名古屋まで買いに行かせた割には、りんごがすっぱく☆4・5とは思えない味だった。
――まぁ、所詮は食べログ。目安程度です。こういうこともありますね
そしてかじりかけのりんごを皿のはじによせてタルト部分をフォークにさしてデスノートを読み返していた。
「気に入ってるようだな」
パンクのような恰好をした大きな黒い羽根を羽ばたかせながらタルトを食べるぼざぼさ頭の青年に話しかけた。
「いえ、このタルトハズレです。もっと美味しいものはいくらでも食べたことがあります」
淡々と話すLに逆にリュークが驚いた。
「タルトの話ではない」
「冗談です。ノートのことですね」
デスノートの角を持ち、死神に見せた。Lのまん丸の目は確かに死神を捉えたが、微動だもしなかった。そしてタルトを口にした。
「何故驚かない。デスノートの落とし主の死神のリュークだ。その様子だともうそれが普通のノートじゃないと分かってるんだろ?」
「確かに普通の人間だったら大多数は驚くと思います。
しかし、デスノートを利用しいろいろなことを直視経験することでますます確信を持って行動できます。
あ、聞きたいことがあるのですがいいですか?」
Lはリュークの目をじっと見つめた。リュークの目にはLの顔が写っている。
リュークはLに対して純粋な子供のようなとても純粋な目をしていると感じた。
デスノートを使った人間はこれとは対照的な目をしているのを過去の経験から学んでいた。
――こいつは普通じゃない。俺の求めてるものを持ってる
リュークが欲しいものを提供してくれる相手であるとその目から感じた。
Lはノートの端と端を摘まんで開いてリュークに見せた。
「くくっ……これは凄い。逆にこっちが驚かされた」
リュークはそのノートを受け取り、一心不乱に読み始めた。
「過去にデスノートが人間界に出回った話は何度か聞いたがここまで殺ったのはおまえが初めてだ。並じゃビビッてここまで書けない」
「私はこの死神のノートの効果を分かっていて使いました。そして死神のあなだが来ました……私はどうなりますか?
まぁ、その様子じゃ魂を取る取られるという話ではなさそうですが」
Lはこの死神にすぐに魂を取られるとはこれっぽっちも思っていなかった。
その理由はすでにこれまでのやりとりで明らかであったからである。
「ん?ああ。魂を取るとか人間の作った勝手な空想だろ?」
リュークは一呼吸置いた。
「俺はおまえに何もしない。人間界の地に着いた時点でノートは人間界の物になる」
Lは目をまんまるにして聞いている。リュークはLに指を指して続けて言った。
「もうおまえの物だ」
「言われなくても私の物です。返しませんよ」
Lはノートを抱きしめながら言った。渡したくない意思は体にも表れている。
リュークは窓を開けながら返答した。
「強情な奴だな。まぁ、お前ならほかの人に渡すという考え方はないと思うが万が一必要なくなったら、
他人に回せ。その時はおまえのデスノートに関する記憶だけ消させてもらう」
ベランダにリュークは出た。そしてそこから外に羽ばたいた。25階の空中に浮いている。
「そして……」
リュークが一呼吸置いた矢先Lはその先を予想し続けて言った。
「ノートを使った人にしか死神は見えない。ノートを回したらその時点で死神は見えなくなる。おそらく声も同じでしょう」
「あ、今言おうとしたんだが。凄いなお前」
「見えてたり聞こえてたら今こうしてのんきにタルトを食べてませんからね。合理的に考えたまでです」
Lははにかみながら言った。自分でも久しぶりにはにかんだと思った。
やっとみつけた面白いことをしてどうなるのかL自身も分からなかったからである。
このような感覚は幼い時に忘れてしまった感覚であることを久しぶりに思い出した。
「デスノートが人間L=ローライトと死神リュークを繋ぐ絆だ」
「ほぉ……絆ですか……」
――L=ローライトというのは、おそらく私の本名だろう。
本名は私でも知らないものであるがそれをこの死神リュークが知っているということは死神特有の能力であることはまず間違いない。
このことはいずれ必要になることが来るだろうが。まだその時ではない、頭の片隅にでも置いておこう。
本名が分かるというのはこのノートと相性が良いですからね。
「そういえば、なぜ私を選んだのですか?」
「はぁ?俺はただノートを落としただけだ。賢い自分が選ばれたとでも思っているのか?たまたまこの辺りに落ち……たまたまおまえが拾った……だから人間界で一番ポピュラーな英語で説明つけたんだぞ」
「まぁ。いいでしょう。質問を変えます。落とした理由はなんでしょうか?丁寧に使い方を書いていたから間違って落としたのではなく故意に落としたのですよね?」
「何故かって?」
リュークは口元が緩んだ。
「退屈だったから」
Lに指を指して続けた。
「死神がこんな事言うのもおかしいが生きてるって気がしなくてな……」
死神界の博打をしている二人を思い浮かべながら続けた。
「実際死神というのは暇でね。昼寝をしてるか博打をうってるかだ。下手にデスノートで人間の名前を書いてると「何ガンバッちゃってるの?」って笑われる」
リュークの目は死んだ魚のような目をしていた。そして淡々と話を続けた。
この様子からも死神だが死神界は死んでいるような生活だったことは想像しやすい。
「自分は死神界に居るのに面白くもなんともない。だからと言って死神界の奴をノートに書いても死なないんだからな」
そして窓の外に顔を向け明後日の方向を見ている。目に生気が宿り始めた。
「こっちに居たほうが面白いと踏んだ」
――その気持ち私も分からなくはない
「そして面白いと確信できた」
「私も退屈でした。同様に面白くなると確信しました。もちろん最初は信じなかった。しかし、そのノートには人間ならだれでも一度は試したくなる魔力があります……」
Lは椅子に座り天井を見つめた。そして、デスノートを手にした時の回想をし始めた。
L「言われなくても私の物です。返しませんよ」
Lはノートを抱きしめながら言った。
リューク(なんか熊のぬいぐるみを抱きしめて渡したくない幼女みたいだなwww)