Lは親指を口に入れて物思いにふけっていた。
ミサが口を開いたと思えば、やれストーカーだの、トイレに行きたいなどの発言を繰り返すばかりであった。
(……ノートの所有権を移した可能性が高い……夜神月の手に渡ったとかか?)
Lは記憶が消えているかを確かめる為に「なぜそこに縛られている?」「悪あがきか?」などの質問をし続けた。しかし、今までのデスノートに関する記憶だけ消えているとも思えるような回答だった。
(夜神月にデスノートが移った可能性は高くなった……これ以上月君を放置しているのは危険だ……今ある条件だけでも捕まえることはできる……ミサが逮捕されたことで完全に夜神月のキラ疑惑が色濃くなっている)
Lは夜神月確保までの流れを考察している。そんなときに携帯電話が鳴りだした。
Lは、はいと何度も答えていた。
(……どういうつもりだ……月君……)
しばらくたつと仏教面した月が捜査本部に入ってきた。
「L……電話で言ったが……僕がキラかもしれない……」
総一郎の口はあんぐり開いていた。
そしてはっとした総一郎は駆け足で月に近づき、肩に両手を乗せた。
肩に力が入っている。
「馬鹿な……何を言っているんだ……」
Lは後ろを振り向くと月が立っている。見上げる形になるけれど月は地面の方に目を合わせあえて視線を合わせようとしない。とても弱弱しく見える……
(が……ミサさんは第二のキラ容疑に対して何も話さない反面で、ここで月君がキラですと……ありえない……私がキラだ……一体何をしようとしている?)
「父さん、Lは世界一の探偵だ。そのLが僕をキラと疑い、ミサを口説いた男も僕だ……これは僕がLの立場でも僕をキラだと断定せざるを得ない……僕に自覚がないだけで僕がキラの可能性がある……」
月は自身の手を大きく広げ見つめていた。
そして月は自分がなぜキラかもしれないかを語り始めた。内容に意味はない……
(……なるほど……あくまで自覚がないと……そうか……ミサさんのように長期に拘束をして今後犯罪者が死んでいったら、月君はキラではないということになる……しかし、そんなこと私が新しくでた犯罪者を裁かなければ成立しなくなる……何を考えてるか分かりませんがそれが月君の対抗カードならそれにのっかりましょう)
「何か私には話の展開が気に入りませんが、夜神月を手足を縛り長期間、牢に監禁、その代わり今すぐです」
「分かった。僕もこの展開を望んでいた。その代わりLが僕をキラだと分かるかあるいはキラではないと納得するまでどんな状態になろうと自由にしないでくれ……」
月の顔からは余裕さえ感じられた。これから監禁されるであろう男の表情ではない。
「しかし、僕が自由でないのと同様にL、君も自由にはさせない……そして僕は父さんに極秘の手紙を渡す……それはLには見させない……僕は自分の自由を封じることで本当のキラを炙り出す」
月は両手に手錠をはめた。
相沢に連れてかれる月の背中を見ることなくLはミサを見つめていた。
(……こうなるように仕向けていてるのは分かっている。手紙もあえて公言することかからも何かしらの策略を張り巡らしているのだろう。あえて公言しなければ警戒させることもないということを考えると公言することで何か意味のあることをするのかも知れない……いや、月君が公言せずとも私は月君のひとつひとつの行動には注意深く観察している……公言してもしなくても同じだ……しかし……)
Lは不思議な胸騒ぎがしていた。追い詰めているのは自分のはずなのにも関わらず
こちらが追い詰められているのではないか………あの牢獄に自分自身も入るのではないかとと直感してしまった……
次回 どうこう