間以内に実行し死亡。
「……この殺人だけ非常に長い……この人物は何かを手にした……そしてキラに殺されたように見えないように特に注意して操って殺害している……そして僕からすれば僕に罪をなすりつけるならこれは書くべきじゃないと思った……しかし、これを書いたのはおそらく僕とナオミさんが繋がりがあったのをLは気付いたからあえてナオミさんの事も書いたのだろう……先に言っておくが、ナオミさんとは知り合いだ」
「捜査本部に美空さんのお母さんから電話があり娘が失踪したという電話がありました……そしてその美空さんと月君が知り合いだったのならば疑惑が濃くなるのも当然……おそらく美空さんは夜神君がキラだと気付いた……そして何か口論をし、月君に殺された……だから証拠を処分した上で見つからないように殺している……筋が通りませんか?」
目を瞑っていた月は目を開いた。とても大きく。
「ああ。筋は通る。ナオミさんが本当に失踪して死んだなら死人に口なしだ……僕はキラとして逮捕されるだろう……無実だとしてもな……しかしナオミさんが生きていたら話は180度変わる……その意味分かるな?」
Lは月の力強い目をそらしてしまった。
この時すでに敗北感という文字が見えた。
「入ってきてください、ナオミさん」
すると黒髪にライダースのジャケットを着た女性が部屋に入ってきた。
コツ……コツ……静まり返ったその部屋に彼女の歩く音が鳴り響いた……
Lはその姿を見て目をまん丸にした……そんなはずはない……そう思った。
そして、反抗をしても無駄であることはLは分かっていた。
「おめでとうございます……皆さん……もう反抗するつもりはありません……彼女が生存していた事で今後何時間議論しようと私の負けです……おそらく彼女が生きていたなら録画された会話の内容もあることでしょう……そうです、私がキラです」
Lは窓を開け空を眺めた。何かを考えているように見えた。
「心配しないでください……これ以上人を殺そうともしません。もちろん自分自身も……ただ聞かせて欲しいのですが、確かに彼女は殺したと思いました……なぜ生きているのでしょうか?」
ナオミはLをにらみつけた。あの時のように……
「それはね……私から説明するわ。私はレイと結婚の一歩手前まで話は進んでいた……だから苗字を変更したの……そしてそれがLに殺されない防御策……そう思わせるのが狙いだった……何も対策せずにL=キラの主張とアマネさんがキラであるという情報を言いに来ないとLは思うでしょう……自分を殺させないための何かを考え付いて対策してくる……そして名前を変えれば殺されない……殺しに必要なのは「名前」だけだから……そして名前が変更した場合は旧姓だろうと殺せない……名前を変えたから殺されないと思っていると思わせる必要があった……そして一度は美空ナオミで書いたが殺せなかったのでしょう……なぜならその時すでに名前は変わっていたのだから……しかしLはすでにそのことも考えて市役所の方から私の今の本名を入手した……そしてLはその時私をいつでも殺せると思ったのでしょう……だから色々と冥土の土産に話してくれたし、殺すのが確定していたから、最初に美空ナオミと書いて殺そうとした方法を私に見せた。しかし、その殺しの方法を見ることでLがどのように私を殺そうとしてるかが分かった……その方法をナオミ・ペンバーでも使うことは分かっていた。どうせすぐに死ぬ人間になら殺しの方法がばれていても関係ないし証拠は全て処分するからLにとって何の不利益は生じない……はずだった……実は私はここに秘密兵器がいるの」
ナオミはお腹を指差した。少しお腹が大きくなっている。
「デスノートは他人を巻き込む殺しはできない……例えば誰かを操って他のだれかを殺すことはできない……バスジャックを起こして乗客も一緒に死ぬなどもできない……そして私のおなかにはすでに生命が宿っていた……私が死ぬという事はこのおなかの子も死ぬことになるのは明白……つまり私のおなかに子供がいる限り、私は殺されない……そう、L、あなたはこれからの未来を創り支えていくまだこの世に誕生していない希望に負けたの……」
Lは理解した……確かにデスノートは他人を巻き込む殺しは出来ない……そしてもしあの時子供がいたなら例え本名を知って顔を知っていても殺すことができない……生命を司った母親というのはまさに聖母であったのだ……
「L……険しい道のりだった……しかし、ここまでやってこれたのはここにいるみんなのお蔭だ……そして僕はLの口からなぜキラとなり大量の殺人を犯したのかを聞きたい……Lにはそれだけの責任がある」
「退屈だったからです……私はLという地位に付いたものの難事件という事件もあっという間に解決し手ごたえを感じることはありませんででした。確かに当初はどんなことも目新しく困難な壁を乗り越えるごとに楽しくなっていくときがありましたが、いつの日か何でもできるようになり何でも買えるようになり何でも命令できるように生きるということが単なる作業のようになり生きる喜びを感じることはできませんでした。そんな折デスノートを拾いました……私は特に犯罪者は悪だから殺すべきという論理はありませんでしたが、人間が次々に死んでいったら人はどう反応するかというのには興味を持ちました。なぜなら今までに任意で人の手を下さずに人が大量に死んでいくということはありませんでしたから。ただ不特定の人間を殺すとなるとなる世界に大混乱が生じます……死刑制度を取る国も多く、犯罪者は死んで償うべきだという意見もあることからまずは犯罪者だけを殺してみたら世界はどう動くかということに興味を持ちました。果たして犯罪者が裁かれることで犯罪を犯そうとする人は減るのかそれとも変わらないのか……などそして上手く人間の増減を操ることができれば世の中に平和と秩序を人為的に作り出せるのではなどと考えたこともあります。ただそれ以上に月君と接点ができてからは私と同等の頭脳を持ち私の領域に踏み込もうとしてくるあなたに大変興味を抱きました……そして命を懸けた心理戦……人生で一番生きたここちを感じました……私の犯したことはこの世界の人間視点では許されない出来事かも知れません……ただ世界の動物たちや植物たち神たちからしてもどうでもいいことなのだと思います……つまりきまぐれ……退屈だったからきまぐれにやっただけなのです……私の考えを理解して貰おうとは思いませんし私は人間ですので人間のルールに則して裁いて貰って結構です……このノートを使うと決めた時からいつかはこの時が来ることは考えていました……むしろ誰かに止めて欲しかったのでしょう……ありがとうございました皆さん、そして初めての友達の月君……」
このような言葉を残したのちLは獄中に入ったと聞いた。大量殺人を犯していたキラがLだった……そのLの処分をどうするか慎重に判断しなければならない。
キラが逮捕されたと世界のテレビで報道があり1カ月立ち始めてから少しずつ犯罪が増えていった。
女子高生たちがお酒を飲みに行こうとしていたり、塾帰りの浪人生が親が迎えに来るのが遅くて切れていたり、不良少年たちがマフラーをふかしながら迷惑走行をしていたり日常的に小さな悪が増えつつあった。
世界は何度も同じことを繰り返し忘れたころに災害はやってくるのだろう。
そして約1年後の春に大量の集団死亡事件が起きることをこの時誰も知らなかった。
処女作として書き終えることができました。
何かを書くということ自体大学のレポートくらいしか経験していませんでしたが
はじめての物書きをしてみて面白なぁと思う反面途中でめんどくさいなあとも思うようになりました。
文章校正能力は皆無で特に上手くなりたいので小説の書き方的な本を読むことも無ければ
他のうまい小説家の書き方を参考にするということもしませんでした。
そんな小手先なことを学ぶよりもまずは書いてみるというのが自身の成長に繋がると考えたからです。
指摘を受けたこともありますが地の文が薄い……その通りです。
処女作を書き終えたことで反省点なども色々でてきたので
できる範囲で修正しながら次回作について書いていこうと思います。
応援してくださった方本当にありがとうございました。
この作品についてですが
リュークの登場が少なすぎました。前半はリュークも会話に参加していますが後半はほとんど喋っていません。
IFシリーズなら
ノートだけLが拾って、リュークはライトにつくという話の方がより原作に近かった気がします。
理由づけとしては元々夜神月がキラであったがもしお前以外の人物がキラだったときの話が見てみたかったので時が戻ったみたいな設定にしてノートの所有者に死神がつくというのは任意という設定にでも代えればより原作ベースで話が進めたのかと思います。
最後のトリックに関しては原作では書かれていないですが多分子供がお腹にいた場合その人は死なないんじゃないかと連載中に思っていました。大量殺人をしていたら赤ちゃんがいる女の人だっている訳だから赤ちゃんがいる母親は死なないとか逆に赤ちゃんは人間としてみなされないのにお腹に子が宿っていても死なないみたいなエピソードは本来どっかで通過してると思うんですよね……まぁ腐ってもジャンプそんなことは書けないでしょうが……
この連載当時に考えていたトリックを最後に利用しLを追い詰めようと思っていたので使う事にしました。
Lを追い詰めたのはまだ生まれてない子供……なかなかいいんじゃないかなと思ったのです。
このお話はもう少し文章構成能力がついたら修正したいと思います。
次回作は、獄中からスタートします。
最終回まで読んで下さった方ありがとうございましたー。
感想などを頂けたら嬉しいです。