Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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話は少し巻き戻る……


番外編:隙間

夜神家と北村家の二家族に絞って監視カメラと盗聴器をしかけて数日が経った。

連日の夜勤で総一郎は隣で眠っていた。ワタリもすでに定時帰宅していた。ワタリは大変几帳面である為、拘束時間が終わると同時に帰る。文字通りぴったりである。

 

多くの日本人は定時で帰れないということを噂では知っていたが、日本に住むことでそのことを目の当たりにしていた。

 

Lは日本人が真面目すぎる国民性と定時で帰らないことが習慣化され定時で帰ることが悪いことであるとか気が引ける行為だと刷り込まされている所に問題であるのではないかと考えていた。もちろん能力とか効率という話も相関性はあるとは考えている……しかし、サービス残業でも働く警察本部の人間を見てそれを肌に感じていた。

 

日本人は確かに能力とか効率という意味では他の先進国に劣る。

 

東京都でも池袋や秋葉原などの特別区に属する駅前では大型電気店の前に大型電気店などがある……結局のところ供給者は増やすことはできるが需要者は固定数である、供給者が増えれば増えるほど収益が減ることは子供でも分かるのではないだろうか……本来そういう局面になるのならば、ある特定層だけに必要な……つまりニッチなものを売り出したり、差別化を図ったりそういう点からメスを入れる……あるいはバカンスのあるような国のようにうまく仕事数を調整する……極端な話であるがバカンスは国によって1か月あるところもあれば3か月あるところもある。バカンス時にお店が休業すると困る消費者たちが多いと思うであろうが、逆に閑散とするバカンス時だけ仕事をするというお店もありうまくバランスが取れている。

 

ある種の神の見えざる手なのであるがその見えざる手は意外にも合理的なシステムなのだと考えている。日本の場合は365日に近い間お店を開く企業は珍しくない。先ほどの大型電気点の場合は、従業員が過剰なサービスを提供することで差別化を図る傾向にある。Y電気に負けない為にはYカメラはサービス残業してでも売り上げを伸ばそう!なぜなら商品時代はメーカーから発注しているものなのでそこで勝負はできない……勝負するならサービスだという考えなのだろうか。あるライバル会社がサービスに力を入れるならば対抗店もサービスに力を入れるようになる……それが競争社会だ。

 

その結果のしわ寄せは働く人……つまり多くの労働者に寄せられる。

そして大型電気展や居酒屋、介護などサービスに特化した従業員が自殺をすることも珍しいことでもなくニュースになることなくひっそりとその死者が増えていく……

 

だからといって誰かが逮捕されたり死刑になるということは日本ではほとんどない……

 

Lはそれを「間接的に殺人している」という考えを持つ。間接的に人を殺している状況を悪とか正義とかというレッテルを貼って自己満足に浸るつもりはない。

 

 

 

Lは大部分のことに悪とか正義とかは存在しないと考えている。

 

未完成な人間が作った未完成な社会のルールで生かされていると考えていた。

 

 

人間が人間を殺すことが許されないのはあくまで人間のエゴである。

 

そのルールは人間が豊かに暮らすために禁止してるにすぎない面もある。

 

人間が動物を殺すのはOKとして動物が人間を殺したり、人間が人間を殺すのはいけない……

 

 

つまり生物の命に優劣を作っている。ゆえに生命は平等ではない……

 

 

Lが信じる絶対的な平等は大きく二つある。

 

それは

 

「時間」

 

 

「死」

 

 

これは人間だろうが動物だろうが植物たち……細かく言えば金持ちだろうと貧乏だろうと男であろうと女であろうと平等に与えられている。

 

 

生命はいつかなくなり、1日は24時間で構成されている。

 

 

Lからすると人間の命も動物の命もどちらが上でどちらが下とかないと思っている。

 

だから人が日々動物の命を奪いながら生活するのとと同じように

 

Lにとってデスノートで人の命を奪うことは自然であるできごとであった。

 

 

Lは「チェンジザワールド」つまり、世界を変えることができる機会があるなら変えてみたいという好奇心はあった。

 

理由としては世界を丸ごと操るということが今までに前例がなかったからである。

 

そしてそれをすることは不可能であると思っていた。

 

そんな折、魔法のようなデスノートを拾ったのである。

 

犯罪者を殺したいとか犯罪の無い世界にしたいとは思っていない……

 

ただ犯罪者が消えていく中で人がどう動くのか……

 

 

それには興味があった。果たして「キラ」という存在が現れれば犯罪数は0になるのかそれとも変わらないのか、人々の意識は変化するのか……

 

変化するならうまくデスノートを利用して世界全体を変えていけるのではと……

 

 

未完成な人間が作った社会の未完成なルールやシステム……

 

 

これを脱却する一つの考えとして 完成された人間が完成された社会を作るということであった。

 

 

つまりは「哲人王思想」に類似したような考え方である。

 

 

 

 

 

ワタリは定時に帰ったあとにそんなことを考えていた。

日本では定時に帰る人間がいるとその相手に対して悪口をぶつけることもある。

 

ワタリは任された仕事はほとんど定時までに終わらせる。しごともきっちりしている。定時ぴったりに仕事が終えられるということはそれだけきちんと考えて仕事をしている証拠である。ワタリは自身の仕事のコツや信念などを口にはしないがきちんと考えて行っているというのは言葉ではなく行動から読み取れる。

 

 

だからLはワタリを信頼していた。

 

 

 

そんなワタリが帰ったあとは自身でコーヒーを入れて飲む。

同じコーヒーなのにワタリが入れるコーヒーの方が明らかにおいしい。

 

いれる温度や角度にも理由があるのかも知れない。

 

 

コーヒーを飲みながら今までの行動とこれからの行動をどうするか整理していた。

 

(監視カメラが付いている間にもキラによる殺人は行った……どんな方法で殺人を行っているかは私以外には分からない……おそらく念じれば殺人できるとくらいにしか思っていないだろう、日本の警察のことだから……普通の人間の場合、殺しを行う際には挙動や表情に何らかの変化はある……しかし夜神家も北村家でも普通の表情で普通に生活をしていた……日本警察ならあの中にキラはいない……そう決定づけてくる)

 

 

Lはコーヒーカップを持ち上げた。口には持っていかずそのまま固まっている。

少しだけコーヒーの表面が揺れている。

 

 

(……しかし、今まで作り上げた私のキラ像は精神はすでに神の領域に達している……そして監視カメラくらいでボロを出すような者ではない……ボロを出す方がおかしい……だとするとそれができそうな相手は……夜神月……私が感じた中で最もキラになりうる素質を持っている……)

 

 

Lの口に少しずつ黒い液体が流し込まれる。

 

(キラという大量殺人犯がいる以上……必ず「キラ」として誰かは捕まる……レイペンバーが12月19日まで調べていた者という意味であれば、やはりどちらかの家の人間をキラにしなくてはいけない……しかし、その相手をどう「キラ」だとして捕まえる?……「自分がキラです」と言って殺しを実際にやって貰うのが一番いい……いやその方法は……)


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