死の時間になっても行動を開始しない……
(そういえば美空ナオミと言っていた時もリュークは笑っていた……レイ=ペンバーは顔と名前を知られたから殺された……そして殺しの方法を知っているにも関わらずここにのこのこ来ている……つまり、名前を変えている……そうなるとアイバーに念のため頼んでおいて正解だったようですね……となるとアイバーから連絡来るまで時間を潰さなければなりません。彼女が操られるのはこの目でしっかり見ておきたい……)
Lは少し考えていた。月君との一騎打ちの予行練習として彼女と戦うのも一興。名前が分かればキラだとカミングアウトした所でどうにもならない。
「L……今書いた紙を見せて貰うわ」
ナオミは勢いよくLがメモをした紙に飛びついた。
「暴力は良くありません。いいですよ。この紙を見せてあげます」
Lはその紙をナオミに見せた。
そこには美空ナオミの名前と自殺方法が記されていた。
そして美空の目の前にナオミと同じように全身真っ黒で大きな羽をはやした死に神リュークが宙を浮いていた。
「はい。おめでとうございます。私がキラです」
首を45度傾けてチョコケーキを丸呑みした。
「死神が見える……そして今の発言……あなたが……」
ナオミは怒りが込み上げてきた。目の前にいるのは婚約者を殺された相手がいる。しかし、キラに対して聞きたいこともいくつかあった。
「まさか月君と美空さんが繋がっているとは思いませんでした。まぁちなみに第二のキラはアマネミサだとすでに断定していてもうすぐ逮捕されるでしょう。そしてアマネミサ逮捕で重要参考人として月君が呼ばれるでしょうね」
「キラだとカミングアウトしているのにずいぶん余裕そうじゃない」
「それはお互い様です……ただ美空ナオミでもデスノートが効かないということは、まぁ何かトリックがあるのでしょうね」
美空は一瞬俯いた。
「それで殺されないと安堵しているなら大間違いです。私がキラであると言ったからには残念ですが美空さんにはこの世から消えて貰います……ただそれまで少しお時間もあるのでお話しましょうか」
「なんでレイを殺したの?」
一番聞きたかった理由を聞いた。
「それは気まぐれでしょうか。FBIに関しては私にとってみれば脅威でもありません。FBIを放置して私が逮捕されることは0%です。ですので放置していてもよかったんです。ただ時間が経てば経つほどFBIの捜査は進み警察内部に怪しい者無しとなるのではわざわざ作為的に殺人者を殺してきた意味がなくなります。平和の世界を作りたいから悪人を殺そうと思った訳ではありませんから」
「どういう理由で殺していたというの?」
「デスノートは人を殺すノート。そうなるとやれることの範囲って結構少ないんですよね。全世界の人間が容疑者となる中で私を誰が見つけられるか、そして私を論破したり私の上を行く者が現れないか期待していました。生活の中で大きな刺激や喜びというのはもうなくなっていたのです。ヒントを散りばめながら私を脅かす存在が出てくるのを待っていました。そして現れたのが月君でした。彼のお蔭で時には追い詰められ時には追い詰め命がけの戦いをしてきたと思っています。私の場合は月君をキラとして仕立てあげること。月君は私をキラとして逮捕すること……だから月君をノートで殺そうという考えはありませんでした。どっちの方がより上なのかという知恵比べだからです」
「それでその知恵比べはどっちが勝ったの?」
「まだ分からないですね。ただ近日決着は着くでしょう。ただ私が逮捕されるのは私のデスノートを抑える、自白するくらいしか逮捕はできないです。もちろんこの部屋に盗聴器や監視カメラは私の以外はないことは確認済ですので今この話が外に漏れることもありません」
(勝った……私は小型の盗聴器をすでに忍び込ませている……これが自白の決定材料になる)
美空ナオミはにやりと口が緩んだ。
「もちろん今盗聴器で録音していたり、電話でどこかに通話中にしたまでいるかも知れませんが、ここは電波が通らないので通話中でも通話は他に届かないです。確認してみてください」
ナオミは電話を月に繋げっぱなしであった。確かに電話は繋がっていない……しかし小型盗聴器はある。きちんと録音できている。こっちだけでもあれば十分である。
「もちろん小型盗聴器やカメラがあってもそういうものを処分した上で自殺して貰います。死の前の行動は可能な範囲なら行えますのでどこに隠していても無駄です。そちらの芽は全て摘んでるからこう公言できてるのです」
「気付いてないようなら安心だわ。Lあなたの負けだわ……」
(ブラフかなんかでしょう……おそらく名前を変更……そして美空ナオミは名前変更してることに私が気付いたことに気付いていない)
Lのスマートフォンにメールが届いた。美空ナオミの顔写真と名前が書かれていた。
名前が変更されていた。
「ナオミ・ペンバー……なるほど道理でデスノートに書いても死ななかった訳ですね……名前を本日変えてそのことを極秘にしていたようですが、こちらには優秀な交渉人がいましてなんとか本名を入手できたようです」
「そんなはずは……」
ナオミの顔が青白くなっていた……
「入籍予定だったから苗字を変更する。苗字が変わった場合旧姓で名前を書いても死なない……そして個人情報は外部に漏れない……なぜ……」
「さよなら、ナオミ・ペンバー」
ナオミはくるっと振り向くとそのまま部屋を出て行こうとした。
「何かほかに言いたいことはないんですか?」
ナオミは喋らない……そしてそのまま部屋から消えた。後日美空家から捜索願いが出されたとのことだった。
結構なボリューム
次回:キラ逮捕