警察捜査本部が全員集まっていた。Lはゴディバのチョコを一つ摘まむとメンバーを見渡して重い口を開けた。
『どうするんだよ、結局夜神月をキラとして仕立てあげるだけのことはできなかったじゃないか……これ以上監視カメラや盗聴器仕掛けても進展するどころか何も起こらないとお前自身が無能ということになりかねないぞ』
(大丈夫です……手は打っています。そしてここの警察のメンバーなら私の誘導に流されます……見ててください)
「1週間監視カメラと盗聴器を仕掛けてみて北村家、夜神家の中に怪しい者はいません……」
総一郎はヒゲの処理を忘れていた、そして固くなった肩の力が抜けた。
「監視カメラと盗聴器の仕掛けを外します……」
「良かったですね!局長!」
「うかれるな松田!さてこれからも気を引き締めてやり直していこう」
ゴディバのチョコが体に染み渡る。
「勘違いしないでください……監視カメラや盗聴器から見る限りでは怪しい者はいないという意味です……この中にキラがいたとしてもボロは出しません」
捜査本部のメンバーは息を飲んだ。確かにキラはとても賢い。キラがあの中にいても簡単にボロを出すとは思えないと納得したところだった。
(これくらいで十分。キラはとても賢いからボロを出さない。これで夜神月へのキラ疑惑を維持したまま、監視カメラや盗聴器を仕掛けたのに何も収穫がないのではないかという話には進展しない……まぁ時間はありますしじっくりいきましょうか)
「えっ、じゃああの中にキラがいるってことですか?」
「ですからあの中にキラがいるのは5%です」
(これでいいだろう。夜神月への黒塗りの素材はある程度集まった……)
「たとえば夜神さんの息子さんが勉強しているときに背中が死角なんですよね。ウエディによると部屋の中に携帯端末やテレビがあるという報告はありませんでしたが、ポテトチップスの中身までは調べていないと言っていました」
「何が言いたい、竜崎?」
「例えばあのポテトチップスに小型のテレビあるいはスマートフォンなどを仕込んで座れば一部分死角ができる。外部から持ち出したもので机の上に置かれたのはポテトチップスだけなのでその中から情報を得ることも不可能ではない……盗聴器があるので音を出したら分かる……そして死角があるといってもそれはごく一部であるから犯罪者がどのような犯罪を犯したかまでは勉強しながら得るのは少々運が絡む……そういう意味では名前と顔だけで殺したという考えもできる……そうなれば軽犯罪者がその日二人殺されたこともうなづける……だから次の息子さんがテレビを見ているときに軽犯罪者が心臓麻痺になりましたが、そうするとこでその前日の二人の軽犯罪者の心臓麻痺は特別死されないともくらんだとも考えられます」
「確かにそれはありえる……局長に悪いですが北村家夜神家の中で賢くキラとして行動できそうなのは月君ではないかと思っていました……確かに小型機械を使えば監視されていても情報を得ることができますし、何よりなぜあの日軽犯罪者が二人死んだかもこれなら納得ができます」
「あ、僕も局長には悪いですが、月君は怪しいんじゃないかと思います。確か全国模試でも1位なんですよね。そして世界一の名探偵のLがいまだにキラを逮捕できないというのはキラも優秀だから。そう考えるとしっくりきます」
総一郎は何も言い返せなかった。確かにその可能性がある以上反論できない。
ここで反論しても感情論でしか語れないことを分かっていた。
(ちょろい……よし……動くか)
「では夜神月君をキラ容疑で任意同行を求めましょうか?」
総一郎でさえ息子がキラかも知れないと思った矢先であった。
そんな折だった。
ワタリが部屋にノックをせずに入ってきた。
(……何かあったのか……ワタリがノックをしないとは珍しい……しかし、今ワタリが報告するようなことは何も思いつかない……)
「皆さん取り込み中ですが隣の部屋に集まってください」
Lの中で胸騒ぎがした。これは自分の知らない何かが起こると予感していた。
次回は「反撃」