Lはスマホでワタリに通話をしていた。
「はい……では例のテロップをお願いします……」
北村家夜神家が食卓についてテレビを見ているときにテロップを流すことをあらかじめ打ち合わせしていた。
突然ピロリロリンピロリロリンと災害速報の時に流れる音が鳴り響いた。
ICPOはキラ事件に対して1500人を派遣することを決定。
テロップが画面上に表示された。
(ここにも監視カメラはついているのだろう……ここで賢いということをPRすることができればキラ捜査に加入できる可能性あるいはLが僕をキラ候補に仕立てあげるかも知れない……ならばここではキラとしての疑惑と捜査でも役に立つという二つのPRをしていこう……それにしてもLも最初の時と手口が一緒だな……)
「馬鹿だな……ICPOも……こんなに送り込むなら堂々と発表するのではなく、こっそり入れるべきだ。なぜなら極秘で捜査していたFBIでさえあんな目にあったのに……これじゃその二の前になる……つまりこれは大げさに報道してキラを動揺させようとする警察の作戦だと考えた方がいいだろう……キラは非常に頭がいい……こんなのはキラにもバレバレと考えるのが妥当だろう……」
体育座りで画面を見ていたLは爪を噛んで凝視している。月の表情、声のトーン、内容どれも注意深く観察している。
「賢いですね……息子さん」
『うほっ。お前から「賢い」という言葉初めて聞いたわ……散々俺に日本人は無能とか言ってた癖に……本当にこの夜神月はお前の退屈さを脱却する救世主になるかもな』
Lは本心から答えた。Lから賢いという言葉が出たのは日本に来て初めてのことであった。
と同時にLの中では彼をキラであると上手く誘導していこうという考えがどんどん色濃くなっていった。
夕食が終わるとコンソメ味のポテトチップスを持って部屋の中で勉強をしはじめた。
「息子さんは夕食が終わるとテレビをつけずにひたすら勉強ですか……」
「センター試験も近いからな」
Lは月の背中を凝視していた。この角度なら机の一部分には死角ができる。
(ならば夜神月が知らない間に報道された軽犯罪者を一人殺しておこう……私が作り上げるキラ像は例え盗聴器や監視カメラがあってもしっぽは出さない……むしろ私が関していることを利用して無罪をPRしてくるだろう……しかし、あえて軽犯罪者を殺すことでキラがいつもと違う行動をしていると思わせられるし逆にキラは焦って軽犯罪者を殺してしまう状況にいたということもできる。あえて夜神家を初日から真っ白に思わせることで黒く仕立てあげる……簡単にキラを発見するのではそれは嘘っぽい……どんでん返しさせてキラだと仕立てあげる必要がある……)
23時……ワタリが21時頃に軽犯罪者が二人心臓麻痺で死亡したという伝言をしてきた。
「その時間帯夜神さん家では奥さんと娘さんはドラマを見ており、息子さんは部屋で勉強……」
「竜崎……つまりそのニュースを見ていないなのはキラではない……うちの家族はこれで潔白ですね」
両手を広げ喜びをあらわにした。自分の家族が疑われているのはとても気持ちいいことではなかったのが良く伝わってきた。
しかし、Lはその安堵感と喜びを不安にさせた。
「しかし今日のキラはずいぶん罪の軽い者を殺しましたね。しかも報道されてすぐに……しかもカメラをしかけて初日だというのに夜神家は面白いほどにすんなり白だ……」
総一郎は体が固まっていた……疑いが晴れていないとそう感じたからだ。少し晴れたというよりもむしろ1ミリも晴れていないという印象をLの言葉から受けた。
次回:ライトな犯罪